真梨幸子

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真梨 幸子まり ゆきこ
誕生 1964年
宮崎県
職業 小説家
国籍 日本の旗 日本
活動期間 2005年 -
ジャンル ミステリー
代表作殺人鬼フジコの衝動
主な受賞歴 メフィスト賞(2005年)
デビュー作 『孤虫症』
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(まり ゆきこ、1964年[1] -)は、日本小説家推理作家宮崎県生まれ[1]

経歴[編集]

1987年多摩芸術学園映画科[注 1]卒業。卒業後は大手メーカーに就職し、製品のマニュアルを作る部門でユーザーに分かりやすく仕様書を翻訳するテクニカルライターの仕事を担当する[1]。メーカーを退社後もフリーでテクニカルライターの仕事を続けたが、ライターとしては才能的にも体力的にも将来に限界があると感じ、小説家へ転向することを決める[1]。最初は公募の賞金目当てだったが、書き始めて5年目[1]2005年、『孤虫症』で第32回メフィスト賞受賞してデビュー[2]

デビュー後もライターや派遣の仕事などを続けながら作品を書き続けるが、鳴かず飛ばずの状態で順風満帆とはいかなかった[1]。しかし2008年に刊行した『殺人鬼フジコの衝動』は50万部を超えるベストセラーとなる[3]。その後も心の奥底にある人間の感情をえぐり出して暴き、読者は「見たくない」と思っているのに先を読み進めたくなってしまうような作品[4]を次々と発表し、湊かなえ沼田まほかるらとともにイヤミス(読んだ後にイヤな後味が残るミステリー)の旗手として注目される[2][4]

2015年、『人生相談。』で第28回山本周五郎賞候補。

人物[編集]

昔からワイドショーが好きで、視聴者の夢をかなえる番組の企画に、高校生当時好きだった田村高廣に会いたいと投稿し、採用されたことがある[5]。映画も大好きで、学生時代は名画座に通いつめる日々を送る[5]。大学では映画を学び、卒業製作でもドキュメンタリーを撮影したというが、このことが小説の作風にも影響を与え、小説家になってからもモキュメンタリー(ドキュメンタリーに見せかけたフィクション)を得意としている[1]。小説を書く時にはプロットは作らず、登場人物が自己アピールするがままに物語を進めていくという手法をとり[1]、時には20人以上の登場人物を年表で整理しながら書き上げる[5]。座右の銘は「読者をだますにはまず自分から」[5]

ペンネームはザ・タイガースのデビュー曲、「僕のマリー」に由来する。グループ・サウンズのファンで、著作の『深く深く、砂に埋めて』は、ザ・タイガースの「美しき愛の掟」にインスパイアーされている。[6]

マリモという名前の猫(ブリティッシュショートヘア)を飼っており、自身のブログで猫との生活を綴っている[7]

作品リスト[編集]

単著[編集]

  • 孤虫症(2005年3月 講談社 / 2008年10月 講談社文庫
  • えんじ色心中(2005年11月 講談社/ 2014年9月 講談社文庫)
  • 女ともだち(2006年6月 講談社 / 2012年1月 講談社文庫)
  • 深く深く、砂に埋めて(2007年10月 講談社 / 2011年8月 講談社文庫)
  • クロク、ヌレ!(2008年9月 講談社 / 2012年10月 講談社文庫)
  • 殺人鬼フジコの衝動(2008年12月 徳間書店 / 2011年5月 徳間文庫 / 2012年3月 徳間文庫【限定版】)
    • 限定版は次作への序章となる書き下ろし短編「私は、フジコ」と2冊セット
  • ふたり狂い(2009年3月 早川書房 / 2011年11月 ハヤカワ文庫 / 2016年10月 幻冬舎文庫
    • 収録作品:エロトマニア / クレーマー / カリギュラ / デジャヴュ / ゴールデンアップル / ホットリーディング / ギャングストーキング / フォリ・ア・デュ
  • 更年期少女(2010年3月 幻冬舎
    • 【改題】みんな邪魔(2011年12月 幻冬舎文庫)
  • 聖地巡礼(2011年2月 講談社ノベルス
    • 【改題】カンタベリー・テイルズ(2015年11月 講談社文庫)
      • 収録作品:グリーンスリーブス / カンタベリー・テイルズ / ドッペルゲンガー / ジョン・ドゥ / シップ・オブ・テセウス
  • パリ黙示録 1768 娼婦ジャンヌ・テスタル殺人事件(2011年8月 徳間書店)
    • 【改題】パリ警察1768(2013年8月 徳間文庫 / 2021年3月 徳間文庫〈新装版〉)
  • プライベートフィクション(2012年9月 講談社ノベルス)
    • 収録作品:一九九九年の同窓会 / いつまでも、仲良く。 / 小田原市ランタン町の惨劇 / 自由研究 / 夢見ヶ崎
  • 四〇一二号室(2012年10月 幻冬舎)
    • 【改題】あの女(2015年4月 幻冬舎文庫)
  • インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実(2012年11月 徳間文庫) - 「殺人鬼フジコの衝動」続編
  • 鸚鵡楼の惨劇(2013年7月 小学館 / 2015年7月 小学館文庫
  • 人生相談。(2014年4月 講談社 / 2017年7月 講談社文庫)
  • 5人のジュンコ(2014年12月 徳間書店 / 2016年6月 徳間文庫)
  • お引っ越し(2015年3月 KADOKAWA /2017年11月 角川文庫)
    • 収録作品:扉 / 棚 / 机 / 箱 / 壁 / 紐/解説
  • アルテーミスの采配(2015年9月 幻冬舎 / 2018年2月 幻冬舎文庫)
  • 6月31日の同窓会(2016年1月 実業之日本社 / 2019年2月 実業之日本社文庫)
  • 私が失敗した理由は(2016年7月 講談社 / 2019年9月 講談社文庫)
  • イヤミス短篇集(2016年11月 講談社文庫)
    • 収録作品:一九九九年の同窓会 / いつまでも、仲良く。 / シークレットロマンス / 初恋 / 小田原市ランタン町の惨劇 / ネイルアート
  • カウントダウン(2017年2月 宝島社 / 2020年6月 宝島社文庫
    • 宝島社『大人のおしゃれ手帖』2015年3月号 -2016年11月号 連載
  • 祝言島(2017年7月 小学館 / 2021年5月 小学館文庫)
    • 小学館『きらら』2015年2月号 - 2016年12月号掲載
  • ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで(2018年1月 幻冬舎 / 2020年4月 幻冬舎文庫)
    • あなたがお望みのものは何でも(幻冬舎『ポンツーン』2013年7月号 - 2014年1月号)
    • あなたがお望みのものは何でもseason2(幻冬舎『小説幻冬』2016年11月号 -2017年1月号)
  • 向こう側の、ヨーコ(2018年4月 光文社 / 2020年9月 光文社文庫
    • 向こう側の、ヨーコ(光文社『小説宝石』2017年1月号 - 2017年10月号)
  • ツキマトウ 警視庁ストーカー対策室ゼロ係(2018年7月 KADOKAWA / 2021年5月 角川文庫)
  • おひとり様作家、いよいよ猫を飼う(2019年4月 幻冬舎文庫)※エッセイ
  • 初恋さがし(2019年5月 新潮社 / 2022年2月 新潮文庫
    • エンゼル様(新潮社『小説新潮』2013年2月号)
    • トムクラブ(新潮社『小説新潮』2016年2月号)
    • サークルクラッシャー(新潮社『小説新潮』2017年1月号)
    • エンサイクロペディア(新潮社『小説新潮』2017年9月号 雑誌掲載時は「アンサイクロペディア」)
    • ラスボス(新潮社『小説新潮』2018年8月号)
    • 初恋さがし(新潮社『小説新潮』2019年1月号 雑誌掲載時は「初恋の人、探します」)
    • センセイ(書き下ろし)
  • 三匹の子豚(2019年8月 講談社 / 2022年11月 講談社文庫)
    • 三匹の子豚(講談社『小説現代』2018年4月号 -2018年9月号)
  • 坂の上の赤い屋根(2019年11月 徳間書店 / 2022年7月 徳間文庫)
    • 坂の上の赤い屋根(徳間書店『読楽』2017年5月号 -2019年1月号)
  • 縄紋(2020年6月 幻冬舎 / 2023年5月 幻冬舎文庫)
    • 縄紋黙示録(幻冬舎『小説幻冬』2018年12月号-2020年1月号)
  • 聖女か悪女(2020年11月 小学館 / 2023年2月 小学館文庫)
    • ジュリエット(小学館『qui-la-la きらら』2018年11月号-2020年1月号)
  • フシギ(2021年1月 KADOKAWA / 2023年11月 角川文庫)
    • フシギ(KADOKAWA『小説 野性時代』2019年6月号-2020年6月号)
  • まりも日記(2021年6月 講談社 / 2023年6月 講談社文庫)
    • まりも日記(講談社『小説現代』2017年3月号)
    • 行旅死亡人〜ラストインタビュー(講談社『小説現代』2017年11月号)
    • モーニング・ルーティン(まりも日記2)(講談社『メフィスト2020 VOL.1』)
    • ある作家の備忘録(まりも日記3)(講談社『メフィスト2020 VOL.2』)
    • 赤坂に死す(まりも日記4)(講談社『メフィスト2020 VOL.3』)
  • 一九六一 東京ハウス(2021年12月 新潮社)
    • 一九六一 東京ハウス(新潮社『週刊新潮』2020年10月8日号-2021年5月27日号)
  • シェア(2022年3月 光文社)
    • シェア(光文社『小説宝石』2020年3月号-2021年7月号)
  • さっちゃんは、なぜ死んだのか?(2022年11月 講談社)
    • さっちゃんは、なぜ死んだのか?(講談社『小説現代』2022年9月号)
  • 4月1日のマイホーム(実業之日本社 2023年2月)
    • 4月1日のマイホーム(実業之日本社『Webジェイ・ノベル』2021年9月14日-2022年9月20日)
  • ノストラダムス・エイジ(祥伝社 2023年8月)
    • ノストラダムス・エイジ(祥伝社『小説NON』2012年11月号-2022年10月号)

アンソロジー[編集]

「」内が真梨幸子の作品

  • 忍び寄る闇の奇譚 メフィスト道場1(2008年11月 講談社ノベルス)「ネイルアート」
  • Happy Box(2012年3月 PHP研究所 / 2015年11月 PHP文芸文庫)「ハッピーエンドの掟」
  • 5分で読める! 怖いはなし(2014年6月 宝島社文庫)「リリーの災難」「ジョージの災難」
  • ニャンニャンにゃんそろじー(2017年4月 講談社 / 2020年2月 講談社文庫)「まりも日記」
  • Day to Day(2021年3月 講談社)「「映像の世紀」風に、コロナ禍を振り返ってみる」
  • 5分で読める! 背筋も凍る怖いはなし(2021年8月 宝島社文庫)「私的怪談」
  • 5分で読める! ぞぞぞっとする怖いはなし(2022年6月 宝島社文庫)「献本リスト」「最後のひとり」
  • Jミステリー2023 SPRING(2023年4月 光文社文庫)「ロイヤルロマンス(外伝)」
  • 超短編! 大どんでん返し Special(2023年12月 小学館文庫)「二人のマリー・テレーズ」
    • 「二人のマリー・テレーズ」(小学館『STORY BOX』2022年6月号)

単行本未収録作品[編集]

連載[編集]

  • ウバステ(小学館『STORYBOX』2022年12月号-2023年9月号)
  • 教祖の作り方(幻冬舎『小説幻冬』2022年12月号-2023年10月号)
  • フジコの十ヶ条(徳間書店『読楽』2024年1月号-)
  • 波乱万丈な頼子(中央公論新社BOC』2024年1月-)

読み切り[編集]

  • 【従業員が告発!】ペットショップという名の地獄(講談社『MRCショートショート』2023年11月)
  • 表裏一体(光文社『小説宝石』2024年1月号)

メディア・ミックス[編集]

舞台[編集]

テレビドラマ[編集]

配信ドラマ[編集]

  • フジコ(2015年11月13日配信開始、Huluオリジナルドラマ、全6話、主演:尾野真千子、原作:殺人鬼フジコの衝動)

出演[編集]

脚注[編集]

注釈
  1. ^ 多摩美術大学に併設開校した専門学校で1992年閉校し、多摩美術大学造形表現学部に再編成され、現在は多摩美術大学美術学部演劇舞踊デザイン学科。
出典
  1. ^ a b c d e f g h i 真梨幸子(インタビュアー:細田尚子)「5人のジュンコ:原作・真梨幸子さんに聞く 映像化続くイヤミスの旗手の素顔」『MANTANWEB』、2015年12月4日https://mantan-web.jp/article/20151204dog00m200025000c.html2018年11月1日閲覧 
  2. ^ a b いや〜な汗をかく小説「イヤミス」の魅力とは?”. WEB本の雑誌 (2012年2月23日). 2013年8月11日閲覧。
  3. ^ a b “【ピンスポ】(86)殺人鬼フジコの衝動”. zakzak. (2013年4月2日). https://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-news/news/20130402/enn1304021531009-n1.htm 2013年8月11日閲覧。 
  4. ^ a b 酷暑は"イヤミス"で涼をとる? 真梨幸子最新作『鸚鵡楼の惨劇』”. BOOKSTAND (2013年7月25日). 2013年8月11日閲覧。
  5. ^ a b c d 真梨幸子(インタビュアー:竹内誠人)「著者に会いたい 人生相談。真梨幸子さん」『BOOKAsahi.com』、2014年6月1日。 オリジナルの2014年6月5日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20140605165430/https://book.asahi.com/reviews/column/2014060100011.html2018年11月1日閲覧 
  6. ^ 」(講談社、2007年10月号)に収録のエッセイ「ロマンス宣言」より。
  7. ^ 真梨幸子 (2016年10月29日). “キューティ・マリモ”. 真梨幸子mariyukiko’s blog. 2017年1月21日閲覧。
  8. ^ "桐谷健太主演、真梨幸子原作のダークミステリー『坂の上の赤い屋根』WOWOWで連続ドラマ化". Bezzy. THECOO株式会社. 26 December 2023. 2023年12月26日閲覧

外部リンク[編集]