聖師父学
聖師父学[1](ラテン語: Patristica, ギリシア語: Πατρολογία, ロシア語: Патристика, 英語: Patristics or Patrology)とは、使徒時代直後(2世紀初頭頃)から、七回の全地公会議の時期に至るまでの聖師父(教父)について探求する学問領域[2]。20世紀以降、特に正教会において盛んになった[3]。教父神学、教父学とも訳される。
概要[編集]
使徒時代直後から第七全地公会議までの時代の聖師父達の著作を検討する事により、教会が異端的思想に対してどのように思想的に戦って来たのかを把握する[2]。中世においても教父学は行われていたが、近現代においては、聖師父たちの教えの巨大な総合を行い、無神論と戦うためにキリスト教思想の完全な体系を作り上げる事が目指される[3]。
20世紀以降の正教神学において[編集]
パーヴェル・エフドキーモフによれば、ゲオルギイ・フロロフスキイが1936年にアテネの正教神学会議において聖師父の伝統への復帰を力説した事が、現代正教神学の決定的な転換期の現れであったとされる。またエフドキーモフによれば、聖師父学は単なる学問的知識としてではなく、内面的・体験的な再発見を通じて獲得・所有されなければならないとされる。聖師父に帰ることは前進を意味するのであって、後退や模倣を意味しない。神学者グリゴリイ(ナジアンゾスのグレゴリオス)が「神学をアリストテレス式にではなく、漁師のように作る事」と言うように、概念の弁明ではないとされる。またエフドキーモフは聖伝の「ヘレニズム」をパーヴェル・フロレンスキイが強調した事を正当であるとし、神学がヘレニズムに悩んだ事を、過剰によるものではなく不足によるものであるとした[3]。
また、正教会は聖師父の時代をすでに終わったものであるとは考えず、これからも聖神(聖霊)の導きのもと教会に聖師父である聖人が生み出されていくと考える[4]。
参考文献[編集]
- ジャック・ポール・ミーニュ『教父学全集』(Patrologiae cursus completus、『ミーニュ教父叢書』とも[5]。)、1844年~1866年。
脚注[編集]
- ^ 訳語出典:シモーニン:中世哲学概説 聖師父学 (ロシア語)
- ^ a b Patristics/Theology (中国正教会のサイト)
- ^ a b c パーヴェル・エフドキーモフ著、古谷 功訳『ロシア思想におけるキリスト』317頁 - 318頁(1983年12月 あかし書房)ISBN 4870138093
- ^ 生神女マリヤ、聖人、聖師父 (日本正教会公式サイト)
- ^ a b c ミーニュ教父叢書
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『教父学』 - コトバンク
- 正教徒は聖書をどう読むべきか - 聖師父の著作はどのように読むものかについて言及(府主教カリストス・ウェア著、名古屋ハリストス正教会司祭ゲオルギイ松島雄一訳)
- 正教会訳聖書と聖師父の言葉