異人たちとの夏

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
異人たちとの夏
著者 山田太一
発行日 1987年12月1日
発行元 新潮社
ジャンル 長編小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判変形
ページ数 217(単行本)
224(文庫版)
公式サイト 異人たちとの夏
コード ISBN 978-4-10-360602-4
ISBN 978-4-101-01816-4文庫判
ウィキポータル 文学
[ ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

異人たちとの夏』(いじんたちとのなつ)は、山田太一の小説。これを基にして同名の映画演劇作品も製作された。

妻子と別れた人気シナリオライターが体験した、既に亡くなった筈の彼の家族、そして妖しげな年若い恋人との奇妙なふれあいを描く。新潮社によって設立された山本周五郎賞の第1回受賞作品。

小説新潮1987年1月号に発表され、同年12月に新潮社より上梓。1991年11月に新潮文庫に収録され、解説を田辺聖子が担当した。

あらすじ[編集]

壮年のシナリオライターの原田は妻子と別れ、マンションに一人暮らし。ある日原田は幼い頃に住んでいた浅草で、彼が12歳のときに交通事故死した両親に出会う。原田は早くに死に別れた両親が懐かしく、少年だった頃のようにふたりの元へ通い出す。そして、同じマンションに住む桂という女性にも出会い、不思議な女性だと感じながら彼女と愛し合うようになる。しかし、2つの出会いとともに原田の身体はみるみる衰弱していく。

書誌情報[編集]

映画[編集]

異人たちとの夏
The Discarnates
監督 大林宣彦
脚本 市川森一
製作 杉崎重美
出演者 風間杜夫
片岡鶴太郎
秋吉久美子
名取裕子
永島敏行
音楽 篠崎正嗣
撮影 阪本善尚
編集 太田和夫
配給 松竹
公開 日本の旗 1988年9月15日
上映時間 110分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
テンプレートを表示

1988年に映画化され、松竹系で公開された。

桂が宙に浮き形相が変わるシーンでは、500万円を費やしてハイビジョンが使用された[1]

あらすじ(映画)[編集]

壮年の人気シナリオライターの原田は妻子と別れ、マンションに一人暮らし。ある晩、若いケイという女性が飲みかけのシャンパンを手に部屋を訪ねてきた。「飲みきれないから」という同じマンションの住人である彼女を冷たく追い返す。数日後、原田は幼い頃に住んでいた浅草で、彼が12歳のときに交通事故死した両親に出会う。原田は早くに死に別れた両親が懐かしく、少年だった頃のように両親の元へ通い出す。「ランニングになりな」とか「言ってる先からこぼして」などという言葉に甘える。

原田はそこで、ケイという女性とも出会う。チーズ占いで木炭の灰をまぶしたヤギのチーズを選ぶと、「傲慢な性格」だといわれる。不思議な女性だと感じながら彼女と愛し合うようになる。父とキャッチボールをしたり、母手作りのアイスクリームを食べたり、徐々に素直さを取り戻して行く。両親を失ってから一度も泣いたことはなく、強がって生きてきたのだった。

しかし2つの出会いと共に、原田の身体はみるみる衰弱していく。ケイもまたあの日、チーズナイフで自殺していたのだった。「たとえ妖怪、バケモノでもかまわない。あの楽しさ、嬉しさは忘れられない」というが、別れの時が来る。両親と、浅草の今半別館ですき焼きを食べることになるが、「たくさん食べてよ」といっても、ふたりは微笑むだけだった。

スタッフ[編集]

出演[編集]

エピソード[編集]

  • 主人公の父親役は、監督の大林が片岡の江戸弁を気に入り抜擢したもの[2]。ところが原作者の山田太一が「あんな太ったヤツの寿司は食えない」と反対した。それを聞いた片岡は必死のトレーニングをして減量し撮影に間に合わせた[2]
  • 大林は父親役にエノケンをイメージし、主題曲はエノケンの浅草オペラから「リオ・リタ」を起用した[3][4]
  • 大林映画には珍しく名取裕子扮する魔女(ケイ)と風間杜夫の大胆なベッドシーンがある。初期構想では、魔女役は秋吉久美子が演じる予定だった[3]

受賞歴[編集]

出典:[5]

舞台[編集]

1997年、俳優 春田純一が所属する劇団SCARECROWSの第2回公演として、中野光座にて上演。

2007年、声優 関智一が座長を務める劇団ヘロヘロQカムパ二―によって、シアターサンモールにて上演。

2009年、俳優 椎名桔平が主演、シアタークリエにて上演。

スタッフ(舞台)[編集]

出演(舞台)[編集]

リメイク映画[編集]

Strangers
監督 アンドリュー・ヘイ
出演者 アンドリュー・スコット
ジェイミー・ベル
クレア・フォイ
ポール・メスカル
配給 サーチライト・ピクチャーズ
公開 イギリスの旗 2023年(予定)
製作国 イギリスの旗 イギリス
言語 英語
テンプレートを表示

Strangers』(ストレンジャーズ)のタイトルで監督アンドリュー・ヘイによるリメイク映画がサーチライト・ピクチャーズ制作・配給で2023年にイギリスで公開予定[6]。主演はアンドリュー・スコット[6]

あらすじ(リメイク映画)[編集]

ロンドン在住の売れっ子脚本家・アダムは、ある夜、人気のないタワーマンションで謎めいた隣人ハリーと出会う。ハリーとの邂逅をきっかけに、何故か少年時代を無性に懐かしく感じるようになったアダムは、幼い頃に住んでいた家を訪れると、そこには30年前に亡くなったはずの両親が、亡くなった時と同じ年齢のままで生活していた。

スタッフ(リメイク映画)[編集]

  • 監督:アンドリュー・ヘイ
  • 原作:山田太一
  • 製作・配給:サーチライト・ピクチャーズ

出演(リメイク映画)[編集]

ラジオドラマ[編集]

NHK-FM放送FMシアター」枠にて、2017年7月22日29日に前・後編2話が放送された[7]

あらすじ[編集]

妻子と別れた人気シナリオライター・原田英雄が体験した、ひと夏の超常現象。亡くなったはずの両親・英吉と房子が突然現れ、あやしげな年若い恋人・桂が彼を翻弄する。それは一筋の希望なのか、叶わぬ望みなのか、彼は人生の苦悩から救われるのか? 異人たちとの奇妙なふれあいの中で、生きることの切なさと温かさを描く、究極の家族愛の物語[7]

スタッフ(ラジオドラマ)[編集]

  • 脚色:入山さと子
  • 演出:小見山佳典
  • 音楽:谷川賢作
  • 音響効果:久保光男、伊東珠里
  • 技術:西田俊和、林晃広

キャスト(ラジオドラマ)[編集]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ 石井博士 ほか『日本特撮・幻想映画全集』勁文社、1997年5月、315頁。ISBN 978-4-7669-2706-1 
  2. ^ a b 『週刊現代』2010年10月9日号, pp. 86–88.
  3. ^ a b 大林 1998, p. 79.
  4. ^ 大人のためのファンタジーホラー『異人たちとの夏』 [映画]”. All About (2013年8月28日). 2022年12月20日閲覧。
  5. ^ 異人たちとの夏”. 映連. 一般社団法人日本映画製作者連盟. 2022年12月20日閲覧。
  6. ^ a b c d e f 山田太一の傑作小説「異人たちとの夏」をサーチライトが映画化!アンドリュー・ヘイ監督が現在と過去の狭間を描く”. MOVIE WALKER PRESS. ムービーウォーカー (2022年7月1日). 2022年12月20日閲覧。
  7. ^ a b NHK オーディオドラマ過去作品アーカイブ / FMシアター「異人たちとの夏」(初回放送:2017年7月22・29日)”. NHK 日本放送協会. 2022年9月22日閲覧。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]