連邦保安官

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
徽章

連邦保安官(れんぽうほあんかん、英語: United States Marshal)は、アメリカ合衆国の法執行官。保安官補とともに、司法省において連邦保安官局英語: United States Marshals Service, USMS)を編成している[1]

来歴[ソースを編集]

イギリスによるアメリカ大陸の植民地化の過程で、警察を含めて多くの制度がイギリス本国から持ち込まれており[2]、その一つが「マーシャル」(Marshal)であった。これは基本的には廷吏であり、令状の執行や囚人の護送を職務としていた。アメリカ合衆国においては、シェリフやコンスタブルの制度とともに導入されており、開拓地では村落の実質的な治安維持責任者として機能したこともあった[3]

連邦政府においては、連邦裁判所制度の整理を図った1789年の裁判所法において、この制度が導入された。1789年9月24日、初代大統領ワシントンは旧13植民地の各地域に一人ずつ、計13人の連邦保安官を任命した。彼らは、管轄区域内で連邦裁判所が開廷するときは廷吏として裁判の進行を司り、それ以外の時は政府からの命令の執行にあたっており、これらの職務のため必要なときは、助手(deputy)を任命することができた。また地域的騒乱状態の鎮圧も職務の一部と考えられており、古くは1791年のウィスキー税反乱においても動員されている[3]

1870年に司法省が設立されると、連邦地方検事などと同時に、連邦保安官もその指揮監督下に入った。当時、連邦政府の法執行機関は、ごく限られた特殊な領域を所掌するものに限られていたことから、連邦レベルの一般警察業務は連邦保安官によって行われていた時期もあった。しかしまもなく、これでは時代の要請に応じられなくなったことから、まず財務省シークレットサービス捜査官を司法省に派遣して捜査活動にあたるようになり、ついで1908年に捜査局(後の連邦捜査局)が創設されて、一般警察業務はこちらが担当するようになった[4]。また1969年には、連邦保安官の組織化を図るため、連邦保安官局が設置された[5]

任務[ソースを編集]

来意告知を執行する保安官部隊
航空機での囚人輸送
証人を警護する保安官部隊

連邦の司法制度の保護を基本として、下記のような任務がある[1]

  • 連邦裁判所の法廷管理・警備
  • 逮捕令状などの令状・召喚状の執行
  • 連邦犯罪の被疑者の護送
  • 証人の身の安全確保(証人保護プログラムを含む)
  • 地域的騒乱の鎮圧
  • その他司法長官の特別の指示に応ずること

編制[ソースを編集]

連邦保安官は、連邦裁判所判事などと同じく、大統領が指名して上院が承認するPAS官職であり、任期は4年間である。米本土外を含めて、94ヶ所の地方裁判所に1名ずつ配置されている[1]

上級管理職たる連邦保安官の指揮下で活動する実働人員として、保安官補Deputy Marshal)が配置されている。こちらは通常の連邦公務員試験に合格した一般職の公務員であり[1]、2016年現在で3,752名が活動している。この他に、刑務官(detention enforcement officers)および一般職員をあわせて、連邦保安官局全体の職員数は計5,209名となる[6]

SOG[ソースを編集]

連邦保安官局のSWAT部隊として、特殊作戦群Special Operations Group, SOG)が編成されている。これは凶悪犯に対する法執行や危険度の高い警護任務などに対応する部隊であり、創設は1971年と、連邦政府の法執行機関のSWAT部隊としては最も古い部隊である[7](FBIのSWAT部隊は1973年創設[8])。

SOGの本部はルイジアナ州アレクサンドリアに所在している。SOGには合計で100名弱の隊員がおり、その1割は女性である。当初は3個小隊編制であったが、1995年より4個隊に改編された。それぞれの小隊は、12名編制の強襲チームを基本単位としている。4個小隊のうち1個が常に即応体制に置かれており、3週間ごとに即応小隊が交代していく体制をとっている[7]

同じ司法省の警察機構である連邦捜査局(FBI)の特殊部隊である人質救出チーム(HRT)とは異なり、連邦保安官局SOGには専従人員はおらず、年に2回の集合訓練と出動時以外は、各地の保安官事務所などそれぞれの部署で日常勤務にあたっている。出動命令が出たときには、余裕があればルイジアナ州の本部に一度集合して予行演習などを行うこともあるが、場合によっては、各地から現場にそれぞれ直行して、現地集合という形になることもある[7]

連邦保安官を扱った作品[ソースを編集]

出典[ソースを編集]

  1. ^ a b c d 上野 1981, pp. 234-235
  2. ^ 上野 1981, pp. 16-17
  3. ^ a b 上野 1981, pp. 218-225
  4. ^ 上野 1981, pp. 245-246
  5. ^ 連邦保安官局. “Historical Timeline” (英語). 2017年1月24日閲覧。
  6. ^ Office of Public Affairs (2016年4月29日). “Fact Sheet - Facts and Figures 2016 (PDF)” (英語). 2017年1月22日閲覧。
  7. ^ a b c トマイチク 2002
  8. ^ Athan G. Theoharis 『The FBI: A Comprehensive Reference Guide』 Greenwood Publishing Group、1999年、235頁。ISBN 978-0897749916

参考文献[ソースを編集]

  • 上野, 治男 『米国の警察』 良書普及会、1981年NCID BN01113868
  • トマイチク, スティーヴン・F. 『アメリカの対テロ部隊―その組織・装備・戦術』 並木書房2002年、122-148頁。ISBN 978-4890631551

関連項目[ソースを編集]

外部リンク[ソースを編集]