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*毎回の大会において、当事者に対し[[洗礼|バプテスマ]]として[[浸礼]]が行われる。
*毎回の大会において、当事者に対し[[洗礼|バプテスマ]]として[[浸礼]]が行われる。


=== 主流派キリスト教会関係 ===
=== 主流派キリスト教会から批判 ===
現代の[[キリスト教]]主流派が重要視する[[三位一体]]などの教義を否認していることから、[[カトリック教会|カトリック]]・[[プロテスタント]]・[[正教会]]などから(正統派の視点から見ていわゆる)異端とされている。
現代の[[キリスト教]]主流派が重要視する[[三位一体]]などの教義を否認していることから、[[カトリック教会|カトリック]]・[[プロテスタント]]・[[正教会]]などから(正統派の視点から見ていわゆる)異端とされている。
一例として、[[キリスト教]][[福音派]]の[[尾形守]]は、異端とキリスト教の根本的な違いは「霊の違い」であり、異端は悪霊によるとしており<ref name="ogata">[[尾形守]]『[[異端見分けハンドブック]]』プレイズ出版</ref>、根拠として第一ヨハネ4:1-3、黙示録16:13、第一テモテ4:1を挙げ、[[モルモン教]]([[末日聖徒イエス・キリスト教会]])・[[統一教会]]([[世界平和統一家庭連合]])と共に三大異端であるとしている。

社会学者の教授で牧師である[[川又志朗]]によると、エホバの証人は異端的宗派であり、伝統的なキリスト教の組織や教職制度を激しく否定しているためにキリスト教界においては異端として評価されているが、一般社会では聖書研究を重視する一教派であると見られていると説明されている<ref>[https://kotobank.jp/word/%E3%82%A8%E3%83%9B%E3%83%90%E3%81%AE%E8%A8%BC%E4%BA%BA-1278283#E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.A4.A7.E7.99.BE.E7.A7.91.E5.85.A8.E6.9B.B8.28.E3.83.8B.E3.83.83.E3.83.9D.E3.83.8B.E3.82.AB.29 ] 『日本大百科全書(ニッポニカ)』(エホバの証人)川又志朗</ref>。

『[[キリスト教大事典]]』1066頁(教文館、昭和63年8月10日 改訂新版第9版)では、エホバの証人は『いっさいの正統的教理と既成教会に反対(している)』と記されている<ref name="kyuuhan">『[[キリスト教大事典]] 改訂新版第9版』[[教文館]]、1988年</ref>。
『[[キリスト教大事典]]』1066頁(教文館、昭和63年8月10日 改訂新版第9版)では、エホバの証人は『いっさいの正統的教理と既成教会に反対(している)』と記されている<ref name="kyuuhan">『[[キリスト教大事典]] 改訂新版第9版』[[教文館]]、1988年</ref>。

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正統派の視点から見て異端とされている、その一例として、[[キリスト教]][[福音派]]の[[尾形守]]は、異端とキリスト教の根本的な違いは「霊の違い」であり、異端は悪霊によるとしており<ref name="ogata">[[尾形守]]『[[異端見分けハンドブック]]』プレイズ出版</ref>、根拠として第一ヨハネ4:1-3、黙示録16:13、第一テモテ4:1を挙げ、[[モルモン教]]([[末日聖徒イエス・キリスト教会]])・[[統一教会]]([[世界平和統一家庭連合]])と共に三大異端であるとしている。


キリスト教会の関係者は、エホバの証人に関して多くの研究書を執筆している。批判的研究、教理的な注意喚起を表す書以外にも、[[尾形守]]牧師による著書『[[異端見分けハンドブック]]』<ref name="ogata"></ref>の「異端に入っている人々がそこから救われること」、[[ウィリアム・ウッド]]牧師による『[エホバの証人]への伝道ハンドブック』<ref name="dendou"></ref>における「異端の人々にもみことばと聖霊の力が及ぶことを信じて」など、エホバの証人への伝道的な願いによって書かれた書物もある。
キリスト教会の関係者は、エホバの証人に関して多くの研究書を執筆している。批判的研究、教理的な注意喚起を表す書以外にも、[[尾形守]]牧師による著書『[[異端見分けハンドブック]]』<ref name="ogata"></ref>の「異端に入っている人々がそこから救われること」、[[ウィリアム・ウッド]]牧師による『[エホバの証人]への伝道ハンドブック』<ref name="dendou"></ref>における「異端の人々にもみことばと聖霊の力が及ぶことを信じて」など、エホバの証人への伝道的な願いによって書かれた書物もある。


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2017年6月8日 (木) 14:37時点における版

エホバの証人
ファイル:Jw headquart.jpg
ニューヨーク州ウォーウィックの世界本部
分類 三位一体説否認、Restorationist
組織構造 エホバの証人の組織構造[1]
地域 全世界
創設者 チャールズ・テイズ・ラッセル
創設日 1870年代
創設地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ペンシルベニア州ビッツバーグ
会衆数 119,485
信徒数 8,340,847人
公式サイト www.jw.org
Statistics from 2017Yearbook of Jehovah's Witnesses[2]
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かつてニューヨーク州ブルックリン区にあった世界本部(1909年-2016年)
宣教の様子。聖書の例に倣い2人組みで行動するのが一般的である。マルコ 6:7。
王国会館と呼ばれる集会所で週2回の聖書講演会や勉強会等が行われる

エホバの証人(エホバのしょうにん、: Jehovah's Witnesses)は、キリスト教系の新宗教である。ものみの塔聖書冊子協会などの法人が各国にあり、ほぼ全世界で活動している。

概要

1870年代にチャールズ・テイズ・ラッセルによって設立され、世界本部は長らくニューヨーク市ブルックリン区に置かれていたが、2016年に同州ウォーウィックへ移転する。信者数は全世界で約820万人、最多国アメリカでは約120万人、日本は約21万人いるとされている。聖書は主に新世界訳聖書を使用し、主流派キリスト教の条件とされる基本信条を否定する立場にあり、三位一体論の否定や輸血を拒否することで知られている。教義によると、神はユダヤ人たちも信じる唯一神エホバ(ヤハウェ)であり、キリストが神であることや、肉体を持って復活したことを否定し[3]、大天使ミカエルと同一であるとしている[4]。また、現代の世界(宗教組織、政治組織等)は悪魔サタンの支配下にあり、やがて終わりの日にキリスト率いる神の軍団との大戦争(ハルマゲドン)によりこれを決着し、信者たちは神(エホバ)の証人としてこの戦争を傍観するということから「エホバの証人」という名称が生まれた[5]

1870年
チャールズ・テイズ・ラッセルは聖書研究のグループを作り、彼らは聖書の系統的な研究を始める。
1879年
「シオンのものみの塔およびキリストの臨在の告知者」(現・ものみの塔誌)を創刊。
1884年
シオンのものみの塔冊子協会(現「ペンシルバニア州のものみの塔聖書冊子協会」)がペンシルベニア州で宗教法人として認可。初代会長、ラッセル。
1900年
最初の支部事務所が英国ロンドンに開設される。宣教活動が28の国や地域で行われる。
1909年
世界本部をニューヨーク州ブルックリン区へ移転。
1910年
聖書研究者は国際聖書研究者協会という名称を使い始める。(I.B.S.A.)
1919年
「黄金時代」誌(現・目ざめよ!誌)を創刊。
1931年
「エホバの証人」という名称が採択される。
1933年
ドイツのナチス政権下で布教活動が禁止され、多くの信者が強制収容所に収監される。(第二次世界大戦終結まで)
1950年
新世界訳聖書英語版「クリスチャン・ギリシャ語聖書」(新約聖書)が完成。
1961年
新世界訳聖書英語版が全巻完成。
2013年
新世界訳聖書英語版が改訂される。
2014年
JW Broadcasting[証人 1]が開始される。
2015年
公式ウェブサイトの言語数が700に達する。
2016年
世界本部をニューヨーク州ウォーウィックに移転する。

組織

統治体、地帯区、支部、巡回区、各会衆という構造になっており、各々に監督や長老といった管理監督責任を担う信者が存在する。

施設については、前述の世界本部のほか、ものみの塔教育センターニュージャージー州パターソンに、ものみの塔農場ニューヨーク州オレンジ郡ウォールキルに有する。

また、世界96ヶ所に支部事務所が、239の国や地域に約11万の会衆が存在する。

聖書

歴代会長3名を含む統治体成員5名からなる[6]「新世界訳聖書翻訳委員会」により翻訳された新世界訳聖書を使用する。かつてはキリスト教会と同様、一般に入手可能な聖書を使用していた。例えば、英語圏ではジェイムズ王欽定訳 (KJV) とアメリカ標準訳 (ASV) を、日本では舊新約聖書日本聖書協会文語訳)を使用していた。(その中には岩波書店文語訳も使う人もいたようだ。)

統計

平均伝道者数, 1945年〜2005年

2014年の公表値によると、エホバの証人の全世界での伝道者数は約820万人である[2]日本においては2014年度時点で平均21万5,292人、最高21万5,703人であるという。

教義の概要

神の名

旧約聖書にみられる唯一神エホバを崇拝の対象とする。原文に近い聖書写本には、神の固有の名として神聖四文字語יהוהと記述されており、YHWHもしくはJHVHに相当する。しかしながら、子音字のみで母音がないため古代イスラエル人がどのように発音していたか定かではない。「エホバ」という発音は、欽定訳聖書(1611年)やアメリカ標準訳(1901年)などでJehovah(発音記号:dʒɪhóʊvə)、また日本でかつて広く使用されていた舊新約聖書文語訳(日本聖書協会)でヱホバ(旧仮名遣い)として使用されてきた。これに対し、学術的にはヤハウェ、ヤーウェなどの表記・読みがなされ、学説ではヤハウェであろうとする説[要出典]が有力である。

神の王国

  • 1914年を起点に、天でイエス・キリストを王として設立した。
  • キリストの再臨は「しるし」であり、目には見えない。(マタイによる福音書24章3節から25章46節)(ルカによる福音書21章5節から36節)
  • エホバの証人が全面的に支持し到来を期待している新しい社会、またそれを実現する政府。
  • ハルマゲドン後、地上は千年の時を経てかつて創世記に記述されているような楽園に回復される。
  • 楽園を回復する作業を行うのは、ハルマゲドンを生き残った者、復活された者たちである。

主な聖書解釈

  • の名はエホバである。(読みはヤハウェの可能性も含め定かではないとしている)
  • イエスは神の子であり、神ではない。(ヨハネ1章1節「…言葉は神と共におり、言葉は神であった。」共におられたすなわち、神とイエスは、別々の存在である。)
  • 聖霊は、神の活動力を指す。
  • エホバの証人は1世紀クリスチャンの復興である。
  • 最初のエホバの証人はアベルであり、古代イスラエル人も一国民として神に献身しておりエホバの証人である。
  • キリストの使徒が死に絶えた後、初期キリスト教背教が起こり、後にカトリックを始め多くの教派が生じた。
  • 血を避けるべきという聖書の記述は、故意に血液を食するだけでなく、体内に取り入れる行為輸血を避けることも含まれる。
  • 人は死ぬと存在しなくなる。死後の世界(天国地獄、その他の名称の異世界)も認めない。
  • 復活は「天への復活」(14万4千人)と「地上への復活」の2種類がある。

行動様式

  • 十字架やイコンなども偶像とみなし崇拝の対象としない[7]
  • 政治への参加(立候補及び投票など)は行わない。(政治的に中立)
  • 戦争に参加せず、兵役につかない。(良心的兵役拒否
  • 格闘技に参加しない。
  • 信者間を称号で呼ぶことはなく、互いを兄弟または姉妹と呼ぶ。
  • 他の宗教の冠婚葬祭に出席するか否かは「個人の良心」として各信者に委ねられているが、宗教的な事柄が関係する場合、事実上出席できない(ものみの塔2014年11月15日号)。焼香などは、宗教合同や偶像崇拝とみなし避ける。
  • 教会寺院などの宗教施設で開かれる葬儀結婚式への参列は、参加できない。(ものみの塔2014年11月15日号)
  • 反聖書的・異教由来とみなす行事は祝わない。七夕節分ひな祭りキリストの誕生日といった宗教的背景のある行事を祝わない。
  • 宗教系の保育所福祉施設病院などを利用については、信者個々の良心上の問題とされている。
  • 国旗敬礼(旗に対する専心)や国歌斉唱国家の賛美)などは、国家崇拝つまり偶像崇拝にあたるとしている。
  • 淫行姦淫マスターベーションなどを汚れた行為と見なしている。
  • 喫煙、医療目的外の麻薬薬物使用は汚れとして禁じられている。
  • 飲酒に関しては、適量であれば禁じていない。
  • 原則、離婚及びそれに伴う再婚は禁止である。ただし、配偶者不倫による離婚、配偶者との死別による再婚は認められている。
  • 教義に著しく反し、かつ悔い改めが認められない場合は排斥措置が執られる。
  • 人種差別しない。(「そこでペテロは口を開いてこう言った。「私は神が不公平な神ではなく、どの国民でも、[神]を恐れ、義を行なう人は[神]に受けれられるのだということがはっきり分かります。」 使徒たちの活動10章34、35節)

年間行事

  • キリストの死の記念を祝う。(主の晩餐に相当)
  • 週に2回、集会を行う。(公開聖書講演会・「ものみの塔」研究、クリスチャンとしての生活と奉仕の集会)
  • 上記以外に地区大会(年1回)、巡回大会(年2回)が催される。
  • 毎回の大会において、当事者に対しバプテスマとして浸礼が行われる。

主流派キリスト教会からの批判

現代のキリスト教主流派が重要視する三位一体などの教義を否認していることから、カトリックプロテスタント正教会などから(正統派の視点から見ていわゆる)異端とされている。 一例として、キリスト教福音派尾形守は、異端とキリスト教の根本的な違いは「霊の違い」であり、異端は悪霊によるとしており[4]、根拠として第一ヨハネ4:1-3、黙示録16:13、第一テモテ4:1を挙げ、モルモン教末日聖徒イエス・キリスト教会)・統一教会世界平和統一家庭連合)と共に三大異端であるとしている。 『キリスト教大事典』1066頁(教文館、昭和63年8月10日 改訂新版第9版)では、エホバの証人は『いっさいの正統的教理と既成教会に反対(している)』と記されている[8]

キリスト教会の関係者は、エホバの証人に関して多くの研究書を執筆している。批判的研究、教理的な注意喚起を表す書以外にも、尾形守牧師による著書『異端見分けハンドブック[4]の「異端に入っている人々がそこから救われること」、ウィリアム・ウッド牧師による『[エホバの証人]への伝道ハンドブック』[3]における「異端の人々にもみことばと聖霊の力が及ぶことを信じて」など、エホバの証人への伝道的な願いによって書かれた書物もある。

社会的側面

国旗・国歌

エホバの証人は国旗敬礼、国歌斉唱を行わない。国旗への敬礼、国歌斉唱は、国家崇拝に該当すると判断している。また国旗国歌は偶像であり、これへの敬礼は偶像崇拝であるとする。ただ、国旗に対する毀損行為、国旗掲揚や国歌斉唱への妨害行為は行わない。

兵役拒否

「戦いを学ばない」「剣を取るものは剣によって滅びる」という聖書の記述を理由に兵役を拒否する。兵役が義務化されている国々で問題視されることがある。国家はそれに対してエホバの証人を投獄するのが一般的である。近年では、良心的兵役拒否人権の一つとして認識されるようになってきたことから、社会奉仕活動への参加を義務付けることによって、兵役の義務の代わりとする事例も増えている。場合によっては投獄ではなく、「兵役」か「処刑」かのどちらかの選択を迫られることもあったが、その場合にも処刑されることを選んだという(エホバの証人とホロコースト参照)。

政治

政治的中立を主張している。王国政府のみに対する全面的支持の表明などを根拠とし、この世の政治活動に直接関与すべきではないという姿勢をとっている。

輸血拒否

血を避けるべきとするいくつかの記述が聖書中にある。エホバの証人は、これらを輸血禁止の意味に解釈している。 また、代替治療として無輸血治療を望み、自己輸血血液分画の使用については各人の良心に基づいて決定するとしている。

使徒15章20節
「絞め殺した動物の肉と、血とを避けるよう」(新共同訳)
創世記9章4節
「ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない」(同上)
レビ記7章26節
「一切血を食べてはならない」(新世界訳)
レビ記17章11節
「肉の魂は血にある」(新世界訳)
レビ記17章14節
「あなた方はいかなる肉なるものの血を食べてはならない。あらゆる肉なるものの魂はその血だからである。全てそれを食べるものは断たれる。」(新世界訳)

裁判・法的規制

ロシアの活動禁止措置

ロシアの法務省は、エホバの証人を過激主義団体の一つであると認定し、布教活動および集会を禁じる措置を行っている。エホバの証人側はロシア​連邦​最高​裁判​所に撤回を求める裁判を起こしたが、最高裁は法務省側の主張を支持し、エホバの証人は2017年4月よりロシア国内の活動を禁止されている[9]。これに対し、国際宗教自由委員会(USCIRF)の議長でイエズス会の司祭トーマス・J・リースは「ロシア政府の今回の措置は、同国内でのエホバの証人の法的存在を抹消することを目的としているようだ。USCIRFは、この平和的な宗教団体に対する弾圧を止めるよう、ロシア政府に要請する」[10]と声明を発表するなどロシア政府に対する懸念が広がっている。

バーネット事件

米国ウェストバージニア州で、星条旗への忠誠の誓いを拒んだ女性信者の姓にちなむ行政訴訟。1943年6月14日米最高裁判所はエホバの証人の子弟を放校する権利は教育委員会にはないという判断を下し、勝訴が確定した。  

輸血拒否にかかる事案

1985年6月6日、日本の小学生の男児(当時10歳)が神奈川県川崎市高津区で交通事故に遭い、両親が輸血拒否したことにより死亡したとされる事件では、裁判所から略式命令が下され、児童の両親は無罪、運転手が業務上過失致死罪で起訴され罰金15 万円の有罪となった(川崎簡略式 昭和63.8.20)。

2000年2月19日には、日本の最高裁判所は、宗教上の理由で輸血を拒否する意思決定を行う権利は人格権の一内容として尊重されると認め、無断で輸血を行った医師と病院はこれを侵害したとして患者の遺族(患者は一審判決後に死去。)に55万円の支払いを命じる判決を下した。

神戸高専剣道実技拒否事件

神戸市立工業高等専門学校のエホバの証人の生徒が必須科目であった剣道の科目を履行しなかったことで退学または留年処分になったことの是非が争われたケースで、1996年3月8日、日本の最高裁判所は、学校側が主張する剣道の必須性を退け、格闘技を拒否された場合の代替措置を用意しなかったことは、学校側の落ち度であると指摘し、退学または留年処分は不当であるとの判決を下し、勝訴が確定した。

性的児童虐待

2012年6月13日、米国カリフォルニア州のアラメダ上級裁判所(一審裁判所)[11]で行われた裁判で、当協会は約800億円相当の協会の資産の凍結を命じられ、賠償金280万ドル(22億円)の40%を支払うように命じられた。判決によると、エホバの証人の男性信者が当時9才だった少女に1年の間性的虐待を加えているという通報を知りながら、罪を立証するには2人ないし3人の証人が必要との教理(コリントの信徒二13:1)が結果的に警察へ通報を妨げることになり、長老たちが決定した組織的な隠蔽であり違法との判決に至った。その後、エホバの証人側は同州控訴裁判所(二審裁判所)に控訴の後、原告側と和解した[2]。なお同様の事件が、イギリスや、オーストラリアでは1600人以上の被害の隠蔽など、多数報告され、国による調査や告訴がなされている。[3][4][5][6]

過去の法的規制

兵役や国家に対する忠誠の拒否などで処罰されたものある。エホバの証人は「彼らはそのつるぎを打ちかえてすきとし、そのやりを打ちかえてかまとし、国は国にむかってつるぎをあげず、彼らはもはや戦いのことを学ばない」(イザヤ書2章4節)という聖書の記述に従ってであるが、当該国の軍事当局から見れば従軍拒否などはあくまでも法令違反とされる場合がある。代表的な事例として、ナチス・ドイツにおいて兵役を拒否したためにより強制収容所に送致され多くが処刑された出来事などが挙げられる(エホバの証人とホロコースト)。現代でも一部の国々で同様の事例が存在する。

カルト・セクト指定

日本においては指定されていないが、いくつかの政府はカルトまたはセクトと分類しているケースがある。例として以下の政府・議会報告が挙げられる。

題材作品

ドラマ

小説

  • 『羊飼のいない羊たち』 - 1984年津山千恵。第二次大戦中の灯台社と良心的兵役拒否を貫いた明石順三の生涯。明石は戦後、教団に対して出した公開質問状の内容が「反逆」と見なされ、排斥されている。
  • 説得―エホバの証人と輸血拒否事件』 - 1988年大泉実成1985年6月に神奈川県で実際にあった小学生の輸血拒否事件を基に、ある信者家族の信仰と生命の尊さを巡る葛藤を一人のルポライターが刻銘に綴ったノンフィクション小説。1993年にTBSでドラマ化され話題になった。

  • 船瀬俊介、内海聡 両著『血液の闇』((三五館 ISBN 978-4883206162、2014年)ーテレビドラマや小説の「説得」その他、昭和天皇崩御の際の輸血についても触れている。副題 輸血は受けてはいけない)。(船瀬俊介著(医療ジャーナリスト)、 内海 聡著(内科医、Tokyo DD Clinic院長) (2014年6月)

脚注・引用

  1. ^ Court Trial Testimony Redwood City”. Superior Court of the State of California (2012年2月22日). 2014年4月20日閲覧。 “I am general counsel for the National Organization of Jehovah's Witnesses out of Brooklyn, New York. ... We are a hierarchical religion structured just like the Catholic Church.”
  2. ^ a b 2016 Yearbook of Jehovah's Witnesses. Watchtower Bible and Tract Society. (2016). pp. 185–186. https://www.jw.org/en/publications/books/2016-yearbook/2015-grand-totals/ 
  3. ^ a b ウィリアム・ウッド『[エホバの証人]への伝道ハンドブック』いのちのことば社、1987年
  4. ^ a b c 尾形守異端見分けハンドブック』プレイズ出版
  5. ^ 生駒孝彰 綾部恒雄(編)「アメリカ起源の二つの宗派」『クラブが創った国 アメリカ』<結社の世界史> 山川出版社 2005 ISBN 463444450X pp.129-136.
  6. ^ レイモンド・フランズ著・樋口久訳 『良心の危機 ―「エホバの証人」組織中枢での葛藤』(Crisis of Conscience) せせらぎ出版2001年
  7. ^ 「神は霊であられるので神を崇拝するものも霊と真理をもって崇拝しなければなりません。」(ヨハネ4章24節);「子供らよ、自分を偶像から守れ。」(ヨハネ第一5章21節);「偶像によって汚れたものを避ける。」(使徒15章20節);「神の神殿と偶像に一致があるか。」(コリント第二6章16節);「偶像礼拝から逃げ去りなさい。」(コリント第一10章14節);「強欲つまり偶像礼拝に関して、地上にあるあなた方の肢体を死んだものとしなさい。」(コロサイ3章5節)
  8. ^ キリスト教大事典 改訂新版第9版』教文館、1988年
  9. ^ ロシアの最高裁はエホバの証人に不利な判決を下す
  10. ^ [1] 『ハフィントンポスト誌』
  11. ^ Jehovah's Witnesses ordered to pay more than $20 million to woman who said she was sexually abused 『NBC NEWS』2012年6月15日午前9時6分
  12. ^ Enquête Parlementaire visant à élaborer une politique en vue de lutter contre les practiques illégales des sectes et le danger qu'elles représentent pour la société et pour les personnes, particulièrement les mineurs d'âge. Rapport fait au nom de la Commission d'enquête par MM. Duquesne et Willems. Partie II. (カルトの不法行為、社会や人々、特に未成年者にとっての危険と戦うことを目的とした政策を説明する議会公聴。ドゥケイン氏、ウィレム氏による委員会での公聴、の名称での報告 パート2)available online -- フランス語とフラマン語の2言語報告, retrieved 2007-01-08.
  13. ^ フランス語の報告1995年(英語の翻訳), フランス国民議会, 議会委員会報告
  14. ^ フランス国民議会 (1999年6月10日). “Les sectes et l'argent” (French). République Française. 2009年4月20日閲覧。 “enquête sur la situation financière, patrimoniale et fiscale des sectes, ainsi que sur leurs activités économiques et leurs relations avec les milieux économiques et financiers [カルトの財務、所有物、収益、同様にそれらの経済活動、経済・金融に関するコネクションに関する公聴]”

エホバの証人の出版物など

  1. ^ ものみの塔聖書冊子協会(エホバの証人) JW Broadcasting

関連項目

外部リンク