複雑な動きをする台風

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

複雑な動きをする台風(ふくざつなうごきをするたいふう)は、複雑な動きをし、時に進路予報が難しいことのある台風である[1]。かつては迷走台風(めいそうたいふう)と呼ばれていた[注 1]

概要[編集]

通常、台風は小笠原諸島南西諸島を除いて日本近辺では北東に進む。しかし、夏は太平洋高気圧に覆われて偏西風も弱いため、台風の動きが遅く、時には大きく南下したりして、北部九州を1周するなど複雑な動きをすることもある。また、2つ以上の台風が近くに存在する場合、藤原の効果によって太平洋を南下したり、同じ場所に停滞するなどの複雑な進路をとることがある。このような台風は進路予想が困難となる。予報に反した進路を取りやすく、日本列島を奇襲する形で接近・上陸したケースもあるため台風情報をこまめに確認することが重要である。

過去の「複雑な動きをする台風」例[編集]

沖縄台風(1924年8月)
日本のはるか南方洋上を琉球列島に向かって西進し、沖縄本島を通過した後、進路を東寄りに急転し、再び沖縄本島を襲って北上し、東シナ海に入った。「沖縄台風」の名は非公式に付いたもの。
昭和25年台風第9号
当時の日本はアメリカ軍の占領下にあって台風にもアメリカ女性名が付けられ、この台風はヘリーン(Helene)と呼ばれた。台湾の東で発生して北東に進み、九州に接近したが、台風10号との相互作用もあって複雑な動きをした。すなわち、九州の南と西の海上でループを描き、更に東シナ海をジグザグに蛇行しながら南下したものである。
昭和25年台風第9号の進路
昭和35年台風第14号
日本の南を放物線を描いて進み、関東の東海上を東進したが、急に西に転向してもと来た経路を引き返し、関東地方に向かった後、再び進路を転じて三陸沖を北上した。
昭和35年台風第14号の進路
昭和39年台風第14号
本州のはるか南東海上で発生、小型の台風として日本の南沖を西から西南西に進み、台風16号との相互作用によって沖縄南東海上で大きく円を描いて進みながら、台風16号を吸収して巨大な台風に成長した。その後ゆっくり北上して奄美大島付近で小さなループを描き、鹿児島県に上陸した。当時、関東地方では、太平洋高気圧に覆われて記録的な水不足となっていたが、この台風による雨で一息ついた。また、台風14号と16号が沖縄南東で互いの重心を回りあいながら運動した状況は、「藤原の効果」を実証した例として知られる。
昭和39年台風第14号の進路
昭和49年台風第14号
台風の勢力で西寄りに進んで中国華中に上陸。衰弱して「弱い熱帯低気圧(当時の用語)」となってから東進して海上へと進み、再発達して台風となり沖縄経由で東海地方に上陸する進路を取った。
昭和49年台風第14号の進路
昭和51年台風第9号
九州付近で速度が落ち、長崎県近海から天草諸島付近を3日間に渡って複雑な動きをした。当初は熊本県宇土半島に上陸したと気象庁から発表されたが事後解析の結果、上陸は取り消された。
昭和51年台風第9号の進路
平成8年台風第12号[3]
8月6日に発生し、数日にわたり沖縄近海をゆっくりとした速度で複雑な進路を取り、8月14日に九州に上陸した。
平成8年台風第12号の進路
平成13年台風第16号[3]
沖縄の南で発生し、約10日間に渡って沖縄付近で複雑な動きをした。沖縄では長時間にわたって暴風雨にさらされ、島のライフラインに影響が出るなどした。
平成13年台風第16号の進路
平成15年台風第18号
10月21日マリアナ諸島近海で発生した18号は約1週間かけて太平洋高気圧の縁を一周し、まるで円を描くような進路を取った。この進路は非常に珍しい進路で前例もなかった。
平成15年台風第18号の進路
平成21年台風第17号
9月29日カロリン諸島で発生。その後、10月3日フィリピンルソン島に上陸した。いったんはバシー海峡に抜けたものの、台風18号との藤原効果で再びルソン島に上陸。その後も、退避、再上陸を経つつも、ルソン島付近に長く停滞し、10月10日南シナ海に抜けた。
平成21年台風第17号の進路
平成23年台風第15号[3]
9月13日に日本の南で発生し、その後ゆっくりと発達しながら西に移動し、沖縄本島近海で停滞。その後北上かと思われた台風は、3日間かけて反時計回りの円を描いて一周迷走し、その後一時北に移動し、急激に速度を早め発達しながら、北東に進み、9月21日午後2時過ぎに静岡県浜松市付近に上陸。徐々に勢力を弱めたが、さらに速度を上げ、東海・関東・東北地方を縦断し。9月21日22時頃に太平洋に抜けた。その後も勢力を保ちながら、北海道道東を暴風域に巻き込み、9月22日午後3時頃千島近海で温帯低気圧に変わった。
平成23年台風15号の進路
平成24年台風第14号
8月19日にフィリピンの東の海上で発生し、その後、発達しながら北上。先島諸島の南で西向きに進路を変更。そのまま西へ進むかと思われた台風は、台湾の西の海上で東に進路を変え先島諸島に再接近。先島諸島を通過し、済州島、朝鮮半島に上陸し、韓国に甚大な被害をもたらす。台風は、8月30日21時に朝鮮半島で消滅した。
平成24年台風第14号の進路
平成28年台風第10号
熱帯低気圧として北西方向に進み日本付近に接近したが、伊豆諸島付近で南西寄りの方向に進み、8月21日に四国沖で台風となった。その後南下を続けたが、8月26日に今度は北方向に進路を変え、結果的に日本の南の海上で反時計回りの円を描く進路を取った後、発達しながら8月30日に岩手県大船渡市付近に上陸。東北地方を縦断したため大被害をもたらした。翌31日、日本海で温帯低気圧に変わった。
平成28年台風第10号の進路
平成28年台風第19号
10月3日にグアム島近海で熱帯低気圧として発生し、10月6日に台風に昇格。南シナ海で停滞し複雑な動きを見せ、10月10日に熱帯低気圧に降格し南下しつつ消滅した。
平成28年台風第19号の進路

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 2006年までは「迷走台風」と呼ばれていたと記述しているサイトもあるが、2003年時点の気象庁のウェブサイト[2]で、既に「迷走台風」は「台風が迷走しているわけではないので用いない。」と解説され、言い換えとして「複雑な動きをする台風」が示されている。

出典[編集]