貧困線

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一日1.25ドル以下で生活する人口の割合(国連が2000-2007年で集計)

貧困線(ひんこんせん、: poverty linepoverty threshold)は、統計上、生活に必要な物を購入できる最低限の収入を表す指標
それ以下の収入では、一家の生活が支えられないことを意味する。貧困線上にある世帯や個人は、娯楽嗜好品に振り分けられる収入が存在しない。

概要[編集]

貧困線[1]は、社会学経済学の指標であり、貧困状態にある住民を減らすため、必要な社会政策を決定するのに有効である。貧困線以下にある住民が多い社会は、最低限の生活を送る必要があるため、経済発展が阻害される。このため、近代的な国家の目標は、社会の全ての構成員を貧困線を上回る収入を生活保障雇用保険の失業等給付を通して、保障することにある。

貧困線を計算する基本の手法は、1人の成人が1年間に最低限必要な物の購入費用を積み立てていく方法がとられる。「住環境に費やす費用が収入のもっとも大きな割合を占めることが多い」ことから、歴史的に経済学者は、物件価格や賃貸費用の変動に注目してきた。個人の年齢や家族構成により貧困線は上下する。多くの先進国では、娯楽や嗜好品なども貧困線を算出する際に加算している。これは「単に衣食住が満たされる状況は、貧困状態未満である」という認識を持つため。

ただ、貧困線は、厳密な指標ではなく、国や機関によって異なる。そのため、貧困線を若干上回る収入の層とやや下回る収入の層の間に、実際には大きな生活水準の差はない場合もある。世界貧困線[2]は、1ドル/日[3]。2008年、世界銀行は、貧困線を「2011年の購買力平価(PPP)が1.9$以下の層」と設定[4]

絶対的貧困[編集]

絶対的貧困[5](ぜったいてきひんこん)とは、食料・衣服・衛生・住居について最低限の要求基準により定義される貧困レベルである[6]1970年代に「人間の基本的必要の充足」を開発の目的であるとしたロバート・マクナマラ総裁時代の世界銀行で用いられはじめた概念で、低所得、栄養不良、不健康、教育の欠如など人間らしい生活から程遠い状態を指す。この指標は絶対的なものであるため、各々の国家・文化・科学技術水準などに関係なく、同じレベルでなければならないとされている。こういった絶対的指標は、各個人の購買力だけに着目すべきであり、所得分布などの変化からは独立していなければならない。

絶対的貧困を示す具体的な指標は国や機関によって多様であるが、2000年代初頭には、1人あたり年間所得370ドル以下とする世界銀行の定義や、40歳未満死亡率と医療サービスや安全な水へのアクセス率、5歳未満の低体重児比率、成人非識字率などを組み合わせた指標で貧困を測定する国際連合開発計画の定義などが代表的なものとされている。国連ミレニアム宣言により制定された『ミレニアム開発目標』ではこうした世界の絶対的貧困率を2015年までに半減させることが明記された。

国際連合開発計画の委託を受けた2000年度『人間開発報告書』によると、1日1ドル以下(365日365ドル・366日366ドル)で生活している絶対的貧困層は、1995年の10億人から12億人に増加しており、世界人口の約半分にあたる30億人は1日2ドル未満(365日730ドル・366日732ドル未満)で暮らしている。

世界銀行は、2015年10月に国際貧困ラインを2011年の購買力平価(PPP)に基づき1日1.90ドルと設定、これは年換算で365日693.5ドル・366日695.4ドル(2015年10月以前は2008年2005年の購買力平価に基づき設定された1日1.25ドルと設定されていた、これは年換算で365日456.25ドル・366日457.5ドル)。2030年までに極度の貧困を世界全体で3%まで減らす。全ての途上国で所得の下位40%の人々の所得拡大を促進する。という2つの目標を掲げている。国際貧困ライン(1日1.90ドル未満)を用いた場合、貧困層は2012年に約896,000,000人(世界人口の12.7%)、2015年は約720,000,000万人(世界人口の9.6%)に減少すると予測している。[7][8]

総務省の全国消費実態調査では2016年10月31日発表2014年調査で等価弾性値0.5(平方根)の年間可処分所得については世帯総数115,196,894件、絶対的貧困世帯を対象として1984年の年間可処分所得の中位数(実質値)である2,473,326円(等価弾性値=0.5の場合)を基準値としてその50%未満の1,236,663円未満と定義する場合。世帯員分布8.451%、平均所得約868,000円、収入ギャップ70.159%、ジニ係数0.194となる。60%未満の1,483,995.6円未満と定義する場合、世帯員分布13.410%。40%未満の989,330.4円未満と定義する場合、世帯員分布4.704%。30%未満の741,997.8円未満と定義する場合、世帯員分布2.409%。※1984年の年間可処分所得の中位数(実質値)である1,234,379円(等価弾性値=1)を基準値としてその50%未満の617,189.5円未満と定義する場合。世帯員分布5.620%、平均所得約430,000円、収入ギャップ69.629%、ジニ係数0.206となる。60%未満の740,627.4円未満と定義する場合、世帯員分布9.386%。40%未満の493,751.6円未満と定義する場合、世帯員分布3.000%。30%未満の493,751.6円未満と定義する場合、世帯員分布1.564%[9]

このように絶対的貧困は、一定の指標を定め、その基準に沿って一律に定義される。しかしながら、こうした貧困の定義に対しては、何が必要かをめぐる社会的・文化的個別性や、ニーズを充足する手段の獲得における社会内部での階層化(たとえばピーター・タウンゼントが相対的剥奪という語で示そうとした状況)、そしてまた貧困状況をもたらす社会構造に対する批判的視点も必要ではないかとの批判も存在する。


相対的貧困[編集]

相対的貧困[10](そうたいてきひんこん)の定義は「等価可処分所得(世帯可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない世帯員」であり、この割合を示すものが相対的貧困率である。ただし、預貯金や不動産等の資産は考慮していない[11]

実収入-非消費支出=可処分所得
可処分所得÷√世帯人員=等価処分所得
※等価弾性値=0.5(平方根)。現物給付、預貯金、資産は考慮しない。

絶対的貧困率と違い数学的な指標なので主観が入りにくいとされるが、国によって「貧困」のレベルが大きく異ってしまうという可能性を持つ。この為、先進国に住む人間が相対的貧困率の意味で「貧困」であっても、途上国に住む人間よりも高い生活水準をしているという場合と先進国においては物価も途上国より高く購買力平価を用いた計算をすると途上国よりも生活水準が低い場合が存在する。 国民生活基礎調査における相対的貧困率は、一定基準(貧困線)を下回る等価可処分所得しか得ていない者の割合をいう。 世界の人口は台湾(1.5%)、マレーシア(3.8%)、アイルランド(5.5%)、オーストラリア(6.2%)、タイ、フランス(7.8%)、スイス(7.9%)という名前のトップ10の貧困ライン率を下回っています、カナダ(9.4%)、オランダ(10.5%)とサウジアラビア(12.7%)。 [12]

最新のデータであるOECDの2014年の統計によれば、イスラエルの18.6%(2014年)、アメリカ合衆国の17.5%(2014年)、トルコの17.2%(2013年)、チリの16.8%(2013年)、メキシコの16.7%(2014年)、エストニアの16.3%(2013年)、日本の16.1%(2012年)、スペインの15.9%(2013年)、ギリシャの15.1%(2013年)、韓国の14.4%(2014年)、ラトビアの14.1%(2013年)、ポルトガルの13.6%(2013年)、イタリアの13.3%(2013年)、オーストラリアの12.8%(2014年)、カナダの12.6%(2013年)、リトアニアの12.4%(2013年)、ポーランドの10.5%(2013年)、イギリスの10.1%(2013年)、ハンガリーの10.1%(2014年)、ベルギーの10.0%(2013年)、ニュージーランドの9.9%(2012年)、スロベニアの9.5%(2013年)、ドイツの9.1%(2013年)、オーストリアの9.0%(2013年)、アイルランドの8.9%(2013年)、スエーデンの8.8%(2013年)、スイスの8.6%(2013年)、スロバキアの8.4%(2013年)、オランダの8.4%(2014年)、ルクセンブルクの8.0%(2013年)、フランスの8.0%(2013年)、ノルウェーの7.8%(2013年)、フィンランドの6.8%(2014年)、チェコの6.0%(2013年)、デンマークの5.4%(2013年)アイスランドの4.6%(2013年)、OECDの調査した36か国の相対的貧困率平均は11.4%。[13]


日本[編集]

日本の貧困率について表した最新のデータであるOECD2010年の統計によれば、日本の相対的貧困率は16.0%で、この年に調査された国の中では、イスラエルの20.9%、メキシコの20.4%、トルコの19.3%、チリの18%アメリカ合衆国の17.4%に次いで6番目に相対的貧困が高い。次いでスペインの15.4%、韓国の14.9%、オーストラリアの14.4%、ギリシャの14.3%、イタリアの13%と続く[14][15][16]

これは、日本の貧困率が先進国の中でもかなり高い部類に入っていることが示されている。OECDの調査した35か国の相対的貧困率平均は11.3%。日本より貧困率が高いメキシコトルコチリはいずれもOECDには加盟しているが、先進国とはっきり言える経済力ではないため、その点を踏まえると、日本は先進国の中でイスラエル、アメリカに次いで3番目に貧困率が高い国という見方もできる。逆に、西欧諸国は大半が10%以下であり、全調査国中もっとも低いチェコの5.8%とデンマークの6%を筆頭に、北欧諸国の貧困率が低い。

厚生労働省国民生活基礎調査では、日本の相対的貧困率は2015年の時点で15.6%であり、データが存在する1985年以降、1991年1994年1997年2000年2003年2006年2009年2012年という3年ごとの調査の中で4番目に高い数値となっている[17]

2017年6月27日発表の国民生活基礎調査では、日本の2015年の等価可処分所得の中央値名目値245万円の半分名目値122万円未満の等価処分所得の世帯が、相対的貧困率の対象となる。2015年調査では1985年基準実質値の掲載は無かった。各名目値で単身者では可処分所得が約122万円未満、2人世帯では約173万円未満、3人世帯では約211万円未満、4人世帯では約244万円未満に相当する。

1年の総労働時間を法定労働時間2096時間~2080時間とすれば、可処分所得(「実収入」から「非消費支出」を差し引いた額で,いわゆる手取り収入。賃金などの就労所得、資産運用や貯蓄利子などの財産所得、親族や知人などからの仕送り等。公的年金、生活保護、失業給付金、児童扶養手当てなどその他の現金給付を算入する。)が名目値で122万円の年収に達する時給は約583円~587円以上となり最低賃金水準を下回る、2人世帯では時給約826円~832円以上、3人世帯では時給約1,007円~1,015円以上、4人世帯では時給約1,165円~1,174円以上で可処分所得名目値に達する。これに非消費支出(直接税や社会保険料、資産運用の必要経費など世帯の自由にならない支出及び借金利子など。)分を加算した金額が相対的貧困線以上の実収入(一般に言われる税込み収入。世帯員全員の現金収入を合計したもの。)となる。※現物給付(保険、医療、介護サービス等)、資産の多寡については考慮していない。

子どもの貧困率は13.9%、子供がいる現役世帯の貧困率が12.9%。貧困率は子供がいる現役世帯のうち大人が一人50.8%、大人が二人以上の貧困率が10.7%となっている。※世帯とは、住居と生計を共にしている人々の集まりをいい、大人とは18歳以上の者、子供とは17歳以下の者をいい、現役世帯とは世帯主が18歳以上65歳未満の世帯をいう[18][19][20]

総務省の全国消費実態調査では2016年10月31日発表2014年調査で等価弾性値を0.5(平方根)とした場合の年間可処分所得については世帯総数115,196,894件、相対的貧困世帯を対象として、中位数の50%未満を基準値として定義する場合。世帯員分布9.865%、平均所得約926,000円、収入ギャップ70.366%、ジニ係数0.188となる。60%未満を基準値として定義する場合、世帯員分布15.636%。40%未満を基準値として定義する場合、世帯員分布5.431%。30%未満を基準値として定義する場合、世帯員分布2.734%。※等価弾性値を1(世帯員数)とした場合の年間可処分所得については世帯総数115,196,894件、相対的貧困世帯を対象として、中位数の50%未満を基準値として定義する場合。世帯員分布10.640%、平均所得約557,000円、収入ギャップ71.658%、ジニ係数0.176となる。中位数の60%未満を基準値として定義する場合、17.231%、中位数の40%未満を基準値として定義する場合、世帯員分布5.767%。中位数の30%未満を基準値として定義する場合、世帯員分布2.534[21]。Ⅱ貧困率>1 相対的貧困率 平成26年の貧困線は等価可処分所得の中央値263万円の半分の額132万円となっており,相対的貧困率(貧困線に満たない世帯人員の割合)は9.9%となり、前回2009年調査結果の10.1%から0.2ポイント低下している(表Ⅱ-1)。注)世帯主の年齢階級別及び世帯類型別の相対的貧困率は、統計表[(全国)分析表:第84表]から計算している。Ⅱ貧困率>2 子どもの相対的貧困率 相対的貧困率と同様の貧困線132万円を用いて算出した子どもの相対的貧困率(17歳以下)は7.9%となり、前回2009年調査結果の9.9%から2.0ポイント低下している(表Ⅱ-2)[22]

山形大学戸室健作は人文学部研究年報第13号で2012年の都道府県別の貧困率、ワーキングプア率、子どもの貧困率、捕捉率を算出した[23][24]

日本は、かつての調査では北欧諸国並みの水準で「一億総中流」と言われたが、1980年代半ばから2000年にかけて貧富格差が拡大し相対的貧困が増大した[17][25]

なお、ジニ係数と相対的貧困率は定義が異なるので一概に比較は出来ないが、単身世帯を含めたすべての世帯における年間可処分所得(等価可処分所得)のジニ係数で国内格差をみると日本はアメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダの英語圏諸国より格差が小さく、フランス・ドイツとほぼ同程度の格差であった。

相対的貧困率は、1980年代半ばから上昇している。この上昇には、預貯金や不動産を所有しつつも収入は年金しかない「高齢化」や「単身世帯の増加」、そして1990年代からの「勤労者層の格差拡大」が影響を与えている。「勤労者層の格差拡大」を詳しくみると、正規労働者における格差が拡大していない一方で、正規労働者に比べ賃金が低い非正規労働者が増加、また非正規労働者間の格差が拡大しており、これが「勤労者層の格差拡大」の主要因といえる[26]

経済学者大竹文雄は、日本で相対的貧困率が高くなっている要因として、1)不況、2)技術革新、3)グローバル化、4)高齢化、5)離婚率の上昇を挙げている[27]

国民貧困線[編集]

各国家について、国民貧困線以下の人口の割合(CIA World Factbookによる)

各国家の国民貧困線は、世帯調査に基づいて人口加重したものによって作成されている。そのため国家間で定義は異なるため、その数字を国家間で比較することはできない。例えば豊かな国では貧しい国よりも、貧困の基準がより寛大になっている。

米国[編集]

2015年の米国では、65歳未満を対象とした貧困線は年収12,331ドル、4人家族で子供が2人の世帯では年収24,036ドルであった[28]。米国国政調査庁は、2016年9月に、2015年の国民貧困線は約13.5%(約4,312.3万人)であると発表した[29]

2015年の貧困率の内訳は、

  • 年齢別 18歳未満:約19.7%(1,450.9万人) 18~64歳:12.4%(2,441.4万人) 65歳以上:8.8%(420.1万人)
  • 男女別 男性:約12.2%(1,903.7万人 ) 女性:約14.8%(2,408.6万人)
  • 人種別 白人(非ヒスパニック):約9.1%(1778.6万人) ヒスパニック:約21.4%(1213.3万人) 黒人:約24.1%(1002.0万人) アジア系:約11.4%(207.8万人)
  • 学歴別(25歳以上) 高卒未満:26.3%(617.1万人) 高卒:12.9%(801.6万人) 大学中退もしくは大学学科履修中:約9.6%(555.0万人)  大卒以上:約4.5%(322.2万人)
  • 出身国 アメリカ:13.1%(3,597.3万人) 外国(帰化):11.2%(225.5万人) 外国(末帰化):約21.3%(489.5万人)
  • 両親の有無 両親がいる世帯:約5.4%(324.5万人) 片親(母)世帯:約28.2%(1563.0万人) 片親(父)世帯:約14.9%(631.1万人)

である。[29]

また、貧困線より半分以下が約6.1%(1,944.4万人)、1.25倍までの人を含めると約17.9% (5,691.2万人)、1.5倍までの人を含めると約22.5%(7,168.1万人)、2.0倍の人を含めると約31.7%(1億89.4万人)である。[29]

英国[編集]

2016年の英国の最低所得基準は、単身者は年収17,311ポンド、4人家族で子供(2~4歳)が2人の世帯では年収37,812ポンドであった。[30]

2014年度の英国の最低所得基準[2014年の場合は、単身者は17,072ポンド、4人家族で子供(2~4歳)が2人の世帯では40,537ポンド]を下回る層は30.1%(約19.1百万人)である。 貧困率の内訳は

  • 年齢別 18歳未満:45.0%(約6.0百万人) 18~64歳:29.6%(約11.3百万人) 65歳以上:14.6%(1.8百万人)
  • 世帯別 片親(子供:1~3歳)世帯:74.5%(約2.3百万人) カップル世帯(子供:1~4歳):36.3%(約3.7百万人) 両親世帯:38.6%(約6.0百万人) 単身世帯:36.1%(3.0百万人)

カップル世帯:16.1%(2.3百万人) 年金受給者(単身)世帯:24.1%(約1.0百万人) 年金受給者(カップル)世帯:9.2%(0.7百万人)

である [31]

2015年4月のイギリスでは、全労働者の20.7%(約568.9万人)が時給7.83ポンド以下の給与であった。また、内訳は、年齢別で見ると、一番高い層は16~20歳は全労働者の77%(約110.4万人)、低い層は、36~40歳の13%(約40万人)である。男女別では、男性は16%(約223.5万人)、女性は25%(約345.5万人)であった。また、フルタイムの場合は12%(約244.9万人)であり、パートタイムの場合は41%(約324万人)であった。産業別では、一番高い産業は宿泊業で65%(約95.4万人)、低い産業は公務員の2%(約2.3万人)であった。職業別では、一番高い職業は運搬・清掃・包装等従事者が57%(約190.9万人)である、低い職業は、専門的・技術的職業従事者の1%(約5.7万人)である。 [32]

また、2016年時点で、生活賃金(最低限の生活水準の維持に要する生計費から、必要な賃金水準を設定したもの)未満の労働者は、約560万人で、職種別には販売補助や小売店のレジ係(88万人)、未熟練サービス職種(74万人)、介護サービス(45万人)、未熟練の清掃職種(43万人)、託児関連サービス(30万人)などの従事者が多い。更に、生活賃金未満の労働者の比率が高い職種としては、バーのスタッフやウェイター・ウェイトレスなどが挙げられている。また若者や女性で相対的に比率が高く、18-21歳層の労働者で全体の69%、また女性では27%が生活賃金未満と推計されている。なお、時間当たりの生活賃金の金額は2016年10月末時点で、ロンドンで9.75ポンド、ロンドン以外の地域では8.45ポンドである。[33]

インド[編集]

インドの公式貧困線は、最低ニーズバスケット(minimum needs basket)方式によって定められている。この方式は、特に食料消費を中心に最低水準の生活を維持するために必要なコストをもとに算出される。都市部と農村部で別々の基準で定めており、必要なカロリーを都市部では 2,100kcal、農村部では 2,400kcalを満たすために必要な食品の組み合わせである食料バスケットを設定し、その食料バスケットに含まれる食品を購入するために必要な金額で基準を定めている。また、各州の貧困線は物価調整を行いそれぞれの州で算出される[34]

2009-2010年ではインド政府が定めた基準の場合、都市部の基準は月収859.60ルピー(約18.8ドル)、農村部の基準は月収672.8ルピー(約14.7ドル)で計算されている。州別での貧困線では、都市部の場合、最高は1147.6ルピー(ナガランド州)~最低736ルピー(オリッサ州)であり、農村部は最高1016.8ルピー(ナガランド州)~最低567.1ルピー(オリッサ州)である。[35]

インド全体では、貧困率は21.92%(約2億6978.3万人)であり、都市部は13.7%(約5312.5万人)、農村部では25.70%(約2億1665.8万人)である。州別では、一番高い州はチャッティースガル州の39.93%(約1041.1万人)、一番低い州はアンダマン・ニコバル諸島連邦直轄領の1%(約0.4万人)である。都市部の場合、一番高い州はマニプール州の32.59%(約27.8万人)、一番低い州は0%の州を除いてラクシャディープ連邦直轄領の3.44%(約0.2万人)である。農村部は、一番高い州はダードラー及びナガル・ハヴェーリー連邦直轄領の62.59%(約11.2万人)、一番低い州は0%の州を除いてアンダマン・ニコバル諸島連邦直轄領の1.57%(約0.4万人)である[35]


指定カースト・指定部族の貧困率は、農村部では指定カーストが42.26%であり、指定部族は47.37%である。また都市部の場合は、指定カーストは34.11%であり、指定部族は30.38%である[36]。また、地域別に見ると、ビハール州とチャッティースガル州の指定カーストと指定部族の貧困率は約3分の2である。更に、マニプール州、オリッサ州、ウッタル・プラデ シュ州では彼らの貧困率は5割を超えている[35]


また、インド政府が定めた貧困線には批判があり、2001年から公益訴訟として最高裁に係属している「食料への権利(the Right to Food)」訴訟で提出された計画委員会の資料(宣誓供述書:affidavit)にある国別貧困線があまりに低いとNGO等が計画委員会を批判した。この宣誓供述書で示された数字では、一日当たりの貧困線が都市部では32ルピー、農村部では25ルピーが基準として示されたが、2009-2010年の基準は一日当たり都市部で約28.7ルピー、農村部で約22.4ルピーとなっており、宣誓供述書で示された基準よりもさらに低く設定されている。そのため、貧困線の設定が低すぎるとして更にNGO等の批判を招いている[34]

なお、インド政府が定めた貧困線ではなく、1日2ドル以下を貧困線とした場合、2010年ではPPPベースで約68.7%である[34]

日本[編集]

日本には国民貧困線が公式設定されておらず、国民貧困率の試算も存在しない。実務上は生活保護基準などを元に運用されている[37]

脚注[編集]

  1. ^ 貧乏線(ビンボウセン)とは コトバンク 2015-10-11閲覧。
  2. ^ : international poverty line
  3. ^ Sachs, Jeffrey D. The End of Poverty 2005, p. 20
  4. ^ Ravallion, Martin; Chen Shaohua & Sangraula, Prem Dollar a day The World Bank Economic Review, 23, 2, 2009, pp. 163-184
  5. ^ : absolute poverty
  6. ^ Absolute poverty definition by Babylon’s free dictionary”. Dictionary.babylon.com. 2011年11月25日閲覧。
  7. ^ PovcalNet
  8. ^ 世界の貧困に関するデータ
  9. ^ 統計局ホームページ/平成26年全国消費実態調査関連情報 - 平成26年全国消費実態調査>調査の結果>統計表一覧>全国>所得分等に対する結果>総世帯>84 世帯構成・世帯主の年齢階級,有業人員別相対的及び絶対的貧困率
  10. ^ : relative poverty
  11. ^ 男女共同参画社会の形成の状況 : 第6節 「出番」と「居場所」のある社会の実現に向けて”. 内閣府男女共同参画局. 2015年10月11日閲覧。
  12. ^ 国民生活基礎調査(貧困率) よくあるご質問 (PDF)”. 厚生労働省. p. 1. 2015年10月11日閲覧。
  13. ^ Poverty rate, Total, Ratio, 2014 or latest available
  14. ^ Income Distribution and PovertyOECD公式サイト
  15. ^ 主要統計 - OECD
  16. ^ [OECD iLibrary: Statistics / OECD Factbook / 2010 / http://www.oecd-ilibrary.org/sites/factbook-2010-en/11/02/02/index.html?itemId=/content/chapter/factbook-2010-89-en]
  17. ^ a b 厚生労働省 (2017年). “『平成28年 国民生活基礎調査の概況』II 各種世帯の所得等の状況 6.貧困率の状況”. 2017年6月28日閲覧。
  18. ^ 6人に1人! どうする"子どもの貧困" - 放送内容まるわかり! - NHK 週刊 ニュース深読み
  19. ^ 子どもの貧困 学生たちみずからが現状訴える | NHKニュース
  20. ^ 子どもの貧困 学生たちみずからが現状訴える - YouTube
  21. ^ 統計局ホームページ/平成26年全国消費実態調査関連情報 - 平成26年全国消費実態調査>調査の結果>統計表一覧>全国>所得分等に対する結果>総世帯>84 世帯構成・世帯主の年齢階級,有業人員別相対的及び絶対的貧困率
  22. ^ 統計局ホームページ/平成26年全国消費実態調査 - 調査の結果>結果の概要>調査の結果>所得分布等に関する結果>結果の概要 ※集計結果をまとめたもの>「平成26年全国消費実態調査 所得分布等に関する結果 結果の概要」(PDF:349KB)(全16頁) Ⅱ 貧困率>2 子どもの相対的貧困率>
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関連項目[編集]

関連書籍[編集]

外部リンク[編集]