犬王 (アニメ映画)

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犬王
INU-OH
監督 湯浅政明
脚本 野木亜紀子
原作 古川日出男『平家物語 犬王の巻』
出演者 アヴちゃん(女王蜂
森山未來
柄本佑
津田健次郎
松重豊
音楽 大友良英
撮影 関谷能弘
編集 廣瀬清志
制作会社 サイエンスSARU
製作会社 “INU-OH” Film Partners
配給 アニプレックス
アスミック・エース
公開 日本の旗 2022年初夏(予定)
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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犬王』(いぬおう)は、湯浅政明監督による日本の長編アニメーション映画[1]南北朝から室町期に活躍した能楽師犬王に題材をとった古川日出男の『平家物語 犬王の巻』を原作としたミュージカルアニメで、サイエンスSARUが制作を務めた[1][2]。現存する世界最古の舞台芸術と言われる"能楽"を題材に、湯浅政明が室町時代に人々を魅了した実在の能楽師・犬王を、ポップスターとして描いた作品で、湯浅にとっては初の時代劇となる[1][3][4][5]。いまだ源氏に滅ぼされた平家の怨念が残るなか、偶然出会った異形の能楽師・犬王と盲目の琵琶法師・友魚はすぐに熱い信頼を築くようになり、独特の舞いと音楽で庶民の人気を得ていく[6]

当初、2021年の公開が予定されていたが、2022年初夏に延期された[7]。海外では日本公開前の2020年から各国の映画祭などで上映され、日本では2021年11月3日開催の東京国際映画祭のジャパニーズ・アニメーション部門で初公開された。

あらすじ[編集]

室町京の都猿楽の一座に生まれた異形の子、犬王。周囲に疎まれ、その顔は瓢箪の面で隠された。

ある日犬王は、平家の呪いで盲目になった琵琶法師の少年・友魚と出会う。名よりも先に、を交わす二人。 友魚は琵琶の弦を弾き、犬王は足を踏み鳴らす。一瞬にして拡がる、二人だけの呼吸、二人だけの世界。

「ここから始まるんだ俺たちは!」

壮絶な運命すら楽しみ、力強い舞で自らの人生を切り拓く犬王。呪いの真相を求め、琵琶を掻き鳴らし異界と共振する友魚。乱世を生き抜くためのバディとなった二人は、お互いの才能を開花させ、唯一無二のエンターテイナーとして人々を熱狂させていく。

頂点を極めた二人を待ち受けるものとは――?

登場人物[編集]

犬王
- アヴちゃん(女王蜂
物語の主人公。猿楽一座で生まれた異形の子で、その顔は瓢箪で隠されている。
友魚
声 - 森山未來
物語の準主人公。盲目の琵琶法師の少年。元は壇ノ浦の漁村に住む漁師の息子であったが、ある事件により父親と死に別れたあげく視力を失った。
足利義満
声 - 柄本佑
室町幕府第3代将軍。犬王を高く評価して後援したとされる。
犬王の父
声 - 津田健次郎
猿楽一座の棟梁であり、犬王の実父。
友魚の父
声 - 松重豊
友魚の父親。壇ノ浦の漁村に住む漁師であったが、ある事件により他界した。

スタッフ[編集]

制作[編集]

2019年6月12日にアスミック・エースより本作の制作が発表された[3]

原作は、世阿弥と人気を二分した能楽師・犬王の実話をもとに、軍記物の名作『平家物語』の現代語訳を手掛けた古川日出男によってその『平家物語』に連なる物語として書かれたもの[1][3]。題材となった犬王は、同時代を生きた観阿弥、世阿弥とともに、三代将軍足利義満の愛顧を受け、二者よりも贔屓にされていたと言われている。しかし、その作品は現存しておらず、『平家物語』にも「後世に多大な影響を与えた」「作品はいっさい既存していない」と記されている。古川は、歴史にはわずかにしか書き記されていないその『犬王』という猿楽師を大胆に解釈して物語を作り上げた[8]

湯浅のもとにオファーが来た時、犬王は当時のポップスターであったと説明され、一緒にロックアーティストの写真も添えられていたことで、彼は本作の企画に興味を抱いた[2][9]。湯浅は「逆境の中で育った犬王と友魚が這い上がろうとしている姿が魅力的だった。室町時代という出自を超えて這い上がっていくことが難しい時代の中で、困難をものともしない犬王の明るさに魅力を感じた。今の時代に犬王のような明るいキャラクターを見せることで、勇気をもらえるのではないかと思った」と語った[10]。また「歴史の話というと、現在残っているものから想像する世界がすごく狭い。音楽に関しても、芸能に関しても、人々に関しても、もっと広いイメージが有るべきだと思っていた」と作品企画が自身の考えに合致したことも興味を引かれた一因であると述べている[9]

2020年6月15日にメインスタッフが発表された[5]テレビアニメピンポン THE ANIMATION』で湯浅とタッグを組み、原作の装画も手掛ける漫画家松本大洋がキャラクター原案を担当[3][11]。デザインに関して、松本へのオーダーは「できるだけ自由にやって欲しい」というものだった[9]。その一方で犬王と友魚に関しては細かいやり取りを行い、2人の主人公は出来るだけ若くしたいということや、犬王の形が変わっていくというのを映画としてどう見せるかということについて話し合った[9]。またキャラクターデザイン作画監督を多くの湯浅監督作品でタッグを組んできた伊東伸高美術監督を『ねこぢる草』の中村豪希、メインアニメーターを『四畳半神話大系』『映像研には手を出すな!』などの湯浅監督作品に参加した松本憲生が担当[5]脚本は、それまで『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』『MIU404』などテレビドラマ実写映画を中心に手掛け、2019年には向田邦子賞市川森一賞をダブル受賞した野木亜紀子が初めてアニメーションに挑んでいる[3][11]

2021年7月27日、音楽を『あまちゃん』で知られる大友良英が担当すること、そして主演声優として犬王をロックバンド女王蜂」のアヴちゃん、友魚を森山未來が演じることが発表された[6][12][13]。音楽については、琵琶の音色とロック・ミュージカルを融合させたものとなっている[6]。湯浅がイメージしたのはディープ・パープルクイーンのような現代のロックだったが、それを琵琶の音を使って作るというところで苦労している大友のためにストーリーボードとムービーが用意された[6]。音楽が出来上がると、歌入れの時にアヴちゃんが歌詞をまとめ、森山未來の歌唱や大友のコーラスが追加されて歌が完成した[14]。昔の音楽から始まり、犬王が踊っているうちにそれが徐々に変わり、ダンスも『雨に唄えば』のようなものがあったりと色々なものが混ざって行き、それに伴ってキャストの二人も70年代や80年代のロックミュージシャンのイメージを入れて歌っている[14]。 湯浅は「音楽の根源は、歌って踊って神様に捧げるような興奮がある。だからみんなにもっと踊ってもらいたいという気持ちがある」と自身の作品に音楽的リズムを刻んでいる理由を解説し、「『犬王』でもみんなもっと素直に頭を動かしたり、リズムに乗ったりしてほしい」と発言している[10]

作画面の総作画監督は本作が湯浅作品初参加となる亀田祥倫中野悟史によるダブル体制となった。作画監督には『映像研には手を出すな!』で原画・メカデザインとして参加した榎本柊斗、前場健次、『テイルズ オブ シリーズ』の松竹徳幸、『ボールルームへようこそ』の向田隆、『えんとつ町のプペル』の福島敦子、『メトロポリス』の名倉靖博、『映画クレヨンしんちゃんシリーズ』の針金屋英郎、『スーパーマン』の増田敏彦が伊東と共同でそれぞれ作画監督を担当。

公開[編集]

日本国内[編集]

全国劇場公開は当初、2021年に予定されていたが、2022年初夏に延期された[7]

2021年、第34回東京国際映画祭のジャパニーズ・アニメーション部門に正式出品され、11月3日にジャパンプレミア上映を開催した[10]

海外[編集]

2020年、初のオンライン開催となるフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭 2020内のプログラム「Work in Progress」に選出され、上映された[注 1][5]。2021年、第78回ヴェネチア国際映画祭のオリゾンティ・コンペティション部門に選出され、ワールドプレミアとして披露された[注 2][11][6]。日本の長編2Dアニメーション作品が同部門に選出されるのは今回が初となる[15]。同年、第46回トロント国際映画祭[注 3]のスペシャル・プレゼンテーション部門に正式出品され、北米プレミアとなる公式上映が行われた[注 4][17]。日本の長編アニメーションが選出されたのは、2013年の『風立ちぬ』、2019年の『天気の子』以来[16]

出品された映画祭[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 日本時間6月15日午後4時から開始。
  2. ^ 現地時間9月9日14時頃。
  3. ^ 北米最大の映画祭であるトロント国際映画祭は、最高賞にあたる観客賞(ピープルズ・チョイス・アワード)を受賞した作品が、アカデミー賞の有力候補となることから、アカデミー賞の前哨戦ともいわれる映画祭の一つで、本作が選出されたスペシャル・プレゼンテーション部門もその観客賞の対象となっている[16]
  4. ^ 現地時間9月11日午後1時半頃、日本時間12日午前2時半頃。

出典[編集]

  1. ^ a b c d 湯浅政明監督×松本大洋キャラ原案、平家物語“能楽”が題材のミュージカルアニメ (1)”. ファッションプレス. 株式会社カーリン (2020年12月15日). 2020年12月15日閲覧。
  2. ^ a b 湯浅政明、「犬王」のテーマ語る「どの人にもよき理解者がいたほうがいい」”. コミックナタリー. 株式会社ナターシャ (2021年11月3日). 2021年11月15日閲覧。
  3. ^ a b c d e “2021年公開、長編アニメーション映画【犬王】製作決定”. アスミック・エース. (2020年12月15日). https://www.asmik-ace.co.jp/news/20190612-4971 2020年12月15日閲覧。 
  4. ^ 『犬王』湯浅政明監督、能楽師をポップスターとして描く面白さ 主人公の明るさに「勇気をもらえる」”. シネマトゥデイ. 株式会社シネマトゥデイ (2021年11月3日). 2021年11月15日閲覧。
  5. ^ a b c d “湯浅政明監督「犬王」松本大洋氏のキャラ原案を初披露”. 映画.com. (2020年12月15日). https://eiga.com/news/20200615/8/ 2020年12月15日閲覧。 
  6. ^ a b c d e 湯浅政明監督「犬王」、ベネチア映画祭オリゾンティ部門でワールドプレミア 終映後に熱い拍手浴びる”. 映画.com. 株式会社エイガ・ドット・コム (2021年9月11日). 2021年11月15日閲覧。
  7. ^ a b 片岡龍一 (2021年7月27日). “湯浅政明監督の最新作『犬王』が2022年初夏に公開決定 室町時代に実在した能楽師と琵琶法師の友情を描く劇場アニメ”. IGN Japan. 産経デジタル. 2021年11月14日閲覧。
  8. ^ 湯浅政明×松本大洋×野木亜紀子で劇場アニメ「犬王」製作 能楽題材のミュージカルアニメーション”. 映画.com. 株式会社エイガ・ドット・コム (2019年6月12日). 2021年11月15日閲覧。
  9. ^ a b c d 劇場アニメ「犬王」湯浅政明は犬王の明るさに惹かれる「勇気をもらえると思った」”. コミックナタリー. 株式会社ナターシャ (2021年11月3日). 2021年11月15日閲覧。
  10. ^ a b c 湯浅政明監督「みんなにもっと踊ってもらいたい」『犬王』東京国際映画祭でジャパンプレミア”. cinemacafe.net. イード (2021年11月4日). 2021年11月15日閲覧。
  11. ^ a b c 湯浅政明監督「犬王」アヴちゃん&森山未來がW主演 22年初夏公開”. 映画.com. 株式会社エイガ・ドット・コム (2021年7月27日). 2021年9月10日閲覧。
  12. ^ 湯浅政明監督×松本大洋キャラ原案、平家物語“能楽”が題材のミュージカルアニメ (2)”. ファッションプレス. 株式会社カーリン (2020年12月15日). 2020年12月15日閲覧。
  13. ^ アヴちゃん、湯浅政明監督のアニメ映画「犬王」で森山未來とW主演(コメントあり / 動画あり)” (日本語). 音楽ナタリー. 2021年7月27日閲覧。
  14. ^ a b "『犬王』新キャストに柄本佑、津田健次郎、松重豊 湯浅政明監督はヴェネチアで思いを語る". Real Sound. blueprint. 10 September 2021. 2021年9月10日閲覧
  15. ^ アヴちゃん、湯浅政明監督のアニメ映画「犬王」で森山未來とW主演(コメントあり / 動画あり)” (日本語). 音楽ナタリー. 2021年11月15日閲覧。
  16. ^ a b 湯浅政明監督『犬王』“オスカー前哨戦”トロント国際映画祭に選出!”. シネマトゥデイ. 株式会社シネマトゥデイ (2021年7月29日). 2021年11月15日閲覧。
  17. ^ 湯浅政明監督『犬王』、トロント国際映画祭で公式上映”. ORICON NEWS. オリコン (2021年9月12日). 2021年11月15日閲覧。

外部リンク[編集]