義訓

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

義訓(ぎくん)とは、訓読みの一種であり、漢字に固定化した訓ではなく、文脈に合わせて個人的あるいはそれに近い狭い領域においてその場限りの訓を当てることをいう。義訓が固定化され広く用いられると熟字訓となる。

上代日本語[編集]

日本語の最古の記録である上代日本語の時代から義訓は用いられている。特に『万葉集』など上代文献での漢字の使い方を指すことが多い。「暖(はる)」「寒(ふゆ)」「金(あき)」「未通女(おとめ)」「数多(あまねし)」「間置而(へだたりて)」[1]など。

中古日本語・近世日本語[編集]

明治・大正[編集]

明治時代の明治元訳聖書では、漢文調の文章の中に多数の義訓が用いられている。例を挙げると以下のようなものがある[2]

  • 集合 あつまれる、生命いのち美麗うつくし
  • 穹蒼おおぞら定型かたち灌木
  • 神聖きよめ、草蔬くさ服従したがわせ、天象しるし
  • 天空そら実蓏たね創造つくり羽翼 つばさ
  • 時節とき元始はじめ光明ひかり曠空むなし
  • 曠空むなし安息やすみ黒暗やみわざ

また、明治から始まる言文一致文明開化による西洋文化の流入によって、欧文音写した片仮名にその意味から漢字を当てる形式の義訓も増えた。借用語を和語として扱い、熟字訓和魂洋才したものとも言える。例えば大正においては、

  • 接吻キッス厨夫コック背景バック覇王樹サボテンページ骨牌カルタ[3]
  • 憂鬱症ヒステリィ情調ムウド憂鬱メランコリイ郷愁ノスタルヂャア衝撃ショック異国趣味エキゾチック[3]
  • 麦酒ビイル火酒ウォッカ小酒杯リキュグラス(リキュールグラス)[3]
  • 外廊ヴェランダ露台バルコン(バルコニー)傾斜面スロウプ食卓布テエブルクロースカーテン喞筒ポムプ[3]
  • 緑玉エメラルド白金プラチナ石鹸シャボン[3]
  • 珈琲店カフェ牛乳ミルク[3]
  • 短艇ボート円弧灯アークとう洋灯ランプ裁縫機械/裁縫器ミシン[3]
  • 西洋手拭タヲル絹帽シルクハット羽毛頚巻ボア洋杖ステッキ[3]
  • 二声楽デュエット小歌リイド愁夜曲ノクチュルノ[3]

などの義訓が使われている。

現代の義訓[編集]

現代においてもポップソングの歌詞・漫画・ライトノベルなどをはじめとして多くのメディアで義訓は使用されている。例えば「本気」と書いて「マジ」と振り仮名をつけるなど。

脚注[編集]

  1. ^ 井上通泰(1928年)「相聞」『萬葉集新考』(國民圖書)2(4): 663、全国書誌番号 47020970
  2. ^ 明治元訳 (1887年)
  3. ^ a b c d e f g h i 白秋詩集 北原白秋 1920年初版 1924年第21版

関連項目[編集]