線状降水帯

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雨雲レーダー(Xバンド)が示す線状降水帯。2017年7月18日新潟県の例。
平成29年7月九州北部豪雨(2017年7月5日)の例。福岡・大分付近に、激しい雨の領域が掛かり続けた。

線状降水帯(せんじょうこうすいたい)は、「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50 - 300 km程度、幅20 - 50 km程度の強い降水をともなう雨域」(気象庁天気予報等で用いる予報用語)である[1]。即ち、積乱雲が線状に次々に発生して、ほぼ同じ場所を通過・停滞する自然現象であり、結果として非常に強い雨が特定の地域に長時間連続して降り続けることとなる。

日本でこの用語が頻繁に用いられるようになったのは、2014年平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害以降とみられる[2]

概要[編集]

線状降水帯の実体は複数の積乱雲の集合体であり、メソ対流系の一種とされる[2]。「線状降水帯 - 積乱雲群 - 積乱雲」の階層構造をもつ事例もある[2]。局地的な集中豪雨などの原因になっていると見られる。

気象庁気象研究所によるレーダー観測の分析では、1995年平成7年)から2006年(平成18年)に発生した台風以外の豪雨261件のうち、約6割(168件)は線状降水帯に起因していた。日本全国で発生し、特に西日本(九州中四国)に多い。発生メカニズムは解明しきれていないものの、発生しやすい4条件として「雲の元となる暖かく湿った空気の流入」「その空気が山や冷たい前線とぶつかるなどして上昇」「積乱雲を生みやすい不安定な大気状況」「積乱雲を流しては生む一定方向の風」が挙げられている[3]

日本では、集中豪雨発生時に線状の降水域がしばしばみられることが1990年代から指摘されていた[2]。気象研究所の津口裕茂・加藤輝之は、1995年(平成7年)から2009年(平成21年)の4月 - 11月の期間を対象として、日本で起きた集中豪雨事例を客観的に抽出し、降水域の形状についての統計解析を行った。その結果、台風によるものを除き、約3分の2の事例で線状降水帯が発生していることが明らかになった[2][4][5]。近年では、平成24年7月九州北部豪雨[2]平成25年8月秋田・岩手豪雨[2]平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害[6]平成27年9月関東・東北豪雨[6]平成29年7月九州北部豪雨[6]平成30年7月豪雨(西日本豪雨)[7]令和2年7月豪雨[8]令和4年6月北海道・東北豪雨で発生した。

分類[編集]

中緯度の線状降水帯については内部構造により、

  1. バッグビルディング型
  2. バッグアンドサイドビルディング型に分類される。

観測・予測[編集]

日本においては、気象庁が2021年令和3年)6月17日より、大雨による災害発生の危険度が急激に高まり(警戒レベル4相当以上)、さらに線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている状況で、顕著な大雨に関する情報を発表している[9]。さらに2022年(令和4年)6月1日より、「九州北部」など広域な地域を対象に半日程度前からの予測情報(気象情報)の提供を開始した[10][11]

気象庁は今後の情報改善について、線状降水帯による大雨の可能性を伝える事前情報として2024年には都道府県単位で、2029年には危険度分布の形式で市町村単位での危険度を把握できるよう、いずれも半日前からの予測情報提供を目指すとしている。また、線状降水帯による具体的な雨域を伝える予測情報として、2023年には30分前を目標とした直前の予測情報を、2026年には2 - 3時間前を目標としたより早い段階での予測情報の提供を開始するとしている[12]

参考文献[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 気象庁が天気予報等で用いる予報用語(2017年3月現在)雨に関する用語 線状降水帯”. 気象庁. 2017年7月7日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g 津口(2016)、p.11
  3. ^ 【クローズアップ科学】「線状降水帯」は全国で起きる 連続して襲う集中豪雨、予測は困難産経新聞』朝刊2017年8月21日(2017年8月23日閲覧)
  4. ^ 津口・加藤(2014)、p.19
  5. ^ 知恵蔵mini (2017年7月6日). “線状降水帯”. 朝日新聞出版. 2017年7月7日閲覧。
  6. ^ a b c “積乱雲が帯状に集まる「線状降水帯」豪雨原因に”. 読売新聞. (2017年7月5日). オリジナルの2017年7月5日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170705213928/http://www.yomiuri.co.jp/science/20170705-OYT1T50044.html 2017年7月7日閲覧。 
  7. ^ 「線状降水帯」各地で発生 積乱雲、同じ場所で次々と朝日新聞DIGITAL(2018年7月11日)2018年7月21日閲覧。
  8. ^ “球磨川氾濫なぜ 流域上に積乱雲の帯、対策しづらい地形”. 朝日新聞. (2020年7月4日). オリジナルの2020年7月10日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200710042528/https://www.asahi.com/articles/ASN7466NQN74ULBJ002.html 2020年7月10日閲覧。 
  9. ^ 線状降水帯に関する各種情報:顕著な大雨に関する気象情報とは”. 気象庁. 2022年6月4日閲覧。
  10. ^ 線状降水帯予測の開始について (PDF)”. 気象庁 (2022年4月28日). 2022年4月29日閲覧。
  11. ^ 今出水期から行う防災気象情報の伝え方の改善について (PDF)”. 気象庁大気海洋部業務課、水管理・国土保全局河川計画課 (2022年5月18日). 2022年5月18日閲覧。
  12. ^ 別添資料 (PDF)”. 気象庁大気海洋部業務課、水管理・国土保全局河川計画課 (2022年5月18日). 2022年5月18日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]