袞衣

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袞衣(こんえ、こんい)は、唐風の天皇衣装。礼服の一種で、天子御礼服ともいう。孝明天皇までは、即位の儀などに冕冠とともに用いられた。冕冠と合わせて袞冕(こんべん)ともいう。

解説[編集]

「袞」は首を曲げた竜のことで、中国で数種類ある冕服の中でも格式の高いものであった。冕服の制度は先秦時代に主要部分が成立したとみられる『礼記』などに見られるが、秦から前漢にかけては正確な制度が伝わらず、後漢の明帝の時代になって改めて整備された。中国では「玄衣纁裳」というように青黒い衣に赤系統のスカートをあわせたものが多いが、日本では衣・裳ともに赤い。これは隋代初期の制度に同じだが、日本で冕服が摂取された時点の王朝は唐であり、唐の「青衣纁裳」の制度にはあわない。特別な意図の有無については不明である。

袞衣は、袞服、冕服、天子御礼服とも呼ばれる。日本における袞衣の起源は不明であるが、『続日本紀』に「天平四年(732年)正月乙巳朔、大極殿に御して朝を受く。天皇始めて冕服を服す」とあることから、少なくとも奈良時代まで遡ると考えられている。ただし正倉院にかつて存在した聖武上皇と光明皇太后の礼服が白であったことから、奈良時代の天皇は冕冠に白い礼服を着たとする説もある。

孝明天皇の袞衣

大袖 赤地に、袞冕十二章のうち、日、月、七星、山、火、龍、華虫(キジ)、宗彝の8種の模様が付く。各模様は刺繍であらわされる。建武四年の光明天皇即位のとき、別の絹に刺繍して貼り付けた。近世の遺品では、東山天皇御料は直接生地に刺繍があるが、孝明天皇御料では共裂の小片に刺繍して縫いつけている。

  • 日:照臨無私を象徴。左肩に配され、日の中に烏が描かれている。
  • 月:照臨無私を象徴。右方に配され、月の中に兎と蟾蜍(ヒキガエル)が描かれている。
  • 七星:照臨無私を象徴。北斗七星を背上部に配する。
  • 山:鎮定、雲の湧出、雨露の恵みの象徴。身の前後に配する。
  • 龍:神変不可思議の霊物。袖部前後に大型の巻龍、身の前後に小龍を配する。
  • 華虫:雉の意、その羽の美麗さから。身の前後に配する。
  • 宗彝:祭器に描かれた虎(勇)、猿(智)で、祭器の象徴。身の前後下部に配する。

大袖と同じ赤地に、袞冕十二章のうち、藻、粉米、斧、黻(ふつ、亜字の形)の四種の模様が付く。

関連項目[編集]