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{{出典の明記|date=2012年11月20日 (火) 19:18 (UTC)}}<!--「分類」セクションは2009年9月より当テンプレが貼付済。今回、「概要」セクションも出典の提示無きまま加筆がなされたため、記事全体に対する出典要求として貼付位置変更。-->
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[[ファイル:Sat2 modify.jpg|thumb|エンクロージャー]]
[[ファイル:Sat2 modify.jpg|thumb|エンクロージャー]]
'''エンクロージャー''' ''(enclosure)'' とは、元々「取り囲むもの」という意味で、精密機械を格納する[[筐体]]のことである。単にエンクロージャーという場合は[[スピーカー]]用のものを指すが多い。本項にて説明。
'''エンクロージャー''' (''enclosure'') とは、元々「取り囲むもの」という意味で、精密機械を格納する[[筐体]]のことである。単にエンクロージャーという場合は[[スピーカー]]用のものを指すことが多い。本項にて説明。


その他、[[ブレードサーバ]]を格納する筺体(対象を明確にするブレードエンクロージャーとも)等を指すもある。
その他、[[ブレードサーバ]]を格納する筺体(対象を明確にするためブレードエンクロージャーとも)等を指すこともある。


== 概要 ==
== 概要 ==
エンクロージャーはスピーカーユニット後部から出る音を「封じ込め」前部の音に干渉させないという機能を一般に有している。「(スピーカー)ボックス」「(スピーカー)[[キャビネット]]」「箱」とも呼ばれるが、この語で呼ばれるが多い。これは、スピーカーを取り付ける[[筐体]]が、「箱」とは限らないからである。
エンクロージャーはスピーカーユニット後部から出る音を「封じ込め」前部の音に干渉させないという機能を一般に有している。「(スピーカー)ボックス」「(スピーカー)[[キャビネット]]」「箱」とも呼ばれるが、この語で呼ばれることが多い。これは、スピーカーを取り付ける[[筐体]]が、「箱」とは限らないからである。


ダイナミック型のスピーカーユニットは、前後それぞれに逆向きに音波を放出するため、その音波同士が干渉し、互いに打ち消しあうになる。これは低音域になるほど著しい。よって、スピーカーユニットを単体で鳴らした場合、低音がほとんど再生できない。エンクロージャーにスピーカーユニットを取付けるで、低音まで再生できるスピーカーとなる。
ダイナミック型のスピーカーユニットは、前後それぞれに逆向きに音波を放出するため、その音波同士が干渉し、互いに打ち消しあうことになる。これは低音域になるほど著しい。よって、スピーカーユニットを単体で鳴らした場合、低音がほとんど再生できない。エンクロージャーにスピーカーユニットを取付けることで、低音まで再生できるスピーカーとなる。


また、エンクロージャーは単に後面の音を封じ込めるのみならず、共鳴を利用して積極的に低音再生に用いる場合がある。そのため、以下に分類するような、様々な方式が存在する。
また、エンクロージャーは単に後面の音を封じ込めるのみならず、共鳴を利用して積極的に低音再生に用いる場合がある。そのため、以下に分類するような、様々な方式が存在する。
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== 分類 ==
== 分類 ==
=== 平面バッフル/後面開放(ダイポール)型 ===
; 平面バッフル/後面開放(ダイポール)型
[[ファイル:Lautsprecher offen (gefaltet) (loudspeaker).png|thumb|100px]]
:[[ファイル:Lautsprecher offen (gefaltet) (loudspeaker).png|thumb|100px]]
平面バッフルは、スピーカーユニットを単なる板に取付けたものである。板によってユニット背面の音を遮るという単純なものである。より低い帯域の音は回折によって前面にまわりこむとなるので、それを防ぐにはできるだけ大きな板に取付けるが必要。それには限界があるので、板の四隅を折り曲げた格好にし、後面のみが開いた箱状にする場合もあり、これは{{仮リンク|後面解放型|en|Dipole speaker|label=後面開放(ダイポール)型}}と呼ばれる。
: 平面バッフルは、スピーカーユニットを単なる板に取付けたものである。板によってユニット背面の音を遮るという単純なものである。より低い帯域の音は回折によって前面にまわりこむこととなるので、それを防ぐにはできるだけ大きな板に取付けることが必要となるしかしそれには限界があるので、板の四隅を折り曲げた格好にし、後面のみが開いた箱状にする場合もあり、これは{{仮リンク|後面解放型|en|Dipole speaker|label=後面開放(ダイポール)型}}と呼ばれる。
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=== 密閉型(アコースティック・エアー・サスペンション型) ===
; 密閉型(アコースティック・エアー・サスペンション型)
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:[[ファイル:Geschlossenes Lautsprechergehäuse (enclosure).png|thumb|100px]]
[[密閉型]]は、箱を密封し、振動板背面から発せられる音の影響を完全に遮蔽する。癖の少ない素直な音質が特徴である。反面、エンクロージャーが過小でスピーカーユニットの磁気回路が非力な場合、振動板の動きが制限され、低音の少ない詰まった音になりやすい。
: [[密閉型]]は、箱を密封し、振動板背面から発せられる音の影響を完全に遮蔽する。癖の少ない素直な音質が特徴である。反面、エンクロージャーが過小でスピーカーユニットの磁気回路が非力な場合、振動板の動きが制限され、低音の少ない詰まった音になりやすい。
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=== バスレフ型 ===
; バスレフ型
[[ファイル:Bassreflex-Gehäuse (enclosure).png|thumb|100px]]
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[[バスレフ型]]は、エンクロージャーの前面や背面に筒状の貫通穴(ポート/ダクト)を設け、[[ヘルムホルツ共鳴]]の原理でユニット裏面から発せられた低音を共振、増強する。これが振動板の前面から発せられた低音に加算され、豊かな低音が得られる。反面、共振周波数よりさらに低い低音がほとんど出なくなる。また、設計が悪いと音に癖が付いたり、貫通穴のところで風切り音が出たりする。
: [[バスレフ型]]は、エンクロージャーの前面や背面に筒状の貫通穴(ポート/ダクト)を設け、[[ヘルムホルツ共鳴]]の原理でユニット裏面から発せられた低音を共振、増強する。これが振動板の前面から発せられた低音に加算され、豊かな低音が得られる。反面、共振周波数よりさらに低い低音がほとんど出なくなる。また、設計が悪いと音に癖が付いたり、貫通穴のところで風切り音が出たりする。
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; バックロードホーン型
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: [[バックロードホーン型]]は、エンクロージャーの内部に、少しずつ太くなってゆく音の道(ホーン)が折りたたまれており、箱のどこかにホーンの出口がある。振動板の裏側から出た音のうち低音はホーンで増強され、中音高音は折り曲げ構造により減衰し、出口から放射される。バスレフ型に比べて低音増強効果は大きいが、反面、バスレフ型ほど低い帯域まで低音を増強させることは困難である。設計や製作に手間がかかる。自作スピーカーや、海外メーカーの超高級品に使われている。
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; ドロンコーン型
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: ドローンコーン(ドロンコーン)型、または{{仮リンク|パッシブラジエーター型|en|Passive radiator (speaker)}}は、エンクロージャーにスピーカーユニット以外にドロンコーン(またはパッシブラジエーター)と呼ばれる物を取付ける方式である。ドロンコーンは電磁気回路を持たないスピーカーユニットであり、同じエンクロージャーに取付けられたスピーカーユニットによって、受動的に動作することになる。
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; フロントロードホーン型
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: [[フロントロードホーン型]]は、上記の形式がユニット後部の音に手を加えるものであるのに対して、ユニット前面の音に手を加えるものである。フロントロードホーン型においても、ユニット後面の音に手を加える必要があるため、上記の方式と組み合わせることになる。密閉型との組み合わせが多い。バスレフ型と組み合わせたものは、コンビネーションホーン型と呼ばれる。
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; ASW型
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:[[ファイル:Bandpass-Gehäuse (enclosure).png|thumb|100px]]
: [[ASW型]]は、スピーカーユニットの前後両面にバスレフ型のエンクロージャーを、あるいは片方に密閉型のエンクロージャーを取付けたものである。スピーカーユニットの中高音を全て封じ込めてしまう。[[サブウーファー]]に用いられる方式である。
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; 共鳴管方式
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: [[共鳴管方式]]は、エンクロージャーそのものを共鳴管とする方式。トランスミッションライン型など、様々な手法がある(画像はトランスミッションライン型の例)。
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==参考文献==
=== バックロードホーン型 ===
* {{PDFlink|[http://www.fostex.jp/user_file/fostex-sh/etc/SpeakerComponent2010_03.pdf フォステクス社カタログ(2010年3月現在)内の解説ページ]}} p17-p18 、2010年7月25日閲覧
[[File:Bhorn.jpg|thumb|100px]]
[[バックロードホーン型]]は、エンクロージャーの内部に、少しずつ太くなってゆく音の道(ホーン)が折りたたまれており、箱のどこかにホーンの出口がある。振動板の裏側から出た音のうち低音はホーンで増強され、中音高音は折り曲げ構造により減衰し、出口から放射される。バスレフ型に比べて低音増強効果は大きいが、反面、バスレフ型ほど低い帯域まで低音を増強させるは困難である。設計や製作に手間がかかる。自作スピーカーや、海外メーカーの超高級品に使われている。
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=== ドロンコーン型 ===
[[ファイル:Passive radiator enclosure.svg|thumb|100px]]
ドローンコーン(ドロンコーン)型、または{{仮リンク|パッシブラジエーター型|en|Passive radiator (speaker)}}は、エンクロージャーにスピーカーユニット以外にドロンコーン(またはパッシブラジエーター)と呼ばれる物を取付ける方式である。ドロンコーンは電磁気回路を持たないスピーカーユニットであり、同じエンクロージャーに取付けられたスピーカーユニットによって、受動的に動作するになる。
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=== フロントロードホーン型 ===
[[ファイル:Horn loudspeaker.jpg|thumb|100px]]
[[フロントロードホーン型]]は、上記の形式がユニット後部の音に手を加えるものであるのに対して、ユニット前面の音に手を加えるものである。フロントロードホーン型においても、ユニット後面の音に手を加える必要があるため、上記の方式と組み合わせるになる。密閉型との組み合わせが多い。バスレフ型と組み合わせたものは、コンビネーションホーン型と呼ばれる。
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=== ASW型 ===
[[ファイル:Bassreflex-Gehäuse (2x) (enclosure).png|thumb|100px]]
[[ファイル:Bandpass-Gehäuse (enclosure).png|thumb|100px]]
[[ASW型]]は、スピーカーユニットの前後両面にバスレフ型のエンクロージャーを、あるいは片方に密閉型のエンクロージャーを取付けたものである。スピーカーユニットの中高音を全て封じ込めてしまう。[[サブウーファー]]に用いられる方式である。
{{ - }}
=== 共鳴管方式 ===
[[ファイル:TransmissionLineSpeaker.png|thumb|50px]]
[[共鳴管方式]]は、エンクロージャーそのものを共鳴管とする方式。トランスミッションライン型など、様々な手法がある(画像はトランスミッションライン型の例)。
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==関連項目==
==関連項目==
{{Commonscat|Loudspeaker_enclosures}}
*[[平面バッフル]]
*[[平面バッフル]]


==参考==
{{Commonscat|Loudspeaker_enclosures}}
* {{PDFlink|[http://www.fostex.jp/user_file/fostex-sh/etc/SpeakerComponent2010_03.pdf フォステクス社カタログ(2010年3月現在)内の解説ページ]}} p17-p18 、2010年7月25日閲覧
{{Audio-visual-stub}}
{{Audio-visual-stub}}
{{Template:スピーカーのエンクロージャー}}
{{Template:スピーカーのエンクロージャー}}
{{デフォルトソート:えんくろおしやあ}}

{{DEFAULTSORT:えんくろおしやあ}}
[[Category:スピーカー]]
[[Category:スピーカー]]

2016年3月27日 (日) 15:52時点における版

ファイル:Sat2 modify.jpg
エンクロージャー

エンクロージャー (enclosure) とは、元々「取り囲むもの」という意味で、精密機械を格納する筐体のことである。単にエンクロージャーという場合はスピーカー用のものを指すことが多い。本項にて説明。

その他、ブレードサーバを格納する筺体(対象を明確にするためブレードエンクロージャーとも)等を指すこともある。

概要

エンクロージャーはスピーカーユニット後部から出る音を「封じ込め」前部の音に干渉させないという機能を一般に有している。「(スピーカー)ボックス」「(スピーカー)キャビネット」「箱」とも呼ばれるが、この語で呼ばれることが多い。これは、スピーカーを取り付ける筐体が、「箱」とは限らないからである。

ダイナミック型のスピーカーユニットは、前後それぞれに逆向きに音波を放出するため、その音波同士が干渉し、互いに打ち消しあうことになる。これは低音域になるほど著しい。よって、スピーカーユニットを単体で鳴らした場合、低音がほとんど再生できない。エンクロージャーにスピーカーユニットを取付けることで、低音まで再生できるスピーカーとなる。

また、エンクロージャーは単に後面の音を封じ込めるのみならず、共鳴を利用して積極的に低音再生に用いる場合がある。そのため、以下に分類するような、様々な方式が存在する。

コンデンサ型など前後の音の干渉の無いスピーカーユニットも存在するが、そうしたスピーカーユニットはダイナミック型に比べて低音再生も劣る場合が多い。よってマルチウエイとして低音域についてはダイナミック型のスピーカーユニットで再生するケースが多いので、やはりエンクロージャーはスピーカーにとって必須のものとなる(もちろん例外はある)。

分類

平面バッフル/後面開放(ダイポール)型
平面バッフルは、スピーカーユニットを単なる板に取付けたものである。板によってユニット背面の音を遮るという単純なものである。より低い帯域の音は回折によって前面にまわりこむこととなるので、それを防ぐにはできるだけ大きな板に取付けることが必要となる。しかしそれには限界があるので、板の四隅を折り曲げた格好にし、後面のみが開いた箱状にする場合もあり、これは後面開放(ダイポール)型英語版と呼ばれる。
密閉型(アコースティック・エアー・サスペンション型)
密閉型は、箱を密封し、振動板背面から発せられる音の影響を完全に遮蔽する。癖の少ない素直な音質が特徴である。反面、エンクロージャーが過小でスピーカーユニットの磁気回路が非力な場合、振動板の動きが制限され、低音の少ない詰まった音になりやすい。
バスレフ型
バスレフ型は、エンクロージャーの前面や背面に筒状の貫通穴(ポート/ダクト)を設け、ヘルムホルツ共鳴の原理でユニット裏面から発せられた低音を共振、増強する。これが振動板の前面から発せられた低音に加算され、豊かな低音が得られる。反面、共振周波数よりさらに低い低音がほとんど出なくなる。また、設計が悪いと音に癖が付いたり、貫通穴のところで風切り音が出たりする。
バックロードホーン型
バックロードホーン型は、エンクロージャーの内部に、少しずつ太くなってゆく音の道(ホーン)が折りたたまれており、箱のどこかにホーンの出口がある。振動板の裏側から出た音のうち低音はホーンで増強され、中音高音は折り曲げ構造により減衰し、出口から放射される。バスレフ型に比べて低音増強効果は大きいが、反面、バスレフ型ほど低い帯域まで低音を増強させることは困難である。設計や製作に手間がかかる。自作スピーカーや、海外メーカーの超高級品に使われている。
ドロンコーン型
ドローンコーン(ドロンコーン)型、またはパッシブラジエーター型英語版は、エンクロージャーにスピーカーユニット以外にドロンコーン(またはパッシブラジエーター)と呼ばれる物を取付ける方式である。ドロンコーンは電磁気回路を持たないスピーカーユニットであり、同じエンクロージャーに取付けられたスピーカーユニットによって、受動的に動作することになる。
フロントロードホーン型
フロントロードホーン型は、上記の形式がユニット後部の音に手を加えるものであるのに対して、ユニット前面の音に手を加えるものである。フロントロードホーン型においても、ユニット後面の音に手を加える必要があるため、上記の方式と組み合わせることになる。密閉型との組み合わせが多い。バスレフ型と組み合わせたものは、コンビネーションホーン型と呼ばれる。
ASW型
ASW型は、スピーカーユニットの前後両面にバスレフ型のエンクロージャーを、あるいは片方に密閉型のエンクロージャーを取付けたものである。スピーカーユニットの中高音を全て封じ込めてしまう。サブウーファーに用いられる方式である。
共鳴管方式
共鳴管方式は、エンクロージャーそのものを共鳴管とする方式。トランスミッションライン型など、様々な手法がある(画像はトランスミッションライン型の例)。

参考文献

関連項目