相撲競技監察委員会

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相撲競技監察委員会(すもうきょうぎかんさついいんかい)、通称監察委員会とは、大相撲の本場所における故意による無気力相撲を防止し、監察、懲罰することを目的として設置されている委員会である。

概要[編集]

1970年頃までの大相撲界では、度々対戦の際に一方がわざと力を抜き、相手が有利になるように仕向けられた取組が見られるようになっており、世間から批判を浴びるようになっていた。そのため1971年の暮れに日本相撲協会はこの「無気力相撲」を防止するための対策のひとつとして監察委員会を設置した。1991年に当時の二子山理事長(第45代横綱・若乃花)によって無気力相撲を行った者には除名を筆頭に解雇、引退勧告などの非常に重い処分を課すこととした。このうち引退勧告については、従わなかった場合に解雇処分とすることも可能である。

故意による無気力相撲の定義は、2007年に当時の北の湖理事長(第55代横綱・北の湖)が「怪我や病気をしたままで場所に出ること」としているが、2011年大相撲八百長問題に関して、当時の放駒理事長(元大関・魁傑)は八百長と故意による無気力相撲は同じであるとの見解を示している。なお、相撲協会は八百長の単語を公式に使用することは滅多になく、八百長の概念すら認めていない。

構成員は全て現役の年寄から10名ほど選任され、委員長は日本相撲協会の理事が、副委員長は日本相撲協会の副理事、または役員待遇委員が務める。

主な職務は詰所にあたる監察室から実際に競技を観戦し、無気力相撲がないか確認することと、支度部屋や通路を監視して無気力相撲の申し合わせ等が行われていないか確認することである。また場所中は毎日審判部との合同会議を行い、故意による無気力相撲がなかったかどうかを話し合っている。

実際に処分が行われたケースは2011年大相撲八百長問題だけであるが、この問題では監察委員会が八百長のあったとされる取組を一切摘発できていなかったことも判明し、問題となった。これを受けて相撲協会は監察委員を大量増員したが、増員した中には八百長で処分された師匠も含まれており、現在も春日野委員長をはじめ3名の構成員が弟子を八百長問題で処分された親方で占められているほか、武蔵川(元武蔵丸)は自身が無気力相撲を摘発された経験を持つ。

構成員[編集]

2019年2月1日現在

役職 年寄名 最高位・四股名 所属部屋 備考
監察委員長 春日野 関脇栃乃和歌 春日野部屋 理事
監察委員 湊川 小結・大徹 二所ノ関部屋 委員
千賀ノ浦 小結・隆三杉 千賀ノ浦部屋
木村瀬平 1・肥後ノ海 木瀬部屋
大嶽 4・大竜 大嶽部屋
武蔵川 横綱武蔵丸 武蔵川部屋
時津風 前3・時津海 時津風部屋

実際に処分された者[編集]

監察委員会設置翌年である1972年3月場所では、共に大関の琴櫻が角番の前の山にあっさり負けた取組が無気力相撲と認定され、調査を受けた。監察委員会として処分は下さなかったが、前の山の師匠である高砂親方(元横綱・朝潮)が前の山を休場させ、大関から陥落させたケースが最初の摘発例とされている。その後もいくつか摘発された取組があるとみられるが(記録がないため摘発件数は不明)、監察委員会として処分が下った力士は1人もおらず、厳重注意が数名いるのみだった。

しかし2011年に入って大相撲八百長問題が発覚。これに伴って多くの力士に引退勧告を出し、従わなかった者は解雇処分とし、その師匠も監督責任として降格処分や昇格停止処分を下した。これが現在までで唯一の処分例である。以下の表では、それ以外に厳重注意処分とされた力士も掲載することとする:

力士[編集]

処分日 四股名 所属部屋 番付 処分内容 備考
1992年1月20日
1992年1月場所9日目
琴の若 佐渡ヶ嶽 西前頭9 厳重注意 この日の両者の取組が無気力相撲と認定
巴富士 九重 東前頭12 厳重注意
1992年1月25日
1992年1月場所14日目
時津洋 時津風 十両6 厳重注意 この日の両者の取組が無気力相撲と認定
日立龍 押尾川 東十両8 厳重注意
1992年3月13日
1992年3月場所6日目
武蔵丸 武蔵川 西前頭1 厳重注意 この日の小錦戦が無気力相撲と認定
2004年1月22日
2004年1月場所12日目
増健 三保ヶ関 東十両9 厳重注意 この日の両者の取組が無気力相撲と認定
濵錦 追手風 東十両13 厳重注意
2008年11月12日
2008年11月場所4日目
保志光 八角 東十両3 厳重注意 この日の若天狼戦が無気力相撲と認定
2009年5月24日
2009年5月場所千秋楽
千代大海 九重 大関 厳重注意 この日の両者の取組が無気力相撲と認定
把瑠都 尾上 関脇 厳重注意
2011年4月1日 德瀬川 桐山朝日山 西前頭1 引退勧告
白馬 立田川陸奥 東前頭7 引退勧告
春日王 春日山 東前頭10 引退勧告
光龍 花籠 東前頭11 引退勧告
猛虎浪 立浪 東前頭12 引退勧告
琴春日 佐渡ヶ嶽 東前頭13 引退勧告
将司 入間川 西十両2 引退勧告
豊桜 立田川→陸奥 西十両3 引退勧告
境澤 尾上 西十両4 引退勧告
霜鳳 時津風 西十両5 引退勧告
旭南海 大島 東十両6 引退勧告
安壮富士 安治川→伊勢ヶ濱 東十両7 引退勧告
若天狼 間垣 東十両10 引退勧告
清瀬海 木瀬北の湖 西十両11 引退勧告
千代白鵬 九重 東十両14 出場停止2年
保志光 八角 幕下5 引退勧告
十文字 立田川→陸奥 西幕下25 引退勧告
霧の若 陸奥 東幕下28 引退勧告
白乃波 尾上 東幕下50 引退勧告
恵那司 入間川 東幕下52 出場停止2年
山本山 尾上 三段目31 引退勧告
2011年4月11日 蒼国来 荒汐 西前頭15 引退勧告→解雇[1]
星風 尾車 東十両5 引退勧告→解雇

年寄[編集]

処分日 年寄名 最高位・四股名 役職 処分内容 備考
2011年4月1日 北の湖 横綱北の湖 理事 理事辞任勧告
九重 横綱・千代の富士 理事 理事辞任勧告
陸奥 大関霧島 理事 理事辞任勧告
大島 大関・旭國 役員待遇 1階級降格
八角 横綱・北勝海 役員待遇 1階級降格
間垣 横綱・若乃花 委員 1階級降格
桐山 小結黒瀬川 委員 1階級降格
入間川 関脇栃司 委員 1階級降格
伊勢ヶ濱 横綱・旭富士 委員 1階級降格
花籠 関脇・太寿山 委員 1階級降格
春日山 1・春日富士 委員 1階級降格
立浪 小結・旭豊 委員 1階級降格
春日野 関脇・栃乃和歌 委員 1階級降格
尾上 小結・濱ノ嶋 委員 2階級降格
木瀬 前1・肥後ノ海 年寄 昇格停止3年
佐渡ヶ嶽 関脇・琴ノ若 年寄 昇格停止3年
時津風 前3・時津海 年寄 昇格停止3年
谷川 小結・海鵬 年寄 退職勧告→解雇
竹縄 前5・春日錦 年寄 職務停止2年
2011年4月11日 尾車 大関・琴風 委員 1階級降格
荒汐[2] 小結・大豊 委員 1階級降格

不祥事[編集]

  • 2011年11月場所9日目、一般客として福岡国際センターを訪れていた元横綱・朝青龍が、関係者以外立入禁止とされている支度部屋に乱入。これを制止しなかったとして当日の支度部屋担当であった岩友親方(元幕内・栃勇)らが事情聴取された[3]。のちに岩友親方は口頭で注意された。
  • 2012年1月場所中、監察委員の業務中であった高砂親方(元大関・朝潮)が監察室で漫画本を読み、日本相撲協会から注意された。[4]
  • 2013年7月場所千秋楽、一般客として愛知県体育館を訪れていた元小結・露鵬が、関係者以外立入禁止とされている支度部屋に、部屋の後輩力士を激励するため当日の支度部屋担当だった出来山親方(元関脇・出羽の花)の許可を得て入ってしまった。最終的に出来山親方が注意をして露鵬は支度部屋を出たが、これを受けて北の湖理事長は監察委員会全体に再発防止の注意喚起を行った。[5][6]

脚注[編集]

  1. ^ 2013年4月3日付で処分取消。
  2. ^ 蒼国来の処分取消に伴い、2013年4月3日付で処分取消。
  3. ^ 元朝青龍“乱入”で理事長調査へ デイリースポーツオンライン、2012年7月30日閲覧
  4. ^ 監察中に漫画 高砂親方を口頭注意 日本相撲協会 朝日新聞デジタル、2012年7月30日閲覧
  5. ^ 大相撲:解雇された元露鵬が支度部屋に 毎日jp、2013年7月21日閲覧
  6. ^ 【名古屋場所】元露鵬が支度部屋侵入 出来山親方の注意聞かず スポーツ報知 2013年7月22日閲覧