耳嚢
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耳嚢(みみぶくろ)は、江戸時代中期から後期にかけての旗本・南町奉行の根岸鎮衛が、天明から文化にかけて30余年間に書きついだ随筆。同僚や古老から聞き取った珍談、奇談などが記録され、全10巻1000編[1]に及ぶ。耳袋と表記もされる。
概要[編集]
話者には姓名または姓を記した者が約120名おり、高級旗本、同僚、下僚、医師、剣術者の名が見られる。その他に、ある人の話としたものや、又聞きの話も収められている。話の内容には、将軍の賛美、奉行の逸話、怪異譚、信心や仏縁にまつわる話、治療法や治療薬の紹介、実際の事件を脚色したものなどがあり、飾らない文体で綴られている(他、近世当時の和歌や漢詩も多数収録されている)。
内容[編集]
書かれた主な人物、事物[編集]
- 徳川家光
- 徳川吉宗
- 大岡越前
- 伊東一刀斎
- 日野資施
- 戸谷半兵衛
- 柳生但馬守
- 徳川治貞
- 酒井忠実
- 小野次郎右衛門
- 下風道二斎
- 小出相模守
- 浄円院(吉宗生母)
- 沢庵宗彭
- 日蓮
- 一休和尚
- 南光坊天海
- 祐天大僧正
- 長尾全庵
- 黒田豊前守
- 石谷淡州
- 鷺仁右衛門
- 冷泉為広
- 烏丸光胤入道卜山
- 酒井忠以
- 大石内蔵助
- 鴻池善右衛門
- 山中鹿之介
- 松平康福
- 井伊直朗
- 観世新九郎
- 金春太夫
- 土屋相模守
- 堀部弥兵衛
- 神尾若狭守
- 水野和泉守
- 細川越中守
- 本目親英
- 市川柏筵
- 志賀随翁
- 新見愛之助(さむはら)
- 新見正登
- 新見伝左衛門正朝
- 朝比奈三郎
- 兵庫屋弥兵衛
- 松屋四郎兵衛
- 小堀数馬
- 石黒平次太
- 坂東薪水彦三郎
- 山中平九郎
- 市川門之助
- 鵜飼左十郎
- 瀬川菊之丞
- 太田道灌
- 乾隆帝
- 本因坊
- 孫叔敖
- 仙洞御所
- 旧室
- 御茶壺道中
- 寛永寺
- 今戸安昌寺
- 本妙寺
- 三峰権現
- 秋葉神社
- 浅草観音
- 上野清水観音
- 金精神
- 薬研掘不動
- 妙鏡庵
- 不受不施
- 卒塔婆
- 大黒屋[要曖昧さ回避]
- 両国橋
- 本庄宿
- 佐渡金山
- 米良
- 岡っ引
- 検校
- 願人坊主
- 札差
- 高利貸し
- 拵屋
- 非人
- 幾夜餅
- 阿部川餅
- 盗賊
- 明和の大火
- 浅間山の噴火
- 狂歌
- 浄瑠璃(土佐節)
- 三笠附(博打)
- 博徒
- 鹿政談
- 顕微鏡
- 民間薬
- 砒霜
- 斑猫(毒薬)
- 奇術
- 人相術
- 植木
- 鯨突
- 甲冑師(明珍家)
- 怪力女
- 蟄竜
- 貧乏神
- 河童
- 化け猫
- 村正
- 怨念
- 狐狸
- 狐憑き(馬憑き)
- むじな
- 猯
- いくじ
- 人魂
- 外法
- まじない
- 死相
- 疱瘡神
- 文福茶釜
- 天狗
- 竜
- 鬼火
- よみがえり
備考[編集]
- 鼠嫌いの人間に対し、秘密裏に座布団の下に鼠の死体を置き、呼び寄せ、座らせたところ、把握していないにも関わらず、たちまち気分を害したという怪異譚があり、ネズミアレルギーと捉えられる内容の話がある。
- 貧しい武家の親子が武士の象徴たる刀まで売るも、このままでは士分としての誇りを保てなくなるとして、川へ身投げ心中した話(貧しくても士分の誇りを守る語り)やみすぼらしい格好の武士が明珍家に甲冑を新調してもらうも、支払いを疑われ、そのことで(疑ったお詫びとして)、値段を「まけさせてもらう」「ひかせてもらう」と聞いて、激怒して甲冑を買わずに帰ってしまう話など、近世期の武士の社会的気質が分かる内容の話がみられる。
- 外国人に関する記述も見られ、一例として、母国から逃れ、日本へ来るも行くあてがなく、身寄りのない自分の心情を漢詩として書き、それを知った柳生家が士分の身分を与え、柳生家の家臣として帰化する話がある(他、南蛮文化に対する当時の考え方などもある)。
刊行本[編集]
- 『耳袋』 全2巻 鈴木棠三編注、平凡社東洋文庫、初版1972年、ワイド版2006年/平凡社ライブラリー、2000年(1巻 ISBN 978-4582763409、2巻 ISBN 978-4582763461)
- 『耳嚢』 全3巻 長谷川強校注、岩波文庫、初版1991年(上巻 ISBN 978-4003026113、中巻 ISBN 978-4003026120、下巻 ISBN 978-4003026137)
- 原本は「旧三井文庫 10巻本」に基づく(カリフォルニア大学バークレー校所蔵)。なお文庫旧版は全1巻で柳田國男らが担当、復刻版(一穗社)がある。
- 柳田の解説は『退読書歴』に収録。『全集』以外に、『柳田國男集 幽冥談』(ちくま文庫、2007年、ISBN 978-4480423597)がある。
- 現代語抄訳、『耳袋の怪』 (志村有弘訳、角川ソフィア文庫、2002年、ISBN 978-4043490035)
『耳袋』(長谷川政春訳、教育社歴史新書、1980年 絶版)がある。
出典[編集]
- 長谷川強による「耳嚢」文庫版解説
- 他に図版本で『裏江戸東京散歩 根岸鎮衛「耳嚢」で訪ねる江戸東京の怪・奇・妖』
- (古地図ライブラリー別冊・人文社、2006年)がある。
脚注[編集]
- ^ カリフォルニア大学バークレー校付属東アジア図書館の「旧三井文庫本」に、直筆原本に最も近い「10巻本」が所蔵されている。