超高温原子炉

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超高温炉の構造図、図はヘリウム冷却型のもの。

超高温原子炉(ちょうこうおんげんしろ、英語: Very High Temperature Reactor,VHTR)は、1000度近い高温状態で発電を行う第4世代原子炉ヘリウムを一次冷却材として使う方式が、最も開発が先行して実証炉段階にあるために高温ガス炉として知られているが、他に溶融塩原子炉または鉛冷却高速炉の超高温炉も研究されている。この原子炉は発生熱の出口部分で600 - 1000度近い高温が可能である。熱効率の高いガスタービン複合発電が可能で、ガスタービン原子炉として知られている。また高温ゆえ、原子力水素製造・原子力石炭液化・原子力製鉄などの工業熱源に使用可能で化石燃料枯渇後の工業熱源として期待されており、熱電併給により揚水発電を不要にできる。そして、冷媒が水でないため水素/水蒸気爆発しにくいなど、従来の軽水炉の欠点の多くを改善・一新する新世代炉である。

概説[編集]

ガスタービン原発とも呼ばれ、炉心溶融や爆発しにくく、原子力製鉄などの産業熱源に使え、「原子力熱電併給」で出力調整が可能で再エネを保完でき、熱効率50%以上、使用済み燃料排出が1/5、冷却水消費量が少ない、など軽水炉の問題点を一新する第四世代原子炉である。

出口部分で600 - 1000℃の高温ヘリウムが得られ、ガスタービン発電と工業プラントが併設されている。昼ピークや、太陽/風力がダウンしたときは工業プラントの稼動を最低限に抑えて、ガスタービン複合発電に核熱ヘリウムの多くを流して熱効率50%での発電をし、夜間にはガスタービン発電機を止めて、核熱ヘリウムの多くを熱化学水素製造や、原子力エチレン焼成(水素副産)や原子力石炭液化(水素消費)や原子力製鉄に振り向け、揚水発電を不要にすること、再生可能エネルギーの不安定性を補う事、などが可能で、熱効率向上で 発電コスト大幅コストダウンが見込まれるほか、ウラン消費や使用済み燃料排出が半分近くカット可能である。

原子力エチレン焼成においても少ないCO2発生でナフサのほかに、水素を併産できる。水素は「石炭液化プラント」や、重油・タールサンドタールを軽質油に転換する「重質油水素化分解プラント」に不可欠である。 また、原子力石炭液化においては在来石炭液化より少ない石炭投入・少ないCO2発生で多くの人造石油が得られるため、石油ピークを過ぎて石油生産が枯渇衰退期に入っている現在、バイオ油より安価大量に人造石油を化学合成する手段として期待されている[1] [2]

歴史[編集]

ドイツのAVR炉

高温ガス炉の設計は1947年オークリッジ国立研究所の電源発生部の職員によって最初に提案された[3]ドイツルドルフ・シュルテン英語版教授は、1950年代に開発役を果たした。アメリカピーチボトム原子力発電所 (en) の原子炉は電力生産のための最初の高温ガス炉であり、これは成功裏に終わり1966年から1974年にかけて技術的な証明の先駆者になった。高温ガス炉の設計の例の一つであるフォートセントブレイン原子力発電所 (en) は1979年から1989年にかけて高温ガス炉として運用された。この炉はいくつかの問題に苛まれ、経済的理由から炉は閉鎖されたものの、アメリカの高温ガス炉のコンセプトの証明として役立った[4]。これ以来高温ガス炉の新しい商業炉は開発されていない。

高温ガス炉は英国のドラゴン炉、ドイツの AVR と THTR-300 、日本高温工学試験研究炉(HTTR)、中国の HTR-10 などでも研究されている。2009年に計画された 100 - 195 MWe の発電力を持つペブルベッド型高温ガス炉実証炉2基が中国において建設中であり2013年竣工予定である。[5]、いくつかの国の原子炉設計者によって建設が推進されている。

これらの高温ガス炉をさらに効率的に運用するため超高温下で利用できるようにするための研究も多く行われ、これが超高温炉の研究のきっかけともなっている。最近では設計が事実上新型に更新され、現在は超高温ガス炉として知られる形式で提案されている[6]。日本においては溶融塩炉の燃料を液体燃料から粒状の燃料に変え、高温下で利用を考えた新型高温原子炉 (AHTR) という計画があるが、これは溶融塩利用の超高温原子炉に分類することができる。

高温ガス炉[編集]

高温ガス炉は一次冷却材に液体金属ではなくヘリウムを用いるガス直接冷却黒鉛炉である。大型化が困難であるが、非常に炉心溶融しにくい。 高温ガス炉の特徴としては多くの設計において黒鉛を減速材とし、以前のような燃料棒でなく、何らかの形式で皮膜された粒状の燃料の集合体を基にしているなど受動安全性が重視されていることが挙げられる。超高温炉の冷却材にはヘリウム溶融塩が想定されているが、多くの場合ヘリウムガス冷却炉として考えられており、高温ガス炉としてより知られている。ガス冷却の場合、商業的に利用されている高温ガス炉(黒鉛減速ガス冷却炉)と互換性がある。 2013年に実証炉が完成予定で、超高温炉の中で、現在もっとも実用化に近い型式の高温ガス炉には二つのタイプがある。一方はペブルベッド炉英語版であり、もう一方は六角柱型炉である。六角柱炉は炉心の形状からその名がついており、六角柱の燃料集合体の炭素ブロックが円形の圧力容器に会うように組み合わされており、ペブルベッド炉の設計は核燃料を黒鉛で覆った仁丹状の燃料を集め、6 cm 程度の球にしたものを圧力容器中心部に積み上げたものである。両方の炉で出力要求や設計にあわせ、格納容器の中央に黒鉛の塔が入り輪になった場合もある。

利点[編集]

  • 鉛・溶融塩との比較
    • 1 m3 あたり発熱量が軽水炉の数十分の1で、黒鉛に仁丹のような粒燃料が分散している炉心構造で燃料表面積が大きく放熱がよく、黒鉛は容易に蒸発せず炉心露出困難で、黒鉛の熱容量が大きいため非常に炉心溶融しにくいそのためプルトニウム焼却への利用が検討されている。
    •  黒鉛は温度があがると中性子を吸収するため、制御棒が刺さらない事故がおきても、黒鉛の中性子吸収でブレーキがかかり一定温度で安定化して暴走しにくい
    • 水を必要としないため、水をかけなければ水素爆発も水蒸気爆発も非常に起こりにくい
    • 熱交換器や原子炉容器の腐食問題がなく実用化に最も近く、初期故障も懸念が少ない
    • 原子炉内部が見えるため、トラブル処理しやすい。
    •  炉心1立米あたりの核分裂量・発熱量が軽水炉の数十分の1であるために、中性子放射が少ない。炉と建物/船体の間に中性子遮蔽を設置すれば建物/船体が放射能を帯びにくく廃炉コストが安くできる可能性があり、原子炉容器の中性子脆化が遅く、配管が水腐食しないので原子炉寿命が長い
    •  炉心溶融しにくいため、プルトニウム富化度20%の粒燃料を使用可能で、熱効率のよさと相俟って、使用済み核燃料の排出は1/5(ただし核の灰の排出量は1/1.7)で再処理コストが安く、六ヶ所村の能力不足問題が解決され、再処理工場を増やさなくて済む

欠点[編集]

  • 鉛・溶融塩との比較
    • 3次元的拡大が困難かつ、原子炉容器からの放熱なので30万kw以上の拡大はクラスタモジュール炉になる(例えば規格品の30万kw炉を4本収容した120万kw炉など)
    •  黒鉛減速ガス冷却炉(炭酸ガス冷却型原子炉)よりましだが、出力の割りに大きく重くなりやすく、出力の割りに設備費は嵩む。それが、大型化困難と相俟って電力会社が今までこの形式に積極的でなかった理由である、(ただし、熱効率のよさ、燃料消費の少なさ、再処理コストの少なさ、長い炉寿命、廃炉コストの少なさなどバックエンド費用の少なさが、近年評価されつつある)
    • 配管等が破断して、隔離弁が作動せず空気が流入した場合、黒鉛火災の可能性がある(尚、運転時に炉室を窒素で満たし、炉室破壊してもDIESEL排気などの二酸化炭素を炉内に注入可能に設計すればこの問題は起こりにくくなる。)
  • 鉛冷却炉との比較
    • 黒鉛火災に備えて、液体窒素やハロンや溶融鉛などの窒息消火剤の準備が必要

黒鉛火災対策[編集]

  • 空気侵入による黒鉛火災対策に黒鉛表面をSiC(炭化ケイ素)で覆い空気が侵入した場合は表面が酸化しSiO2(酸化ケイ素)の膜が生成される事で内部の黒鉛の酸化を防ぐ研究が行われている[7][8]

減速材[編集]

中性子減速材黒鉛であり、また、ペブルベッド方式、六角柱方式にかかわらず炉心の構成物にも黒鉛が多く含まれる。

燃料[編集]

超高温ガス炉において利用される核燃料はTRISO型燃料粒子と呼ばれており、炭化珪素セラミックと黒鉛によって被膜された燃料粒子である。TRISO粒子は燃料の中心核を持っており、多くの場合プルトニウムまたは二酸化ウランから構成される。しかしながら、炭化ウランや炭酸化ウランにも可能性はある。炭酸化ウランは酸素の量論量(酸化に必要な酸素量)を減らすためにウラン炭化物と二酸化ウランの混合物になっている。量論酸素量が少ないことは、炭素層の酸化によって生じる一酸化炭素によりTRICO粒子内圧力の上昇を抑える[9]。TRISO粒子はペブルベッドの中にペブル(球状粒子)に分散させたり柱状に固められ、六角柱状の炭素ブロックに入れられる。アルゴンヌ国立研究所で考案されたQUADRISO燃料[10]のコンセプトは進んだ核反応を良好に制御するために使われている。

冷却材[編集]

ヘリウムは多くの高温ガス炉に使われている冷却材で、ピーク温度と出力は炉心設計に依存する。ヘリウムは不活性気体であり、このためほとんどの素材に対して化学的反応が起こらない[11]。加えて、ほかの冷却材と比べ、中性子の放射にさらされても放射化しない[12]

ヘリウム以外の冷却材[編集]

ヘリウム以外に超臨界CO2サイクルガスタービン発電でも同等の高効率発電が可能[13]。最初期の黒鉛減速ガス冷却炉では冷却材に二酸化炭素を使用していたが当時の技術では20MPaを超える圧力と600℃を超える高温に耐える素材が開発されていなかった為軽水炉に比べ経済性が劣り現在の軽水炉が主流となりガス冷却炉は使用されなくなっていった。

直接サイクル高速炉として2000年に超臨界CO2サイクルを使用した高速炉が特許申請されている[14][15]

高温状態のナトリウムでも水程反応しない為(250℃以下では反応が起きない)冷却に液体金属を使用する高速増殖炉でも有用な二次冷却材の候補である。

超臨界CO2サイクルガスタービン発電は火力発電分野においても利用が可能で東芝が30MPa/1100℃級発電プラントの実証実験を2017年から米国で実施する予定[16][17]

現状ではヘリウムにおいて950℃の超高温による水素製造の実証、ヘリウムより圧力が高圧となり原子炉・配管製造で不利な点がある為、超臨界CO2サイクルの採用はされていない。

運用[編集]

炉心では六角柱型の制御棒が練炭状に穴の開いた黒鉛ブロックの穴に差し込まれている。ペブルベッド炉が利用された場合、超高温炉は以前の PBMR 炉のように運用され、制御棒は周囲の黒鉛反射体に差し込まれる。制御は中性子吸収材を含む小球を追加することで可能である。

安全性とその他の利点[編集]

高温ガス炉の具体的な設計では、ヘリウムの不活性で反応性を持たない性質と、黒鉛の持つ大きな熱慣性の性質を最大限活用するよう最適化され、固有の安全性を持つ。炉心が黒鉛で構成されている事から、高温でも大きな熱容量と強固な構造安定性を持ち、酸炭化ウランで被覆された燃料によって核分裂生成物の保持能力の高さと200G Wd/tに達する高燃焼度を実現する。また、1000度近い高い炉心出口温度により、熱エネルギーを工業的なプロセス加熱のために利用する事が可能である。

さらなる耐熱性向上を目指し炭化ジルコニウム被覆の開発が進んでいる[18]

耐熱温度を倍に引き上げる事で運転温度が1000℃以上も可能になりヘリウムガスタービン発電の効率向上や反応速度が速いITMK3などの高温製鉄への熱源利用等が可能になるとみられる(現在は中東などで行われている800-900度での直接還元製鉄のみ原子力製鉄が可能)[19][20]

高温ガス炉の歴史[編集]

水素製造実験に成功[編集]

2016年3月18日実際の機器を使用した熱化学法ISプロセスによる水素製造実験に成功と日本原子力研究開発機構が発表[21]。今後実際の原子炉による稼働を目標に研究を進める予定。

高速増殖炉への応用[編集]

一般的な高温ガス炉は中性子の遅い熱中性子炉で、黒鉛を減速材にしており、U235しか核分裂できない。しかし、危険なナトリウムや、腐食性が問題な鉛を使わず冷却できるために、ガス冷却高速増殖炉への応用が模索されている。ただしこの場合、1立米あたりの発熱量・中性子発生量が低い利点は失われる

中国の高温ガス完成[編集]

2011年に着工した10万kw級高温ガス炉2基は2016年2月にほぼ完成。試験運転を経て2017年11月商業運転開始予定[22]

中国で商業炉建設へ[編集]

中国で初の商用型60万kw級高温ガス炉の建設が決定[23]

サウジアラビアに中国の高温ガス炉建設へ[編集]

サウジアラビアが中国の核工業建設集団公司(CNEC)と高温ガス炉建設に関する了解覚書を締結[24]。建設時期は未定。

インドネシアに高温ガス炉建設へ[編集]

中国核工業建設集団公司(CNEC)は高温ガス炉実験炉をインドネシアで開発する協力協定に調印[25]。建設時期は未定。

英国に中国の高温ガス炉建設へ[編集]

英AMECフォスターウィーラー社は中国の核工業建設集団公司(CNEC)と高温ガス炉共同開発に関する了解覚書を締結[26]

英国等で高温ガス炉建設を念頭に技術開発協力を行う方針。

また、英のロールス・ロイス社も同日、核工業建設集団公司(CNEC)と民生用原子力分野における戦略的協力強化で契約を締結したと発表。

計画が破綻する可能性[編集]

ヒンクリーポイント原発に新たに欧州加圧水型炉(160万Kw×2)を建設する計画において中国の出資を安全保障上の懸念が存在するとして英政府が最終決定を延期[27]

前政権と異なり中国と距離を置く現政権の方針次第で英国内での高温ガス炉建設計画が凍結・破棄される可能性も。

米国で高温ガス炉建設へ[編集]

米X-エナジー社は米国の大手電力のサザン・ニュークリア社と高温ガス炉の商用化を協力を行う了解覚書(MOU)を締結したと発表[28]

米X-エナジー社のペブルベッド型高温ガス炉(HTGR)及びサザン・ニュークリア社傘下企業が開発した溶融塩高速炉(MCFR)に米エネルギー省(DOE)がそれぞれに4000万ドル(40億円)の投資支援対象に選定される。

溶融塩超高温炉[編集]

溶融塩冷却材を使った形式のLS超高温炉は、進展型高温炉に類似しており、液体フッ化塩が仁丹型の燃料の冷却に使われる。これは一般的な超高温炉の設計と多くの特徴を共有しているが、ヘリウムの代わりに溶融塩を利用している。仁丹型の燃料は溶融塩の中で漂い、このため流体冷却材の中に導入されたばかりの重い燃料は炉の底に運ばれ、使い果たされ軽くなった上部のものから再循環のために取り除かれる。LS超高温炉は多くの魅力的な特徴を持っている。溶融塩の沸騰温度が1400度以上であることからくる高温で働く能力、低圧下の運用、高い出力、同じ状態で運用されるヘリウム冷却炉よりも優れた電気変換効果、受動的安全システム、事故発生時の核分裂生成物のより高い保持力などがその特徴となっている。一方で、溶融塩の金属への腐食性はこのタイプの原子炉を進める足かせとなっている。

素材開発[編集]

超高温炉では熱と高い中性子量、また、溶融塩が採用された際には腐食性の環境といった問題があるため[29]、従来の原子炉の限界を超える素材を必要としている。超高温炉を含む様々な第4世代原子炉の一般的な研究の中で、Murty と Charit は、「超高温炉に利用するために経年した後であっても、圧力下、非圧力下問わず高い安定性を持ち、振動耐性、展性、強度が維持でき、耐食性も初期的候補になる素材」を提案している。ニッケル基の超合金、炭化ケイ素、特定の品質のグラファイト、高クロム鉄、耐熱金属などのいくつかの素材が提案されている.[30] 。超高温炉を建設する前に対処しなければならない問題を明確にするために、アメリカ国立研究所の指揮でさらなる研究が行われている

核融合炉での研究[編集]

核融合炉の冷却系においても溶融塩を使用する検討がなされている[31]。高温まで扱える特性と溶融塩に含まれるリチウムに中性子を当てヘリウムトリチウムに分裂する反応で核融合の燃料を生産する目的で研究が行われている。

リチウム、ナトリウム、カリウムとフッ素の化合物(塩)を混合したFLiNaKも溶融塩の候補となっている[32]

溶融塩超高温炉同様に腐食性の問題を抱えており低放射化フェライト鋼バナジウム合金、SiC/SiC複合材料が耐食材料の候補に挙がっている。研究結果次第では溶融塩超高温炉へ応用が見込まれる。

溶融塩炉建設[編集]

2016年3月カナダのテレストリアル・エナジー社が独自開発した溶融塩炉の建設計画を申請[33]。2020年代に商業用実証炉の完成を目指す予定。

鉛ビスマス超高温炉[編集]

東京工業大学で研究されている鉛ビスマス高速増殖炉が600℃以上の操業温度を予定している。炉心はプルトニウム/劣化ウランの装荷とCANDLE炉心が検討されている。京大で研究されている加速器駆動未臨界炉はプルトニウム40%・超長半減期核種60%(いわゆる「核のゴミ」)混合の窒化物燃料の装荷が予定されている。 従来、鉛ビスマスは腐食性のため、超高温炉への適用が困難と思われてきたが、原子炉容器内側にイオン化傾向の高い金属をスパッタ蒸着することで、トタン(亜鉛めっき鋼板)などとおなじ「犠牲防食」の原理で腐食を防止できることがわかってきた。また1970 - 80年代のソ連原潜での経験で、空気と「長時間」接触させると酸化スラグが発生する可能性があることがわかり、以降空気と接触させず液体金属中の酸素濃度を電子制御する設計、流路詰まりを防ぐタンク型の採用などで、実用性を改善している。もんじゅなどのナトリウムと違って、水をかけて冷却可能なのが最大の利点である。 耐熱温度は300度から600度に改善したが、1000度に達してはいない。これは安価なアルミ(融点660度)蒸着を使用している事も原因であり、最近、高融点金属の蒸着も開発されているので、800 - 1000度への温度引き上げが期待されている。加速器駆動未臨界炉や鉛ビスマス高速増殖炉の経済性をガスタービン複合発電によって大きく向上させる可能性がある。

※アルミニウムの耐食性

アルミニウム単体では腐食に弱く、酸素とアルミニウムが結合し表面に腐食に強い酸化アルミニウム(アルミナ)の被膜が出来る事で腐食を防いでいる。

アルミニウム以外の材料

アルミニウム以外ではケイ素タングステンが候補に挙がっている[34]。 タングステンは最も耐熱性があるが、高価で資源量も少なく破損した場合にアルミニウムやケイ素の様に表面に被膜を作る効果が無い、資源量が潤沢なアルミニウムやケイ素が今後の耐食性材料の候補となった。


クロムを17%含む材料に5%のケイ素を含ませた場合、温度550℃鉛ビスマス中でも腐食がほぼなくなる[35]

鋼材以外に炭化ケイ素(SiC)等のセラミックも良好な耐食性を示している[36]。また、炭化ケイ素は素材自体が丈夫である為、鉛の流動による配管の損傷を防ぐ効果も期待される。

利点[編集]

  • ガス直接冷却炉との比較
    • コンパクトなので、船舶や海中浮体に搭載可能(立地難解消・万一爆発しても水圧でセシウムを閉込められる・地震/津波/軍事攻撃に強くなる、等の利点が発生する)。
    • 3次元的大型化が容易で、数百万kwも可能
    • 黒鉛火災の心配が低い、水をかけて冷却できる
    • 加速器駆動未臨界炉と結合して核のゴミ焼却炉にするのが容易
    • 原子炉容器外側に水スプレーした場合の放熱効率が良い

欠点[編集]

  • ガス直接冷却炉よりコンパクトで原潜に搭載可能な代わり、1 m3 あたり発熱量が高く、崩壊熱で炉心溶融が起こりうる
  • 液体金属に水を掛けても爆発しないが、水に液体金属が落下すると水蒸気爆発する。透水コンクリートを敷かねばならない
  • 同理由により、 MRX と異なり水漬け格納容器で中性子を遮蔽できない。含水発泡コンクリートなどで遮蔽せねば、廃炉コストが掛かる
  • 鉛ビスマスの金属腐食性対策が必要。
  • 酸化スラグ沈殿を防ぐため空気と鉛の接触を遮断して、鉛を還元ガスで酸素管理せねばならない。
  • ポロニウム除去装置設置か、鉛100%で運転して、頻繁に交換・ビスマス除去が必要(但し、ビスマスは高温超伝導向けに高値で売れる)
  • 液体金属のため炉内を見る事ができない

鉛冷却高速炉[編集]

鉛ビスマス炉ではビスマスがポロニウムに変化する欠点がある為、100%鉛を冷却材を使用するタイプの原子炉がロシアの高速増殖炉で採用されている。

ロシアで鉛冷却高速炉が建設中[編集]

ロシアでは鉛冷却高速炉(BREST300)が建設中で2020年頃の完成を予定している[37]

ウェスティングハウスが採用を検討[編集]

米国のウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーが鉛冷却高速炉(LFR)を米エネルギー省との共同開発を提案中[38]

米国は鉛ビスマス炉研究実績が存在する。

1950~1960年代の米国オークリッジ国立研究所では鉛ビスマス中にジルコニウムを添加する事で窒化ジルコニウム被膜を生成させ鋼材の腐食を防いでいた[39]

中国も鉛冷却高速炉を開発[編集]

自主開発した新型燃料集合体および被覆材料で技術的難題を解消したと発表[40][41]。 鉛冷却炉の主な技術的課題は鉛の腐食性であるが、使用素材・方法等は示されていない。

稼働温度は摂氏600度と東工大のアルミニウム被膜を利用した鉛ビスマス炉と同程度である[42]


今後の鉛冷却高速炉建設・海外輸出を目指す方針。

液体金属冷却炉[編集]

冷却材として過去には水銀等も使用されていたが沸点が低い、水銀自体有害である為使用されなくなった。

ナトリウム・鉛・鉛ビスマス合金以外にスズを使用する案もあるが酸化被膜を作り固体になる為現在は使用されていない。沸点が2600℃以上と高温に耐えられるが、水と直接触れても問題ない鉛と比べると固まる性質が運用上の問題となる。

脚注[編集]

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  1. ^ 高温ガス炉による核熱エネルギー利用の拡大”. 原子力百科事典ATOMICA. 高度情報科学技術研究機構. 2015年9月4日閲覧。
  2. ^ 高温ガス炉を用いた核熱利用”. 原子力百科事典ATOMICA. 高度情報科学技術研究機構. 2015年9月4日閲覧。
  3. ^ McCullough, C. Rodgers; Staff, Power Pile Division (1947年9月15日). “Summary Report on Design and Development of High Temperature Gas-Cooled Power Pile”. Oak Ridge, TN, USA: Clinton Laboratories (now Oak Ridge National Laboratory). 2009年11月23日閲覧。
  4. ^ HTGR Knowledge Base”. IAEA. 2012年4月6日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2015年8月25日閲覧。
  5. ^ Current status and technical description of Chinese 2 x 250 MWth HTR-PM demonstration plant
  6. ^ HTGR - High Temperature Gas-cooled Reactor _ Nuclear Pictures - NukeWorker.com
  7. ^ カザフスタン共和国核物理研究所と共同で将来高温ガス炉用の高機能黒鉛材料の開発を開始”. HTTR 高温工学試験研究炉. 2016年5月3日閲覧。
  8. ^ 【研究開発の背景】”. HTTR 高温工学試験研究炉. 2016年5月3日閲覧。
  9. ^ D. Olander J. Nucl. Mater. 389 (2009) 1-22.
  10. ^ Alberto Talamo (July 2010). “A novel concept of QUADRISO particles. Part II: Utilization for excess reactivity control”. Nuclear Engineering and Design 240 (7): 1919-1927. doi:10.1016/j.nucengdes.2010.03.025. http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0029549310002037. 
  11. ^ High temperature gas cool reactor technology development (PDF)”. IAEA. pp. 61 (1996年11月15日). 2009年5月8日閲覧。
  12. ^ Thermal performance and flow instabilities in a multi-channel, helium-cooled, porous metal divertor module”. Inist (2000年). 2009年5月8日閲覧。
  13. ^ 安全性と低コスト両立した次世代高速増殖炉用発電技術にめど”. 東京工業大学 (2010年2月19日). 2016年5月8日閲覧。
  14. ^ 直接サイクル高速炉”. patentjp.com (2001年11月30日). 2016年5月14日閲覧。
  15. ^ 原子炉プラント”. tokkyoj.com (200-2-26). 2016年5月14日閲覧。
  16. ^ 石炭ガスを利用した超臨界CO2サイクル”. 東芝 (2013年8月7日). 2016年5月8日閲覧。
  17. ^ 米国・テキサス州に建設する超臨界CO2サイクル火力発電システムの パイロットプラント向けタービン等の供給について”. 東芝 (2014年10月17日). 2016年5月8日閲覧。
  18. ^ 7-7 超高温ガス炉燃料のさらなる高性能化に向けて”. 未来を拓く原子力. 日本原子力研究開発機構 (2008年). 2015年5月27日閲覧。
  19. ^ 「超高温ガス炉実用化へ前進、燃料粒子用被覆材の製造成功”. 週刊科学新聞. 2015年5月27日閲覧。
  20. ^ 幅広い用途”. HTTR 高温工学試験研究炉. 2015年5月27日閲覧。
  21. ^ 工業材料で製作した熱化学法ISプロセス水素製造試験装置による水素製造に成功”. 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構. 2016年3月21日閲覧。
  22. ^ 中国、炉心融解が起こらない超高温原子炉の商業炉がほぼ完成・運転開始は来年末”. Business Newsline. 2016年2月12日閲覧。
  23. ^ 中国商用60万kW高温ガス炉(次世代の原子力炉)、2017年に着工”. 電機事業連合会. 2015年7月8日閲覧。
  24. ^ サウジアラビア:高温ガス炉建設に関する協力で了解覚書を中国と調印”. 一般社団法人 日本原子力産業協会. 2016年1月21日閲覧。
  25. ^ 中国:インドネシアでの高温ガス炉開発に向け協力協定に調印”. 一般社団法人 日本原子力産業協会. 2016年8月5日閲覧。
  26. ^ 英社と中国企業が高温ガス炉開発で協力覚書”. 一般社団法人 日本原子力産業協会. 2016-04-151閲覧。
  27. ^ メイ首相、英原発への中国参加に安保上の懸念 オランド大統領に再検討伝える”. 産経新聞. 2016年8月8日閲覧。
  28. ^ 米国の2社が小型HTGRの開発・商業化で協力”. 一般社団法人 日本原子力産業協会. 2016年8月24日閲覧。
  29. ^ D. T. Ingersoll, C. W. Forsberg, P. E. MacDonald, ORNL Technical Document, Oak Ridge Tennessee, ORNL/TM-2006/140, 2007, pp. 46
  30. ^ K.L. Murty, I. Charit, J. Nucl. Mater. 383 (2008) 189-195.
  31. ^ 2.液体ブランケット研究の現状”. 核融合科学研究所,大阪大学レーザーエネルギー学研究センター. 2016年5月5日閲覧。
  32. ^ リチウム含有冷却材を使ってプラズマから熱を取り出す  -核融合発電システムを模擬した冷却材循環ループの開発-”. 核融合科学研究所. 2016年5月14日閲覧。
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  36. ^ 5.1 革新型原子炉 5.1.3 鉛合金冷却炉”. 東京工業大学. 2016年5月4日閲覧。
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参考[編集]

外部リンク[編集]

関連項目[編集]