ドン (通貨)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
越南銅から転送)
ドン
(銅)
Đồng Việt Nam(ベトナム語)
ISO 4217
コード
VND
中央銀行ベトナム国家銀行
 ウェブサイトwww.sbv.gov.vn
使用
国・地域
 ベトナム
インフレ率3.5%
 情報源The World Factbook Inflation rate (consumer prices)
(2017年)
補助単位
 1/10ハオ(通貨廃止)
計算上のみで、硬貨・紙幣ともに発行されていない。
 1/100シュウ(通貨廃止)
計算上のみで、硬貨・紙幣ともに発行されていない。
通貨記号
複数形この通貨の言語に形態学的な複数形区別はない。
硬貨
 流通は稀200
500
1000
2000
5000
紙幣
 広く流通1000
2000
5000
10,000
20,000
50,000
100,000
200,000
500,000
 流通は稀100, 200, 500

ドンベトナム語đồng / )は、ベトナム通貨単位。国際通貨コード (ISO 4217) はVND。通貨記号はであらわす。補助単位はハオ(hào, 毫)と、シュウ(xu, 樞)であり、1ドン=10ハオ=100シュウである。現在はどちらの補助単位も現金の単位としては使われていない。

歴史[編集]

ベトナム語のドンは漢字のであり、一ドンは一銅、つまり銅銭一枚分の意である。ベトナムは古くは銅銭が流通し、通貨名はこれからとられている。フランスに植民地化されたフランス領インドシナ時代は、フランス語米ドルを意味するピアストルが通貨単位であったが、ベトナム語ではドン、あるいはを意味するバク(ベトナム語bạc / )と読んだ。独立後、南北ベトナム両国は別々の通貨を発行したが、単位はともにドンを使用した。南ベトナムの併合後、ドンが共通の通貨単位として使われるようになった。

北ベトナム[編集]

1946年ベトミン政府(ベトナム独立同盟会、のちのベトナム民主共和国(北ベトナム政府))は、それまでのフランス領インドシナ・ピアストルを置き換える形で、ピアストルと同価の独自通貨ドン(đồng)を導入。その後、二度のデノミを実行。1951年に100:1のレート、その後1958年に1,000:1のレートで通貨切り下げを行なった。

南ベトナム[編集]

南ベトナム500ドン紙幣(1966年)

第二次大戦後、戦前の宗主国フランスの意を受けて存在していたベトナム国が、1953年にフランス領インドシナ・ピアストルとドンの両通貨名で紙幣を発行していた。その後、南ベトナムを掌握していたベトナム国勢力が一掃され、アメリカ合衆国の支援を受けたベトナム共和国(通称南ベトナム)に政権を引き渡した。その間、通貨はピアストルと同価の「ベトナム共和国ドン」が使用された。1975年のサイゴン陥落の後、南ベトナムの通貨は「解放ドン」に変更され、1解放ドン=500旧ベトナム共和国ドンであった。

統一ドン[編集]

1976年に南北ベトナムが統一され、ベトナム社会主義共和国が成立。1978年5月3日に通貨ドンも統一され、1新ドン=1北ベトナム・ドン=0.8南ベトナム「解放ドン」の価値であった。

ドン切り下げ[編集]

1985年9月14日に、ドンのデノミネーションが行われ、1新ドン=10旧ドンとなった。この後、慢性的なインフレーションが開始し、1990年代初頭まで継続することとなった[1]

貨幣[編集]

2019年3月の為替レートで、1ベトナムドンが約5程度(約200ドン=1円)[2][注釈 1] と、小額な通貨単位である。必然的に桁数が多くなるため、一般的には3桁で区切られ、"."(ピリオド)が用いられる(命数法を参照のこと)。長年続くインフレーションもあり、1,000ドン未満で購入できる商品はほとんどない。このため、下3桁を省略する、または1,000=1キロという意味で1,000ドンを「1k」と表記することがある。

紙幣[編集]

  • 100紙幣は、市中ではほとんど流通していない。200紙幣は、極稀にスーパーマーケットや薬局など、少額商品が多い商店でのお釣りとして出されることがある。500紙幣は、地方では自転車駐輪料金などの少額決済などで使用される。都市の郵便局やスーパーマーケットなどでは、小額紙幣のお釣りが出せない時は、1,000未満の端数はレジ係の裁量で切り捨て/切り上げられることがある。また、お釣りをアメ玉封筒などの現物で代用されることもある。都市部・地方問わず小売商店では、1,000以下のお釣りが必要な値付けは行わず、したがって200紙幣や500紙幣は、ほとんど用いられない。特に都会部の小売店では5000単位の値付けがされることが多く、観光客向けの店では普通10,000単位の値付けがされることが多い。
  • 10,000紙幣以上は偽造防止の為、紙製紙幣ではなくポリマー紙幣を使用している。
  • 旧札である旧50,000紙幣と旧100,000紙幣(ともに紙製)は、既に流通が停止されており、使用不能の失効券である。
  • 2016年5月6日、中央銀行65周年を記念して100紙幣を発行したが、これは決済に用いることはできない記念紙幣である[3]
  • 2006年8月30日から発行されているポリマー製10,000幣については、表面右上の額面を表す「10000」の数字について他に記載されている数字と異なり、桁区切り(フランスの影響を受けて「,」(コンマ)ではなく「.」を用いている)が無い。これは原版作成時にコンマを忘れてしまったためであるが、貨幣として特に問題なく使えるとの理由で改訂されることなく、また今後も改訂の予定はない[要検証]

紙幣のデザイン[編集]

紙幣の表面に描かれている人物は、既に流通が稀となっている人物が描かれていない100紙幣を除き、全て初代国家主席ホー・チ・ミンである。そのため裏面のデザインと発行年(紙製紙幣は印刷されている発行年・ポリマー紙幣については2003年シリーズとされているが、実際の流通開始年を記す。なお、ポリマー紙幣のシリアル番号の始めの2桁はその紙幣の印刷年を表す)について解説する。

紙製紙幣

  • 100紙幣(緑)- 表・国章と100の数字、裏・ナムディンのフォーミン(普明)寺、1991年発行
  • 200紙幣(橙)- トラクターを使った農業、1987年発行
  • 500紙幣(桃)- ハイフォン港、1988年発行
  • 1,000紙幣(青と黄)- タイグエン省の象による木材運搬、1988年発行
  • 2,000紙幣(青と桃)- 紡績工場、1988年発行
  • 5,000紙幣(青)- ドンナイ省のチアンダム、1991年発行

ポリマー紙幣

  • 10,000紙幣(黄土色)- バクホー油田、2006年発行
  • 20,000紙幣(青)- クアンナム省ホイアン来遠橋(日本橋)、2006年発行
  • 50,000紙幣(桃)- フエの皇宮のフーバン(敷文)楼とグエンルオン殿、2003年発行
  • 100,000紙幣(緑)- ハノイの文廟のクエヴァン(奎文)閣、2004年発行
  • 200,000紙幣(橙)- ハロン湾の香炉岩、2006年発行
  • 500,000紙幣(青緑)- ゲアン省ナムダン県キムリエン社(村)にあるホー・チ・ミン生家、2003年発行

硬貨[編集]

  • 現在、200、500、1000、2000、5000硬貨が存在しているが、流通はまれである。これらにはホー・チ・ミンの肖像画は刻印されておらず、ベトナムの国章が刻印されている。
  • 200、500は銀色、1000、2000、5000は真鍮色である。
  • 200、1000、5000硬貨は2003年、500、2000硬貨は2004年に発行が開始されたが、ベトナムの国民にはあまり受け入れられなかったことから、2011年をもって発行が停止された。ただし現在もなお法的には有効である。
現在のVNDの為替レート
Google Finance: AUD CAD CHF CNY EUR GBP HKD JPY/円USD
Yahoo! Finance: AUD CAD CHF CNY EUR GBP HKD JPY/円USD
Yahoo! ファイナンス: AUD CAD CHF CNY EUR GBP HKD JPY/円USD
XE: AUD CAD CHF CNY EUR GBP HKD JPY/円USD
OANDA: AUD CAD CHF CNY EUR GBP HKD JPY/円USD

符号位置[編集]

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
U+20AB - ₫
₫
ドン記号

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 2019年3月27日時点で1ベトナムドンは、4.765厘

出典[編集]

  1. ^ LOC Country Study Vietnam.”. Lcweb2.loc.gov. 2014年1月7日閲覧。
  2. ^ 経済産業省 (2019-03). 医療国際展開カントリーレポート新興国等のヘルスケア市場環境に関する基本情報 ベトナム編>一般概況>基本情報(4ページ,PDF5ページ) (PDF) (Report). 2019-11-20閲覧 {{cite report}}: |date=の日付が不正です。 (説明)
  3. ^ “中央銀行創立記念紙幣、ホーチミンでの販売は5月27日まで”. VIET-JO. (2016年5月17日). http://www.viet-jo.com/news/economy/160517045449.html 2016年10月16日閲覧。 

外部リンク[編集]