連続殺人鬼カエル男

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search
連続殺人鬼カエル男
著者 中山七里
イラスト トヨクラタケル
発行日 2011年2月4日
発行元 宝島社
ジャンル ミステリー
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 文庫本
次作 連続殺人鬼カエル男ふたたび
公式サイト 連続殺人鬼カエル男|宝島チャンネル
コード ISBN 978-4-7966-8089-9
Portal.svg ウィキポータル 文学
[ Wikidata-logo-en.svg ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

連続殺人鬼カエル男』(れんぞくさつじんきカエルおとこ)は、中山七里推理小説

概要[編集]

第8回『このミステリーがすごい!』大賞の最終選考に『さよならドビュッシー』と共にダブルエントリーされた作品であるが[1]、今作はがらりとタッチが異なり、サイコスリラーの皮をかぶりつつ心神喪失者の責任能力を無しとする刑法39条の是非を問う異色の社会派ミステリーとなっている[2]。2作が同時に最終選考に残るのは同コンテスト初の快挙である[1]

著者がこの作品を思いついたのは大阪に赴任していた頃で[1]、『魔女は甦る』が第6回『このミステリーがすごい!』大賞の最終選考で落とされた時に選考委員からもらった指摘やそれまでの受賞作の選評を全て読み、選評通りに書けば次は通過するだろうとプロットを立てた[3]。ストーリー上で警察署内の描写が必要だったが、当時は小説書きが趣味のただの会社員だったため取材の申し込みなどできず、曽根崎警察署に入って階段の幅を計り、非常階段の場所を確かめ、上から下までうろうろしてその間に3回も職務質問を受けたという[1]。結局受賞は逃したが、選考委員の評価が高く、読者からも「こっちを読みたい!」という声が続出したため、出版が決定[4]。当初のタイトルは「災厄の季節」であったが、文庫本として発売される際に改題された。帯のコメントは作家の島田荘司が担当した[4]

本作でメインとなっている古手川&渡瀬は、以降に出版された著者の他の作品でも脇役として度々登場する[5]。また、出版社は異なるものの、同じく2011年に発売された『贖罪の奏鳴曲』とリンクしている部分が多数ある[6]。冒頭で死体を発見する新聞配達員の立花少年は著者の中山自身がモデルであり、自身が新聞配達をしていた時の発想から生まれたシーンである[3]

2018年5月に続編となる『連続殺人鬼カエル男ふたたび』が刊行されている。

あらすじ[編集]

埼玉県飯能市にあるマンションの13階で、フックでぶら下げられた女性の全裸死体が発見された。傍らには子供が書いたような稚拙な犯行声明文があった。「きょう、かえるをつかまえたよ。はこのなかにいれていろいろあそんだけど、だんだんあきてきた。おもいついた。みのむしのかっこうにしてみよう。くちからはりをつけてたかいたかいところにつるしてみよう。」―これが近隣住民を恐怖と混乱の渦に陥れる殺人鬼「カエル男」による最初の凶行だった。警察の捜査が進展しない中、第2、第3と殺人事件が発生し、その法則性が明らかになると、街中がパニックに陥った。

登場人物[編集]

埼玉県警・捜査関係者[編集]

古手川 和也(こてがわ かずや)
1年前に埼玉県警捜査一課に配属された若手刑事。大学は出たが国家公務員試験一種は落ちたため、ノンキャリアとしてスタートした。自尊心が高く、功名心は日増しに肥大。早く大きな事件で犯人を検挙して手柄を立て、自分の存在を知らしめたいと思っている。右手の掌に2本並行して横断する傷跡があり、それを左の親指でなぞる癖がある。
渡瀬(わたせ)
捜査一課の警部で班長。古手川の上司。人を殴ることしか考えていないような人相をしているが、その眼は深く鋭く、誰にも負けない観察眼を持っている。科学捜査と同じように、第一線で働く現場の人間の勘を信じ、頼りにする。班に真っ先にパソコン導入を要求したが、触ったのは最初だけで今や捜査一課の中でシリコンアレルギーの最右翼とまで言われている。多方面に博識で、推理小説をよく読む。
里中(さとなか)
埼玉県警本部長。昔ながらの気骨を持つ警察官で、嘘や誤魔化しが何より苦手。
栗栖(くりす)
埼玉県警本部課長。
光崎 藤次郎(みつざき とうじろう)
法医学教室の主で監察医。白髪オールバックの老人教授。小柄で端正な顔立ちながら眼だけが猛禽類を思わせるように鋭い。歩くのは遅いのに仕事は早い。解剖をしながら平気で食事ができる。

その他[編集]

荒尾 礼子(あらお れいこ)
第1の被害者。マンション「スカイステージ滝見」の13階で、口にフックをかけられ全裸死体の状態で吊るされていた。ツクダ事務機器販売の従業員。26歳。実家は長野にあり、就職するために埼玉に出てきていた。子供好き。
立花 志郎(たちばな しろう)
新聞配達員。高校生。第1の被害者・荒尾礼子の死体の第一発見者。
辻巻(つじまき)
マンション「スカイステージ滝見」の1棟と2棟を担当する管理人。常駐ではなく月・水・金の隔週勤務。ネズミのように貧相な瓜実顔をしている。
斉藤 勤(さいとう つとむ)
ツクダ事務器販売の営業マンで、荒尾礼子の上司。生え際の後退した50代の男。
桂木 禎一(かつらぎ さだかず)
良く言えば慎重、悪く言えば臆病な草食動物を思わせる人物。コンピューターソフトの会社で働いている。1年前から荒尾と恋人関係にあった。石川県金沢市出身。
指宿 仙吉(いぶすき せんきち)
第2の被害者。廃車プレス機で圧縮された惨たらしい状態で発見された。72歳。飯能市鎌谷町在住。元中学の校長で、退職してからは町内の自治会長をつとめていた。息子夫婦、そして20代の孫娘・梢と同居していた。
李 明順(り めいじゅん)
廃車工場で働く中国人。いつも通り廃車プレス機を作動させ、第2の被害者・指宿の死体を発見した。
御前崎 宗孝(おまえざき むねたか)
精神科医。城北大学名誉教授で犯罪心理学の権威。ワイドショーにも多数出演するマスコミの御用学者でもあるが、渡瀬曰く”実践派”。以前は府中刑務所の医官を務め、犯罪を犯した者達と毎日対峙していた。彼の教え子で精神科医になったものも多い。3年前、一人娘と孫を17歳の少年に殺された過去をもつ。短髪で白髪、目元が柔和。70歳だが矍鑠としていて、老人らしさはまるでない。
尾上 善二(おのうえ ぜんじ)
埼玉日報社会部記者。背丈は古手川の肩ほど。その短躯でどんな隙間にも侵入し、よく走りよく喋り逃げ足も速いその様子から、<ネズミ>という綽名をつけられている。いつも皮肉な笑みを貼りつけ、押しが強くて鼻が利き、どこよりも早くスクープをものにする。
当真 勝男(とうま かつお)
18歳。4年前、幼女を監禁・絞殺したがカナー症候群と診断されたため、不起訴のまま措置入院。その後再犯の可能性無しとされ、家庭裁判所により保護観察が決定された。「カエル男」の容疑者としてリストアップされる。やや肥満体系。現在は歯科医院で雑用の仕事をしている。
有動 さゆり(うどう さゆり)
35歳。飯能市佐合町在住。当真勝男の担当保護司で、自宅でピアノ教室を開いている。小柄で幾分丸顔、目鼻立ちがはっきりしていて美人というよりは可愛い部類。元夫は2年前に女を作って出て行き今は新しい家庭を築いているため、現在は息子である真人と2人暮らし。府中の少年院に収容されていた過去があり、その時矯正スタッフのリーダーだった御前崎にカウンセリングの傍らピアノを習った。当真も同じく御前崎が担当していた繋がりで、御前崎から当真の保護司をするよう指名された。
有働 真人(うどう まさと)
さゆりの息子。小学校3年生。同級生にいじめられている。「カエル男」の第3の被害者となってしまう。
市ノ瀬(いちのせ)
真人をいじめていた少年のうちの一人。父親は自衛官
倉石(くらいし)
警察官になって30年以上のベテラン巡査。通報を受け、有働真人の死体を最初に確認した。
衛藤 和義(えとう かずよし)
第4の被害者。死体は正田町の河川敷で燃やされていた。刑事事件専門の弁護士で、新進気鋭の人権派弁護士として一躍マスコミの寵児となったが、重度の糖尿病で弁論の最中に倒れ、飯能市立医療センターに入院中の身だった。
嵯峨島 ナツオ(さがしま なつお)
父親・辰哉と2人暮らし。母親が出て行った日以降、辰哉から毎日のように性的虐待を受けている。
鈴置 美香(すずおき みか)
ナツオが12歳の時に近所に引っ越してきた3つ下の髪の長い女の子。顔も鼻も口も小さいが、目だけはくりくりとして大きい。ナツオに懐く。

出典・脚注[編集]

  1. ^ a b c d ブログ「『このミステリーがすごい!』大賞VOICE-作家から生の声お届けします-」”. 宝島社 (2011年1月28日). 2013年2月12日閲覧。
  2. ^ 本の旅人 (2013-08), 身体を侵す毒よりも心を蝕む毒こそおそろしい, 214, 角川書店, pp. 24-25, JANコード 4910082050830 
  3. ^ a b IN★POCKET (2013-11), 読者を挑発する新社会派 中山七里スペシャルインタビュー, 講談社, pp. 172-191, ISBN 978-4-06-060713-3 
  4. ^ a b 連続殺人鬼カエル男|宝島チャンネル”. 宝島社. 2013年2月12日閲覧。
  5. ^ 幻冬舎刊『魔女は甦る』、講談社刊『贖罪の奏鳴曲』等。
  6. ^ 尾上善二や光崎(名前のみ)が登場し、御前崎とさゆりの過去の様子も描かれている。

関連項目[編集]