豚コレラ

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豚コレラによる腎臓の点状出血

豚コレラ(とんコレラ、: classical swine feverCSFhog cholera)は、フラビウイルス科ペスチウイルス属によるブタウイルス性疾病であり、症状はコレラとは異なる。ブタ及びイノシシに特有の病気でありヒトには感染することはない[1][2][3]

原因[編集]

コレラ菌やブタコレラではなく、豚コレラウイルスにより起こる。ブタ、イノシシに感染し、ヒトには感染しない[4]。ヒトが、豚コレラにかかったブタの肉を食べても感染することはない[4]

なお、ブタコレラ菌 (Salmonella enterica serovar Choleraesuis )はサルモネラの一種で、ヒト、ブタ、いずれにも感染し、豚コレラではなくサルモネラ症を起こす。

防疫[編集]

豚コレラは、症状として、発熱し食欲減退、急性結膜炎を起こす。初期に便秘になったのち下痢に移行する傾向が見られる。全身リンパ節や各臓器の充出血、点状出血などが認められる。アフリカ豚コレラ、トキソプラズマ症、急性敗血症型豚丹毒オーエスキー病豚繁殖・呼吸障害症候群との鑑別が必要である。

豚コレラウイルスがタンパク質に富む環境下においては燻製や塩蔵により不活化されることはなく、冷蔵で 約3ヶ月・冷凍で4 年超にわたり活性を保つことがある[5]。また、加熱による不活化には温度のわずかな差にも影響される故に、37℃に加熱した肉で1-2週間、50℃で3日間は生存するという結果がある。そのために加熱処理の有効温度(肉なら中心温度)は70℃で30分以上あるいは 80℃では3分以上と定義されている[6]

1833年のアメリカ合衆国のオハイオ州での発生が世界最初の報告とされている(ただし、現在アメリカは豚コレラ清浄国である)。

なお、1822年にフランスで豚コレラに類似した症例が報告されており、これが世界最初の事案という意見もある。

現在はアジアを中心に発生[1]。日本では家畜伝染病予防法において法定伝染病に指定されており、対象動物はブタ、イノシシ。日本では生ワクチンの使用が限定的に認められていたが、2006年3月にワクチン接種を完全に中止して摘発淘汰を基本とした防疫体制となり、2007年4月1日より国際獣疫事務局(OIE)の規約に基づき、日本は豚コレラ清浄国となった[7]。しかし、2018年9月以降は岐阜県岐阜市からの疑似患畜により感染国に戻っている。(後述参照)

2018年9月以降の日本における感染拡大[編集]

1992年での熊本県での国内の感染例以後は確認されていなかったが、2018年9月に岐阜県岐阜市の養豚場で発生が確認され[9]、非アフリカ豚コレラと判明している[1][3]。同月末、中国政府は直接、間接を問わず、日本からのブタ・イノシシの輸入を禁止する公告を出し、即日実施した[10]2019年9月14日時点では愛知県長野県滋賀県大阪府三重県埼玉県の養豚場に感染範囲を拡大しており、養豚場を消毒の上に検査において陽性豚については殺処分が行われている[11][12][13]。後述の通りに野生イノシシでの感染が継続して報告されており、農林水産省は2019年2月22日の報道発表資料で野生イノシシに対して餌ワクチンを設置する方針を発表した[14]。ただし、飼育豚に対してワクチンを使用すると、「清浄国」への復帰に時間がかかるため、国は慎重な姿勢を示している。また、国の調査チームは、岐阜県で全養豚場に対して飼養衛生管理基準順守の指導を進めており、愛知県でも実施する意向を示している[15][16]。同月26日には岐阜県・愛知県以外の7府県37農場対しても発生予防および蔓延策が出され、経営再建支援が制限区域外の農家にも出ている[17]。2019年3月13日を以て愛知県豊田市の出荷由来の農場は移動制限区域が解除されたが、以降も岐阜県・愛知県の範囲で疑似患畜は続いている[18]。2019年9月25日現在で感染が確認された陽性の野生イノシシは岐阜県内で961頭、愛知県内で97頭、三重県内で14頭、福井県内で16頭、長野県内で109頭、富山県内で20頭、石川県内で8頭、滋賀県1頭、埼玉県1頭に及んでいる[19]

愛知県においては陽性の野生イノシシが犬山市内で2018年12月22日付の発表で初めて確認され[20]、2019年3月5日現在では陽性の野生イノシシが犬山市・春日井市で継続して確認されている[21]。2019年2月6日には豊田市の養豚場でも陽性の患畜と認められた上に、同養豚場から出荷された子豚から上記の1府4県に拡散されたことも確認された[22]。愛知県内でも2019年2月6日以降は殺処分(防疫)および消毒を随時行っている[23]。ただ、2019年2月4日に豊田市の養豚場で早期流産増加の異常があったのにも関わらず、出荷自粛を求めなかった愛知県の初動に疑問があるという報道もされている[24]。2019年3月24日から経口ワクチンが愛知県内でも実施のために同月15日に研修会が行われた[25][26]。陽性イノシシの範囲拡大につれて、該当県に経口ワクチン設置が進んでいる。

岐阜県内では発見された2018年9月以降において野生イノシシのPCR検査および防疫消毒が継続している[27]。2019年2月15日の時点でも野生イノシシの感染が継続しているために山域での消毒強化やイベントの自粛を県内市町村に要請している[29]。また、岐阜県職員が防疫・消毒措置により時間外労働・ストレスが過剰になっていることも報道されている[30]。2019年3月7日に岐阜県庁では野生いのししに対する経口ワクチン投与・追加対策だけでなく、豚コレラ発生農家等に対する経営支援強化を実施する計画を立てた[32]。岐阜県内での経口ワクチンについては2019年3月25日からの実施となった[26]。また、2019年3月28日に郡上市で野生イノシシのPCR陽性が確認された[33]。今後のイノシシの捕獲数にも影響があり、またシカ肉に対してもジビエ関係者に疑問の声が挙がっている[34]。2019年4月16日には感染拡大が収まらない背景で、岐阜県JA家畜伝染病対策本部では飼育豚ワクチン接種要請書を岐阜県知事に提出した[35]。同日に岐阜市の食肉処理場に搬出した豚に異常があったとして、陽性反応の確認から豚63頭が処分されている[36]。養豚場経営の農家の中ではいつ終わるか分からない心境で常時消毒をしており、千頭単位の殺処分が行われ1農家だけでも損害額が1億円超は計上する。養豚再開の繋ぎとしては牛の飼育を検討しており、子豚の市場出荷に関しても岐阜県内を理由として敬遠されると風評被害傾向にあると報道されている[37]

また、農林水産省は2019年5月28日に岐阜県と隣接する長野県・滋賀県・三重県にも野生イノシシへのワクチン入りの餌投与をする検討との報道がある[38]。2019年6月14日には三重県でも陽性の野生イノシシが発見された岐阜県養老町から近い養豚農家1箇所において監視体制が敷かれていた中で[39]、同月26日に三重県いなべ市で陽性の野生イノシシが発見されている[40]。2019年7月8日には福井県内でも大野市で感染した野生イノシシが発見され、死亡イノシシの消毒やワクチン入り餌を検討している[41]。2019年7月12日には長野県内でも木曽町で陽性の野生イノシシが発見された[42]。2019年7月30日には富山県でも富山市(葛原地内(旧大沢野町))で同月27日に死亡で発見した野生イノシシが陽性と判明した[43]。2019年9月18日には滋賀県内でも多賀町で陽性の野生イノシシが発見されている[44]

埼玉県以外では国内45例目として岐阜県恵那市の農場で患畜を確認している[45]。愛知県・岐阜県における患畜確認において農研機構動物衛生研究部門での遺伝子検査の結果による遺伝子系統図(2018~2019株)は、2019年9月9日現在で「岐阜・愛知(7例目を除く)・福井・三重 ・長野・埼玉1例目 、埼玉2例目、岐阜7例目および関連農場、岐阜・愛知・福井6・長野・富山・滋賀・埼玉イノシシ、福井5・石川イノシシ、山梨(と畜場)、岐阜イノシシ60、三重イノシシ」[46]に及んでいる[47]

2019年9月13日、国内41例目として埼玉県秩父市内の養豚場で豚コレラが発生したと発表した[48][49]。感染地域の拡大を受けて、2019年9月28日にブタへの感染を防ぐワクチン接種を決めたために停止されていた「清浄国」の認定が取り消しとなる方向[50]

アフリカ豚コレラ[編集]

名称類似の感染症に、アスファウイルス科Asfavirus属アフリカ豚コレラウイルスが原因とされている「アフリカ豚コレラ: African swine feverASF)」がある。しかし、本項の豚コレラとは、まったく別の病気である[4]

脚注[編集]

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  1. ^ a b c 岐阜の養豚場で豚コレラ 国内26年ぶり、輸出停止”. 日本経済新聞社 (2018年9月9日). 2018年9月9日閲覧。
  2. ^ 板倉吉延、室田賢 (2018年9月14日). “岐阜の養豚場で感染の豚コレラ、海外からの型か 農水省”. 朝日新聞 (朝日新聞社). https://www.asahi.com/articles/ASL9G3GRKL9GOHGB006.html 2018年9月14日閲覧。 
  3. ^ a b “岐阜県における豚コレラの患畜の確認及び「農林水産省豚コレラ防疫対策本部」の開催について” (日本語) (プレスリリース), 農林水産省, (2018年9月9日), オリジナルの2019年2月6日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20190206223713/http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/180909_32.html 2019年2月7日閲覧。 
  4. ^ a b c 豚コレラについて 農林水産省(2019年3月8日)
  5. ^ Animal Disease Information/Classical Swine Fever/Technical Factsheet (PDF)” (英語). The Center for Food Security and Public Health (2015年10月). 2019年2月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月8日閲覧。
  6. ^ 疾病情報/豚コレラ/豚コレラの解説と参考資料/豚コレラ(Classical swine fever)解説/病原体”. 動物衛生研究部門. 農業・食品産業技術総合研究機構. 2019年2月8日閲覧。
  7. ^ 小倉弘明 「わが国における豚コレラの清浄化」 『畜産技術』 627号 30-33頁 社団法人 畜産技術協会 2007年
  8. ^ 岐阜県家畜伝染病防疫対策本部 第5回本部員会議 (PDF)”. 岐阜県 (2018年9月18日). 2018年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月8日閲覧。
  9. ^ ただし、岐阜市では2018年8月20日に初期症状が確認されたものの熱中症と誤認しており、同年9月7日までは岐阜県での対応が遅れた[8]
  10. ^ “日本からのブタ輸入を禁止、豚コレラ発生で”. NNA ASIA (エヌ・エヌ・エー). (2018年10月11日). オリジナルの2018年10月15日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20181015080155/https://www.nna.jp/news/show/1822319 2019年2月7日閲覧。 
  11. ^ “愛知県における豚コレラの患畜の確認及び「農林水産省豚コレラ防疫対策本部」における対応方針の決定について” (日本語) (プレスリリース), 農林水産省, (2019年2月6日), オリジナルの2019年2月6日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20190206134852/http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/190206.html 2019年2月7日閲覧。 
  12. ^ “豊田の養豚場、異常把握後に長野へ出荷 豚コレラ”. 中日新聞 (中日新聞社). (2019年2月7日). オリジナルの2019年2月6日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190206224149/http://www.chunichi.co.jp/s/article/2019020690235441.html 2019年2月7日閲覧。 
  13. ^ “長野県、豚コレラの発生確認 愛知の養豚場から子豚”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2019年2月6日). オリジナルの2019年2月6日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190206224313/https://www.nikkei.com/article/DGXMZO4095302006022019000000/ 2019年2月7日閲覧。 
  14. ^ “野生いのししにおける豚コレラ拡大防止対策の決定について” (日本語) (プレスリリース), 農林水産省, (2019年2月22日), オリジナルの2019年2月23日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20190223013023/http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/190222_12.html 2019年2月23日閲覧。 
  15. ^ “野生イノシシに餌ワクチン 豚コレラで農相是非判断”. 岐阜新聞Web (岐阜新聞社). (2019年2月20日). オリジナルの2019年2月19日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190219235503/https://www.gifu-np.co.jp/news/20190220/20190220-115474.html 2019年2月20日閲覧。 
  16. ^ “野生イノシシにワクチン 豚コレラ対策で農相「餌で早期に」”. 中日新聞 (中日新聞社). (2019年2月19日). オリジナルの2019年2月19日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190219235643/https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019021902000292.html 2019年2月20日閲覧。 
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  18. ^ 豚コレラの防疫処置対応(概要) (PDF)”. 農林水産省 (2019年4月10日). 2019年4月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月15日閲覧。
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  20. ^ 野生イノシシにおける豚コレラ検査の結果について”. 愛知県 (2018年12月22日). 2019年2月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月7日閲覧。
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  23. ^ 豚コレラについて - 愛知県
  24. ^ “豚コレラ拡大 愛知県の初動は正しかったのか”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2019年2月21日). オリジナルの2019年2月22日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190222011909/https://www.asahi.com/articles/ASM2G56DNM2GOIPE01C.html 2019年2月22日閲覧。 
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  28. ^ 豚コレラ拡散防止のための追加対策について”. 畜産課. 岐阜県 (2019年2月15日). 2019年2月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月19日閲覧。
  29. ^ 豚コレラ拡散防止のための追加対策について (PDF)”. 岐阜県 (2019年2月15日). 2019年2月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月19日閲覧。[28]
  30. ^ “県職員、過労死ライン延べ132人 豚コレラ防疫措置負担に”. 岐阜新聞Web (岐阜新聞社). (2019年1月11日). オリジナルの2019年2月22日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190222023327/https://www.gifu-np.co.jp/news/20190111/20190111-105010.html 2019年2月22日閲覧。 
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  46. ^ 塩基配列変異は「*岐阜7例目、岐阜イノシシNo.60および福井イノシ シNo.5にはそれぞれ異なる位置に1塩基の変異有。 埼玉2例目には2塩基の変異有(うち1塩基は岐阜7例 目と同位置、もう1塩基は上記とは異なる位置)。石 川イノシシは福井イノシシNo.5と同位置に1塩基の 変異有。他は同一である。 」と明記。
  47. ^ 豚コレラウイルスの遺伝子系統樹(5’UTR領域:150bp) (PDF)”. 岐阜県. 農研機構 (2019年9月25日). 2019年10月10日閲覧。
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  49. ^ “埼玉県における豚コレラの疑似患畜の確認(国内41例目)について” (日本語) (プレスリリース), 農林水産省, (2019年9月13日), オリジナルの2019年9月19日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20190919045815/http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/190913_7.html 2019年9月19日閲覧。 
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関連項目[編集]

外部リンク[編集]