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[[File:YellowJeepCrossingRiver.JPG|thumb|right|250px|自動車は一般に軌条(鉄道)を必要としないわけだが、さらに、道路すら離れて走ることができる車([[オフロード]]車)もあり、街から離れた、[[道路]]があまり整備されていない場所への移動に便利である。オフロード車([[:en:Off-road vehicle]])の多くは[[四輪駆動]]である。写真は川を渡りかかっているオフロード車。]]
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'''自動車'''(じどうしゃ、{{lang-en-short|car, automobile}})とは、[[原動機]]の動力によって[[車輪]]を回転させ、[[軌条]]や[[架線]]を用いずに[[道路|路]]上を走る[[車]]のこと<ref>[http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/99109/m0u/%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A/ goo辞書 大辞泉]</ref>。



2019年6月8日 (土) 05:37時点における版

現代の高速道路を実際に走る 数々の自動車の状況。乗用車(数名程度の人を乗せて走るための車)が圧倒的に多い。乗用車の群れの中に、トラック(貨物自動車)タンクローリーバスなどがいくらか混じる。
20世紀初頭の自動車の急激な普及のきっかけとなったフォード・モデルT(T型フォード)
貨物自動車(貨物車)の例
バスの一例。一度に数十名の人を運べる。
自動車は一般に軌条(鉄道)を必要としないわけだが、さらに、道路すら離れて走ることができる車(オフロード車)もあり、街から離れた、道路があまり整備されていない場所への移動に便利である。オフロード車(en:Off-road vehicle)の多くは四輪駆動である。写真は川を渡りかかっているオフロード車。
特殊作業車の例、露天掘りの鉱山などで使われる、特に大型のダンプカー。35トンほどの荷物を運べる。
特殊な車の一例、サーキット競走するためのレーシングカー

自動車(じどうしゃ、: car, automobile)とは、原動機の動力によって車輪を回転させ、軌条架線を用いずに上を走るのこと[1]

概要

大辞泉には、原動機の動力によって車輪を回転させ、軌条や架線を用いず上を走る、とある。鉄道とは異なり、専用の軌道を必要としないことから、進路の自由度が高い特徴がある。

角川の1989年の国語辞典には「発動機の動力で軌道なしに走る四輪車」と記載されている[2]

一般的には、原動機を持ち、車輪の数が3個以上で、かつ乗員が車室内に備えられた座席に座る構造を備えたものが「自動車」として認識されている。ただし3輪のものについては自動車として扱うか否か、分かれるところであり、事実、法令上の規定・扱いも国ごとに異なる。(#分類参照)

英語の automobileフランス語を語源としている。日本語自動車という語は、先述の automobile(オートモービル)に由来しており、auto は「みずから」mobile は「動くもの」という意味を持つことから作られた。なお、同じ漢字文化圏でも中国語では別の語・汽車繁体字)/汽车簡体字)を用い、自動車という語は自動運転車の意味になる。また、英語でMotor vehicleモーターヴィークル)と言う場合には軌道を走る鉄道車両は含まれず、単に car といった場合、馬車や鉄道車両なども含めた車両全般を指す。

自動車は、18世紀に蒸気機関を用いた蒸気自動車として登場し、19世紀にはイギリスやフランスで都市間を移動するためのバスに用いられるようになっていた。19世紀後半、1870年代から1880年代にかけてはオーストリアやドイツでガソリンの内燃機関を用いた自動車の制作や特許取得が行われた。1896年に米国のヘンリー・フォードもガソリン自動車を開発し、1903年に自分の名を冠したフォード・モーター社を設立し、まずは2気筒エンジンの小さな車の製造・販売を開始、1905年には4気筒エンジン車を販売開始、1908年には改良し(価格も比較的安く設定した)フォード・モデルTを発売し、大人気となり、1909年の1年間だけでも1万台を越える台数が売れ、米国で急速に自動車が普及してゆくことになり、米国ではそれまで街の大通りを走る車と言えば(裕福な人々が所有し、御者付きの)馬車ばかりだったのだが、その後 わずか10年ほどのうちに馬車の所有者たちはそれを自動車へと換えてゆき、米国の通りの景色は一変することになった。1910年代~1920年代には安価な大衆車も普及しはじめた。→#歴史

自動車は基本的には、貨物を運ぶための実用の道具として用いられるものであり、人を運ぶこと(人の移動)では、たとえば通勤通学、客の送迎、顧客先訪問、 等々等々に用いられている。貨物を運ぶことに関してはトラック等を用いて、多種多様な荷物が運ばれており、陸上輸送に関して(鉄道が駅から駅への輸送しかできないのに対して、自動車は戸口から戸口へ(=建物から建物へ)と輸送できるという特徴があり[3]、かつての陸上輸送の主役だった鉄道を大きく超えて)現代ではほとんどの国で陸上輸送の主役である。

また自動車は、実用性を離れて、愛着の対象となって趣味的に所有されたり[3]、運転を楽しむため(スポーツ・ドライビング)に用いられるたり、整備すること("機械いじり")を楽しむために用いられることもある。また高級車の場合ステータスシンボルとして利用される場合などもある。

自動車の分類法はさまざまあるが、構造による分類や使用目的による分類などがある。→#分類・種類


自動車は世界中で大量に普及したため、大気汚染の原因となったり、その石油資源の消費量によって石油危機時のリスク要因となったり、道路上の自動車の過密状態などの問題を引き起こしている[3]。課題の解決に向けた努力も続けられており、大気汚染防止のために行政は排気ガス規制を行い、自動車メーカーは消費する石油を減らすこと、つまり燃費の向上(低燃費エンジンの開発)を行ない、電気自動車ハイブリッド・カー水素自動車などの開発・販売も行われている)。

自動車を動かすこと・操ることを運転と言い、ほとんどの国で、公道(一般の道路)での自動車の運転には免許(運転免許)が必要とされている。自動車の最初期の段階からすでに運転を誤る事故(交通事故)が発生した。自動車によって、怪我をさせられたり命を失ってしまう人やその家族という被害者が生じ、同時に運転者が加害者として生きていかなければならなくなることは、自動車普及後の社会が抱え続けている重い課題のひとつである。最近では単純な自動運転技術を越える、本格的な人工知能と高度なセンサー類を用いて人間の助け無しでも走行できる自動運転車も研究されており、AIならば人間が運転するよりも事故率が劇的に減るであろうと期待されてもいて、一部ですでに(実験的な)導入が開始しており、世界での本格的な普及開始の時期が近付いている。 →#負の影響

自動車の生産は、部品となる様々な工業品があってはじめて可能となるので、他の様々な工業の振興、一次的工業品の製造とも関連する[3]。その規模の大きさ、影響の大きさによって、政府にとっては自動車の製造は(一国の)経済を支える重要な産業となりうる。現在のところ、一握りの先進国が自動車の生産を独占してしまっているような状況にある[3]。多くの発展途上国の政府が、自動車製造を行うために懸命の努力を行っている(例えば、先進国の自動車メーカーや政府と交渉し、自動車を輸入するだけでなく、自国内に製造工場などを設けさせる努力を続けている)のは、経済的な影響が大きいからである[3]。→#自動車産業


歴史

フランス陸軍の技術大尉が1760~70年代に開発したキュニョーの砲車のレプリカ

蒸気自動車

最初の自動車は蒸気機関で動く蒸気自動車で、1769年フランス陸軍の技術大尉ニコラ=ジョゼフ・キュニョーが製作したキュニョーの砲車であると言われている。この自動車は前輪荷重が重すぎて旋回が困難だったため、時速約3キロしか出なかったにもかかわらず、パリ市内を試運転中に塀に衝突して自動車事故の第一号となった[4]

イギリスでは1827年ごろから定期バスとして都市部および、都市間で広く用いられ、1860年ごろにはフランスでも用いられるようになった。1885年に、フランスのレオン・セルボレが開発し1887年に自動車に搭載したフラッシュ・ボイラーにより蒸気自動車は2分でスタートできるまでに短縮された。1900年ごろにはアメリカ合衆国で、石炭の代わりに石油を使った蒸気自動車が作られ、さらに普及していった。この頃は蒸気自動車の方がガソリン自動車よりも騒音が少なく運転が容易だった。アメリカ合衆国では1920年代後半まで蒸気自動車が販売されていた。

1865年にイギリスで赤旗法が施行された。当時普及しはじめた蒸気自動車は、道路を傷め馬を驚かすと敵対視されており、住民の圧力によってこれを規制する「赤旗法」が成立したのである。この法律により、蒸気自動車は郊外では時速4マイル(6.4 km/h)、市内では時速2マイル(3.2 km/h)に速度を制限され、人や動物に予告するために、赤い旗を持った歩行者が先導しなければならなくなった。その結果、イギリスでの蒸気自動車の製造・開発は、この赤旗法が廃止される1896年まで停滞することになり、それに続くガソリン自動車の開発においても、ドイツやフランスが先行する事になる。

初期のガソリン自動車、1885年型ベンツ。3輪である。
同じく初期のガソリン自動車のマルクスカー。(1888年)

日本では1904年明治37年)に、電気技師の山羽虎雄が制作した蒸気自動車が最初で、これが日本国産自動車の第1号だといわれている[5]

ガソリン自動車

1870年ユダヤ系オーストリア人ジークフリート・マルクス(Siegfried Samuel Marcus)によって初のガソリン自動車「第一マルクスカー」が発明された。1876年ドイツ人ニコラウス・オットーがガソリンで動作する内燃機関ガソリンエンジン)をつくると、ゴットリープ・ダイムラーがこれを改良して二輪車や馬車に取り付け、走行試験を行った。1885年にダイムラーによる特許が出されている。1885年、ドイツのカール・ベンツは、ダイムラーとは別にエンジンを改良して、車体から設計した3輪自動車をつくった。ベンツ夫人はこの自動車を独力で運転し、製造者以外でも訓練さえすれば運転できる乗り物であることを証明した。ベンツは最初の自動車販売店を作り、生産した自動車を数百台販売した。また、ダイムラーも自動車会社を興した。現在、ガソリン式自動車の発明者はダイムラーとベンツの両者とされることが多い。

日本国産のガソリン自動車は、1907年(明治40年)に誕生した「タンクリー号」が最初であった[5]

初期の自動車レースとガソリン車の優位性の証明

19世紀の自動車は手作りであるため非常に高価なものであり、貴族富裕層だけが所有できるものであった。そして彼らは自分たちが持っている自動車で競走をすることを考えた。このころに行われた初期の自動車レースで活躍したのが、ルノープジョーシボレーフォードといった現在も残るブランドたちであった。このころはまだガソリン自動車だけでなく蒸気自動車や電気自動車も相当数走っており、どの自動車が主流ということもなかったが、1897年フランスでの自動車レースでガソリン自動車が蒸気自動車に勝利し、1901年にはアメリカのテキサス州で油田が発見されてガソリンの供給が安定する一方、当時の電気自動車や蒸気自動車は構造上の問題でガソリン自動車を越えることができず、20世紀初頭には急速に衰退していった[6]

個人所有と共用

共有の歴史

当初は自動車を所有するのはごくごく少数の貴族や富裕層にとどまっていた。所有者に重いコストがのしかかる乗り物という存在を、所有せず活用する、という発想は古くからあり、例えば古代ローマにも馬車を現代のタクシーのように従量式で使う手法も存在したことがあったともいう[7]。1620年にはフランスで貸馬車業が登場し(言わば、現代のレンタカーに当たる)、1662年にはブレーズ・パスカルが史上初のバスとされる5ソルの馬車を発明しパリで営業を開始した。1831年にはゴールズワージー・ガーニー、ウォルター・ハンコックが蒸気式の自動車で乗り合いバスの運行を開始した。

内燃機関によるバスとして最初のもの(1895年)

1871年にはドイツ人のヴィルヘルム・ブルーンによってタクシーメーターが発明され、1897年にはゴットリープ・ダイムラーが世界初のメーター付きタクシー(ガソリン車)Daimler Victoriaを製造した。レンタカーの最古の歴史ははっきりしないが、米国における最初のレンタカー業者は、初の量産車とされるT型フォードを用いて1916年から営業した、と言われることはある。その最初のレンタカー業者とされるネブラスカの男Joe Saundersは、車にメーターを取り付け 1マイルあたり10セントの方式で貸したという[8]

大量生産と大衆による所有
フォード・T型(1908年発売)
シトロエン・TypeC(1922年発売)

米国で1908年、フォードフォード・T型を発売した。フォードは、流れ作業による大量生産方式を採用し自動車の価格を引き下げることに成功した。これにより裕福層の所有物であった自動車を、大衆が所有することが可能となり自動車産業が大きく発展するさきがけとなった。ヨーロッパでは1910年ごろに、大衆の自動車に対する欲求を満たすように、二輪車の部品や技術を用いて製造された小型軽量車、いわゆる「サイクルカー」が普及していった。1922年にフォードと同様の生産方法を用いた小型大衆車が発売され、本格的に自動車が普及していく事になった。また、それに伴いサイクルカーは姿を消していくことになる。

大衆車の普及によって、一般市民が自動車を所有することが可能となり、自家用自動車(自家用車)が普及すると、それに伴って自動車を中心とする社会が形成されるようになり、自動車が生活必需品となっていく、いわゆるモータリゼーションが起きた。世界で初めてモータリゼーションが起こったのは1920年代アメリカ合衆国であり、次いで西ヨーロッパ諸国においても起こり、日本でも1970年ごろに本格的なモータリゼーションがはじまった。個人用自動車の普及は、鉄道や船といった公共交通機関に頼っていた時代に比べて利用者に圧倒的に高い自由度をもたらし、個人の行動半径を大きく拡大させることとなった[9]

共用車の再注目

1970年代にスイスなどでカーシェアリングも行われるようになった。カーシェアやその後世界各国に広がり、自家用車による有償ライドシェアを認める国も現れるなど、自動車を所有せず利用する形態は多様化してきている。

機械の生産方式や人々の労働への影響

なお自動車で採用された大量生産の手法が、ライン生産方式という効率的な手法を、自動車産業に限らず様々な製造業において広めてゆくことになった。これは企業経営者にとっては好都合な手法であったが、それは同時に分業が徹底される結果を生み、工場で多くの労働者が、まるでただの機械や道具のように扱われ、同一の単調な作業ばかりを繰り返すことを強制され、働くことに喜びを見出しにくくなる、労働者に精神的な不幸をもたらすという負の事態も引き起こした。(一時期はあまりに効率重視で作業の細分化がゆきすぎ、それこそひとりの労働者が、ボルトを1個~数個締める作業ばかりを繰り返すなどというひどい方式になってしまい、労働者への精神的な悪影響が大きくなりすぎ、それが学者などからも指摘されるようになり、その後長い年数をかけて、作業を細分化しすぎないように、ある程度はまとまった範囲の任務を与える、という方式を採用する工場も増えてきた。たとえば一人の担当者が、せめてエンジン部分はまとめて責任を持って一人で組み立てることで、その人なりに「自分の作品を仕上げた」と感じられるようにする、などといった方式である。)

2000年代における技術開発の動向

中国など新興国の経済成長や人口増加で、世界全体の自動車販売台数は増えている。これに伴い燃料であるガソリン軽油の消費増や大気汚染が問題となり、各国政府は自動車に対して排気ガスなどの規制を強化。自動車メーカーは温暖化ガス(主に二酸化炭素)や大気汚染物質の排出が少ない又は皆無で、石油資源を節約できるエコカーの開発・販売に力を入れている。

近年は、公害地球温暖化の対策として、電気自動車燃料電池を動力源としたゼロ・エミッションの自動車の開発が進んでいる。特に2015年にフォルクスワーゲングループにて発覚した排ガス不正でディーゼルエンジンの悪影響が露呈されてから、欧州各国では近い将来ガソリン車およびディーゼル車などの販売を禁止する法案が賛成多数の情勢にある。オランダとノルウェーでは2025年、ドイツでは2030年に施行するべく、そうした法案が提出され始めている[10][11][12]

近年は情報通信技術(ICT)が急速に進歩している。このため自動車メーカーや大手ICT企業は、インターネットで外部と接続されたコネクテッドカーや、人工知能(AI)を応用した自動運転車の研究・開発も急いでいる。

かつてはSF作品中の存在であった「空飛ぶ車」の開発も進んでいる。日本では、トヨタ自動車グループの支援を受ける有志団体「CARTIVATOR(カーティベーター)が、2018年の試作機完成を目指している[13]

分類・種類

自動車の分類法はいくつもあるが、おおまかに言うと、構造(ハードウェア)による分類と使用目的(ソフト)による分類がある[3]

理屈の上では使用目的と構造の組み合わせがマトリックス(縦横の表)のように多数あるわけだが、実際には全ての組み合わせが用いられるではなく、使用目的ごとに適している構造は(全ての構造ではなく)いくつかの目的に適した構造に絞られることになり、また多くの使用者・購入者から評価される典型的な組み合わせや傾向のようなものが生じ、ただしそれはまったく固定しているわけではなく、時代とともにそれが緩やかに変遷を経てきた歴史がある。

特定の国に限らない分類としては、基本的には、たとえば、目的によって「乗用車(数名の人を運ぶための自動車) / 貨物車(貨物を運ぶための自動車)/ 特殊な車(それ以外の目的の自動車)」と分ける方法がある。またたとえば、大きさによって「小型車 / 中型車 / 大型車」などと分ける方法が、基本的にはある。

なお自動車が登場する以前の馬車の時代に、馬車がその姿(形状)によって分類され、すでに分類法やその分類用語が確立していたので、(馬を排したとは言え)自動車の車体に関してもそれに沿った分類法が採用されてきた歴史がある。「セダン」「クーペ」「ワゴン」などという分類法はもともとは馬車の分類法を継承したものである。→#普通自動車の分類

その後、さまざまな形状が新たに開発され、中間的な形状のバリエーションも増えるにしたがい、分類が困難なものも増え、従来の分類用語では分類不能になったり混乱する場合が出てきたので、「箱状の形状がいくつあるのか?」という観点で、車体の形状を(単純化して)再分類することも行われるようになった。

法規上の分類

それぞれの国で法規によって排気量や車体の大きさ、輸送能力などによって分類されている。それが税区分や通行区分、運転免許の区分の基準とされる。

日本においては、道路交通法第三条により、大型自動車中型自動車準中型自動車普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、大型自動二輪車普通自動二輪車の8種類に分類され、道路運送車両法第三条により、普通自動車、小型自動車軽自動車、大型特殊自動車および小型特殊自動車に分類されている。

普通自動車の分類

姿形による分類

もとは馬車の形状による分類用語である。その後、馬車にはなかった分類用語が追加されてきた歴史がある。

  • セダン:原則4ドアの車。エンジンルームとトランクルームを持つスリーボックスカー。
  • クーペ:もとは基本形のセダンをフランス語で「クペ」したもの、つまりセダンが少し「切られて」短くなった形。(4ドアから2ドア分減って)原則2ドアのスリーボックス車。
  • ワゴン: (もとは荷馬車en:Wagonを指す用語で)荷室が主となっている自動車。
    • 後部が主に荷物を乗せるのに使われるのをバンという。
    • ステーションワゴン:(ワゴン車の一種ではあるが)後部には乗員の座席とひとつづきの荷室を備えているツーボックスカーで、後部が主に人を乗せる為に使われる車。
  • ハッチバック:キャビン(人が乗る空間)と荷室が一体化している車で、「ハッチバック」(跳ね上げ式の後部ドア)になっている車。結果として3ドアもしくは5ドア。

屋根による分類法は次のようなものがある。

  • オープンカー:屋根のない車
  • ハードトップ:もとは硬い屋根を持つ車。その後、スリーボックスで主に側面中央の窓柱(Bピラー)を持たない車を指す用語に。
  • ソフトトップ:布などでできた柔らかい屋根を持つ車。(その後、これを採用する車はほぼ消えた。)
  • コンバーチブル:可動式の屋根を持ち、屋根無しの状態でも屋根を出した状態でも、どちらも可能な車。

スペースによる分類

自動車メーカーが消費者を満足させるために、乗用車(普通自動車)に関してさまざまな形状のものを開発してきた結果、1980年代~2000年代以降、従来の分類法や分類用語では分類しきれない車や、あるいは複数のカテゴリに該当するような車が増え、消費者も自動車メーカーも自動車誌等も、従来の分類法やカテゴリ名に困惑を感じることが増え、メーカーや販売会社と消費者のコミュニケーションでも混乱が生じるようになった。そうした困惑や混乱を回避するために、多種多様な普通自動車をざっくりと以下のように分類する方法が考えだされ、それが採用されることが増えた。

  • ワンボックスカー(モノスペースカー):全体が一つの大きな箱(ボックス)状になっている車。内部的には、エンジンルーム、キャビン(=室内スペース)、荷物室があっても、見た目は大きな一つの箱のように見える車。
  • ツーボックスカーファストバックカー、カムバックカー): キャビンと荷物室が1つの大きなボックスで、エンジンルームが別のボックスとして飛びだしているように見える車。
  • スリーボックスカーノッチバックカー):キャビンが1つ大きなボックスとして真ん中にあり、そこから前後に(キャビンよりは高さが低い)エンジンルームと荷物室のボックスが飛び出している形状の車。

構造

自動車はその歴史のなかで様々な構造が現れ、変遷してきた。ここでは現在市販されている自動車として一般的なものを示す。したがって、いくつかの自動車には例外があり、特に競技用や工作用など、特殊な用途に特化したものについては構造が大きく異なる例もある。

車体構造

車体の強度部材に用いられる材料は鋼鉄が主流で、近年ではアルミニウム合金や炭素繊維強化プラスチックなどの複合材料を用いたものも市販されるようになってきている。骨格部材以外のパネル部分には合成樹脂を用いる例も増えてきている。

構造は大きく分けてフレーム形式モノコック形式とに分けられる。フレーム形式は独立した骨格部材の上に、車室を構成する構造物が載せられたもので、古くから自動車の車体構造として用いられ、現在でも貨物車を中心に採用されている。モノコック形式は車室を構成する外殻自体が強度部材として作られた構造で、20世紀半ば頃から自動車の車体構造として普及しはじめて、現在の乗用車のほとんどで採用されている。

原動機

現在は内燃機関か、電気モーターを用いるものが主流である。内燃機関では、ピストンの往復運動をクランクシャフトで回転運動に変換して出力するディーゼルエンジンガソリンエンジンなどのレシプロエンジンが一般的である。それぞれに4サイクル2サイクルがあるが現在では4サイクルが主流となっている。火花点火機関の燃料にはガソリンが用いられるのが主流となっているが、環境性能や単価を理由に液化石油ガス(LPG)や液化天然ガス(LNG)、エタノール等のアルコール燃料が用いられる場合もある。近年では、内燃機関と電気モーターを組み合わせたハイブリッドカー電気自動車などが普及してきている。

動力伝達

動力は、ガソリン自動車の場合は、原動機が効率的に出力を発揮する回転速度から、走行に適した回転速度へと変速機によって減速される。変速機は、運転者が複数の減速比から選択して操作するマニュアルトランスミッション(MT)と、自動的に選択または変化するオートマチックトランスミッション(AT)に大別できる。MTは基本的に減速比を切り替える際などにはクラッチを操作する必要があるが、このクラッチ操作を自動化したものはセミオートマチックトランスミッションと呼ばれる。近年は、MTの基本構造を持ちながらクラッチ操作と変速操作が自動制御された、自動制御式マニュアルトランスミッション (AMT)も普及し始めている。 電気自動車の場合は、原動機の効率的な回転速度の範囲が広いため減速比を切り替えない変速機を採用し、原動機を逆回転させることが可能なので後退ギアを持たない場合がほとんどである。

マニュアルトランスミッションの場合、前進の変速比は4段から8段程度が一般的だが、副変速機を用いて変速段数を2倍とする例も貨物車を中心に少なくない。

オートマチックトランスミッションは、トルクコンバータプラネタリーギアを組み合わせたものが広く普及している。日本の乗用車では、CVTと呼ばれる無段変速機の採用例が増えてきている。いずれの方式においても、運転者の操作によって「Lレンジ」などのように減速比の範囲を限定する機構や、「マニュアルモード」などと呼ばれる任意の減速比に固定できる機構を備えている。

セミオートマチックトランスミッションは日本の法規ではAT車に分類され、日本車の例ではトヨタ・MR-SのシーケンシャルMTがある。

操舵装置

操舵は前輪の方向を変えて車体を旋回させる前輪操舵方式が一般的で、その機構全体を指してステアリングと呼ぶ。操作部を「ハンドル」あるいは「ステアリング・ホイール」と呼ぶ。ハンドルの回転はボール・ナットラック・アンド・ピニオンなどの機構を介して車輪を左右に押す作用に換えられる。近年は油圧や電動モーターを用いて運転者のハンドル操作を助力するパワーステアリングが広く普及している。

旋回時の各瞬間に、それぞれの車輪がその動いている方向を向くようにすると、前輪の左右では舵角が異なる。例えばハンドルを右に切ると右タイヤの方が舵角が大きくなる。これについての機構をアッカーマン機構と呼ぶ。

制動・拘束装置

主たる制動操作は、足踏み式のペダルで行うフットブレーキがほとんどである。ペダルに加えられた力は油圧空気圧を介してブレーキ装置に伝達し、摩擦材を回転部分に押しつけ、運動エネルギー熱エネルギーに変換して速度を落とす。市販車のほとんどが、エンジンの吸気管負圧や空気圧を利用した、ペダル踏力を軽減する倍力装置を有している。

下り坂などで、フットブレーキに頼り過ぎるとフェード現象で制動力が著しく低下したり、ベーパーロック現象でペダル踏力が全く伝わらなくなってしまうことがある。これらを防ぐためにエンジンブレーキを利用することが運転免許教習でも指導されているが、車両総重量が大きくエンジンブレーキだけでは抑速や減速効果が得られにくい大型の貨物車では、排気ブレーキリターダを搭載する車種も多い。

高速からの制動には、放熱性に優れるディスクブレーキが有効であるが、重量が大きい車両の制動や、勾配での駐車などには、自己倍力作用の働きで拘束力の大きいドラムブレーキが有利となる[14]

駐車時に車体が動き出さないように拘束するパーキングブレーキはワイヤ式または空気式のものが多い。乗用車の場合はブレーキ装置を制動用のものと共用する構造がほとんどであるが、制動用のディスクブレーキの内周に拘束用のドラムブレーキを備えるものもある。従来貨物車ではトランスミッション(変速機)出力部にドラムブレーキを備えたセンターブレーキが一般的であったが、法改正により常用ブレーキを兼用する「ホイールパーク式」/「マキシブレーキ」と呼ばれる方式に移行した。

運転装置

運転者の座席は座部と背もたれを備えた椅子形のものが主流である。運転席の正面には操舵用のハンドルとアクセルペダルとブレーキペダル、あるいはクラッチペダルが備えられているのが標準的な自動車の構造である。ハンドルは形が一般的だが、オート三輪では棒状のハンドルも存在した。また、近年は楕円形のハンドルを採用している車種もある。駐車ブレーキを操作する装置は、レバーを引き上げる方式のものが主流であるが、古いトラックやワンボックスカーでは杖状のレバーを車体前方の奥から手前に引き寄せる方式のものもある。また、近年では足踏み式のものや電気的に作動する押しボタン式も採用されるようになった。変速機の操作レバーはMTの場合はシフトレバー、ATの場合はセレクトレバーと呼ばれる。いずれの場合も運転席の脇、車体中央側の床に設置されているフロアシフトが大半を占める。古いタクシーやトラック、ワンボックスカーではステアリングコラムにシフトレバーを設置したコラムシフトのMTも多く存在した。現在のAT車ではステアリングコラムにセレクトレバーを備える車種はミニバンを中心に珍しくないものとなっている。近年はインストルメントパネルにセレクトレバーを配置したものも多い。

自動車の利用

乗用車としての利用

サービス業での利用

自動車は人や物を輸送でき、また道路さえ整備されていれば様々な場所に行くことができる。そのため自動車を用いたサービス業が多種存在する。 これには大きく分けて「自動車で何かをする」形態と、「自動車に何かをする」形態がある。

前者の例として、旅客輸送貨物輸送を行うサービス全般を運輸業と呼ぶ。旅客であればタクシーハイヤー、またバスなどとして運営され、バスは多くの人員の輸送が可能であることから、形態に応じて路線バス観光バス高速バス定期観光バスなどと様々なものがある。貨物輸送に関しては運送会社がトラックを用いて輸送する。 直接的な輸送サービスの提供ではないが、自動車を賃貸するレンタカーカーリースもある。

後者の例としては自動車の整備を行う自動車整備業、自動車への燃料補給などを行う水素ステーションなどがある。

スポーツ、趣味での利用

フォーミュラ1(F1)
世界ラリー選手権(WRC)

自動車は多彩な車種・形状があり、また用途によって様々な自動車が使い分けられる。単に走ると言っても、整備された道路・行程だけでなく条件の悪い道路・行程などもあり、様々な楽しみ方がある。そのような様々な観点から自動車を乗ること、集めることなどを趣味にする人も多い。特に遠方の行楽地に向かう際に自動車による移動そのものを主目的の一つとしたり、目的地を決めずにただ自動車を運転する周遊旅行は一般に「ドライブ」[15]あるいは「遠乗り」と呼ばれている。また、自動車を操縦しより高速なスコアタイムを目指すことはスポーツの一種として認識されており、モータースポーツと呼ばれる。とにかく速く走るためのスポーツ専用の自動車であるフォーミュラカーで走ることが全てではなく、市販車や自作車でのレース、また長時間の運転となる耐久レース、一般公道で行われるラリーや、自然のままの過酷な道を走破するラリーレイドなど、多彩なものが世界各国で開催されている。フォーミュラ1(F1)やインディ500ル・マン24時間レースダカール・ラリーといったものは特に著名な国際大会である。

愛好家により廃車の状態から修理・復元されたクラシックカー

趣味としては、自動車を走行させるだけに限らず、プラモデルミニチュアカーなどといった精巧な自動車のミニチュアの製作や収集、また部品の収集や写真の撮影など多岐に渡る。走行する自動車に関する趣味としては、様々な自動車に乗車することを趣味にしたり、自動車の改造やメンテナンスを趣味にすることもある。

また、クラシックカーや旧車・ヴィンテージカーなどと呼ばれる、過去に製造された車両を復元・保存する愛好家もいる。クラシックカーに関しては文化的・歴史的・資産的価値が認められることもあり、それらを使用した展示会や走行会は、愛好家と地方行政とが密に連携することで地域活性化の一環とされることもある(もとより公道を走行するイベントでは、行政との連携が必須である)。また、特に価値を認められたクラシックカーは、各種オークションなどで極めて高い値で取引されることもある(日本円にして数千万円から数十億円の値が付くこともある)。

バスバスファンを参照)やトラックタクシーを趣味にするものもいる。書店販売上の分類などでは別の範疇に含まれることも多いが、これも広義での自動車趣味である。

このように、自動車は単に人や物資を輸送するだけの存在に留まらない。

負の影響

交通渋滞

自動車は使用者に多くの便益を与えるが、人間の健康を害したり、生命を奪ってしまうことすらある。

自動車が社会に及ぼす悪影響の中で特に大きなものは、交通事故という、怪我人や死者やその家族という被害者と、事故を起こした車を運転していた加害者を作りだしてしまうことである。また内燃機関(エンジン)を持つ自動車がガソリンなどの石油燃料を燃やし排出する排気ガスによる大気汚染はぜんそくや肺疾患などで人々の健康を害し生命をおびやかし、騒音や振動なども生活の質を著しく低下させる。また交通渋滞ではアイドリング・徐行による排気ガスの増加やエネルギー効率の低下、また時間のロスによる経済的・個人的損失も発生する。

などである。

交通事故

交通事故で大破した車

一般に、交通事故は出来る限りゼロに近付けるべきだ、とされている。特に死亡事故はゼロに近付ける努力を精一杯するべきだ、とされている。日本の警察は、交番などに、その地域で、日々、交通事故によって怪我を負った人や死亡した人の数を掲示し、人々に注意を喚起し、人々の意識を変え、運転に慎重になってもらおうと努力している。

負傷(怪我)と分類される場合でも、被害者は実際には重い障害を負って生涯苦しむ人が含まれている。まして被害者が死亡してしまった場合、死亡した人の親の悲しみは計り知れない。また死亡した人に子供がいれば、その子供は遺児交通遺児)となり、「親を失った子」としてその後の人生を生きなければならず、多くの場合、親が生きていたらできたはずのことができない人生となる。加害者となった者のほうの人生の状況も、(自賠責保険任意保険などで)被害者に金銭的に補償すればそれで全てが済むというような生易しいものではない。たとえば、運転時にいわゆる「ながら運転」をしていたという場合、危険を予見できたにもかかわらず、道路交通法で定められている「注意義務」を怠ったことによって罪が重いが、そうでなくても、ただほんの一瞬注意を怠ってしまった、ということでも過失運転致死罪過失運転過失致死罪)が適用される可能性があり、運転者(加害者)は刑務所で服役しなければならない可能性がある。また、自動車保険を利用して被害者に対して金銭的に補償しても、さらに運転者が刑務所で服役しても、遺児にとって大切な親が生き返るわけでもなく、結果として加害者となった者は一生涯、被害者の人生を狂わせてしまったことに対する道義的な責任を感じ続けなければならなくなる。加害者は、ことあるごとに「自分は人を殺してしまった」とか「残された家族の人生も壊してしまった」などと苦しむようになり[16]、加害者の人生もまた、大きく変わってしまうのである。自動車によって頻繁に起きるようになった交通事故というのは、ただの金銭問題や経済問題といったレベルをはるかに超えて、人々の人生を狂わせ、人々を苦しめ続けている。

なお(一部に、人命を軽視する者や、人の命まで金銭に換算して済ましてしまおう、という者がいるが、そういう態度がそもそも非常に不謹慎である、と一般にされている。それでも人命を軽視する姿勢を直せず、何でも金銭に換算してしか理解しようとしない者にその金銭の数字を示すと)交通事故関連の損失は、日本だけに限った場合でも、実に毎年6.7兆円に及んでいる[17]

自動車の前に馬車が普及していたヨーロッパや米国では、車(馬車)が非常に危険だということは理解されていて、歩行者と車の走行場所の完全な分離(歩車分離)が早くから(つまり馬車時代から)進んだ。(外国に行ったことがない日本人は気づいてもいないようだが)欧米では、道路と言っても、自動車が走行する場所と、歩行者の歩く場所の距離が何倍もとってあり、そのけっか事故が少ない。またヨーロッパでは「歩行者優先」が徹底されていて、歩行者がいたら、自動車運転者はほぼ絶対的に停車する。ところが日本は後進国の段階、馬車すらも普及していない状態、つまり歩行者(や人が引く荷車)しかなかった道に、いきなり自動車が人の導線を侵害するように導入されてしまった。おまけに、ヨーロッパの走行状態を知らない人々が住む日本では「歩行者優先」の原則が十分理解されず、自動車の運転者が傲慢に歩行者の歩行を妨害するようなことがまかり通るようになってしまい、それが放置されるようになってしまった。最近では日本人でも海外経験をする人が増え、海外の交通状況を理解する日本人も増えるようになり、日本でも歩行者優先意識の啓発、あるいは歩行者優先の原則の絶対厳守とその原則を守らない運転者に対して厳罰を科すことが望まれるようになりつつある。歩道のガードの拡充、十分な幅の自転車専用レーンの確保、などの道路インフラ整備が必要とされている。東名飲酒運転事故以前は飲酒運転も横行していた。速度超過、事故を誘発する違法駐車、横断歩行者の妨害等などの交通犯罪が蔓延している現状がある。またスマートフォンの普及などが原因となって、2010年代後半にはながら運転による深刻な事故が統計的に明白に急増したので、「ながら運転」による事故に関しては日本政府も厳罰化した改正案を2019年5月8日に閣議決定し、法案として提出した[18]

また日本など高齢化が進む社会(高齢化社会)では、全ドライバーに占める高齢ドライバーの割合が増え、ブレーキペダルとアクセルペダルの「踏み間違え」や道路の「逆走」を引き起こし、深刻で悲惨な事故が、高齢者の運転による死亡事故が(毎日のように)頻発するようになってきた。高齢者は、実際には客観的に測定して運転技能が落ちているにもかかわらず、本人は逆に「自分の運転には絶対に自信がある」などと言うようになり(=自信過剰状態)、こうした高齢者による(一種の狂気のような)自信過剰が原因で、より一層 重大で深刻な事故が起きている、ということが判ってきている[19]

2010年代後半、先進国の大手自動車メーカーやIT企業などが主導して、自動運転車、しかもA.I.(人工知能)と高性能のセンサーを多数活用した高度な自動運転車の開発にしのぎを削っており、すでに一部の地域では実験的に走行が始まっており、2020年代には本格的に販売され、普及が進んでゆくと予想されており、性能の良いAIを用いた自動運転車ならば、人間が運転するよりも事故率を数百分の1や数千分の1程度にまで減らすことができる、といった予想もあり、自動運転車の普及によって、交通事故で苦しむ人々が減ることが望まれている。

運転技能が落ちた高齢者ドライバーほど逆に自分の運転に「自信」を持つという恐ろしいデータも明らかになってきて、もはや高齢者ドライバーの「自覚」に期待したり、(自発的な)免許の自主返納に期待することは無理だ、高齢者に期待することが事故を引き起こす環境を放置する結果を生んでいる、ということも指摘されるようになってきている。(フジテレビの情報番組などをはじめとして)日本では高齢化が進み悲惨な事故が既に急増したので、高齢者ドライバーに関しては「(アクセルを踏み込む異状操作時に作動したり、障害物に突進する場合に作動する)自動ブレーキ車限定の免許」(現在のところ。また将来的には「自動運転車限定の免許」)に強制的に変えるなどの法的・行政的な対策が必要だ、との指摘が行われるようになっている。

大気汚染と環境破壊

ガソリン、ディーゼル自動車は環境に大きな悪影響を与える。 内燃機関を持つ自動車は化石燃料を燃やし、二酸化炭素だけでなく窒素酸化物硫黄酸化物黒煙(黒い微粒子)を大量に排出する。

大気汚染は、道路周辺に住む人々の健康を害する。ぜんそく肺疾患などを引き起こす。肺がんなどの原因ともなっている。 また、大量に自動車の走行する道路沿いでは大気汚染だけでなく、走行による振動とそれに伴う騒音などの様々な問題も引き起こし、人々の生活環境を破壊する。

自動車が大量に放出する二酸化炭素は地球温暖化を早めてしまい、窒素酸化物・硫黄酸化物などは酸性雨の原因にもなっており、これらの排出の削減が急務である。

自動車の排ガスはさまざまな面で害が大きいので、1970年代から先進国の政府によって大規模な自動車排出ガス規制が行われるようになった。その結果ようやく自動車メーカーは、排ガス中に有害物質の少ないエンジンや低燃費のエンジンを本腰を入れて開発するようになった。また徐々に、大気汚染問題を根本的に解決すべく、電気自動車水素自動車などの開発も進むようになり、2010年代では電気自動車も本格的に販売台数が伸び、ヨーロッパ(や中国)では2020年代にさらに排ガス規制が厳格化し、電気自動車の普及の推進(や販売台数、販売割合の義務化)がされるよう予定が欧州議会や欧州の各国政府の主導で組まれており、環境にもやさしく健康にも優しい電気自動車の開発・販売や購入に対し様々な優遇措置がとられるようになっており(2012年時点ですでに行われていた)、各自動車メーカーも「脱ガソリンエンジン」「電気自動車開発」でしのぎを削っている。

石油の大量消費

2018年には生産台数が1億台へ達すると予測されているが、仮に1.36トン車の984リットルで計算すると必要なエネルギーはガソリン984億リットル相当となり、これは日本の年間ガソリン消費量55百万キロリットル(550億リットル)[20]の約2倍である。

自動車利用犯罪

自動車が生活に密着していなかった頃は、犯罪者の居住地域と犯罪地域は密接な状態にあったが、自動車が普及するにつれ、この前提は崩れている。他の交通機関でも犯罪を犯した地域からの脱出は可能であるが、公共交通では移動時間帯が限られている点や、(駅にカメラが設置されている鉄道や、運転手が目撃者となり得るタクシーなど)匿名性を保つことが困難な点などの関係で、犯罪者が犯罪を犯した地域から離れる場合の手段として自動車を用いたものが増えていることが、毎年発表される警察白書から確認できる。この問題には、高速道路での移動や盗難車による移動も含まれる。この問題に対し自動車ナンバー自動読取装置設置などの対策が施されているが、高価な装置であることなどの理由から設置場所は限られており、犯罪者側もナンバーを見難くするカバーを付ける者や偽造ナンバーを付ける者がいるなど、完全な対策になってはいない。

その他

乗り物酔い、シックカー症候群についてはシックハウス症候群をそれぞれ参照。

自動車の普及

自動車生産台数の推移

世界の自動車生産の推移[21]
各国の自動車生産台数(千台)
生産台数シェア

20世紀に入り、フォード・モデルT(販売1908年 - 1927年)の発売から米国での普及が始まり、その後欧州でも比較的廉価な車が発売された。第二次世界大戦後には戦時中に兵器製造に従事していた各企業による自動車生産が始まり、特にアドルフ・ヒトラー国民車構想の産物であるフォルクスワーゲン(1938年 - 2003年)は量産記録を打ち立てた。1970年代には日本においても大衆車が普及し日本車の海外輸出も始まり生産台数を伸ばし始め、同時に韓国マレーシアなどでも自動車生産が始まった。以下で述べる生産台数はメーカー国籍別ではなく、地理的に生産された国での数値である。

自動車の生産台数は1950年には約1058万台[22]で、その約8割は第二次世界大戦による戦災を逃れた米国によるものであった。ビッグスリーの地元であり、また後に日・独などのメーカーが進出した米国は、その後半世紀にわたり世界で最大の生産国であった。60年代には西独などの生産が立ち上がり、1960年の生産台数は1649万台となった。70年代には日本における自動車の増産も始まり、1970年の生産台数は2942万台、1980年には3856万台[23]、90年代には韓国ついで中国での生産が増加し、1990年4855万台、2000年には約5837万台[24]、2010年には7758万台[25]2013年には8730万台[26]と増加し続けている。2018年には1億台に達するとの予測も出ている[27]

日本における自動車生産は第二次世界大戦前は主に米国企業によるいわゆるアメ車ノックダウン生産、戦後には戦災で破綻した物流システムを整えるべくトラックやバスの生産が優先された。乗用車の生産台数がトラック・バスを追い抜いたのは1968年であった。1960年の世界の生産台数は1649万台であったが、日本の生産台数は約76万台(内訳、乗用車17万台、トラック59万台、バス8千台)であった。1960年当時には、それまで三輪車や二輪車を生産していた鈴木自動車、富士重工、ダイハツ、東洋工業、本田などの企業が四輪車の生産に乗り出していた[28]。「マイカー元年」と言われた1966年には229万台[29][30](内、乗用車98万台[31][30])でその内輸出は約26万台であった[28]。1980年には約1千万台に達し米国を上回った[32]。1980年の日本の自動車輸出台数は597万台であった[28]。1991年には過去最高の約1325万台を生産したが、以降は1千万台前後で推移している[21]。輸出は1985年がピークで673万台であった[28]

2009年には中国が1379万台で2位日本の793万台を大きく引き離し世界最大の自動車生産国となった。2013年は中国が2212万台、米国1105万台、日本963万台、ドイツ572万台、韓国452万台、インド388万台、ブラジル374万台、メキシコ305万台、タイ253万台、カナダ238万台、ロシア218万台となっている [33]。自動車メーカーの国籍はともあれ、中国で突出した台数が生産されている。2013年の自動車生産台数の4台に1台は中国で生産された。

地域別でみるとEU27カ国では16カ国で1618万台生産されており、多い国はドイツ572万台、スペイン216万台、フランス174万台、英国160万台、チェコ113万台、スロバキア98万台などで、これら6カ国でEU生産の82%が生産された。その他の地域で約百万台規模の生産のある国は、トルコ113万台、インドネシア121万台である。BRICsの一員である南アフリカ共和国では約50万台の生産があった[34]

自動車保有(普及)台数

第二次世界大戦による大量破壊の翌年の1946年における自動車登録台数は約5千万台[35]で、1955年に1億台を超え、1967年には2億台、1979年には4億台、1986年には5億台となり、24年後の2010年には10億台を超えた[36]

この間に各国で物資輸送の主体が鉄道から自動車へと転換し、総人口の増加、自動車普及率の向上とも相まって自動車登録台数が飛躍的に増加していった。

登録台数[36]・自動車保有率の推移
年度 登録台数 世界人口[37] 1台あたりの
人口
備考
1945 0.5億台 23.5億人 47 人口は
World population in 1945による。
1955 1億台 27.7億人 27.7
1960 30億人 24.4[38]
1967 2億台 34.2億人 17.1 1966年の人口値
1979 4億台 44.5億人 11.1 1980年の人口値
1986 5億台 48.6億人 9.7 1985年の人口値
2002 8億台 62.4億人 7.7[38]
2010 10億台 69億人 6.9
2030 20億台 83億人 4.2 17億台とする予測もある。その場合4.9人に1台。

1台あたりの人口の数値は1960年と2002年のもの以外は登録台数の有効桁数を一桁で計算しているので、大まかな数値である。

各国の1千人あたりの自動車台数(2009年)
  601+
  501-600
  301-500
  151-300
  101-150
  61-100
  41-60
  21-40
  11-20
  0-10

20世紀末からは中国の経済成長に伴い、中国での自動車生産も始まり21世紀初頭には米国に次ぐ自動車保有国となった。2010年の中国の自動車登録台数は前年比27.5%増と大幅な伸びを示しているが[36]、中国における人口あたりの普及率は未だに低く、さらなる増加が見込まれている。中国に並ぶ人口大国のインドでも経済成長が著しく大きく登録者台数を伸ばしているが自動車保有台数は中国の約3分の1である。中国についで増加台数の多い国はブラジルで2010年には250万台増加した[36]

2012年末における世界の乗用車、トラック・バスを含む四輪車保有台数は約11億台で、6.3人に1台の保有率となっている。11億台の内訳は乗用車が7億7332万台、トラック・バスが3億4123万台で、乗用車の普及率は9.1人に1台となっている。自動車の普及の著しい北アメリカ、西ヨーロッパ、日本、豪州では乗用車の普及率は約2人に1台であるが、米国に次ぐ自動車保有国である中国では人口あたりの乗用車保有率は約26人あたり1台である[39][40]

参考までに二輪車自転車を除く)の保有台数(2011年または2012年)は全世界で約2億台から4億台[41]と推定されており、中国に約1億台(1台あたり13人、以下同)、インドネシアに約7598万台(3人/台)、タイ1924万台(4人/台)、台湾1514万台(1.5人/台[42])、日本1199万台(11人/台)、マレーシア1059万台(3人/台)、イタリア858万台(7人/台)となっている[43]

自動車の地域別保有台数を以下の表で示す[41]

なおICCTの2013年の報告書では自動車をLight-duty(軽量車両)とHeavy-duty(重量車両)に2分して集計している。米国の環境庁(EPA)によるLight-dutyの分類は車重8500ポンド(約3.8トン)以下の自動車であり[44]、ほぼ日本で普通免許で運転できる自動車に相当する。Heavy-dutyはバスや大型トラックといった業務用の車両と見なせる。前述した日本自動車工業会による乗用車とトラック・バスとの分類とは異なることに留意。
国・地域別の自動車保有台数 2010年実績と2030年予測 (単位:百万台)
2010年保有台数 2030年予測 対10年度増減率
軽量車 重量車 合計 シェア 軽量 重量 合計 シェア 軽量 重量
カナダ 19 3 22 2% 30 4 34 2% 59% 23%
米国 231 12 243 24% 280 15 295 17% 21% 27%
メキシコ 22 3 25 2% 39 5 43 3% 75% 60%
中南米 20 8 28 3% 37 14 51 3% 83% 74%
ブラジル 28 2 30 3% 50 3 53 3% 80% 33%
EU27カ国 239 35 274 27% 313 41 354 21% 31% 17%
EU外欧州 28 6 34 3% 60 8 69 4% 116% 40%
ロシア 34 6 40 4% 80 7 87 5% 136% 17%
中国 59 17 76 7% 189 32 221 13% 221% 87%
日本 58 17 75 7% 57 16 73 4% -1% -6%
韓国 15 5 20 2% 29 11 40 2% 95% 116%
インド 15 5 20 2% 105 19 124 7% 600% 276%
アジアその他 40 18 58 6% 89 34 123 7% 122% 89%
中近東(エジプトを含む) 26 7 33 3% 68 17 85 5% 161% 142%
アフリカ 21 10 31 3% 33 15 48 3% 56% 49%
オーストラリア 12 3 15 1% 19 3 23 1% 61% 16%
合計 867 157 1024 100% 1,479 243 1,722 100% 71% 55%

2010年の集計では米国とEU27カ国が2大自動車保有地域である。EU27カ国の大半は独・仏・英・伊・西(=スペイン)の5カ国であり、新車登録の75%はこの5カ国によるものである[41]。EU27カ国には世界の27%の2.7億台、米国には同24%の2.4億台があった。これに続くのが国土面積や人口で比較にならないが中国と日本である。それぞれ76百万台、75百万台で約7%のシェアであった。次は日本より人口が1割強多く最大の国土を持つロシアで保有台数は約4千万台であった。

2030年にかけては、EU27カ国および米国では2-3割の増加でそれぞれ3.5億台、3.0億台、中国は約3倍の2.2億台、インドは約6倍の1.2億台となると推定されている。ついでロシア87百万台、2010年比微減となると予想される日本の73百万台、1.8倍の53百万台となるブラジルなどが続く。経済成長の著しい韓国では2030年には普及率が日本など自動車先進国と並び倍増の4千万台となると予想されている。

自動車社会ロサンゼルスの現状

最多の保有台数(全4輪車1台あたり1.2人)である米国のなかでも保有率が高いのがロサンゼルスである。なお米国の普及率を乗用車のみでみると1台あたり2.6人と他の自動車普及国がほぼ2.0人かそれ以下であるのに対して普及率が低くでている[40]。これは米国では乗用車に分類されないピックアップと呼ばれるトラックが自家用として広く普及しているためである。

自動車社会であるロサンゼルス郡は、面積が東京都の約4.6倍の約1万平方キロで、人口は東京都の約4分の3の約1千万人[45]で、約700万台(2008年末)の登録車両がある[46]。運転出来ない若年層を考慮すると平均ではほぼ1人に1台の状態である。ロサンゼルス市にはかつて路面電車が走っていたが、20世紀半ばには廃止され(アメリカ路面電車スキャンダル)1940年のパサデナフリーウェイ(Arroyo_Seco_Parkway)を皮切りに高速道路が整備され自動車社会へと変わっていった。これにより街自体が人の移動を車によるものとの前提で開発され、広大な駐車場を備えたスーパーマーケットショッピングセンターが近郊の小売業を駆逐していき、ちょっとした買い物でも車で移動せざるを得ない状態になっている。1990年代には地下鉄(ロサンゼルス郡都市圏交通局)の開業が始まったが、整備状況は限られている。

ロサンゼルス郡では高速道路網(Freeway)も張り巡らされており、多くの一般道も片側3車線前後であるが、朝夕の通勤退社時には高速一般道ともに大きく渋滞している。道路の整備は米国の他州はもちろん各国に比べ進んではいるが、地下鉄バスなどの公共交通機関が未熟な為に約84%が通勤に乗用車を運転しており公共機関の利用者は6%に留まり、全米で最悪の交通渋滞との評価が下されている[47][48]

カリフォルニア州ではガソリン価格は米国平均よりも高く、排気ガス規制もより厳しい独自のものを設定しており、より小型の車やハイブリッドカーが選択される傾向が他州よりも強い。

日本の自動車保有台数

日本には1898年(明治31年)ごろから自動車が輸入されはじめ、道路法が成立した1919年(大正8年)には自動車台数は5000台に達していた[49]大正時代関東大震災を挟んで急増し、1926年(大正15年)で3万2000台に達し、1932年(昭和7年)には10万台を越えた[50]。1945年(昭和20年)における二輪車・小型特殊車両を除いた自動車保有台数は、14万台弱、保有率は0.2%に過ぎなかったが[5][51]、敗戦後の自動車の普及はめざましく、1950年(昭和25年)には35.9万台、1955年(昭和30年)には92.2万台となる[51]。1956年(昭和31年)には戦後の復興を遂げ「もはや戦後ではない」といわれるようになり、前年1955年には通産省が「国民車構想」を発表した。1958年(昭和33年)にスバル・360が発売され60年代前半には各社から軽自動車が発売された。1960年(昭和35年)は230万台、1965年(昭和40年)には724万台となり、わずか10年間で約8倍に急増した[5][51]。1966年(昭和41年)は「マイカー元年」と呼ばれトヨタ・カローラ日産・サニーなどの大衆車が発売され自動車が普及し始めた[52]

1966年(昭和41年)のトラック・バスなどの大型車も含めた自動車保有台数は約884万台で、翌1967年には1095万台、1971年(昭和46年)に2045万台、1982年(昭和57年)に4130万台、1997年(平成10年)に6984万台となった以降は微増となり[53]2004年以降は7500万台前後で推移し、2014年は2輪車を除いた保有台数は7721万台、保有率は60.6%であった[54][55]。この保有台数は国別では米国、中国に次ぐ3番目で、人口あたりの保有台数では米国や西ヨーロッパ諸国とほぼ同率である。2030年にかけては海外では引き続き増加していくが、日本では微減すると予想されている[41]

60年代後半からの急激な自動車の増加に対して道路整備は立ち遅れ、各地で交通渋滞や交通事故の増加が問題となった。また排気ガスによる大気汚染も70年代に深刻化した。日本においては1970年代から高速道路(高規格幹線道路)の整備が始まったが、急増する保有台数に追いついておらず、日本の高速道路の整備状況は米国とはもちろん、ドイツ、フランス、中国、イギリス、韓国よりも低い水準である[56]

なお二輪車では、原付を除く125cc超の二輪車は1966年には約88万台であったが[54]、2013年には125cc超が4倍の約354万台となった他、原付第一種が666万台、第二種が163万台で二輪車の合計は1182万台であった[57]

2013年の四輪と二輪の合計は8791万台で国民1.4人に1台の普及率となっている。

20世紀末から日本の登録台数は頭打ちであるが、小型車、特に軽自動車がシェアを拡大してきている。軽自動車は技術の進歩に加えて、従来の取り回しの良さと経済性で弱点が少ないことから、90年代以降着実に台数を伸ばしている。

都道府県別の自動車普及率

2013年の日本の自動車普及率は対人口では1台あたり1.7人、乗用車に限ると2.1人であり、これは100人あたり59.7台、46.6台となる[40]。以上は自家用、業務用、軽から大型まですべてを含む数値である。

2013年の世帯あたりの自家用乗用車(軽自動車も含む)の普及率をみると、日本平均は1世帯あたり1.08台で各家庭にほぼ1台の割合となっている。世帯あたりの人数は、2010年では最大が山形県の3.16人で最低が北海道の2.27人で全国平均は2.59人であった[58]

世帯ベースで各地域をみると保有台数の多い県は上位10地域で、福井県(1.77台)、富山県(1.73台)、群馬県(1.68台)、山形県(1.68台)、岐阜県(1.65台)、栃木県(1.65台)、茨城県(1.63台)、長野県(1.59台)、福島県(1.56台)、新潟県(1.56台)などで、その他の大半の県で1台以上となっている。1台を切るのは5地域のみで、少ない方から東京都(0.48台)、大阪府(0.68台)、神奈川県(0.75台)、京都府(0.86台)、兵庫県(0.94台)と、当然ではあるが、公共輸送機関の発達した人口密度の高い(人口都市集中の激しい)都道府県で保有台数が少なくなっている[59]。なおこの5都府県に続いてすくないのが北海道(1.008台)、千葉県(1.02台)であった。国土面積の約2割以上を占める広大な北海道で世帯当たりの保有数が少ないのは世帯あたりの人数が最小であることも影響している。

登録台数予測

将来の登録台数予測はいくつかの機関から出されており、2030年の自動車登録台数は17億から20億台との推定が出ている[38]。自動車は2030年にかけて中国、中近東、インドで大きく普及し、総普及台数は17億台に達すると見られている[41]。2050年には25億台となるとの予測も出されている[60]

二輪車も2010年の約4億台から2030年には9億台へ達すると推定されている[41]

仮に中国で乗用車の普及率が先進国並の2人に1台となると2012年時点の人口13.4億人では6.7億台となり、約6億台が増加することとなる。これは2013年の世界の自動車生産実績8730万台の約7年分に相当し、2013年の中国の自動車生産実績2212万台の27年分である。

自動車産業

全世界での自動車生産台数は非常に大きく、しかも自動車を構成する数多くの部品を製造するには非常に多くの人員が必要となる事から、自動車は巨大産業である。自動車産業内での企業間の競争は激しく、価格競争の激化や経営内容悪化や淘汰などが起き、1980年代以降、多国籍企業グループへの集約が進んでいる。

自動車製造には数万点におよぶ部品(鋼材、ガラス座席電子機器ねじなど)が必要であり、消費者からは直接的には見えない諸企業(鉄鋼産業・ガラス産業・合成樹脂メーカー、電子機器メーカー、ソフトウェア製造業まで、数え切れないほどの企業)の売上にも影響を及ぼし、製造には大規模な設備投資が必要となることが多く、その企業や工場だけでなく、協力会社なども集まってきて企業城下町を形成するなど、自動車企業・工場の立地場所周辺への経済的効果は非常に大きいといえる。

近年はグローバル競争が激しくなってきていることや、年々排ガスや安全の基準が厳しくなっていることから、個別の企業でそれらに対処するのは難しくなってきているため、M&Aや提携をするケースが増えている。

代表的な自動車グループ

2018年現在は以下の通り。

グループ名 所属する企業・ブランド 所属はしていないが資本関係の深い企業・グループ
トヨタグループ トヨタ自動車/レクサス/日野自動車/ダイハツ工業 いすゞ自動車/SUBARU/マツダ/スズキ
ルノー・日産・三菱アライアンス ルノー/日産自動車/三菱自動車/インフィニティ/ダットサン
フォルクスワーゲングループ フォルクスワーゲン/アウディ/ポルシェ/ランボルギーニ/シュコダ・オート/セアト/ベントレー/ブガッティ/スカニア/MAN
FCA フィアット/アルファロメオ/アバルト/ランチア/マセラティ/クライスラー/ジープ/ダッジ/ラム・トラックス フェラーリ
GMグループ シボレー/ビュイック/キャデラック/GMC/ホールデン/GM大宇 上汽通用五菱汽車
現代-起亜グループ 現代自動車/起亜/ジェネシス
フォード フォード/リンカーン
PSA プジョー/シトロエン/DS/オペル/ボクスホール
BMW BMW/MINI/ロールス・ロイス
タタ・グループ タタ・モーターズ/ジャガーランドローバー/タタ大宇/タタ・イスパノ マルコポーロ
吉利 吉利汽車/上海華普汽車/ボルボ・カーズ/プロトン/ロータス・カーズ/テラフージア/ロンドンEVカンパニー/yuan cheng auto ダイムラー

乗用車の世界シェア

2017年時点。出典:[61][62]

グループ別

ブランド別

脚注

  1. ^ goo辞書 大辞泉
  2. ^ 石綿敏雄山田俊雄編 編『角川最新国語辞典』(再版)角川書店、1989年10月(原著1987年2月)。ISBN 4-04-012300-X 
  3. ^ a b c d e f g 小学館『日本大百科全書』「自動車」
  4. ^ The History of the Automobile - Steam Cars, About.com
  5. ^ a b c d 浅井建爾 2015, p. 56.
  6. ^ 「自動車、そして人」p21 財団法人日本自動車教育振興財団 1997年10月1日第1刷
  7. ^ en:taxiなど
  8. ^ [1]
  9. ^ 「自動車、そして人」p122 財団法人日本自動車教育振興財団 1997年10月1日第1刷
  10. ^ http://news.mynavi.jp/news/2016/04/19/253/
  11. ^ http://m.huffpost.com/jp/entry/10332130
  12. ^ http://irorio.jp/daikohkai/20161013/356840/
  13. ^ 「空飛ぶクルマ」開発、目指すは東京五輪聖火台読売新聞』朝刊2017年8月29日(経済面)
  14. ^ S&Eブレーキ株式会社 ブレーキ雑学講座 「雑学講座42 ディスクブレーキとドラムブレーキ」
  15. ^ オートバイによる同様の行為は「ツーリング」、自転車によるものは「サイクリング」あるいは「ポタリング」である。
  16. ^ [2]
  17. ^ 日本学術会議『交通事故ゼロの社会を目指して』
  18. ^ [3]
  19. ^ [4]
  20. ^ 日本エネルギー経済研究所 石油はいま 2013 OIL NOW
  21. ^ a b U.S. DOT Table 1-23: World Motor Vehicle Production, Selected Countries
  22. ^ 1950年から1990年までの数値は英版en:List_of_countries_by_motor_vehicle_productionより。
  23. ^ The Minerals, Metals & Materials Society (TMS) End-ofLife Vehicle Recycling in the European Union
  24. ^ International Organization of Motor Vehicle (OICA) 2000 Production Statistics
  25. ^ OICA 2010 Production Statistics
  26. ^ OICA 2013 Production Statistics
  27. ^ The Wall Street Journal http://online.wsj.com/articles/SB10001424052702304858104579262412636884466 Global Car Sales Seen Rising to 85 Million in 2014]
  28. ^ a b c d 北海道大学 「戦後日本の自動車産業の発展」
  29. ^ 新潟大学・現代社会文化研究 「日本自動車産業の外資政策史」
  30. ^ a b 出典元、北海道大学、新潟大学、JAMA-日本自動車工業会で数値に開きあり。
  31. ^ 「国民車構想とモータリゼーションの進展」
  32. ^ 文部科学省「技術革新の進展とその成果」
  33. ^ 国際自動車工業連合会(OICA)[5]
  34. ^ 日本自動車工業会 「世界各国/地域の四輪車生産台数」
  35. ^ en:UNEP/GRID-Arendal Historic and Future Trends
  36. ^ a b c d United Nations Environment Programme UNEP Vehicle Population and International Trend Sep., 2012
  37. ^ 特記ない限り人口は世界人口の頁より。
  38. ^ a b c Joyce Dargay et al, Institute for Transport Studies, University of Leeds Vehicle Ownership and Income Growth, Wroldwide: 1960 - 2030
  39. ^ 日本自動車工業会 「世界各国の四輪車保有台数(2012年末)」
  40. ^ a b c 日本自動車工業会 「主要国の四輪車普及率」
  41. ^ a b c d e f International Council on Clean Transportation European Vehicle Market Statistics - Pocketbook 2013
  42. ^ 出典元に記載がないため、記載されている台数と台湾の頁の人口より算出。
  43. ^ 日本自動車工業会 「世界各国/地域の二輪車保有台数」
  44. ^ EPA Vehicle Weight Classification
  45. ^ US Census Bureau Los Angeles County, California
  46. ^ Los Angeles Almanac Vehicle Registrations
  47. ^ USA Today Ten cities with the worst traffic
  48. ^ Google Mapでロサンゼルスの午前6時版から午前9時半、午後3時から午後7時の間のトラフィックを見るとピーク時には大半の高速道路で渋滞が見られる。
  49. ^ 武部健一 2015, p. 163.
  50. ^ 武部健一 2015, p. 172.
  51. ^ a b c 浅井建爾 2001, pp. 260–261.
  52. ^ 日本自動車工業会 「国民車構想とモータリゼーション」
  53. ^ 資源エネルギー庁 エネルギー白書2006 「第212-3-12 車種別保有台数の推移」
  54. ^ a b 自動車検査登録情報協会 「自動車保有台数推移表」
  55. ^ 浅井建爾 2015, p. 57.
  56. ^ 経済産業省 「物流を取り巻く現状について」平成24年11月6日」
  57. ^ 日本自動車工業会 「二輪車保有台数」
  58. ^ 厚生労働省 「国民生活基礎調査(平成22年)の結果から」
  59. ^ 日本自動車工業会 「都道府県別自家用乗用車の100世帯当たり保有台数(2013年3月末)」
  60. ^ Huffingtonpost Number of cars worldwide surpasses 1 billion.
  61. ^ Renault Nissan Aliance Finaly Tops The World' Ranking
  62. ^ World Car Brand Ranking in 2016-Top50 Focus 2 move

参考文献

関連項目

構造・基本性能等
態様
産業・社会・文化
組織
法規制等
各国別
各種一覧

外部リンク

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