「冪零行列」の版間の差分

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'''べき零行列'''とは、''n'' 次[[正方行列]] ''M'' であって、ある[[自然数]] ''m'' に対して、
'''零行列'''(べきれいぎょうれつ、べきぜろぎょうれつ、nilpotent matrix)とは、[[冪乗]]して零([[零行列]])となる[[正方行列]]のこと。すなわち、ある[[自然数]] ''m'' に対して、
: ''M''<sup> ''m''</sup> = ''O''
: ''M''<sup> ''m''</sup> = ''O''
が成り立つものをいう。べき零行列は[[基底]]の与えられた[[ベクトル空間]]に対して'''べき零変換'''を定める
が成り立つものをいう。零行列は[[基底]]の与えられた[[ベクトル空間]]に対して'''零変換'''を定める


==標準形==
==標準形==
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\end{pmatrix}
\end{pmatrix}
</math>
</math>
と置いたとき、べき零行列の[[標準形]]は、上の行列の幾つかの[[直和]]
と置いたとき、零行列の[[標準形]]は、上の行列の幾つかの[[直和]]
:<math>
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\begin{pmatrix}
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\end{pmatrix}
\end{pmatrix}
</math>
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の 5 つである。この標準形は、それぞれ ''N''[1,1,1,1], ''N''[2,1,1,0], ''N''[2,2,0,0], ''N''[3,1,0,0], ''N''[4,0,0,0] である。一般に ''N''[1, ..., 1] = (N<sub>''s''</sub>), N[''s'', 0, ..., 0] = ''O'' が成立する。<br>
の 5 つである。この標準形は、それぞれ ''N''[1,1,1,1], ''N''[2,1,1,0], ''N''[2,2,0,0], ''N''[3,1,0,0], ''N''[4,0,0,0] である。一般に ''N''[1, ..., 1] = (N<sub>''s''</sub>), N[''s'', 0, ..., 0] = ''O'' が成立する。

''N''<sub>''n''</sub> は、[[冪乗]]に関して次のような性質を持つ。
''N''<sub>''n''</sub> は、冪乗に関して次のような性質を持つ。
:<math>N_n^2 =
:<math>N_n^2 =
\begin{pmatrix}
\begin{pmatrix}

2004年10月28日 (木) 14:15時点における版

冪零行列(べきれいぎょうれつ、べきぜろぎょうれつ、nilpotent matrix)とは、冪乗して零(零行列)となる正方行列のこと。すなわち、ある自然数 m に対して、

M m = O

が成り立つものをいう。冪零行列は基底の与えられたベクトル空間に対して冪零変換を定める

標準形

と置いたとき、冪零行列の標準形は、上の行列の幾つかの直和

となる。標準化の対象になる行列を M としたとき、ρr = rank M r - rank M r-1 と置けば、ni = p なる i の個数は全部で ρp - ρp+1 個ある。この ρi の値によって作られるべき零行列の標準形は、ni の順番を除いて一意的である。以下、ρiの値に基づく(s次の)標準形を N1, …, ρs] と書く。また、M の次数を s とすれば、ρi の定義から直接に、∑ρi = s となるから、次数 s に置ける相異なる標準形の個数は Fs+1 である。ここに Fフィボナッチ数列を指す。例えば、次数 4 に於ける標準形は、

の 5 つである。この標準形は、それぞれ N[1,1,1,1], N[2,1,1,0], N[2,2,0,0], N[3,1,0,0], N[4,0,0,0] である。一般に N[1, ..., 1] = (Ns), N[s, 0, ..., 0] = O が成立する。

Nn は、冪乗に関して次のような性質を持つ。