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紅包

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
紅包
現代の紅包
繁体字 紅包
簡体字 红包
発音記号
標準中国語
漢語拼音hóngbāo
ウェード式hung2-pao1
IPA[xʊ̌ŋ.pɑ́ʊ]
国語ローマ字horngbau
注音符号ㄏㄨㄥˊ ㄅㄠ
客家語
客家語拼音fùng-pâu
粤語
イェール粤拼hùhng bāau
IPA[hȍŋ paːúː]
粤拼hung4 baau1
閩南語
閩南語白話字âng-pau
台湾語ローマ字âng-pau
利是/利市/利事
発音記号
標準中国語
漢語拼音lìshì
IPA[lî.ʂî]
粤語
イェール粤拼laih sih
粤拼lai6 si6
閩南語
閩南語白話字lī-chhī

紅包(ホンバオ、簡体字: 红包; 繁体字: 紅包; 拼音: hóngbāo)は、主に中国語圏および華人社会において、金銭を赤い封筒または赤い包みに入れて贈る習俗、およびその封筒・包みを指す。福建語系ではang pow広東語圏では利是(利市・利事)とも呼ばれる[1][2]。赤色は中華文化において幸運・生命・幸福などを象徴するとされ、紅包は春節結婚式誕生日などの慶事における祝意の表現として用いられる[1][3]

春節に年長者から子どもへ贈られる金銭は、特に圧歳銭簡体字: 压岁钱; 繁体字: 壓歲錢; 拼音: yāsuìqián)と呼ばれ、日本のお年玉に近い性格をもつ。一方で、紅包は新年の子ども向けの贈与に限らず、婚礼、誕生日、出産、開業、謝礼などにも用いられる、より広い祝儀・金銭贈与の形式である[3][4]

現代では、紙の紅包袋に加えて、WeChat Payなどの電子決済サービスを用いた電子的な紅包も普及している。こうしたデジタル紅包は、伝統的な贈与習俗を電子送金・モバイル決済・オンライン上の社会関係と結び付けるものとして研究されている[5]

名称

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「紅包」は、字義どおりには「赤い包み」を意味する。普通話では hóngbāo と発音され、繁体字では「紅包」、簡体字では「红包」と書く。紅包を入れる封筒は紅包袋または紅封包などと呼ばれる[1][3]

広東語圏では、紅包は利是利市利事などと呼ばれる。大英博物館の収蔵品解説でも、赤い金銭封筒について、普通話では「hong bao」、広東語では「lai see」と呼ばれると説明されている[2]。これらの語は、香港マカオ、広東語を用いる華人社会で広く用いられる。

福建語閩南語系の華人社会では、ang powang pauangpaoなどの表記が用いられる。シンガポール国立図書館の解説では、シンガポールにおける紅包を「hongbao」または福建語の「ang pow」と説明している[1]。また、シンガポールの華人文化を扱うCulturepaediaでは、シンガポール華人社会における呼称として、福建語系の angbao / angpow、広東語系の lai see などが挙げられている[3]

ベトナムでは、春節に相当するテトの金銭贈与としてlì xìmừng tuổiの語が用いられる。これらは中国語圏の紅包・利是と関連する習俗として扱われることが多い。

日本語では「紅包」を音読みして「こうほう」と読むことも可能であるが、中国語音に基づく「ホンバオ」と表記されることも多い。日本語読者にとっては「中国のお年玉」と説明されることがあるが、厳密には春節の子ども向け金銭贈与である圧歳銭と、広義の祝儀袋・金銭贈与である紅包とは区別される[4][6]

歴史

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紅包の歴史は、春節に子どもへ金銭を贈る圧歳銭の習俗と深く関係している。古くは銭を糸や紐でつないで子どもに与え、邪気を避ける、長寿や平安を願うといった意味を込めたものとされる。清代の歳時記類には、年長者が子どもに銭を与える圧歳銭の習俗が記録されており、のちに銭や紙幣を赤い紙・赤い封筒に包む形式へと変化した。

近現代になると、紙幣を紅包袋に入れて贈る形式が一般化し、春節だけでなく、婚礼、誕生日、出産、開業、謝礼などの慶事にも用いられるようになった。紅包は単なる金銭贈与ではなく、贈り手から受け手への祝福や関係性を示すものとして機能している[3][1]

用途

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紅包は、春節に年長者から子どもや未婚の若年者へ贈られるものとしてよく知られる。この場合の金銭は圧歳銭とも呼ばれ、子どもの成長、健康、幸運を願う意味をもつ。地域によっては、既婚者が未婚者へ渡す、年長者が年少者へ渡す、雇用主や上司が従業員へ渡すなど、贈与者と受領者の関係に一定の慣習がある[3][1]

春節以外にも、紅包は婚礼、誕生日、出産、引っ越し、開業などの慶事に用いられる。シンガポール華人文化センターの解説では、紅包は春節、出産、誕生日、婚礼、転居、起業など、人生の重要な節目における祝福の表現として説明されている[3]

紅包袋

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紅包を入れる赤い封筒は紅包袋と呼ばれる。紅包袋には、赤地に金色の文字や図案が施されることが多く、「福」「春」「囍」などの吉祥文字、干支、子ども、爆竹、魚、龍などの縁起物が描かれることがある。大英博物館が所蔵する紅包袋にも、赤地に金色や多色刷りで子ども、太鼓、爆竹、福字などが表された例がある[2]

紅包袋は単なる封筒ではなく、祝意や吉祥観念を視覚的に表す媒体でもある。シンガポールの孫文南洋記念館による展覧会「Prosperity in Packets: Hongbao in Chinese Culture」では、紅包の歴史や意義に加え、紅包袋の美意識やデザインの変化も扱われている[7]

各地の習俗

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中国語圏

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中国大陸、香港、マカオ、台湾では、紅包は春節や婚礼をはじめとする慶事に広く用いられる。広東語圏では「利是」の語が一般的で、香港やマカオでは春節に既婚者が未婚者へ利是を配る習俗が見られる。

シンガポール

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シンガポールでは、福建語系のang pow、広東語系のlai see、普通話系のhongbaoなどの呼称が用いられる。シンガポール国立図書館は、紅包を赤い包みに入れた金銭の贈り物と説明し、春節や婚礼などの吉祥行事における祝意の表現としている[1]。また、シンガポール華人文化センターは、紅包をシンガポール華人社会における重要な年中行事・人生儀礼の習俗として位置付けている[3]

日本との比較

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日本のお年玉は、春節に子どもへ贈られる圧歳銭と類似するが、紅包は新年の贈与に限らず、婚礼や開業など多様な慶事に用いられる点で範囲が広い。また、日本の祝儀袋は水引や表書きを伴う形式が一般的であるのに対し、中国語圏の紅包は赤色の封筒に吉祥文字や図案を施す点に特徴がある[4][6]

デジタル紅包

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2010年代以降、中国では電子決済サービスを利用したデジタル紅包が普及した。特にWeChat Payの紅包機能は、春節の贈与習俗とスマートフォン決済を結び付けたものとして注目されている。Augustin-Jeanは、デジタル紅包が単なる電子送金ではなく、春節の贈与慣行、家族・友人関係、オンライン上の社会関係を再編するものとして論じている[5]

脚注

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  1. 1 2 3 4 5 6 7 Hongbao giving - Singapore (英語). Singapore Infopedia. National Library Board Singapore. 2026年7月6日閲覧。
  2. 1 2 3 money envelope (英語). The British Museum. The British Museum. 2026年7月6日閲覧。
  3. 1 2 3 4 5 6 7 8 Red packets (Hongbao) (英語). Culturepaedia. Singapore Chinese Cultural Centre (2025年12月16日). 2026年7月6日閲覧。
  4. 1 2 3 春節大分析 その二:お年玉と紅包はちょっと違います”. ハオ中国語アカデミー神田校ブログ. ハオ中国語アカデミー (2022年1月28日). 2026年7月6日閲覧。
  5. 1 2 Augustin-Jean, Léonard (2024). “Digitalising Chinese New Year Red Packets: Changing Practices and Meanings” (英語). China Perspectives 2026年7月6日閲覧。.
  6. 1 2 紅包の意味やお年玉の由来、相場およびマナーについて紹介”. China Highlights. 2026年7月6日閲覧。
  7. Prosperity in Packets: Hongbao in Chinese Culture (英語). Sun Yat Sen Nanyang Memorial Hall. 2026年7月6日閲覧。