赤い竜

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

赤い竜(あかいりゅう、英名:Great red dragon that old serpent, called the Devil, and Satan)は、『ヨハネの黙示録』十二章及び十三章に記されるである。英名にある通りエデンの園の蛇の化身であるのと同時に、サタンが竜となった姿であり、サタンの化身とも言える姿である。 以下のような姿で描写される。

七つの頭と十本の角を持つ竜が十本の角と七つの頭を持つ獣に権威を与えるシーン。中世期のタペストリー

また、別のしるしが天に現れた。見よ、火のような赤い大きな竜である。七つの頭と十本の角があり、その頭には七つの冠をかぶっていた。(新改訳12:3)

わたしはまた見た、海から一匹の獣が海の中から上ってきた。これには十本の角と七つの頭があった。その角には十本の王冠があり、頭には神を冒涜するさまざまな名があった。わたしが見たこの獣は、豹に似ており、足は熊の足のようで、口は獅子の口のようであった。竜はこの獣に自分の力と大きな権威とを与えた(新改訳13:1-2)

(すべて新改訳から一部引用)

赤い竜と獣が象徴するもの[編集]

「赤い竜」と「十本の角と七つの頭があった獣」(The Beast)とはキリスト教を迫害するローマとローマ軍の象徴である。「十本の角と七つの頭があった獣」とは、七つの丘や七人のローマ皇帝を指す。七つの頭の内、「既に倒れた五人」が初代から五代までのアウグストゥスティベリウスカリグラクラウディウスネロ。「今の一人」がウェスパシアヌス。「しばらく留まる」のが、僅か二年の治世で病死したティトゥス。「七人の一人である八番目」は、ティトゥスの後に皇位に就き、ネロの再来であると噂されたドミティアヌス。「頭の一つは傷付けられるが、すぐに治る」というのも、ネロがドミティアヌスとして復活する事を指していると考えられる。十本の角とは、七つの頭の皇帝に、六十九年に乱立したガルバオトーウィテリウスを加えた十人の事を指す、とされることが多い。 七つの丘とした場合はカピトリウム、パラティウム、アウェンティヌス、エスクイリヌス、カエリウス、クイリナリス、ウィミナリスという丘の名であり、ローマの象徴である。 このように、黙示文学とは実際に起きたことを指すのではなくあくまで象徴としてカモフラージュして取り上げる文学のことである。当時キリスト教は迫害され、地下墳墓で教会活動を行っていた。表立ってローマ皇帝への批判などできなかったのである。もちろんサタンとはローマやローマ皇帝そのものを指す。黙示録は読むべき人が読めば理解できるように記してその代表例がゲマトリアで記された獣の数字「666」である。これは皇帝ネロを指していると一般的には言われている。したがってすべてがローマ皇帝の迫害から逃れるために、比喩や象徴を用いた一種の暗号で書かれている。

「七つの頭と十本の角を持つ赤い竜」、「十本の角と七つの頭があった獣」は紛らわしいが、実は同じ頭数で同じ本数である。象徴する意味も同じである。ただし、赤い竜とはエデンの園禁断の果実を食べさせるようにそそのかしたサタンであるとして、邪悪そのものといった方が正しいと考えられる。その邪悪そのものから権威と支配を「鉄の杖」でもって獣、すなわちローマ帝国に与えられるのである。鉄の杖とは世界を支配する象徴でもあり預言者の象徴でもある。ゆえに、偽預言者という記述がこれ以降登場することになる。偽預言者とは獣、すなわちローマ皇帝を指しているのである。

聖母マリアとキリストの象徴と竜との戦い[編集]

また、巨大なしるしが天に現れた。ひとりの女が太陽を着て、月を足の下に踏み、頭には12の冠をかぶっていた。この女は、みごもっていたが、産みの苦しみと痛みのために叫び声をあげた。また、しるしが天に現れた。見よ、火のような赤い大きな竜である。七つの頭と十本の角があり、その頭には七つの冠をかぶっていた。その尾は天の星を三分の一をひきよせるとそれらを地上に投げた。また、竜は子を産もうとしている女の前に立っていた。彼女が子を産んだとき、その子を食いつくすためであった。女は子を産んだ。この子は鉄の杖を持って、すべての国々の民を牧するはずである。その子は神のみもと、その御座に引き上げられた(新改訳:12:1-5)

この女とは聖母を表しており、子はキリストを現している。竜はローマ帝国の象徴であり、滅ぼそうとしているのである。その御座に引き上げられたとはキリストの受難とその後の復活を説明している。鉄の杖を持ってという部分は偽預言者と本物の預言者であるイエスを対比させる描写でもある。

ミカエルとの戦い[編集]

さて天に戦いが起こって、ミカエルと彼の使いたちは竜と戦った。それで竜とその使いたちは応戦したが勝つことが出来ず天にはもはや彼らの居る場所がなくなった。こうしてこの巨大な竜、すなわち悪魔やサタンなどと呼ばれて、全世界を惑わす、あの古い蛇は投げ落とされた。

竜、すなわちサタン側はミカエルとその使いたちが挑んだ戦いに敗北し、その使いたちとともに地上に投げ落とされるのである。古き悪しき蛇とはエデンの園でそそのかした蛇の事である。この記述が西洋世界におけるドラゴンを邪悪の化身にしてしまいがちなる原因となった。だからといって、すべてのドラゴンがサタンや悪魔というわけではない。あくまで黙示録の竜はサタンが化けていたというにすぎない。この竜(サタン)=ローマが失楽園の蛇と結び付けられるのである。ローマは敗北することとなっている。なお、預言はすでに成就されている。

赤い竜と獣の末路[編集]

またわたしは、獣と地上の王たちとその軍勢が集まり、馬に乗った方とその軍勢と戦いを交えるのを見た。すると獣はとらえられた。また、獣の前でしるしを行い、それによって獣の刻印を受けた人々と獣の像を拝む人々とを惑わしたあの偽預言者も、彼といっせいに捕らえられた。そして、このふたりは、硫黄の燃えている火の池に、生きたまま投げ込まれた。(新改訳19:19-20)

また、私は、御使いたちが底知れぬ所のかぎと大きな鎖とを手に持って天から下って来るのを見た。彼は悪魔でありサタンである竜、あの古い蛇を捕らえ、これを千年の間縛って、底知れぬところに投げ込んでそこを閉じ、その上に封印して、千年の終るまでは、それが諸国の民を惑わすことのないようにした。サタンはその後でしばらくの間、解放されなければならない。また私は多くの座を見た。彼らはその上にすわった。そしてさばきを行なう権威が彼らに与えられた。また私はイエスのあかしと神のことばとのゆえに首をはねられた人たちのたましいと、獣やその像を拝まず、その額や手に獣の刻印をあされなかった人たちを見た。彼らは生き返って、キリストとともに、千年の間王となった。(新改訳20:1-4)

偽の救世主である第一の獣、第二の獣を崇拝した人間天使によって滅ぼされる。しかし、赤い竜だけは神の計画によって千年底なしの深淵でにつながれ、復活したキリストと殉教者によって統治される千年王国が誕生する。これが有名な「ミレニアム」(千年王国思想)である。ここで、皇帝崇拝によって殺害されたり迫害された人が救われることとなっている。 現代の神学では西暦二千年をとっくに過ぎている現代においてあまり大きく扱われる思想ではない。これを無千年王国説という。正教会、カトリックをはじめ多くの宗派がこの説を取り入れている。ちなみに千年後に深淵から開放されたサタンである赤い竜はゴグマゴグを招集し千年王国の都を包囲するが天から降ってきた火によって滅ぼされ火と硫黄の池に投げ込まれ、今度は永遠に苦しむこととなる。

引用文献[編集]

「ドラゴン」新紀元社

関連項目[編集]