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蒸発散

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
地球の水循環の一部。蒸発散="evapotranspiration"

蒸発散(じょうはっさん, evapotranspiration)とは、蒸発(evaporation)と蒸散(transpiration)を合わせたもの。地球上の水循環の中の1つ。

植物表面からの蒸散は植物学生物学的な意味合いが大きい一方、蒸発は水文学的な意味が大きい。ただ、蒸発だけでは水文学上の水収支を正確に表すことができないため、両者を足した蒸発散が、地表面から大気へ放出される水として定義されている。計算上、蒸発量と蒸散量を区別して算出するよりもまとめて算出した方が良い場合もあるため、蒸発散量を用いることも多い。

蒸発散量

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ETで表されることが多い。単位はmm/日あるいはmm/d。日本の水田では平均6 - 8mm/日という資料がある。

蒸発散量ETは、次のような水文学的収支の式を基に、ET以外の変数に数値を当てはめて算出できる。

F は浸透量。体積(容量)または長さで指定できる。
は、対象とする土壌の塊に、他の土壌から流入する量。
は、対象とする土壌の塊から、他の土壌に流入する量。
P降水量
S は保水量。
は水溜りなど、土壌に染み込む前に除外される水の量。
R は土壌表面の流水などの表面流出

蒸発散量は、放射気象要因、植生要因、土壌要因、および耕うん灌漑などの管理要因の組合せで変化する[1]。植生や土壌水分の条件が一定であれば、日射量気温湿度風速などの気象要素が蒸発散の大きさを強く左右し、反対に葉面積の増加、地表の被覆、表層土壌の乾湿、降雨や灌漑の頻度が異なれば、土壌面からの蒸発と植物体からの蒸散の比率は変化する[1][2]。年生作物では、播種直後や植被が小さい時期には土壌面からの蒸発の寄与が大きいが、生育が進んで地表が覆われると蒸散が主体となるため、蒸発散量は単一の定数ではなく、地表面の状態と生育段階を反映して変化する量として扱う必要がある[2]

このため、農業水管理や農地の水収支計算では、個々の圃場で常時実測する代わりに、まず標準化した基準面からの参照蒸発散量 ETo を気象データから求め、それに作物係数 Kc を乗じて作物蒸発散量 ETc を推定する枠組みが広く用いられる[3][2]FAOのガイドラインでは、参照蒸発散量を求める標準法として FAO Penman-Monteith 法を採用し、ETc = Kc ET_o とする単一作物係数法と、Kc = Kcb + Ke によって植物体の蒸散と土壌面蒸発を分けて扱う二重作物係数法を示している[4]。二重係数法は、降雨や灌漑の直後に土壌面蒸発が一時的に増えるような日々の変動を扱いやすく、土壌水分収支やリアルタイムの灌漑計画に適する[4]。なお、FAOは potential ET という呼称は定義が曖昧であるとして推奨せず、基準概念として参照蒸発散量 ETo を用いている[2]

蒸発散位

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蒸発散位(じょうはっさんい, potential evapotranspiration)とは、その地域において想定される気候条件下で、常に地表や植物表面が湿潤な場合における最大の蒸発散量のこと。乾燥地においては、蒸発散位が降水量を大きく上回る一方、雨期の湿潤地域では降水量が蒸発散量を大きく上回る。

また、水蒸気圧が平衡にあるときの蒸発散量を平衡蒸発散量(equilibrium evapotranspiration)という。これは、大気中の水蒸気が飽和している時か、地面が完全に乾燥しているときに適用される。

出典

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脚注

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出典

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  1. 1 2 高瀬, 恵次、佐藤, 晃一「蒸発散(その6)―耕地の蒸発散―」『農業土木学会誌』第57巻第9号、1989年、827-832頁。
  2. 1 2 3 4 Chapter 1 - Introduction to evapotranspiration (英語). FAO (1998年). 2026年3月18日閲覧。
  3. 高橋, 智紀、熊谷, 悦子、内川, 修、島田, 信二「東北地方のダイズ生産力検定試験において土壌乾燥が収量に及ぼす影響の解析」『日本作物学会紀事』第87巻第3号、2018年、233-241頁。
  4. 1 2 Chapter 5 - Introduction to crop evapotranspiration (ETc) (英語). FAO (1998年). 2026年3月18日閲覧。

関連項目

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