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神路山

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

神路山(かみじやま)は三重県伊勢市宇治にある山域で、南方面から伊勢神宮の内宮(皇大神宮)へ流れる五十鈴川上流域の流域の総称である。別称として、神道山、天照山(あまてるやま)、鷲(わしの)日山がある[1]

内宮付近の島路山と神路山

東は五十鈴川支流の島路川流域の島路山と稜線を共有する。伊勢神宮の他の森林と合わせ、神宮林と呼ぶ。神路山には宇治今在家町大字高麗広(こうらいびろ)があり、民家と農地が点在する。

西から南へは鼓ヶ岳-前山-鷲峰(しゅうれい)-竜ヶ峠、南から東へ八禰宜(はねぎ)山-剣峠-逢坂峠、ここよりほぼ北上し、五十鈴川と島路川を隔てる尾根の稜線を結び内宮に戻る。その周囲は約25kmである。島路山と同様に特別な山頂を意味しない。

竜ヶ峠は伊勢市矢持町から高麗広に通じる山道にあるで、徒歩以外は通行困難なため自動車が普及してからは往来が絶え、ほぼ廃道になった。剣峠は三重県道12号伊勢南勢線にある峠で、大型車の通行は禁止されている。

神路山と島路山にはシカなどの動物が生息しており、県道12号伊勢南勢線に現れることがある。

神路山は他の神宮林と同様に、古くは神宮式年遷宮に用いるヒノキを調達する御杣山(みそまやま)であったが、これらの森林のヒノキが枯渇したため御杣山は年代により変遷し、江戸時代から木曽美濃が御杣山となっている。神宮では大正末期から神宮林で檜の植林を行なっているが、間伐材を除けば遷宮に使えるようになるのは2125年からと予定されている。

神路山ではヒノキの人工林以外に広葉樹も保護されており、学術的に貴重な針広混交林とされる。

歌枕として

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順徳天皇が著した『八雲御抄』にも歌枕として記載されており[2]、古来多くの和歌に詠まれてきた。

鈴鹿河 ふりさけ見れば 神路山 さかき葉わけて 出づる月影 — 行意(新三十六歌仙)、『続後撰和歌集』より
【社頭雪】神路山 山田をかけて 降りつもり 雪は内外の 宮もへだてず — 房子内親王、1931年(昭和6年)の歌会始にて[3]

関連項目

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出典

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  1. ^ 出丸恒雄『伊勢名所和歌集成 下』(郷土部、1962年)85頁。
  2. ^ 八木意知男『歌枕の探求 1』(和泉書院、1985年)49頁。
  3. ^ 星野小次郎編『明治・大正・昭和勅題歌集』(万里閣、1935年)358頁。