田中仁

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たなか ひとし
田中 仁
生誕 (1963-01-25) 1963年1月25日(58歳)
日本の旗 群馬県
国籍 日本の旗 日本
職業 ジンズ社長

田中 仁(たなか ひとし、1963年1月25日 - )は、日本実業家群馬県前橋市出身。

株式会社ジンズホールディングス代表取締役社長[1]株式会社ジンズ代表取締役社長[2]株式会社ジンズノーマ代表取締役社長[3]、株式会社フィー ルグッド代表取締役社長、株式会社Think Lab代表取締役社長[4]

オイシックス・ラ・大地株式会社社外取締役[5]、バルミューダ株式会社社外取締役、前橋工科大学客員教授、SFC研究所上席所員。群馬県内の地域活性化活動を目的とする田中仁財団代表理事[6]

略歴[編集]

幼少期[編集]

群馬県前橋市の穏やかに流れる利根川と雄大な赤城山を望むのどかな田園風景のもとで幼少期を過ごす。小さな頃は、クワガタやカブトムシを捕まえることに夢中になり、たくさん捕まえるために他の子どもたちが行かないような危険場所にいくなど、親や先生の言うことを聞かないいわゆる“わんぱく”な少年であった。[7]

学生時代[編集]

学生時代は、興味のむかないものは全く努力しないが、興味をもったものに対しては夢中になる子どもであった。母親の実家が事業をしていたことに加え、田中仁が中学生の時に父親が起業。事業家であった両親の影響を受け、学生時代から起業への夢を抱くようになり“自分は商売 の道へ進もう”と決心。[7]

就職[編集]

経営のノウハウを学ぶため卒業後は前橋信用金庫(現しののめ信用金庫)に入庫した。就職後、自ら担当ではなかったが、資金繰りで行き詰まり、夜逃げをしたり、自ら命を絶つ社長もいたことなどから 商売の厳しさやビジネスのリアリティーを痛感。「それでも起業したいのか?」と自分自問する日々が続いた。ある大晦日の夜、預金集めに行った取引先のお客様に 「大晦日に金をせびりに来るなんて、お前は物乞いか」と言われたことをきっかけに起業を決意。この悔しい経験が、ハングリー精神につながったと、当時の思いを語っている。[7]

起業[編集]

1987年、24歳で雑貨の製造・卸売業を本業とする「ジンプロダクツ」を立ち上げ、 翌年には有限会社「ジェイアイエヌ」(現 株式会社ジンズホールディングス)を設立。一時は在庫の山を抱え、資金繰りにも苦しむも、運と縁にも恵まれ無借金経営で企業は成長し、2000年に、「メガネ」という商材と巡り合う。[8]

友人と韓国を訪れた際、1本3,000円ほどで売られていた安いメガネを友人が喜んで買っているのをみて、 帰国後リサーチしてみると当時の日本のメガネは3万円くらいが主流で、高い、手元に届くまで時間がかかるなど、様々な課題があることに気づいた。フレームメーカー、レンズメーカー、それらを取り次ぐ業者や販売店など、分業されていたメガネの製造から販売までの工程を 自社で企画開発、製造、販売までを一貫すれば、価格を大幅に下げられるはずだとアイウェア事業へ参入した。

韓国を訪れてから一年も経たない、2001年4月、福岡市の中心である天神にジェイアイエヌ初のメガネ店「JIN’S天神店」をオープン。業界の常識を打ち砕くビジネスモデルやコストパフォーマンスが大きな話題となり、開店 直後から大盛況。しかし、同価格帯のメガネ店が急増し一時は業績が伸び悩む。そんな時、センスのいいデザインのメガネがないことに疑問を持ち、ローコストでありながらも、デザイン性に優れたメガネを販売。合わせて、視力が悪い人だけでなく、視力がいい人でも楽しめる“ファッション”としてのメガネを打ち出しブランドは急成長。[9]

その後も、既成概念に捉われない斬新なアイデアを次々に導入し、わずか5年で大証ヘラクレス(現JASDAQ)に株式上場を成し遂げた。[10]

経営者としての転機[編集]

しかし、またもメガネ販売社がこぞって販売形態を真似はじめ、新業態としてオープンし た店舗がうまく行かず、業績は急降下。そこにリーマン・ショックも重なり、株価は50円を割り込む危機に陥った。[11]

外資系証券会社アナリストに相談した際、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長を紹介され2008年12月24日に面会。雑談もなくはじまった鋭い質問に圧倒され「志のない会社は、継続的に成長できない」という柳井氏の言葉が胸に突き刺さる。[12]柳井氏との面会後間もない2009年1月7日、新たなビジョン・戦略策定のため、役員で熱海に合宿を実施。そこで「メガネをかけるすべての人に、よく見える×よく魅せるメガネを、史上最低・最適 価格で、新機能・新デザインを継続的に提供する」 というビジョン・戦略にたどり着く。

その後、どんなレンズを選んでも追加料金なしの料金体系「NEWオールインワンプライス (史上最低・最適価格)」で勝負することを決意。[13]また、新たに開発した軽量メガネフレーム「Air frame[14]」(よく魅せる)を合わせて発表し、大規模な広告費を投じて勝負をかけた。[15]「Air frame」は、当時3000本売れればヒットと言われていた中、7万本を生産発注する大胆な選択であったが、現在では累計販売本数2,000万本(※2020年1月末時点)[14]を超える大ヒット商品に成長している。

その後も、パソコン用のメガネ「JINS PC(現JINS SCREEN)[16]」(新機能)など、メガネの常識を覆す商品を次々に打ち出し、V時回復の原動力となった。このイノベーションに対する意識が、後に発表されていく、花粉症対策メガネ「JINS 花粉 CUT[17]」、目の乾燥から守る保湿メガネ「JINS MOISTURE[18]」、集中力を計測する「JINE MEME[19]」、ひとりで夢中になるためのソロワーキングスペース「Think Lab[20]」など、新しいシーンをつくる製品・サービスにつながっている。

  • 2010年、優れた起業家を表彰する「Ernst&Young ワールド・アントレプレナー・オ ブ・ザ・イヤー」で大賞を受賞し、 日本代表としてモナコ世界大会に出場。[21]
  • 2013年、株式会社ジェイアイエヌを東京証券取引所第一部に上場。[22]また、群馬県や前橋市の地域活性化を目的に田中仁財団を設立し、前橋まちなか研究室の開設や群馬イノベーションアワードの実行委員長を務める。[6]
  • 2014年、従業員の給与を平均で10.2%引き上げる大規模な社内改革に着手。業績が急拡大する中で、お店の接客がおろそかになっていることに危機感を覚え、雇用環境の改善を図り、業界で最も働きやすい企業№1を目指すことを決意。そこで広告宣伝費を削減し給与に引き当てることを決断した。[8] その時の決断を「戦略は時代によって変わるが、その戦略を生み出すためのビジョン(理念)が必要であることを痛感した。」と語っている。そして、「Magnify Life(人々の人生を拡張し豊かにする)」というジンズの新たなビジョンを掲げ、グローバル展開を加速。
  • 2017年、株式会社ジェイアイエヌが株式会社ジンズに商号変更。

ブランドビジョン[編集]

Magnify Life(人々の人生を拡張し豊かにする)

いつもと世界が違って見える。

JINSは、そんなきっかけを人々に提供したいと願う。

人々の生き方そのものを豊かに広げ、

これまでにない体験へと導きたい。

だからこそ、私たちはメガネのその先について考え抜き、

「あたらしい、あたりまえ」を創り、

まだ見ぬ世界を拓いていく。

―to Magnify Life [23]

人物[編集]

ビジョン[編集]

経営者として大切にしていることは、「本気は自分への投資」という姿勢。会社の危機を乗り越えた自らの経験を「ビジョンを掲げたことで、霧の中から抜け出し、視界が開けたことで、進むべき道が明確になった」と語っており、ビジョンを大切にしている。目指すところを決めて真剣勝負をすることで一皮むけた経営者になれると考えている。[24]

ビジネスに対する考え方[編集]

商売を伸ばしたいと思ったら、商売そのものを伸ばすことに注力するよりも、まずは自分自身の考えや価値観といったものの幅が広げていかないと商売は大きくならないと語っている。[25]

社会貢献[編集]

群馬県の起業家育成事業[編集]

2013年、群馬から起業家を育むことで地域を元気にしようと一般財団法人 田中仁財団[6]を設立。地域の若者に対して、特別な取り柄がなくても、起業という選択肢を選び、現在に至った経験から、誰もがチャンスがあることを伝えたいと上毛新聞社と共催で「群馬イノベーションアワード[26]」を立ち上げ、財団主催で「群馬イノベーションスクール」を開始し、早稲田大学の長谷川教授の授業を地域の若者に無償で機会を与えている。

前橋のまちづくり[編集]

2015年、前橋市を魅力ある都市にするため、官民共創事業としてビジョン策定を開始。すべての前橋市民にとって道標となる「ビジョン」の重要性を啓蒙するために前橋ビジョン実行委員会をつくり、ドイツ・ミュンヘンのブランドコンサルティング企業KMSに分析、戦略立案、ビジョン制定までの業務を委託。前橋市長、市役所職員、教育委員会、商工会議所、商店街、医師、弁護士、企業経営者、地域の若者、アーティスト、建築家、金融機関、学芸員など、多岐にわたるステークホルダーに対するインタビューを実施。その結果に加え市民約3,000人のアンケートも踏まえた結果をもとに分析した。

その結果「Where good things grow(よいものが育つまち)[27]」と前橋独自のブランドビジョンを確立。それを前橋出身のコピーライターの糸井重里氏が「めぶく。」と解釈した。2016年、8月には前橋ヤマダグリーンドームにて前橋ビジョン発表会が行われた。平日の夕刻19時開始にもかかわらず、会場には4,000人以上の来場者で熱気にあふれ市民の関心度を裏付けた。[28]

太陽の会[編集]

田中が発起人となり、前橋ビジョン「めぶく。」を推進すべく、地元企業化が太陽の役割を果たすべきでるという掛け声のもと、企業家有志が集まり、50年後、100年後の前橋にとって資産となるようなものに、見返りを求めない投資をすることで集まる。会員企業は、その純利益の1%(最低100万円を条件とする)を前橋発展のために毎年寄付をすることとしている。[29]第一回事業は岡本太郎氏「太陽の鐘」を広瀬川河畔に誘致した。

太陽の鐘は1966年に日本通運株式会社が静岡県に開設したレジャー施設内に創設されたが、1999年同施設が閉鎖した後は長らく保存されたままの状態であった。

前橋再生及びこの大地における芽吹きのシンボルを探していた「太陽の会」が、前橋出身でビジョン策定にもかかわった糸井重里氏を通じて、この伝説の作品の存在を知り、修復費用を負担することを条件に、岡本太郎記念館の平野暁臣氏の理解と協力もあり前橋氏への寄贈が決定した。

SHIROIYA HOTEL[編集]

江戸時代より約300年、群馬・前橋で多くの芸術家や著名人に愛されてきた老舗旅館「白井屋旅館」。1970年代にホテル業へと転換するも、中心市街地の衰退により、2008年に惜しまれながらも廃業に。廃業後、取り壊しの危機にあった白井屋旅館の建物だが、田中仁財団の活動の一環としてホテル再生プロジェクトが発足。

田中の呼び掛けに、国内外の様々なクリエイターが賛同し、2014年に再生プロジェクトがスタート。大改修と新棟建設は、建築家・藤本壮介氏が設計を担当。また、共用部分のアートワークにはアーティストのレアンドロ・エルリッヒ。プロダクトデザイナーのジャスパー・モリソン、建築家のミケーレ・デ・ルッキがスペシャルルームのデザインを手がけるなど、国際的な面々が携わっている。

完成すると、空間デザイン、アート、食体験すべてが訪れる人の五感を刺激する新名所が前橋に誕生する。[30][31]

受賞[編集]

  • 2010年、「第10回 Entrepreneur Of The Year Japan」大賞受賞 日本代表に選出(主催:Ernst&Young)[21]
  • 2011年、「第36回経済界大賞」ベンチャー経営者賞受賞(主催:株式会社経済界)[32]
  • 2012年、「第5回 日本マーケティング大賞 奨励賞」受賞(主催:日本マーケティング協会[33]
  • 2013年、「DealWatch Awards 2012 Equity Issuer of the Year」受賞(主催:Thomson Reuters)[34]
  • 2013年、 紺綬褒章授与
  • 2018年、「アントレプレナージャパンキャンペーン[35]」創業機運醸成賞受賞(主催:経済産業省・中小企業庁主催)[36]
  • 2018年、「イノベーションネットアワード2018」(主催:全国イノベーション推進機関ネットワーク)堀場雅夫賞受賞[37]

著作[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ 役員紹介 | 企業情報 | 株式会社ジンズホールディングス”. 2020年9月9日閲覧。
  2. ^ 会社情報 | JINS - 眼鏡(メガネ・めがね)”. 2020年9月9日閲覧。
  3. ^ JINS norma | グループ事業 | 株式会社ジンズホールディングス”. 2020年9月9日閲覧。
  4. ^ Think Lab|一人で深く考えるためのソロワーキングスペース”. 2020年9月9日閲覧。
  5. ^ 企業概要|オイシックス・ラ・大地株式会社”. 2020年9月9日閲覧。
  6. ^ a b c 田中仁財団”. 田中仁財団. 2020年9月8日閲覧。
  7. ^ a b c “「大晦日にカネをせびりに来たのか」の一言で起業決断”. NIKKEI STYLE. (2016年7月7日). https://style.nikkei.com/article/DGXMZO04411640U6A700C1000000/ 
  8. ^ a b “人と商品に投資しアイウエアで豊かな未来を実現―田中 仁(JINS社長)”. 経済界. (2020年7月13日). https://net.keizaikai.co.jp/archives/25456 
  9. ^ “株式会社ジェイアイエヌ 田中仁 世の中にない「新発明」で、メガネの歴史を変える!”. JOBSHIL. (2018年2月9日). https://job.j-sen.jp/jobshil/visionary_133 
  10. ^ “「日本を代表する起業家になろう」私はモナコでそう思った”. 東洋経済ONLINE. (2015年9月11日). https://toyokeizai.net/articles/-/85621 
  11. ^ “「真剣」で挑んだ本気の勝負/ジンズホールディングスCEO 田中仁”. 起業家倶楽部. (2020年5月20日). http://kigyoka.com/news/magazine/magazine_20200513_2.html 
  12. ^ “株価41円 その日、JINSに刺さった柳井正氏の一言”. NIKKEI STYLE. (2016年7月14日). https://style.nikkei.com/article/DGXMZO04411630U6A700C1000000/ 
  13. ^ “常識を打ち破り世界企業を目指す/ジェイアイエヌの21世紀戦略”. 起業家倶楽部. (2012年5月28日). http://kigyoka.com/news/magazine/magazine_20130430_16.html 
  14. ^ a b ジンズ. “Airframe(軽量メガネ) | JINS - 眼鏡(メガネ・めがね)”. 2020年9月9日閲覧。
  15. ^ “ゆるぎない志を根っこに「あたらしい、あたりまえ」を”. 広告朝日. (2013年7月29日). https://adv.asahi.com/top_interview/11052968.html 
  16. ^ ジンズ. “【ブルーライトカット・PCメガネ】JINS SCREEN”. 2020年9月9日閲覧。
  17. ^ ジンズ. “【花粉対策メガネ】花粉を最大98%カット、JINS 花粉CUT”. 2020年9月9日閲覧。
  18. ^ ジンズ. “JINS MOISTURE(乾燥対策メガネ)-保湿するメガネ”. 2020年9月9日閲覧。
  19. ^ ジンズ. “JINS MEME|TURN IT ON - 見るから、知るへ。”. 2020年9月9日閲覧。
  20. ^ Think Lab. “シンクラボ”. 2020年9月8日閲覧。
  21. ^ a b EY. “EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・ジャパン歴代の受賞者”. 2020年9月9日閲覧。
  22. ^ JASDAQ (2013-0510). “東京証券取引所上場承認に関するお知らせ”. http://ke.kabupro.jp/tsp/20130510/140120130510036750.pdf 
  23. ^ Magnify Life”. 2020年9月9日閲覧。
  24. ^ ジンズ. “「本気」は、自分への投資”. 2020年9月9日閲覧。
  25. ^ ジンズ田中CEO「商売は9割失敗する、でも挑戦する」”. 2020年9月9日閲覧。
  26. ^ 群馬イノベーションアワード”. 群馬イノベーションアワード事務局. 2020年9月9日閲覧。
  27. ^ シティプロモーションサイト”. 前橋市. 2020年9月9日閲覧。
  28. ^ “「めぶく」街づくりスタート 「前橋ビジョン」で10プロジェクト”. 産経ニュース. (2016年8月4日). https://www.sankei.com/region/news/160804/rgn1608040015-n1.html 
  29. ^ 公式サイト”. 太陽の会. 2020年9月9日閲覧。
  30. ^ 公式サイト”. SHIROIYA HOTEL. 2020年9月9日閲覧。
  31. ^ “前橋の老舗旅館が「SHIROIYA HOTEL」として再生。設計は藤本壮介でレアンドロ・エルリッヒも参加”. 美術手帳. (2020年5月5日). https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/21844/pictures/1 
  32. ^ 経済界大賞(第36回ー第40回)”. 経済界. 2020年9月9日閲覧。
  33. ^ 第5回日本マーケティング大賞”. 日本マーケティング協会. 2020年9月9日閲覧。
  34. ^ DealWatch Awards 2012”. Thomson Reuters. 2020年9月9日閲覧。
  35. ^ アントレプレナージャパンキャンペーン”. 中小企業庁. 2020年9月9日閲覧。
  36. ^ 受賞歴”. 田中仁財団. 2020年9月9日閲覧。
  37. ^ イノベーションネットアワード2018”. 全国イノベーション推進機関ネットワーク. 2020年9月9日閲覧。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]