コンテンツにスキップ

犯罪人引渡し条約

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

犯罪人引渡し条約(はんざいにんひきわたしじょうやく、extradition treaty)とは、国外に逃亡した容疑者引き渡しに関する国際条約[1]犯罪者引渡し条約と称する場合もある[2]

本来、各国は他国からの要求があっても犯罪人を引き渡す義務を負うものではないが、犯罪人引渡し条約を2国間または多国間で結ぶことで犯罪人の引渡しの義務を相互に約する[3]

各国の状況

[編集]

2016年現在、日本は2カ国、韓国は25カ国、アメリカは69カ国、フランスは96カ国、イギリスは115カ国と犯罪人引渡し条約を締結している[4]

日本

[編集]

2020年現在、日本が犯罪人引渡し条約を結んでいる国は、アメリカ韓国の2カ国のみである。ただし組織犯罪については組織犯罪防止条約の規定が適用されうる[5]

日本の場合、条約の相手国から国外逃亡犯の引き渡しを求める請求があると、外務省から東京高等検察庁を経て、東京高等裁判所で審理される。犯人日本国籍の場合や政治犯の場合など例外を除き、原則引き渡すこととされている。

2007年8月21日、麻生太郎外務大臣と、ブラジルのセルソ・アモリン外務大臣との間で、司法協力作業部会を設置する事が同意された[6]。この第1回作業部会で、刑事共助、民事司法共助、逃亡犯罪人、受刑者移送の問題について意見交換がされた[7]

日本は中国との間でも2008年5月、胡錦濤・国家主席訪日時に発出された「日中両政府の交流と協力の強化に関する事項に関する共同プレス発表」において、日中双方は、日中犯罪人引渡条約の締結交渉を開始すること等について共通認識を確認した。また、2009年3月、中曽根外務大臣(当時)訪中の際、犯罪人引渡条約及び受刑者移送条約の締結交渉の早期開始で一致している[8]。その後、2020年7月までに計6回の日中犯罪人引渡条約締結交渉の会合が開催されてきたが、2020年現在締結には至っていない[9]

韓国

[編集]

2000年9月時点で、アメリカ、カナダ、オーストラリア、スペイン、フィリピン、チリ、パラグアイ、メキシコ、アルゼンチン、ブラジル、タイ、モンゴルの12カ国と犯罪者引き渡し条約締結を結んでいる。同時点で中国、ロシア、香港とも年内の引き渡し条約妥結を推進中で、日本とインドネシアとも交渉開始予定である[10]。実際、日本とは2002年に締結している。

中国

[編集]

2014年11月までに中国が39カ国と犯罪人引渡条約を締結(うち29カ国との条約が発効)し、52カ国と刑事司法協力条約を締結(うち46カ国との条約が発効)したことを明らかにした[11]

その後も犯罪人引渡条約の締結数は増加しており、2018年10月時点で以下の55カ国と犯罪人引渡条約を締結(うち37カ国との条約が発効)している[12]

【引渡条約締結国(発効済み)】
アフガニスタンアルジェリアアンゴラベラルーシボスニア・ヘルツェゴビナブルガリアブラジルカンボジアエチオピア、フランス、イタリアインドネシアイランカザフスタンキルギスラオスリトアニアレソトメキシコモンゴルナミビアパキスタンペルーポルトガルフィリピンロシア南アフリカ、韓国、ルーマニアスペインタジキスタンタイチュニジアアラブ首長国連邦ウクライナウズベキスタンアゼルバイジャンフランス

【引渡条約締結国(未発効)】
アルゼンチンオーストラリアオーストリアバルバドスベルギーチリコンゴ共和国キプロスエクアドルグレナダケニアモーリシャスモロッコセネガルスリランカトルコベトナムジンバブエ

香港

[編集]

香港は本土と別に2020年4月22日時点で香港は以下の20カ国(うち19カ国との条約が発効)と犯罪人引渡条約を締結している[13]

【犯罪人引渡条約締結国(発効済み)】オーストラリア、カナダチェコ共和国フィンランドドイツインド、インドネシア、アイルランド、韓国、マレーシアオランダニュージーランド、フィリピン、ポルトガル、シンガポール、南アフリカ、スリランカ、イギリス、アメリカ

【犯罪人引渡条約締結国(未発効)】フランス

2020年7月1日に中国が「香港国家安全維持法」を施行したことにより、カナダ、オーストラリア、イギリス、ニュージーランド、ドイツが相次いで「香港との犯罪人引渡し条約」を停止した[14][15]

欧州

[編集]

欧州では多数国間条約として欧州犯罪人引渡条約が締結されている[3]

関連項目

[編集]

脚注

[編集]
  1. 治安に関係する国際約束の締結|警察庁Webサイト”. 警察庁. 2023年2月2日閲覧。
  2. https://toyokeizai.net/articles/-/650347?page=5
  3. 1 2 『imidas 2004』集英社、317頁
  4. なぜ、日本は世界中で二か国としか犯罪人引き渡し条約が締結できないのか?(弁護士海渡)”. 東京共同法律事務所 (2020年1月15日). 2025年12月26日閲覧。
  5. 第16条
  6. “麻生大臣とアモリン・ブラジル外務大臣との会談” 2013年2月18日閲覧。
  7. “日本・ブラジル間の司法分野及び社会保障分野の作業部会の開催について” 2013年2月18日閲覧。
  8. “外務省 日中犯罪人引渡条約締結交渉第一回会合開催” 2020年7月9日閲覧。
  9. “外務省 日中犯罪人引渡条約締結交渉第6回会合の開催” 2020年7月9日閲覧。
  10. 政府 中国,ロシア,香港と犯罪者引渡し条約締結”. www.donga.com (2000年9月4日). 2023年2月2日閲覧。
  11. 「人民日報・日本語版より」
  12. “中国の条約と協定の概要(中国語)” 2020年7月8日閲覧。
  13. “香港犯罪人引渡条約締結リスト(英語)” 2020年7月9日閲覧。
  14. ニュージーランド、香港との犯罪人引き渡し条約停止 イギリスやカナダに続き」『』(BBC)。2020年7月28日閲覧。
  15. ドイツも香港との引き渡し条約停止 「市民の権利、一段と制限」」『』(時事通信社)。2020年8月1日閲覧。

参考文献

[編集]

外部リンク

[編集]