超過死亡率

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
スペインでは最高気温が46度を超えるなど記録的な猛暑となった2018年スペイン熱波(Ola de calor)と、2020年のCOVID-19のパンデミックの期間において、有意な超過死亡が発生した(期待値は黒、信頼区間は灰色)。2018-2019年冬のインフルエンザ(Gripe)流行期における死者数は信頼区間に収まり、例年通りであった。なお、最新データ(右端)で超過死亡率が下がっているのは死者が減っているからでは無く、報告が遅れているためである。

超過死亡率(英:excess mortality rate)とは、特定の母集団の死亡率(死亡者の数)が一時的に増加し、本来想定される死亡率(期待値)の取りうる値(信頼区間)を超過した割合のことである。「死亡率の変動」(英:Mortality displacement)とも言う。

これは通常、熱波寒波伝染病パンデミック(特にインフルエンザのパンデミック)、飢饉戦争などによって引き起こされる。

概要[編集]

例えば、ある地域を災害が襲ったとする。災害が起こっている期間には、死因はともかくとして多くの場合にその地域の死亡者の数が増加し、特に高齢者や病人が多く死亡する。超過死亡率を見ることで、災害を原因とする(災害さえなければ死ななかっただろう)死亡者の数を見積もることができる。

一方で、超過死亡率が増加した期間を乗り越えた後の数週間には、全体的な死亡率の減少も見られる。このような死亡率の短期的な前方シフトは「弱者刈り取り効果」(harvesting effect) と呼ばれる[1][2]。なお、この訳語は東北大学加齢医学研究所の研究者らが提唱しているもので、東日本大震災で高齢者などの弱者が特に多く犠牲になったことを踏まえている[1]。まるで超過死亡を補正するかのように死亡率が減少するのは、災害が特に影響を与えたのが、既に健康状態が悪化しているために「いずれにせよ近いうちに死ぬはずだった」人々であったことを示唆している[3]。この[3]のMMフイネンらの論文「オランダの人口の死亡率に対する(1979~1997年の)熱波と寒冷の影響。」には、『いずれにせよ近いうちに死ぬはずだった人々であったこと示唆する』文はない。書き込まれた方の私見を代理話法したものと見られる。

日本では、超過死亡を元にしてインフルエンザの流行規模の指標を算出するため、国立感染症研究所・感染症情報センターが1998/99シーズンより「感染研モデル」を公表している[4]。もしインフルエンザが流行しなかった場合に想定される死亡者の数をベースライン(期待値)として、「予測死亡数の閾値(95%信頼区間の上限値)」と「実際に報告された死亡数」の差が「超過死亡」として算出され、インフルエンザを原因とする(ワクチンの有効率が100%の場合、予防接種さえしていれば死ななかっただろう[5])死亡者の数を見積もることができる。なお「感染研モデル」においてはインフルエンザの流行の把握のみを目的としているため、「過去数年の死亡者から想定される今年の死亡者の数」ではなく「インフルエンザが流行しなかった場合に想定される今年の死亡者の数」をベースラインとしている点には注意。

欧州では、季節性インフルエンザ、パンデミック、その他の公衆衛生上の脅威に関連する超過死亡の検出と測定を目的として、ヨーロッパの24か国の死亡率データがEuroMOMO(欧州死亡率モニター)プラットフォームに統合されている。EuroMOMOは、デンマークのコペンハーゲンに設置された感染症疫学予防部 (the Department of Infectious Disease Epidemiology and Prevention) が主催および管理している。

コペンハーゲンにあるスタテンセラム協会の調査センターでは、週刊の状況レポートと定期的な科学記事を発行しており、米国に対しても超過死亡率が高い期間について論説を行っている[6]

参照[編集]

  1. ^ a b 荒井啓行, 4.災害に強い内科診療の提言 3)高齢者疾患への対応と対策」『日本内科学会雑誌』 2014年 103巻 3号 p.598-604, doi:10.2169/naika.103.598
  2. ^ 冲永壯治「最前線拠点病院での高齢者医療 : 物資, 人員, 搬送基準, 診断・治療における問題点」『日本老年医学会雑誌』第49巻第2号、日本老年医学会、2012年3月、 153-158頁、 ISSN 03009173NAID 10031130903
  3. ^ The Impact of Heat Waves and Cold Spells on Mortality Rates in the Dutch Population Environmental Health Perspectives Volume 109, Number 5, May 2001
  4. ^ インフルエンザ・肺炎死亡における超過死亡について 国立感染症研究所感染症情報センター
  5. ^ http://idsc.nih.go.jp/iasr/24/285/dj2852.html
  6. ^ Dushoff, Jonathan; Plotkin, Joshua B.; Viboud, Cecile; Earn, David J. D.; Simonsen, Lone (2006-01-15). “Mortality due to Influenza in the United States-An Annualized Regression Approach Using Multiple-Cause Mortality Data” (英語). American Journal of Epidemiology 163 (2): 181-187. doi:10.1093/aje/kwj024. ISSN 0002-9262. https://academic.oup.com/aje/article/163/2/181/95820. 

外部リンク[編集]