蒼き神話マルス

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蒼き神話マルス』(あおきしんわマルス)は、1996年から1999年にかけて「週刊少年マガジン」で連載された本島幸久競馬漫画。前作『風のシルフィード』の続編。2007年現在リファインされた新版が出ている。単行本全13巻、文庫版全4巻。

風のシルフィード』に登場した人物が立場などを変えて登場している。

あらすじ[編集]

かつて最強の血統と言われたディングル血統。しかし、故障・死亡が相次いだためディングル血統の人気は急落し、源流ディングル自体も死んだと思われ血統は途絶えたかに思われた。

そんな折、ディングル血統に情熱を注ぐ明都大学の遺伝学者「凪野泰輔」がヘルメスの仔を作ろうと試行錯誤していた。そんな苦労の末、待望のディングル血統の仔が誕生した。その仔馬こそ、ローマ神話の神の名を受け継ぐ「マルス」であった。

彼らには様々な試練が立ちはだかったが、諦めずに乗り越え、マルスは白の一族との決着でダービーを制覇し、種牡馬としてディングルの血を残す為に引退した。

マルスには戦う相手がいなかったが、別の白、エアリアルが出現する。エアリアルは白の一族を撃破しマルスに戦いを挑んできた。マルスもそれに応じ、地方競馬岩手)で現役復帰してジャパンカップに出る。マルスは何とか勝利したが、スタート直後からレコード狙いのハイペースで走っていた上、エアリアルに追いつかれそこで更にペースを上げたため、ゴール寸前に心臓停止。そのままゴールを果たす。かくしてマルスは戦場(ターフ)に散り神話となった。

そして4年後東京競馬場にはマルスの活躍を称え銅像が設置され、最高・最強の配合で生まれたマルスの仔の新しい神話がスタートするのだった。

登場人物[編集]

凪野馬守(ナギノ・マモル)
本作ではマルスと並ぶ主人公。馬守の名は「馬を守る子になって欲しい」との願いを込めて母親の結がつけた。
中学卒業後、騎手養成学校に入学し騎手となる。マルスの主戦騎手であり谷村厩舎唯一の専属騎手。軍神を操れる唯一の男であり唯一の相棒。
マルスの出産に立ち会うべく騎手養成学校を脱走した。騎手としての馬守は、養成学校時代から優秀であったと友人の野々村那智が語っている。体内時計は正確そのもの。しかし、初勝利するまで重心の問題の克服に悩み時間がかかった。
性格は明朗快活だが天荒からはバカと言われ、また少し安直なところも見受けられる。気が強く言葉遣いも乱暴など、前作の主人公森川駿とは対照的な性格。
凪野泰輔(ナギノ・タイスケ)
国立明都大学教授であり遺伝学者。妻の結とは自身が助教授だった頃に日崎静の反対を押し切って結婚した。妹は舞子。長男は馬守。友人は才谷僚平。
日崎(凪野)結(ヒザキ・ユイ)
泰輔の妻。妻であり、泰輔の研究助手でもあった。
泰輔が助教授の時結婚した。日崎静の一人娘。ヘルメスを天皇賞に出すべく寝る間も惜しみ世話をするが、そもそも馬など触ったこともないお嬢様育ちで、疲労が心臓に負担をかけて倒れ、馬守と泰輔に看取られながら息を引き取る。
入院していた時に書いたノートを馬守が遺品を整理中に発見し、このノートに従いマルスの母馬を探した。
凪野舞子(ナギノ・マイコ)
泰輔の妹。泰輔の友人である才谷僚平と結婚。僚平の死後は才谷牧場でディングルの世話をしている。
才谷僚平(サイタニ・リョウヘイ)
泰輔の友人であり舞子の夫。
ディングル日本輸入の発案者。その理由は思いを寄せていた舞子が、ディングルの蒼い瞳を綺麗だと言ったことから。人を惹きつける不思議な魅力を持っている。後にディングルが野良馬になったと知ってから探しまわり、遂に発見したが代償として両手の指と足の指を凍傷で失った。ヘルメスが天皇賞で優勝した翌年に死去。
日崎静(ヒザキ・シズカ)
日崎商事会長。結の父親であり泰輔の義理の父。結は泰輔が助教授の時に結婚したが静は認めていない。
泰輔から馬主になってほしいと乞われたが、一人娘を馬と泰輔が奪ったと考えていたため断る。しかし「結の思い」に動かされマルスを3000万で落札して危機を救う。
マルスがデビュー戦で勝利した事を報告で知り、結の墓参りをした時偶然にも馬守に会う。馬群の練習をどうするか悩んでいた馬守に、新車の馬運車をデビュー戦の勝利祝いとしてプレゼントした。
谷村建太郎(タニムラ・ケンタロウ)
妻は妙子。一人息子は慎太郎。前作ではシルフィードの騎手でありシルフィード側の人間だった。育成名人天荒の最高傑作レッドドラゴンに騎乗した経験もある。
騎手時代から減量で苦しみ、度々落馬を経験した。最終的に視力低下で騎手を引退、その後調教師になり谷村厩舎を持つ。調教師としては若手であり新人でもある。
理論的なところがあり、時折自らの騎手時代の経験も踏まえて意見を戦わせている。通称「谷建」。
天田荒一郎(アマダ・コウイチロウ)
育成名人。
かつては藤村厩舎に所属していて、レッドドラゴンが三冠を制覇し藤村厩舎の跡継ぎになるかと思われたが、河原崎の策謀によりドーピング疑惑を掛けられ、レッドドラゴンと共に失脚し北海道に去った。天荒牧場を開いたがドーピングの影響で誰も馬を預けない中、凪野親子がやって来て、マルスを預かることになる。
睨む時の顔はまさに鬼の形相。谷建と二人三脚でマルスを育てていく。またレッドドラゴンが現役だった頃、谷建とは調教師と騎手の関係でもあり旧知の仲。
荒削りな武闘派であるが故に、時折意見の相違がある。また天荒はいきなり馬を殴り、怯まずに立ち向かってくる闘志を秘めているかどうかを調べる。この独特な方法でマルスの闘志を知り、素質を知った。
河原崎とは藤村厩舎時代からライバル関係である。通称「天荒」。
デザインベースは必殺シリーズ念仏の鉄であることがコミックス収録のおまけページの作者コメントに明記されている。モチーフとなった鉄が坊主頭から長髪に変わるのに対し、天田は長髪から坊主頭に変わるという演出がなされている。
紅堂サキ(クドウ・サキ)
紅堂財閥の紅堂章仁の長女。章仁が亡くなった直後に後を継いだ。兄は早川ジン(仁)。
兄の存在を知ったのは章仁が息を引き取る直前だった。その後、ジンを東京に連れてこようとしたものの紅堂牧場が放火された際に居合わせ、ユキカゼを厩舎の中から連れ出そうとジンと一緒に厩舎の中に入るが、厩舎が崩れそうになりユキカゼに命を救われる。厩舎の中で過熱した鉄棒を誤って握り、手に大火傷を負ったために常に手袋をしている。後に渡米して大学に通い獣医の資格を取得している。
後にシルフィードジュニアを買い取り、白の一族を生み出した。一見すれば冷徹な辣腕オーナーだが、馬への愛情は本物である。
冷たい性格に見られがちだが本来はよく笑う快活な性格である。シルフィードジュニアのまえでだけは本来の笑顔を見せる、らしい。
また、アルコンの母馬を聞いてきた馬守にも親切に答えている。
早川ジン(ハヤカワ・ジン)
章仁の実の息子ではあるがジンは章仁が母を捨てて逃げたと思っており、章仁も憎ませることでジンを成長させるしかないと思っていた。それ故に章仁は、サキに対しジンに近寄るなと命令する。
地元の居酒屋でディングルの種付けを望んでいた森川修一郎に、あくまで純国産馬に拘りディングルは強いが外国産であるという自らの考えをぶつけた。その愛馬ユキカゼ号は未出走馬だったが、彼の熱意に動かされ森川は協力を申し出る。ところがユキカゼ産駒のシルフィードが活躍し始めた矢先、ジンは紅堂牧場で火災に巻き込まれ、ユキカゼを失った挙句に煙を吸い込んでしまい、植物人間になってしまう。
その後、意識が戻ったのはダービーでマルスが優勝した直後だった。
後藤一弥(ゴトウ・カズヤ)
フェイユンの元馬主。本作ではガンティアンの馬主である。前作『風のシルフィード』でも登場している。競り市で日崎静にマルスを落札されたことを根に持っている。銀行家であり「馬は商品」と考えているので余計な金はかけたくないと常々考えている。
前作ではただドライなだけでさほどの悪人には描かれていなかったが、今作ではいきなり悪役として登場し、馬守に「強欲じじい」と思われている。前作から12年の月日が流れているが、容姿はほとんど変わらず。
バブルがはじけた後、性格もはじけてしまったようで皐月賞ではガンディアンの活躍に今までから考えられないほど狂喜乱舞したり、レース後、「馬の恨みを車ではらす」などといって陽の車にぶつけるも工事中の道路にはまるなど完全なギャグキャラと化している。
河原崎玄三(カワラザキ・ゲンゾウ)
名門河原崎厩舎のトップ。あまりに育成が厳しいのでついて来られない馬を何頭も潰し「死神」なる不名誉なあだ名をつけられている。
捨て子であったが調教師・藤村虎一に拾われ、虎の右腕と称されるほどの技術を習得。天荒と跡継ぎ争いをしていたが、哲平にレッドドラゴンに薬物入り飼い葉を与えるよう仕向け、天荒をドーピング実行者として競馬界から追放し藤村厩舎を継ぎ、関西ナンバー1調教師と言われるまでに出世する。
当初は斜行癖のあるトーゴーディック号に谷村厩舎唯一の専属騎手である馬守を乗せてマルスに乗れないよう騎乗停止の処罰を受けさせようとする、またはガンティアン馬主の後藤と組んでマルスに邪魔をするなど、ただの悪役として描かれていた。だが調教師としての良心まで失っていたわけではなく、府中3歳ステークスのあたりから1流調教師としての顔を見せ始め、すっかり臆病になったガンティアンをハードトレーニングで再生し、エルルナを破る金星を挙げた。また、肺を一度潰したハヤタを黒い幽霊と呼ばれマルスに対抗しうる実力に仕上げた。さらに敵であるはずの向井陽にエルアルコンの蹄の治療法を教えるなど、連載が進むにつれ人柄が変化していく。野々村那智の可能性を見出したのも河原崎である。レッドドラゴンにドーピングをしたのを実は後悔しており、その理由を藤村から「ずっと一人だったが馬だけはいつもそばにおり、お前ほど馬が好きな奴はいない」と評した。以来、二度と馬を裏切らないこと、どんなに身体を壊していようが見捨てたりしないと誓っている。肺を壊したハヤタを見捨てなかったのもこのためであり、ハードトレーニングを施すのも「走れない競走馬は死んでいるも同じ」という理論のためである。
市村松也(イチムラ・マツヤ)
仕事師の異名を持つベテラン騎手。通称「市松」。馬守を小僧と呼び、マルスのデビュー戦ではガンティアンに騎乗し敵役を演じたが、その後はトーゴーディック号で斜行をしてしまった馬守を擁護したり、GIではアドバイスを与えている。感情を全く表情に出さないためクールな印象。ベテランだけあって分析は鋭い。
亜門兄弟(アモン)
兄は真央(マオ)、弟は理央(リオ)。一卵性双生児。美形であり、女性ファンが多い。
両親を早くに亡くし、経済的事情からそれぞれ別に育てられた。真央がエルソルに騎乗、理央はエルルナに騎乗している。二人とも馬群のコントロールが得意。理央は紅堂サキの言葉に傷つき一時失踪した。四天王に騎乗するまで重賞に勝ったことがなかったため、マスコミからは「客寄せパンダ」と揶揄されていた。
向井姉妹(ムカイ)
姉は陽(ヒナタ)、妹は茜(アカネ)。向井牧場が借金で潰れたため陽は騎手になり、茜は父の弟に引き取られる。茜は昔ツバサから落馬したため、運動ができない足になった。2人は性格がまるで違うため、すれ違いの日々を送っていた。陽はエルアルコンの主戦騎手。茜は陽に対する対抗意識からマルス陣営に接近していくが、馬守の助言もあり、やはり姉は姉であるという思いから陽とエルアルコンを応援した。このエピソード中途から馬守といい仲になり、マルスの引退後も牧場にくっついてきて、ほかの女に鼻を伸ばす馬守に制裁を加えたりしている。
名倉十郎(ナクラ・ジュウロウ)
リーディングジョッキーであり、エルディオスの主戦騎手。父は姓こそ違うが冨良木与一。父の影響からか、騎手は一流とか競馬の神云々とやたらプライドに拘る。子供の頃、父与一が呑んだくれていたことからに与一を憎むようになった。
朝日杯3歳ステークスでは自分のプライドを優先させた結果、マルス・ガンティアン・エルソルに敗れた上に、馬を殺す乗り方をしたためエルディオスと呼吸が合わなくなり敗戦を重ね、青葉賞では父与一への乗り替わりを命じられる。だがそのレース中、与一の古い馴染みである天荒から、父が呑んだくれになった本当の理由と、エルディオスの臆病な性格を教えられ、父が自分にエルディオスの乗り方を指南してくれているのだと気付き改心する。その後はエルディオスの性格に合った走りをするようになった。
おまけページの作者コメントによると、モチーフとなったのは四位洋文
真崎猟(マサキ・リョウ)
岩手競馬のリーディングジョッキー。一見すると、まるで拳法使いのような印象を受ける。愛馬パンドラの整体中に蹴られて出来てしまった傷が顔面にある。地方競馬を見下す中央競馬を嫌っている。
本作では馬守以外で唯一レースでマルスに騎乗している。
野々村那智(ノノムラ・ナチ)
騎手養成学校時代の馬守の友人。母を助けるため騎手になった。
初登場時は全く勝てないダメ騎手だったが、市松の怪我により代役としてハヤタに騎乗し、共同通信杯4歳ステークスに出走、マルスに勝利した。
その後は人が変わったように勝ちまくり、わずか3ヶ月でGI騎乗資格を得る31勝を突破。日本ダービーでは市村から実力でハヤタの主戦騎手の座を奪い取った。九州出身。
森川駿(モリカワ・ハヤオ)
前作の主人公で、シルフィードの騎手。最終巻のジャパンカップのみ登場。騎手はすでに引退しており、アメリカで生産者として活躍していることが作中語られていた。
最終巻で、自ら育て上げたシルフィードの孫、エアリアルと共にマルスに挑戦する。詳細は『風のシルフィード』を参照。
夕貴潤(ユウキ・ジュン)
かつて闘神マキシマムの騎手であった。最終巻のジャパンカップのみエアリアル騎手として登場。本作では髪の毛がかなり伸びている。詳細は『風のシルフィード』を参照。
菊池正太(キクチ・ショウタ)
谷建の師匠。医者に酒を止められているが構わず飲んでいる。本作では馬の診療所を経営していて、かつて面倒を見た真崎を知っている。前作ではシルフィードの調教師として登場した。
松造(マツゾウ)
菊池の回想の中でのみ登場。前作風のシルフィードでは、主人公森川駿の最も身近にいた人物の一人だった。本作では菊池と共に馬の診療上を共同経営している。
森田哲平(モリタ・テッペイ)
元藤村厩舎・河原崎厩舎厩務員。ドーピング実行者として名乗り出た直後に河原崎に解雇された。その後マルス陣営入りし、天荒に代わりレッドドラゴンの世話をしている。
冨良木与一(フラキ・ヨイチ)
名倉十郎の父。妻とは離婚したため姓が戻っている。一応騎手ではあるが減量が下手。
十郎の祖父名倉伍平に面と向かって意見を言ったところ、長い間騎手として馬に乗れなくされたので呑んだくれていたが、そのせいで減量をすると体力も落ちるようになってしまった。そのため「乗れずの与一」という不名誉なあだ名がつけられた。
エルディオスの調教をしているので、実は臆病な馬だと知っていた。普段は障害レースなどで騎乗しているが、青葉賞前の障害レースでは体力低下が原因で落馬した。
藤村厩舎時代の天荒とは古い顔馴染み。
有田(アリタ)
ヘルメスの元馬主。
大学教授の馬には誰も振り向かなかったが「綺麗な目をしている」と気に入ってヘルメスの馬主になった。ヘルメスの仔の馬主になるのを楽しみにしていたが、マルスが生まれる一年前には他界していた。
田辺夫妻(タナベ)
ハヤタの生産者。田辺牧場で初の競走馬として産まれたハヤタに期待を寄せる。
育成牧場での事故で肺が潰れたハヤタを一度は競走馬にするのを諦めかけたが、河原崎にハヤタの素質を認められ競走馬にすべく地獄の特訓をした。河原崎厩舎を訪れた際偶然にも野々村那智に会い、ハヤタの生い立ちを話して共同通信杯に出る決意を固めさせた。
田中調教師(タナカ)
谷村厩舎の隣に田中厩舎を持つ。田中厩舎は関東の有力厩舎の一つ。
性格はかなり悪い。2人の息子がいて、兄は騎手でもある一郎、弟は慎太郎のライバルである二郎。息子2人は父親と非常に似ており、馬守達からはクローン親子と思われた。
弟の二郎はボクシングを習っており、マルスの敗戦から慎太郎を苛めるグループの主犯格になっていたが、内外タイムス杯で兄一郎が騎乗する馬がコバロンに敗れて[1]以降はイジメを止めた模様。一方の一郎は反則紛いの行為を得意とする危険な騎手で、内外タイムス杯で馬守に負けたことを根に持っていたので、皐月賞では後藤と組んでガンティアンと共に登場したが結局、墓穴を掘った。
藤村虎一(フジムラ・トライチ)
回想シーンのみの登場。通称・虎。藤村厩舎(後の河原崎厩舎)の前所長で、天田と河原崎の師匠であり、河原崎の事実上の養父。臨終に際し後事を河原崎に託したが、天田を陥れたのが河原崎であること、及び河原崎が調教師としての良心までも失っているわけではないことを見抜いており、「ドーピングは絶対やるな」と遺言した。

登場馬[編集]

マルス
凪野馬守と並ぶ本作の主人公。才谷がヘルメスの仔に、ローマ神話最強とされ軍神を意味する「マルス」と命名するよう存命中に泰輔に頼んでおり、名付けられた。馬主は日崎静。
母はフェイユン。父はディングル血統馬ヘルメス。ヘルメスは近親配合で産まれた故に4歳の間熱発で苦しんだ。そのため母馬はディングル血統にはまったく関係のない血統のフェイユンが選ばれた。特別な配合でディングルの血を濃く受け継いでおり、生まれた時は普通だったが同い年の馬と比較すると小柄である。
フェイユンの溺愛により乳離れせず人間を信用していなかったが、馬守が苦労の末にそれを克服させる。育成当初はGTFという牧場に入っていたが、途中で白の一族に出会い意識し過ぎたためマルスは社長から育成を断られてしまう。馬守は追い出される形となったマルスを、育成名人天荒に預けようとするが門前払いに。しかし、マルスの素質を認めてもらい何とか預かってもらう。そして谷村厩舎に入厩し、重心の問題をいかに克服するか悩んでいた馬守を助ける。
デビューしてからは連勝を続けるが、函館3歳ステークスで白の双子との激戦を制した直後倒れた。何とか回復し数々の戦いで勝利するも、共同通信杯4歳ステークスでハヤタに敗れる。
次走スプリングステークスでは大学側が牧場を廃止にしようとしていたが、マルスがエルアルコンに勝利し廃止の危機を救う。皐月賞ではエルアルコンに敗れたが、引退戦となった日本ダービーで勝利した後に、ディングルの血を残すため4歳という若さで種牡馬となる。
一年後、白の一族を撃破したエアリアルが出現しマルスに戦いを挑み、舞台はジャパンカップへ。本来中央競馬では引退し、登録抹消した馬は二度と復帰できないが、マルスは地方競馬である岩手で復帰し、ジャパンカップ指定交流競走で優勝して地方(岩手)所属による地方招待馬として出走。本番ではスタートからハイペースで逃げ、最後までスピードは衰えず、ゴール寸前に心臓が停止しながらもエアリアルを抑え、そのまま先頭でゴールし戦場に散った。5歳だった。
紅堂サキが「マキシマムの生まれ変わり」と評するように、マキシマム並みの闘志がマルスには宿っている。ディングルの象徴である蒼い瞳を持ち、気性は荒い。また、マキシマムとは異なるが額に稲妻のような星(模様)が入っているのも特徴である。
「闘志に火がつく」と表現されているように基本的にはラストスパートで勝負しているが、スプリングステークスでは最初ハイペースでエルアルコンから逃げ、後半は余力を持たせスパートをかけて勝利した事と、最終戦となったジャパンカップでは初めからハイペースでエアリアルから逃げている点が例外である。しかし、それ故に一度闘志に火がついてしまうと、馬守ですら止められないという弱点があり、元々の体質の弱さと合わせて非常に扱いの難しい馬である。また、「火がつく」と眼が前作のヒヌマボークのように充血して蒼から紅に変色する。
マルスの死から4年後に、白の一族とマルスの仔である雷神トールが登場する。
ヘルメス
近親配合で誕生したディングル血統馬。父馬はディングル、母馬は不明。
父ディングルは日本で次々と活躍馬を輩出したが、特徴的な蒼い瞳は仔に遺伝していなかった。それを不満とした才谷が遺伝学者である凪野泰輔に依頼し、青い瞳を受け継いだヘルメスが誕生、才谷が舞子にプロポーズするきっかけを作った。現役時代は「音速の旅人」と呼ばれた。
近親配合の影響で、虚弱体質と言われる原因の熱発を4歳の時に体験している。その間全くレースに出なかったため、ディングル血統の人気は急落する。5歳になり天皇賞で優勝するが、レース後に倒れそのまま引退。以後は種牡馬となったが、仔にも体質の弱さが強く遺伝してしまい、マルス以前の仔は死産ばかりであった。
マルスの荒療治を馬守が行った際、フェイユンを馬運車に乗るよう仕向けたのはヘルメスである。また、馬群の特訓の際は天荒牧場でレッドドラゴンと共にマルスに睨みを利かせている。源流ディングルが父馬だが、ディングルとは異なり気性は穏やかである。
種牡馬生活中、人間では癌に相当する不治の病にかかりマルスが日本ダービーに出る2日前に病死した。
ちなみに、シルフィードの一歳下の世代であり、天皇賞(秋)ではそのライバルだったシャオツァンロン(小蒼竜)やカザマゴールドを破っている。また、主戦騎手は駿の同期で親友の島村圭吾である。
フェイユン
マルスの母馬。
結が指定するディングル血統ではない頑丈な馬という条件に一致していたので、母馬として白羽の矢を立てられた。元馬主後藤に酷使されたせいで足が曲がっている。
フェイユンにとってマルスは初めての仔だったために溺愛してしまった。マルスの弟も受胎したが、死産している。
ディングル
ディングル血統の源流。
アメリカで種牡馬生活を送っていたところで才谷僚平が日本輸入を発案し、紅堂財閥がスポンサーとなり13歳で日本に輸入された。小さな才谷牧場ではとても管理しきれないため、紅堂財団関連の牧場へと預けられた。
日本での種牡馬成績は目覚しいものであり、ディングル血統と表現されるほどの繁栄を見せた。だが、紅堂財団の権力争いの最中にディングルは別の牧場へ売却される。後にその牧場は破産し、しばし野良馬生活を送る。それを才谷が発見し才谷牧場へ連れて行くが、野良馬生活で身体機能が著しく低下し、種牡馬生命は既に絶たれていた。
本作では、最年長の34歳(人間で言うと100歳超)である。ディングルの最期は書かれていないため不明だが、才谷の死後は舞子が世話をしている。
一流の競走馬の気性の荒さは闘争心の表れである[2]と泰輔が語っているように、種牡馬となっても闘争心は衰えることを知らなかった。人呼んで「パーフェクトブルー」。
マキシマム
通称「闘神」。ディングル血統最高傑作。
前作『風のシルフィード』にも登場しており、シルフィードと死闘の末にダービーを制覇した。しかし別のレース中骨折し、その骨折が完治せず引退し馬主の世界戦略のため海外で種牡馬生活を送っている。
仔はマックスハート。マックスハートもまたマキシマム同様ダービーを制覇している。また、マキシマムとシルフィーナの仔であるエアリアルは海外で活躍し、ジャパンカップでマルスと戦ったが僅差で敗れた。
本作では、マルスがマキシマムの生まれ変わりだと紅堂サキに評されている。
シルフィードジュニア
父シルフィード、母シズカ。双子であり、姉の名はシルフィーナ。
マキシマムの仔マックスハートに日本ダービーで敗れるが、その直後に紅堂サキが買い取り、白の一族の祖とした。
エルアルコン
父シルフィードジュニア、母ツバサ。「アルコン」とは鷹を意味する。
かつて向井牧場で茜が乗っていたツバサの仔であり、希代の逃げ馬。天荒曰く「四天王の中で間違いなく最強」。事実四天王では唯一マルスを降し、皐月賞を制している。
父シルフィードから「奇跡の蹄」を受け継いでいる。この蹄は普通の馬の蹄に比べ幅が広く平たい。まるで飛ぶような大胆な走法は並外れたスピードをエルアルコンにもたらす。しかしその形状故に、雨の馬場では非常に滑りやすいという弱点がある。
ディオス並みの筋力も誇っており、本来は雨の馬場でも問題としないパワー走行も可能だが、あまりにも強すぎて蹄を割ってしまう(蹄鉄すら吹き飛ばす)ため、封印されている。
エルディオス
父シルフィードジュニア、母不明。「ディオス」とは神を意味するが、本作中では破壊神とも言われている。
白の一族では最も大きく、パワーの面では最強。特に小柄なマルスと比較すると体重が100kg重い。基本的にはラストスパートを得意とするが、朝日杯3歳ステークスでマルスに敗れたためラストスパートに自信が持てなくなった。
外見からは到底想像も出来ないが、シルフィードから臆病な性格を受け継いでしまっており、他馬が苦手である。とりわけマルスに敗れて以来、更に臆病になってしまったが、それ以来先行逃げ切り型を中心とした戦い方になった。
エルソル・エルルナ
父シルフィードジュニア、母不明。双子の馬で、「ソル」は太陽、「ルナ」が月という意味。非常に仲が良く育成牧場でも馬運車での移動の際も必ず2頭でいる。
エルルナは府中3歳ステークスで、競馬の神の領域とされる3F33秒台、即ち「白い稲妻」を出したため骨折した。また、エルソルも朝日杯でエルルナと同じ33秒台の走りをしてマルスを追い詰め2着に入った。
ガンディアン
シャオツァンロン産駒。名前は鋼天という意味。騎手は基本的に市松である。
マルスのデビュー戦では敵として戦い、ゴール直前にマルスに気迫負けし2着でゴールした。それ以降は他馬に怯える癖がついてしまい全く勝てなかった。その為馬主である後藤はガンティアンを売り飛ばそうとしたが、河原崎が徹底的に鍛え直し無駄な肉を18kg削ぎ落とし再び強豪馬に仕上げ、府中3歳ステークスでエルルナの追撃を凌いで勝利し、朝日杯でも好走した。
ペルフェクト・テイオーボーイ
谷村厩舎所属。馬守が時折騎乗している。
コズモレンジャー
谷村厩舎所属。府中3歳ステークスで馬守が騎乗している。
コバロン
谷村厩舎所属。前作『風のシルフィード』に登場し谷建が騎乗した経験があるバロンの仔。7歳。
現役であるにもかかわらず2年以上勝っていない。性格はバロン譲りで、臆病で落ち着きがない。谷建は自分が騎乗したバロンへの恩返しという理由で、大事に預かり続けている。内外タイムス杯でヒットードーシンに勝利。
ヒットードーシン
田中厩舎所属。GIIIで勝った5歳馬である。
内外タイムス杯では一番有力視されていたが、騎手の田中一郎のミスによりコバロンに敗れる。
ハヤタ
生産者は田辺。マルスの戦友でもある。
田辺牧場で初めて産まれた競走馬として期待されていたが、育成牧場でマルスと共に白の一族に勝負を挑み、無理をしたため肺を潰してしまった。それ以来他馬に怯えるようになり、競走馬になることは絶望視された。そこへ河原崎が現れハヤタのポテンシャルを見出したので、田辺夫妻はハヤタに地獄の特訓を行い心肺機能を高め河原崎の手に委ねた。その甲斐あって、共同通信杯4歳ステークスにおいて僅差でマルスに勝利。
そして日本ダービーでは、野々村那智と共に登場している。ダービー後、天皇賞では逃げ馬としての素質を活かし古馬相手に逃げ切り勝ちをしている。
パンドラ
地方競馬の岩手競馬の所属馬。
サラ系の雌馬であったため、大して期待されずいい加減に育てられた。そのせいで真崎が菊池正太の診療所に連れて行った時点では、腰が甘く立つのがやっとで走ることも出来ない状態だった。
真崎は自ら整体を行ったが、その際に暴れて真崎に怪我を負わせ顔面に傷を作ってしまった。それでも真崎が徹底して鍛えあげ、9戦9勝というキャリアを引っさげ中央競馬の福島で行われたオープン特別「みちのく3歳特別」に出走、マルスを同着にまで追い詰める。
引退後はマルスに種付けをしてもらった。
レッドドラゴン
天荒の最高傑作。また、マルスの育ての親である。
凪野親子が天荒にマルスを預けに来た際に、天荒にマルスを預かるように促した。馬群の特訓の時には、ヘルメスと共にマルスに睨みを利かせている。3歳のデビューから4歳初めまでは谷建が騎乗していた事もあり、谷建は天荒の実力を認めている。天荒が手がけた馬の中では最高の素質を持っており、皐月賞・日本ダービーの2冠を制する。だが当時新人厩務員だった哲平が河原崎にそそのかされ薬物をレッドドラゴンの飼い葉に入れてしまった為に、菊花賞でドーピングを実行したとして競馬界から追放され天荒と共に北海道に去った。
12歳として登場するが、一見すると5、6歳の現役馬である。河原崎厩舎を解雇された哲平が天荒に代わり世話をしている。
エアリアル
最終話となるジャパンカップに登場。シルフィードの孫(マキシマムとシルフィーナの息子)で、前作の主人公森川駿(シルフィードの騎手)と夕貴潤(マキシマムの騎手)が手塩にかけて育て上げた、もう一つの"白の結晶"。
外見は祖父に瓜二つ。海外で鍛え上げたその実力は底知れず、マルスのライバルである白の一族をことごとく撃破し、最終話でマルスと激突。まともにいけば勝利は確実であったが、初めから死を覚悟していたマルスの走りの前に僅差で敗れた。
ユキカゼ
シルフィードの父。早川ジンが世話をしている。
父は有馬記念を連覇した内国産馬フウジン。だが、フウジンとその仔が次々と伝染病で死亡したため、ユキカゼもその疑いをかけられた。結局伝染病には感染していなかったのだが、それが証明された頃には既に現役で走れる歳ではなくなっていたため、未出走のまま種牡馬入り。だがそんな馬を種付けしたがる牧場などあるはずもなく、種牡馬成績は皆無だった。ある日早川ジンと繁殖牝馬サザンウインドを管理する森川修一郎が出会った事でシルフィードが誕生する。
シルフィードが日本ダービーに出走する直前、火災から紅堂サキと早川仁を守り死亡。
なお、『風のシルフィード』の時点ではシルフィードの父親は黒鹿毛だったと松造に言及されていたが、サキが白にこだわる為にはシルフィードの父も白でなければいけないという理由から設定変更され、葦毛になった。

エピソード[編集]

  • 連載直前に週刊Gallop誌上で作者へのインタビューが掲載されている。その際に前作のシルフィード連載時は競馬の知識がほとんどなかったので、現実の競馬にそぐわないスポ根物漫画としてのエピソードが多くなってしまったが、本作では競馬の魅力の一つでもある「血統」の魅力を伝えたいと語っていた。

脚注[編集]

  1. ^ および坊主頭になっていた天荒の睨みにビビッて
  2. ^ マルスの気性は良くはないが、マキシマムの闘争心は気性の荒さから来るものではない(チャカつく訳でも、臆病な訳でもない)。