篠原眞
篠原 眞 | |
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生誕 | 1931年12月10日 |
出身地 |
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学歴 | 東京芸術大学 |
ジャンル | 現代音楽 |
職業 | 作曲家 |
篠原 眞(しのはら まこと、1931年12月10日 - )は日本の作曲家[1][2]。大阪府出身。主としてオランダのユトレヒト在住[3]。
略歴[編集]
大阪府大阪市出身[4]、東京都青山育ち。東京都立日比谷高等学校卒業後、青山学院大学に入学するも中退、東京藝術大学作曲科に入学。東京では池内友次郎、安川加寿子、渡邉暁雄、クルト・ヴェスらに師事。しかし、芸大も中退してフランスへ渡り、トニー・オーバンに作曲を師事、「ヴァイオリン・ソナタ」で一等賞首席、オリヴィエ・メシアンに音楽哲学(一等賞)、シモーヌ・プレ・コーサードに対位法(一等賞)とフーガ(二等賞)、ピエール・ルヴェルに和声法(二等賞)、ルイ・フーレスチェに指揮法を師事する[5]。プリミエ・プリを得てパリ国立高等音楽院を卒業。メシアンに勧められてダルムシュタット夏季現代音楽講習会へ参加し、ドイツに移ることを決意。
ケルンで作曲をベルント・アロイス・ツィンマーマンに、電子音楽をゴットフリート・ミヒャエル・ケーニッヒに高く評価され、その完璧な様式美を称えられた。後に念願であったカールハインツ・シュトックハウゼンとアシスタントとして共に仕事をすることとなり、一時は篠原はシュトックハウゼンの創作の紹介者として日本に伝えられていた。一時アメリカ大陸にも住んでいたが、以後現在に至るまでオランダのユトレヒトなどヨーロッパ在住。
海外で質の高い創作を行いながら日本で全く評判が上がらないことを気に病んだピアノ調律師原田力男の主催で、1987年に篠原の個展とレクチャーが開催され、大きな話題となった。そのとき個展で演奏された作品には、チェロ独奏の為の「エヴォリューション」と、ステレオ増幅されたバス・フルートのための「パッセージ」[6]などがある。2006年12月にケルンの日本文化センターで行われた生誕75周年記念の記念演奏会は、これまでの創作の展望を一覧できる重要な機会となった。
作風[編集]
作品リストから割愛されたオーケストラ曲や、ヴァイオリンとピアノの為の「ソナタ」では前衛イディオムは用いられていないものの、1960年代以後は新古典的様相が完全に消え、前衛イディオムに彩られた作品を次々と発表する。リコーダーソロの為の「フラグメント」、ピアノ独奏の為の「タンダンス」、打楽器合奏の為の「アルテルナンス」などがこれに入る。
1970年代以後は通じて「和洋の音楽的融合」をテーマに据え、エキゾティシズムが表層に出ず、なおかつ質の高い様式美を失っていない。この時期の作品は「かっこつきの日本に毒された創作」と批判されることもある。しかし、和洋楽器合奏の為の「コゥオペレーション」、25の西洋楽器の為の「エガリサシオン」、フルートとピアノの為の「レラシオン」などの評価は高い。また、片山杜秀は管弦楽と混声合唱のための「夢路」を『ONTOMO MOOK クラシック名盤大全 管弦楽曲篇』(音楽之友社 1998年8月発行)に採り上げ、「望郷の音楽」として好意的な評価を書いている。
「同一ジャンルごとに模倣を生まない」という厳しい作曲態度であり、全作品数が極めて少ない。
主要作品[編集]
編曲作品「日本の歌より」は作品リストに掲載されていないこともあり、外国語題名を付けていない。彼の作品は全音楽譜出版社、音楽之友社、日本作曲家協議会、キックオフ、レデュック社、メック出版社、トレメディア音楽出版社から出版されている[7]。近作はEdition Gravisから発売されている[8]。
管弦楽[編集]
- Solitude 〈孤独〉
- Visions II〈幻影II〉
- Égalisation〈平等化〉(25人の器楽奏者。音楽之友社からの出版譜では「エガリザシオン」と表記されている)
- Liberation〈解放〉
- 夢路〈Ways of Dreams〉(和洋楽器のオーケストラと混声合唱)
- ロンド(1953年東京交響楽団委嘱作品)[9]
室内楽[編集]
- Trois d'Anches〈木管三重奏曲〉(オーボエ、クラリネット、ファゴット)
- Sonate〈ソナタ〉(ヴァイオリン、ピアノ)
- Kassouga〈春日〉(フルート、ピアノ)
- Trois Pièces Concertantes〈3つの協奏的小品〉(トランペット、ピアノ)
- Obsession〈概念〉(オーボエ、ピアノ)
- Alternance〈交互〉(6打楽器奏者)
- Consonance〈協和〉(フルート、ホルン、ヴィブラフォン、マリンバ、ハープ、チェロ)
- Relations〈関係〉(フルート、ピアノ)
- 求道B〈In quest of enlightenment B〉(尺八、ハープ。なお、『日本の作曲20世紀』では「尺八、フルート」となっていた)
- Play〈遊び〉(フルート、アルトフルート、オーボエ、クラリネット、バスクラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン)
- Turns〈巡り〉(ヴァイオリン、箏またはヴァイオリン)
- Cooperation〈協力〉(8人の邦楽器奏者と8人の洋楽器奏者。全音楽譜出版社から刊行された楽譜では「コゥオペレーション」)
- Situations〈状況〉(アルトサックス、シンセサイザー)
- Undulation B〈波状B〉(2台のピアノ)
- Fragmente Duo〈断片 デュオ〉(バスフルート、二十一絃箏)
- Fragmente Trio〈断片 トリオ〉(バスフルート、二十一絃箏)
独奏[編集]
- Tendance〈傾向〉(ピアノ。メック出版社からの楽譜では「タンダンス」)
- Fragmente〈断片〉(バスフルート)
- Réflection〈思いわずらい〉(オーボエ)
- たゆたい〈Fluctuation〉(箏、打楽器、声。箏奏者が打楽器と声を兼ねる。独唱者を別に立ててもよい)
- 求道A〈In quest of enlightenment A〉(尺八)
- Elevation〈高揚〉(オルガン)
- Passage〈移り行き〉(ステレオ増幅されたバスフルート。アルトフルートやフルートでも、また増幅なしで演奏することも可能。日本作曲家協議会から出版された楽譜では「パッセージ」)
- 流れ〈Flow〉(三味線。全音楽譜出版社の楽譜では、外国語表記が「Nagare」となっている)
- 十七絃の生まれ〈Birth of the Bass Koto〉(十七絃)
- Evolution〈進展〉(チェロ。日本作曲家協議会から刊行された楽譜では「エヴォリューション」)
- Undulation A〈波状A〉(ピアノ)
声楽[編集]
- たびゆき〈On Travel〉(メゾソプラノ、12奏者)
- 日本の歌より(無伴奏混声合唱。編曲)
テープ音楽[編集]
- Visions I〈幻影 I〉
- Mémoires〈回想録〉
- Personage〈人物〉
- Broadcasting〈ラジオ放送〉
- City Visit〈都市空間〉
その他[編集]
- 東京都立日比谷高等学校校歌
脚注[編集]
- ^ “Shinohara, Makoto”. www.oxfordmusiconline.com. www.oxfordmusiconline.com. 2020年8月18日閲覧。
- ^ 音楽の友社の楽譜での名前は常用漢字の「真」だが、本人のサインでは旧字体の「眞」が使われている。
- ^ ユトレヒト在住だが東京と京都にも住まいがある
- ^ 『読売年鑑 2016年版』(読売新聞東京本社、2016年)p.511
- ^ 細川周平・片山杜秀監修『日本の作曲家-近現代音楽人名事典』日外アソシエーツ、2008年、335頁。
- ^ “篠原 眞:ステレオ増幅されたバス・フルートのための「パッセージ」”. shop.zen-on.co.jp. shop.zen-on.co.jp. 2020年8月18日閲覧。
- ^ 作品の表記法は、『日本の作曲20世紀』(音楽之友社)の篠原眞作品リストの下に掲げられている、「篠原眞作品の発音と望ましい表記法について」によった。外国語による表記と〈〉(山カッコ)内の日本語を併記するかたちを採用している。ただし、以下の作品においては、日本語と外国語の位置が逆転している。
- ^ “SHINOHARA, MAKOTO”. www.editiongravis.de. www.editiongravis.de. 2020年8月18日閲覧。
- ^ “ロンド | 東京音楽大学付属図書館ニッポニカ・アーカイヴ”. 東京音楽大学付属図書館ニッポニカ・アーカイヴ | 日本のオーケストラ作品演奏のために (2015年12月25日). 2023年2月15日閲覧。