真性半導体

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真性半導体(しんせいはんどうたい、: intrinsic semiconductor)とは、添加物を混じえていない純粋な半導体のことを指す。英語名からi型半導体と呼ばれることもある。

特徴[編集]

真性キャリア密度[編集]

価電子帯の電子が熱によって励起し、伝導帯に電子(黒丸)、価電子帯に正孔(白丸)が生じる。

真性半導体におけるキャリアは、価電子帯から伝導帯に電子が熱励起して生じる自由電子正孔である。熱平衡状態にある真性半導体のホール密度 p と電子密度 n の間には、以下の関係が成立する。

ni真性キャリア密度と呼ぶ。真性半導体のフェルミ準位Ei とすると、真性キャリア密度は次のように表される[1]

ここで EC は伝導帯のエネルギー、EV は価電子帯のエネルギー、NC は伝導帯の有効状態密度NV は価電子帯の有効状態密度である。

真性キャリア密度 ni を用いると、不純物半導体も含めた一般の縮退のない半導体の伝導帯の電子密度 n と価電子帯の正孔密度 p は次のように表せる。

フェルミ準位[編集]

真性半導体のフェルミ準位 Ei は、以下の形で表記される。

memh はそれぞれ電子ホール状態密度有効質量である。この第2項は小さいため、真性半導体のフェルミ準位は禁制帯のほぼ中央に位置する。

ドーピング[編集]

真性半導体ではキャリア密度が 1010 cm−3 以下と非常に低く、真性半導体に不純物ドーピングした不純物半導体(外因性半導体)のキャリア密度より約10桁近く低い。よって一般的に使用されるのは不純物半導体である。真性半導体では、材質そのものからキャリア密度が決定されるが、不純物半導体の場合のキャリア密度はドーパントの密度で決まる。

この不純物半導体では、ドナーもしくはアクセプタ熱励起したキャリアが伝導に寄与する。キャリアがホール(正孔)の場合はP型半導体、キャリアが電子の場合はN型半導体と呼ばれる。キャリアの種類は、不純物元素の最外殻電子の数に依存する場合が多く、最外殻電子が4より大きい時はN型半導体、最外殻電子が4より小さい場合はP型半導体になることが多い。シリコンの場合、リンヒ素をドーピングした場合N型半導体に、ホウ素をドーピングした場合P型半導体になる。

真性半導体のフェルミ準位は禁制帯のほぼ中央に位置するが、不純物半導体のフェルミ準位はドナー準位やアクセプタ準位の近傍に存在する。

キャリア移動度[編集]

真性半導体では、不純物のドーピングがされていないため、キャリアはイオン化不純物散乱の影響を受けない。その結果、ドーピングされている際と比較して、非常に高い移動度を示す。しかし、前述のように真性半導体ではキャリア密度が非常に低いため、これを利用した用途は限定される。ヘテロ構造による二次元電子ガスを利用した半導体素子(例えば、HEMT)の様な用途がある。

参考文献[編集]

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  1. ^ B.L.アンダーソン、R.L.アンダーソン 『半導体物性』上巻、樺沢宇紀訳、シュプリンガー・ジャパン〈半導体デバイスの基礎〉、2012年2月29日[要ページ番号]ISBN 978-4621061473NCID BB09996372OCLC 793577200ASIN 462106147X