茹でガエル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

茹でガエル(ゆでガエル)、茹でガエル現象(ゆでガエルげんしょう)、茹でガエルの法則(ゆでガエルのほうそく)とは、ビジネス環境の変化に対応する事の重要性、困難性を指摘するために用いられる警句のひとつ。

多くのコンサルタント活動家などによって[1][2]自然科学上の実験結果であるかのように語られているが、実際には、カエルは温度が上がるほど激しく逃げようとするため[2][3]疑似科学的な作り話[4]が広まったものである。

概要[編集]

『2匹のカエルを用意し、一方は熱湯に入れ、もう一方は緩やかに昇温する冷水に入れる。すると、前者は直ちに飛び跳ね脱出・生存するのに対し、後者は水温の上昇を知覚できずに死亡する』

およそ人間は環境適応能力を持つがゆえに、暫時的な変化は万一それが致命的なものであっても、受け入れてしまう傾向が見られる。例えば業績悪化が危機的レベルに迫りつつあるにもかかわらず、低すぎる営業目標達成を祝す経営幹部や、敗色濃厚にもかかわらず、なお好戦的な軍上層部など。

心理学者経済学者経営コンサルタントなどが、著作で茹でガエルの話を比喩として使用することがある。[4][5][1]また、疑似科学、または現実には間違っていると断った上で比喩として利用する人もいる[4][1]

その後、学校・セミナー等で教科書として用いられた[要出典]組織論」(桑田耕太郎田尾雅夫、1998年、有斐閣アルマ)において『ベイトソンのゆでガエル寓話』として紹介され広まった。[要出典] 主にビジネスセミナーで「茹でガエルになるな」「茹でガエル現象への対応」等の趣旨にて講演が行われることが多く、また書籍も数多く出版されている。

科学的な検証[編集]

19世紀[編集]

1869年、ドイツの生理学者フリードリッヒ・ゴルツ(Friedrich Goltz)によるを切除したカエルを用いた実験が発端と見られる。しかし、ゴルツの実験でも脳のあるカエルは摂氏25度から落ち着かない様子になり、温度が上がるごとに激しくもがき苦しみ42度で死んでしまった[3]。 1873年、ジョージ・ヘンリー・ルイス(George Henry Lewes)による追試験結果がネイチャーに掲載[3][6]された。 この実験は、精神の所在(つまり、反射ではない意識)を探ろうとするものだったが、1872年と1875年に生物学面からの反証、つまり十分穏やかに昇温(一例では0.002℃/秒)させれば脱出しない、とする報告が寄せられた。[誰?] 1888年、アメリカの生物学者ウィリアム・トンプソン・セジウィック(William Thompson Sedgwick)は、温度変化の速度差が原因と解釈し、これが定着した。[要出典]

20世紀以降[編集]

1960年代の東西冷戦、1980年代の終末論、1990年代には温暖化に関連して取り上げられ、またビジネス業界でも広まった。

1995年、アメリカのビジネス誌「Fast Company」が、著名なビジネスコンサルタントが著書で取り上げたこの物語を検証する特集記事[7]を掲載した。この中で、細胞生物学者のダグラス・メルトン(Douglas A. Melton)博士は「熱湯に入れれば飛び出さずに死んでしまうし、冷たい水に入れれば熱くなる前に飛び出してしまう」と答え、国立自然史博物館も同様の回答をしている。

2002年、ドイツの科学ジャーナリスト (enクリストフ・ドレッサー (de:Christoph Drösserは、ドイツ国内でコンサルタント活動家が盛んに使用する茹でガエルの話を疑わしいと感じながらも、証明するためにカエルを茹でたくはなかった。困ったドレッサーがアメリカの爬虫両生類学者に質問したことを発端として話が学者仲間に伝わり、ホイット・ギボンズ (enから話を聞いたオクラホマ大学教授の爬虫両生類学者ハッチソンは「その伝説は全てが間違っている。動物学臨界最高温度 (Critical thermal maximum調査で、多くの種類のカエルは調べられており、手順として1分間に水の温度を華氏2度ずつ上げるが、温度があがるごとにカエルはますます活発になって温度の上がった水から逃れようとしたことから、蓋が空いていたり器が小さければ逃げる」と回答した[2]

出典[編集]

  1. ^ a b c ポール・クルーグマン Boiling the Frog ニューヨーク・タイムズ 2009-7-12掲載 2011-7-15閲覧
  2. ^ a b c Mike Dorcas, Whit Gibbons Frogs: The Animal Answer Guide JHU Press 2011年 p.117 (J. Whitfield Gibbons THE LEGEND OF THE BOILING FROG IS JUST A LEGEND ジョージア大学 November 18, 2002執筆 2011-07-10閲覧)
  3. ^ a b c George Henry Lewes Sensation in the Spinal Cord ネイチャー 1873年 p83-p84
  4. ^ a b c ベイトソン, グレゴリー 『精神と自然:生きた世界の認識論』 佐藤良明訳、思索社、1982年、p327 「われわれを取り巻く状況変化の傾向が、全くといっていいほど意識されていないことは、無視できない問題である。水を入れた鍋の中にカエルをそっと坐らせておき、今こそ跳び出す時だと悟られぬように、極めてゆっくりかつスムーズに温度を上げていくと、カエルは結局跳び出さずにゆで上がってしまうという疑似科学的な作り話(quasi-scientific fable)があるが、われわれ人類も、そんな鍋の中に置かれていて、徐々に進行する公害で環境を汚染し、徐々に堕落していく宗教と教育で精神を腐らせつつあるのだろうか?」(p. 133)(参照文献はなぜ必要か : その目的と機能一橋大学大学院国際企業戦略研究科図書室)
  5. ^ 経済学者であるミネソタ大学のアンドルー・ヴァン・デ・ヴェン (Andrew H. Van de Ven博士[要出典]ミシガン大学のノエル・ティシュ (Noel M. Tichy博士[要出典]など
  6. ^ ゴルツに関する記述の引用があるGuest-post wisdom on frogs The Atlantic(アメリカの月刊誌)
  7. ^ Next Time, What Say We Boil a Consultant fastcompany

関連項目[編集]