超音速機

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超音速機(ちょうおんそくき)とは、自らの推進力によって超音速で飛行が可能な航空機のことである。2018年現在該当するのは可変翼を含む固定翼ジェット機、またはロケット機のみである。

レシプロ機やグライダーのような滑空機であっても降下によって音速を超えることは可能であるが、ここでは「外部からの力に依存せずに超音速可能な航空機」について述べる。

最高速度[編集]

ジェットエンジンターボジェットエンジン・低バイパス比ターボファンエンジン)は、その稼働原理上高速になるほど推進効率が向上し、音速を突破した後は空気抵抗が減少する一方であることから、最高速度がマッハ1級程度の超音速機は少ない。1947年10月に実験機X-1によってマッハ1が突破された後、1953年11月にはD-558-2によってマッハ2級に達した。一方で、マッハ3を超えると大気断熱圧縮によって加速度的に機体表面温度が上昇する(熱の壁)ため、最高速度がマッハ3以上の超音速機も極僅かである。

現在ほとんどの超音速機の最高速度はマッハ2級である。

用途別[編集]

軍用機[編集]

戦闘機[編集]

現在、戦闘機のほとんどは超音速飛行が可能である。ただし、アフターバーナーを使って一時的に超音速を出せるに過ぎないものが多い(アフターバーナーは燃費が悪いため常時使うことができない)。しかし超音速飛行している目標を追尾するために求められる能力なので実用上問題なく、また、対空ミサイルの発達により攻撃回避手段としての超音速飛行は無意味化している。その事が意識されたのは第4世代ジェット戦闘機以降であり、第2世代ジェット戦闘機から第3世代ジェット戦闘機の頃には超音速飛行能力は戦闘機にとって必須の能力と考えられていた。

前述の通り、1950年代に最初に実用化した超音速戦闘機にマッハ1級の例が見られるものの極めて少数であり、大半の戦闘機はマッハ2級である。またマッハ3級戦闘機の開発も試みられたものの、開発費用の高騰や高速性能以外の性能の低さ、運用コストなどの問題が頻発し、実用化に至っていないものがほとんどである。唯一の実用例としてMiG-25が挙げられるが、実際はマッハ3を超える飛行は機体の運用限界を超えたものであり、本来の最高速度はマッハ2.83とされる。また速度性能に特化しているため、戦闘機としては機動性が低い。

第4世代ジェット戦闘機の時代に入ってからは、高速度性能がそれほど重要視されておらず、再びマッハ2級程度に留めた機体が増えている。とはいえマッハ1.5以上での飛行能力は必須であるとされており、作戦機であればマッハ1.6~2.0程度の最高速度を発揮できることが多い。

第5世代ジェット戦闘機の時代に入りつつある現在、アフターバーナー無しで超音速飛行する能力(スーパークルーズ)に注目が集まりつつあり、F-22のようにエンジンのバイパス比を下げることで達成した機もある。

偵察機[編集]

偵察機はかつて、敵戦闘機を振り切る能力が要求されたため戦闘機よりも一段と高い高高度・高速飛行性能が要求される傾向にあった。

しかしながら偵察機として専用の機体が開発されることは少なく、大抵は既存の戦闘機からの改修や戦闘機と同じ機体に偵察装備を装備したものがほとんどであったため、事情は戦闘機とほぼ同じである。戦闘機の中でも特に高速を誇る機体がこの任務に充てられており、上述のMiG-25も偵察機として使用されたことがある。史上最速の航空機として知られる戦略偵察機SR-71も専用設計ではなく、戦闘機型の試作機YF-12と多くの設計を共有している。

現在では、偵察衛星無人航空機の発達により有人偵察の必要性自体が減っており、低速で長時間飛行する能力が重要視されるようになっている。

爆撃機[編集]

超音速機が実用化された当初は、敵超音速戦闘機の要撃を振り切るために、爆撃機であっても超音速飛行能力が重要視された事があった。しかし攻撃機・爆撃機は、大量の爆弾ミサイルを搭載する必要があるため、高速性能の発揮には不利な要素が多い。

例えば最初の実用超音速爆撃機であるアメリカのB-58ハスラーは、高速性能の発揮のために余裕の無い設計であったため、発達著しい空対地ミサイルの搭載能力が無く早々に退役する事となった。ソ連のTu-22Tu-22Mは機体内部への爆弾搭載能力が低く、機外への爆装時には音速を突破できないなど中途半端な設計であった。

またアメリカのXB-70バルキリー、ソ連のT-4など、試作や実験の段階に留まり実用化されなかった機体も多い。

実用化された本格的な超音速爆撃機としては、アメリカのB-1ランサーとソ連のTu-160が制式化されている。しかし、高価なことと(B-1Bにおいては)第二次戦略兵器削減条約によって、配備は限られたものとなっている。

また現在は、戦闘機の性能向上が著しく、戦闘爆撃機マルチロール機として従来の爆撃機の任務をほぼ代替できるような状況にあり、そのような状況下において大型爆撃機を開発する動機そのものが失われている。

最新鋭の爆撃機B-2は、速度は亜音速に留まっておりステルス性を重視した形状となっている。これが今後の爆撃機の一般的な趨勢になるかは未知数である。

輸送機・旅客機[編集]

ロケット[編集]

広義には、宇宙ロケット弾道ミサイルも、大気圏を飛んでいる間は超音速機といえる。スペースシャトルX-43に記録更新されるまで、世界最速の航空機としてギネスブックに登録されていた。

関連項目[編集]