百器徒然袋――雨

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百器徒然袋――雨』(ひゃっきつれづれぶくろ あめ)は、講談社から刊行されている京極夏彦の妖怪探偵小説集。百鬼夜行シリーズ「番外編」となる3作品を集めた中編集。

出版経緯[編集]

  • 1999年(平成11年)11月 講談社ノベルスより探偵小説『百器徒然袋――雨』刊行。
  • 2005年(平成17年)9月『百器徒然袋――雨』が講談社文庫より刊行。
  • 2008年(平成20年)5月『薔薇十字探偵 1』〈講談社MOOK ペーパーバックスK〉より刊行。
    • 『百器徒然袋――雨』より「鳴釜」のみ収録、表紙イラストレーション:小畑健
  • 2010年 (平成22年)1月『爆裂薔薇十字探偵』』〈講談社MOOK ペーパーバックスK〉より刊行。
    • 『百器徒然袋――雨』より「瓶長」のみ収録、表紙イラストレーション:小畑健。

概要[編集]

「百鬼夜行シリーズ」では脇役の位置におかれていた登場人物・榎木津礼二郎を主人公とした中編集である。同シリーズから他に中禅寺秋彦や関口巽、木場修太郎らも登場。掲載作品の時系列は『陰摩羅鬼の瑕』の直前から『邪魅の雫』の後にあたる。

ABCラジオ(朝日放送)をキーステーションにして『百器徒然袋』の題でラジオドラマが放送された。

2009年、秋号の『コミック怪 vol.8』から志水アキによりコミック化され連載されている。

主な登場人物[編集]

「僕」
一連の物語の語り部。常にその場しのぎの名で呼ばれて、本名が出てくるのは巻末になってからである。
榎木津 礼二郎(えのきづ れいじろう)
薔薇十字探偵社の天衣無縫な探偵。
安和 寅吉(やすかず とらきち)
薔薇十字探偵社の給仕兼秘書。通称「和寅」(かずとら)。
益田 龍一(ますだ りゅういち)
薔薇十字探偵社の探偵助手。
中禅寺 秋彦(ちゅうぜんじ あきひこ)
憑物落としの古本屋。

鳴釜 薔薇十字探偵の憂鬱[編集]

電機配線の図面引きを生業とする「僕」は姉の娘・早苗が輪姦され、妊娠した事を知る。告訴しようにも相手は政治高官とその取り巻きの息子達で門前払い。八方塞がりの中、知り合いの大河内から探偵・榎木津礼二郎を紹介される。

登場人物[編集]

早苗(さなえ)
「僕」の従兄妹。櫻井邸で働いていたが、櫻井哲哉を中心とする集団に輪姦されて妊娠、娘を出産する。
櫻井 哲哉(さくらい てつや)
通産省級官僚である櫻井十蔵の一人息子。容姿や学歴や外ずらはいいが、父親の権力を嵩にきたやりたい放題の我がままな青年。
殿村 健吾(とのむら けんご)、江端 義三(えばた よしぞう)、今井 三章(いまい みつあき)
哲也の取り巻き。いずれの親も重蔵に頭が上がらない立場のため、哲哉のご機嫌取りでもあり、悪い遊び仲間。
久我 光雄(くが みつお)
哲也の取り巻き。やはり親のために哲哉に従っていたが、早苗への暴行事件から他の取り巻きとは違った立場になる。
篠村 精一郎(しのむら せいいちろう)
代議士。『塗仏の宴』に登場した華仙姑処女の占いの常連客だった。娘の美弥子と哲哉を政略結婚させる気でいる。
篠村 美弥子(しのむら みやこ)
篠村精一郎の娘で櫻井哲哉の婚約者の才媛。気が強く聡明で自分の立場については達観している。
金ちゃん
五十代の力の強いオカマ。外見は完全なるおっさんでオネエ言葉で話す。明るく、相当に打たれ強い。
鳥口 守彦(とりぐち もりひこ)
カストリ雑誌の記者。榎木津には下僕扱いされている。今回も榎木津を手伝いつつ、本業も遂行する。

瓶長 薔薇十字探偵の鬱憤[編集]

鳴釜事件の礼を言いに薔薇十字探偵社を再び訪れた「僕」。しかし、榎木津は父親から「青磁の甕(かめ)」と、ペットの「亀」を探しだすことを頼まれてご機嫌斜め。憑物落とし・中禅寺秋彦が別件で関わっているという「赤坂の壺屋敷」に「僕」は独断で向かう。

登場人物[編集]

山田 スエ(やまだ スエ)
与治郎の孫娘。与治郎亡きあと、壷屋敷にひとり暮らす陰気な女性。壷をおそれて中禅寺に憑物落としを依頼する。
山田 与治郎(やまだ よじろう)
スエの祖父。スエの父である息子の嶌夫が死んだ直後から、壷を収集しはじめ、屋敷とその地所を壷で埋め尽くして亡くなった。
山田 頼為(やまだ よりため)
与治郎の弟だが、生前の兄とは仲が悪かった。
雲井 孫吉(くもい まごきち)
茶道具店「陵雲堂」の店主。山田邸の膨大な数の壷の中にあるはずの値打ち物の壷を手に入れようと目論んでいる。
今川 雅澄(いまがわ まさすみ)
古物商「待古庵」の店主。榎木津の海軍時代の部下。
木場 修太郎(きば しゅうたろう)
見た目がヤクザまがいな刑事。榎木津の幼馴染。

山颪 薔薇十字探偵の憤慨[編集]

紙芝居描きを生業とする幼馴染の近藤から「新作の参考にしたい」と榎木津への取材を依頼される「僕」。とりあえず、中禅寺秋彦の元に向かったのだが、彼はかつての事件で関わった僧から自分のいない間に友人の僧に関して不可解な状況が生じていると相談されていた。その上、その人物がいた寺は現在一種の美食倶楽部の会場と化しているらしい。一方、榎木津は依頼であるペットのヤマアラシ捜索に奔放するうちに寺の一件にたどりつくことになる。

登場人物[編集]

桑田 常信(くわだ じょうしん)
僧侶。『鉄鼠の檻』で知り合いになった中禅寺を訪ねてきた。旧友の古井亮沢の去就に疑問を持ち、榎木津に調査を依頼する。
杉山 鉄信(すぎやま てっしん)
僧侶。常信の行者。『鉄鼠の檻』で登場した杉山哲童が名を改めた。
古井 亮沢(ふるい りょうたく)
町田近隣の禅寺「大正山根念寺」の跡取りの僧侶。常信の旧友。復員後、父とともに寺を「薬石茶寮」として美食倶楽部化した。
古井 亮順(ふるい りょうじゅん)
「大正山根念寺」の住職で亮沢の老父。書画骨董の蒐集家で、書道や華道や茶道を良く嗜み、戦前は檀家相手に茶会を開いていた。
木俣 源伍(きまた げんご)
戦前から古美術の盗みを働いていた美術品窃盗団の首領。
木俣 総司(きまた そうじ)
木俣源伍の息子。亮沢と同じ船で復員した。
椛島 二郎(かばしま じろう)
薬石茶寮の食材の仕入れ担当者の元板前。
伊佐間 一成(いさま かずなり)
釣堀屋の親爺。
河原崎 松蔵(かわらさき まつぞう)
榎木津信者の警察官。
関口 巽(せきぐち たつみ)
「ついてない」小説家。榎木津と中禅寺に引っ張り出されて酷い目にあう。
藤堂 公丸(とうどう きみまる)
元伯爵。榎木津の父の榎木津幹麿元子爵の知人。美術品とともに盗まれたペットの「ヤマアラシ」の捜索を薔薇十字探偵社に依頼する。
近藤(こんどう)
紙芝居の絵師。「僕」の友人。

漫画[編集]

志水アキにより漫画化された。『百器徒然袋――雨』に収録されている3作と『百器徒然袋――風』に収録されている「五徳猫 薔薇十字探偵の慨然」までは「コミック怪」で、「雲外鏡 薔薇十字探偵の然疑」「面霊気 薔薇十字探偵の疑惑」の2作は「月刊Asuka」で連載された。

書誌情報[編集]

角川書店、怪COMICより発売。全6巻。

  1. 「鳴釜 薔薇十字探偵の憂鬱」2011年2月24日発行 ISBN 978-4-04-854597-6
  2. 「瓶長 薔薇十字探偵の鬱憤」2011年10月24日発行 ISBN 978-4-04-854700-0
  3. 「山颪 薔薇十字探偵の憤慨」2012年10月24日発行 ISBN 978-4-04-120476-4
  4. 「五徳猫 薔薇十字探偵の慨然」2013年10月24日発行 ISBN 978-4-04-120867-0
  5. 「雲外鏡 薔薇十字探偵の然疑」2014年12月26日発行 ISBN 978-4-04-102295-5
  6. 「面霊気 薔薇十字探偵の疑惑」2015年6月26日発行 ISBN 978-4-04-103413-2

関連項目[編集]