ツワブキ

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ツワブキ
Petasites japonicus02.jpg
ツワブキの花
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : キク亜綱 Asteridae
: キク目 Asterales
: キク科 Asteraceae
亜科 : キク亜科 Asteroideae
: ツワブキ属 Farfugium
: ツワブキ F. japonicum
学名
Farfugium japonicum (L.) Kitamura[1]
シノニム

Farfugium luchuense(リュウキュウツワブキ)[2] Farfugium tussilagineum
Farfugium grande(品種キモンツワブキ)[3]
Ligularia gigantea(オオツワブキ)[2]
Ligularia kaempferi[3]
Ligularia tussilaginea
Tussilago japonica[4]

和名
ツワブキ(石蕗)
英名
Leopard plant[5]
Green leopard plant

ツワブキ(石蕗、艶蕗、学名Farfugium japonicum (L.) Kitam.[1]シノニムFarfugium tussilagineumLigularia tussilaginea )は、キク科ツワブキ属に属する常緑多年草である。海岸近くの岩場などに生え、初冬に黄色い花を咲かせる。葉柄は食用になる。観賞用に庭園に植えられることもある。

名称[編集]

和名ツワブキの由来は、艶葉蕗(つやはぶき)、つまり「艶のある葉を持ったフキ」から転じたとする説のほか[6][7]、厚葉蕗(あつはぶき)、つまり「厚い葉を持ったフキ」から転じたとする説もある。地方により、ツワ[8]、イシブキ[8]、ツワンポ[8]、オカバス、オバコなどとも呼ばれ[9]沖縄方言では「ちぃぱっぱ」、奄美方言では「つばしゃ」・「つば」、宮古方言では「つぱぱ」、八重山方言では「ちゅぶりんぐさ」(頭の草)と呼ばれる。

現在の中国の標準名は「大呉風草」(だいごふうそう、拼音: dàwúfēngcǎo)であるが[8]、「一葉蓮」、「活血蓮」、「八角烏」、「金缽盂」などの異名がある。台湾語では「乞食碗」(khit-chia̍h-oáⁿ、キッチャワ)または「山菊」(soaⁿ-kio̍k、ソアキオッ)と呼ばれる。

韓国語では「털머위」(トルモウィ)と呼ぶが、毛の生えた蕗を意味するが、葉の裏に毛が多いことによる。朝鮮語では「말곰취」(マルゴムチュイ)と呼ぶが、オタカラコウを意味する。

日本においては、「石蕗の花(つわのはな)」や「いしぶき」は初冬の季語とされている。島根県津和野(つわの)の地名は「石蕗の野(ツワの多く生えるところ)」が由来となっているという。

分布・生育環境[編集]

日本においては、本州太平洋側では福島県から、日本海側では石川県から西の地域及び、四国九州及び南西諸島大東諸島及び尖閣諸島を除く)に分布し[10]、日本国外では朝鮮半島及び鬱陵島済州島などの島嶼や中国東南部及び台湾に分布する。表面のツヤが潮風から本体を守るため、主に海岸沿いに多く自生し[8]、岩の上や崖の上などに生える[11]。そのほか低地から山地の日陰などにも多い。日本では、観賞用に日本庭園などにもよく植えられている[11]

形態・生態[編集]

冬にも緑の葉が茂り、何年も枯れずによく生き残れる常緑多年草[10]。草丈はおよそ30 - 75センチメートル (cm) ほどで、日陰がちのところを好む性質がある[7]

土の下に短い茎があり、土の上には葉だけが出る。葉は土の中の根から生える根生葉で、葉身は基部が大きく左右に張り出し、全体で円の形に近くなる腎臓形で特有の香りがある[10]。葉の長さは4 - 15 cm、幅6.5 - 29 cmと大型で[11]、濃い緑色をしており、葉身は厚くて表面につやがある[10]。長い葉柄(軸)を持ち[10]、葉柄は大きく切れ込んだ葉身の中心につく。こうした持ち前は同じキク科のフキと よく似ているが、フキは、秋になると葉が落ちる夏緑性の草であり、常に緑の葉をつけているツワブキとは別属の植物である。ツワブキの若葉は、はじめ内側に巻き、灰褐色の長毛が生えているが、後に無毛になる[10]。葉の裏面に毛が多く生えている。

花期は初冬から冬にかけて(10 - 12月ころ)[7]。葉の間を抜けて花茎を伸ばして高さ30 - 75 cmになり[11]、その先端が枝分かれした散房花序をつけ、直径5 cm前後のキクに似た黄色い頭状花を、ややまばらに数個まとめて咲かせる[10][7]。花のつくりは、外周に舌状花が並び、中心には密に管状花が集まっていて、どちらの花も結実する[10]。実には褐色の冠毛があり、風を受けて散布する[10]

有毒なピロリジジンアルカロイドという物質を含んでいる。

利用[編集]

斑入りの変種F. japonicum 'Argenteum'

花の少ない冬に開花するので、観賞用に栽培もされている[11]。薬用には、解毒、排膿、皮膚病を目的に、通常生薬を用いる[10]。食用には葉柄の皮を取り去って、茹でてよく水にさらし、苦味をとって調理される[10]

園芸[編集]

日陰でもよく育つので、園芸植物として日本庭園の石組みや木の根元などに好まれる[8]台湾などでも園芸用に栽培されており、斑入りの葉を持つものもある。園芸品種は多数あり、斑入り葉や奇形葉などがある[7]。同属のカンツワブキとの種間交雑種もあり、品種としては「屋久の幻」「屋久姫」などがある[12]。栽培は、半日陰や樹木下の弱光の場所が良く、株分けで繁殖させる[10]

食用[編集]

鹿児島県沖縄県を中心に西日本の一部地域ではフキと同じように葉柄を食用としており、特に奄美大島などの奄美料理では塩蔵した骨付き豚肉とともに煮る年越しの料理「うゎんふねぃやせぅ」の具に欠かせず、沖縄県でも豚骨とともに煮物にして食べる。フキを原料にした煮物、佃煮と同様に「キャラブキ」と呼ばれることもある。他に炒め物や飴煮の「つば菓子」にも使われる。ピロリジジンアルカロイドを含むため、軽くゆがいて皮を剥き、を少量加えた湯で煮直し、1日以上水に晒すなどの灰汁抜きが必要であり、フキよりも準備に手間がかかる。鹿児島県などでは、灰汁抜きしたものが市場で売られており、また、灰汁抜きした状態で冷凍保存し、後日調理して食べることもできる。韓国料理では、煮物の他、汁物、天麩羅にもされる。

三重県南伊勢町高知県土佐清水市などでは木枠にツワブキの葉を敷いて押し寿司である「つわ寿司」が作られている[13][14]が、葉そのものは食べない。  廣野(1993)によれば、ラットに肝ガンをおこし、発ガン性が疑われる。 アルカロイドpyrrolizidineによると考えられている。[15]

薬用[編集]

民間薬として、主に茎葉を8 - 9月ごろに採取して天日乾燥したものを生薬とし、蓮蓬草(れんぽうそう)や橐吾(たくご)と称して、のどの腫れ、おでき、切り傷、打撲火傷に用いる[8]。のどの痛みには、茎葉を乾燥したものを1日量3 - 5グラムを600 ccの水に入れて煎じ、3回に分けて服用する用法が知られている[8]。腫れ物、打撲、凍傷、おでき、切り傷、火傷には生葉を火であぶって、柔らかくなったら揉んで患部に貼り、時々取り換えると膿が出て治癒に役立つといわれている[8][10]。また、魚の中毒、食あたりには催吐剤として、生葉のしぼり汁を50 cc以上飲むとされる[10]

中国語の「橐吾」(学名 Ligularia sibirica)はキク科メタカラコウ属の別の植物で[16]、主に華北の山間や沼地に分布する。黄色いキクに似た花を長い茎の先に咲かせる点はツワブキと共通するが、花が密集して咲き、葉には光沢がなく、同じ植物には見えない。中国での民間薬としての呼称としては、浙江省福建省などの「蓮蓬草」がある[16]韓薬としては「연봉초」(連蓬草、ヨンボンチョ)、「독각연」(獨脚蓮、トッカンヨン)と呼び、全草を干して刻み、煎じて解熱、解毒薬、喉の痛み止めとして利用する。

変種[編集]

リュウキュウツワブキ F. japonicum(L.) Kitam. var. luchuense (Masam.) Kitam.[17]
奄美大島沖縄島西表島に分布する琉球諸島固有変種渓流植物。ツワブキとはの形が極端に異なり、円形からハート形をしているツワブキに対し、本変種は扇形からひし形をしており、葉面積が狭くなっている(狭葉現象)。これはツワブキが渓流環境に適応した結果であると考えられている[18]。沖縄島と西表島では比較的多いが、奄美大島では2つの河川に少数個体が点在するのみであり[19]環境省レッドリストで準絶滅危惧に、鹿児島県レッドデータブックで絶滅危惧I類に評価されている[20]
オオツワブキ F. japonicum (L.) Kitam. var. giganteum (Siebold et Zucc.) Kitam.[21]
九州の海岸に分布する[22]。ツワブキよりも大きくなり、葉身の幅が45cm、長さが35cmにもなり、花茎も1mになる[22]。花期は12-1月[22]。葉柄は食用となる[22]
タイワンツワブキ F. japonicum (L.) Kitam. var. formosanum (Hay.)
台湾で「台灣山菊(Tâi-oân soaⁿ-kio̍k)」と呼ばれ、台湾本島の一般に海抜1000m以上の山地に分布する[23]。葉の縁に7-9の鈍角の角があり、洋傘を逆さに広げた様な形状をしているため、区別できる。台湾で日本のツワブキは主に台湾本島南端の恒春半島や離島である緑島蘭嶼に分布する[23]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ a b 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). “BG Plants 和名-学名インデックス(YList) ツワブキ”. 2015年10月10日閲覧。
  2. ^ a b 奥野哉 2017, p. 11.
  3. ^ a b 奥野哉 2017, pp. 10, 16.
  4. ^ 奥野哉 2017, pp. 11, 16.
  5. ^ Farfugium japonicum (L.) Kitam. "USDA, ARS, National Genetic Resources Program. Germplasm Resources Information Network - (GRIN) [Online Database]. National Germplasm Resources Laboratory, Beltsville, Maryland. 2013年8月21日閲覧。
  6. ^ 多和田真淳監修・池原直樹著 『沖縄植物野外活用図鑑 第5巻 低地の植物』 新星図書出版、1979年、180-181頁。
  7. ^ a b c d e 大嶋敏昭監修 2002, p. 281.
  8. ^ a b c d e f g h i 貝津好孝 1995, p. 103.
  9. ^ "ツワブキとは│ヤサシイエンゲイ".(京都けえ園芸企画舎). 2015年12月8日閲覧
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n 馬場篤 1996, p. 76.
  11. ^ a b c d e 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 21.
  12. ^ 奥野哉 2017, pp. 181 - 182.
  13. ^ 南伊勢町. “ふれあい味体験「郷土の味ふるさとレシピ」ツワブキの押し寿司” (日本語). 南伊勢町. 2016年1月4日閲覧。
  14. ^ 郷土ものがたり. “つわずし” (日本語). 郷土ものがたり. 2016年1月4日閲覧。
  15. ^ I Hirono.(廣野 巖) Edible Plants Containing Naturally Occurring Carcinogens in Japan. Jpn J Cancer Res. 1993 Oct;84(10):997-1006.PMID: 8226284 PMC5919061
  16. ^ a b 奥野哉 2017, p. 9.
  17. ^ 奥野哉 2017, p. 18.
  18. ^ 土屋誠・宮城康一編 『南の島の自然観察』 東海大学出版会、1991年、ISBN 4-486-01159-7
  19. ^ 鹿児島県環境生活部環境保護課編 『鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物-鹿児島県レッドデータブック植物編-』 財団法人鹿児島県環境技術協会、2003年、339頁、ISBN 4-9901588-1-4
  20. ^ "日本のレッドデータ検索システム「リュウキュウツワブキ」". (エンビジョン環境保全事務局). 2013年8月21日閲覧。
  21. ^ 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). “BG Plants 和名-学名インデックス(YList) オオツワブキ”. 2015年10月10日閲覧。
  22. ^ a b c d 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎 他 『日本の野生植物 草本III合弁花類』 平凡社、1999年、新装版第1刷、ISBN 4-582-53503-8、p. 185
  23. ^ a b 張聖顯、「台灣山菊之栽培與利用」『花蓮區農業專訊』第66期、2008年、花蓮、花蓮區農業改良場。[1]

参考文献[編集]

  • 大嶋敏昭監修『花色でひける山野草・高山植物』成美堂出版〈ポケット図鑑〉、2002年5月20日、281頁。ISBN 4-415-01906-4
  • 奥野哉『ツワブキ 栽培管理・育種・歴史・多様な変異形質がわかる』誠文堂新光社、2017年。ISBN 978-4-416-51766-6
  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、103頁。ISBN 4-09-208016-6
  • 島袋敬一 編著 『琉球列島維管束植物集覧【改訂版】』 九州大学出版会、1997年、565-566頁、ISBN 4-87378-522-7
  • 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著『花と葉で見わける野草』小学館、2010年4月10日、21頁。ISBN 978-4-09-208303-5
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、76頁。ISBN 4-416-49618-4
  • 林弥栄 編 『山溪カラー名鑑 日本の野草』 株式会社山と溪谷社、1983年、51頁、ISBN 4-635-09016-7

関連項目[編集]

外部リンク[編集]