盧今錫

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盧今錫
No Kum-Sok.jpg
1953年頃の写真
各種表記
ハングル 노금석
漢字 盧今錫
発音: ノ・クムソク
日本語読み: ろ・こんしゃく
ローマ字 No Geum-seok(2000年式
No Kŭm-sŏk(MR式
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盧 今錫(ノ・クムソク, 1932年1月10日 - )は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の軍人。朝鮮人民軍空軍に所属するパイロットだったが、朝鮮戦争の休戦直後に大韓民国(韓国)へ亡命した。アメリカ合衆国に帰化した後はケネス・H・ロウ(Kenneth H. Rowe)の英語名を名乗った。

経歴[編集]

1932年、日本統治時代咸鏡南道新興郡で生を受けた[1]。1949年に海軍士官学校へ入学する。1950年には空軍に入隊し、中国国内でのYak-18練習機Yak-11練習機Yak-17戦闘機を用いた訓練を経てMiG-15戦闘機のパイロットとなった。1951年から当時最年少のパイロットの1人として実戦に参加する[2]

彼は将校として金日成主席と3度対面したことがあり、また後に空軍総司令官や総参謀部長国防委員会副委員長などを歴任した呉克烈は同じ飛行隊に勤務した親友の1人であった[1][3]

亡命[編集]

朝鮮戦争休戦直後の1953年9月21日、韓国の金浦空軍基地上空に突如1機のMiG-15bis戦闘機が飛来し、着陸した。これを操縦していたのが21歳の盧今錫中尉であり、彼はかねてから脱北を計画していたのである[4]。亡命後、彼は100,000米ドルの賞金を送られた。これはアメリカ空軍がMiG-15確保の為に展開していたムーラー作戦英語版への貢献に対する報酬であったが、盧自身はこの作戦の存在そのものを全く知らなかったという[3]。また、1951年に脱北した母親が無事に韓国に到着していたこともこの際に知らされた。

アメリカ移住後[編集]

彼の望みは母と共にアメリカ合衆国へ移住し、自由で充実した生活を送ることだった。韓国を経てアメリカへ移った後、ケネス・ロウという英語名を名乗り始め、やがて結婚してデラウェア大学英語版を卒業し、アメリカの市民権を獲得した[4]。盧は子供の頃からアメリカで暮らすことを夢見ていたという[2]

アメリカではグラマンボーイングゼネラルダイナミクスゼネラルモーターズゼネラルエレクトリックロッキードデュポンウェスティングハウスなど様々な企業で航空技術者として働いた[2]

エンブリー・リドル航空大学にて航空宇宙工学の教授として17年勤務し、2000年に退職した[5]

2004年2月、彼はエグリン空軍基地英語版にゲストとして招かれ、レッドスター航空博物館が保有していたMiG-15UTIに搭乗して飛行する機会に恵まれた。後日、彼は亡命以来初めてのMiGでの飛行について、「実に速い、速い車だよ」(It is a fast, fast car)と語った[6]

著書『A MiG-15 to Freedom』(ISBN 0-7864-0210-5)では、亡命以前の生活と亡命後の生活の双方について著している。

盧今錫のMiG-15[編集]

盧が明け渡したMiG-15は、H・E・"トム"・コリンズ大尉(H.E. "Tom" Collins)の操縦で沖縄へと運ばれ、コリンズとチャック・イェーガー少佐によってテスト飛行が行われた。1953年12月には一旦分解してライト・パターソン空軍基地へ輸送され、改めて徹底的な性能試験が行われた。アメリカ政府ではこのMiG-15を「正当な所有者」に返却する旨の申し出を行ったものの、所有者として名乗り出る国が無かったため、国立アメリカ空軍博物館に展示品として寄贈された[4]

大衆文化[編集]

ビデオゲーム『Chuck Yeager's Air Combat』には、盧の亡命を題材にしたミッションが存在する。

ギャラリー[編集]

脚注・参考文献[編集]

  1. ^ a b 「北朝鮮14号管理所からの脱出」著者ハーデン氏、次は脱北空軍大尉の本を出版”. DailyNK Japan. 2016年2月8日閲覧。
  2. ^ a b c Leadership”. Red Star Aviation. 2011年7月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010‎-01-02閲覧。
  3. ^ a b Herbert A. Friedman. “OPERATION MOOLAH, THE PLOT TO STEAL A MIG-15”. PsyWarrior.com. 2016年2月8日閲覧。
  4. ^ a b c The Story of the MiG-15bis on Display”. National Museum of the United States Air Force. 2016年2月8日閲覧。
  5. ^ Ken Rowe, a.k.a. No-Kum Sok: A MiG-15 to Freedom”. Pine Mountain Lakes Aviation Association (2004年9月9日). 2016年2月8日閲覧。
  6. ^ Korean War-era MiG-15 visits Test Pilot School”. Red Star Aviation. 2012年4月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年9月21日閲覧。