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'''鼻行類'''(びこうるい、[[架空]]の[[学名]]:'''Rhinogradentia'''、別名:'''ハナアルキ'''['''鼻歩き'''])は、[[動物学]][[論文]]の[[パロディ]]作品『鼻行類』([[#書籍として『鼻行類』|本項下段]]を参照)に記載された[[架空の|想像上生物]]である小獣の一群
'''鼻行類'''(びこうるいは、[[動物学]][[論文]]の[[パロディ]]作品である書籍の題名。およびそ書籍で紹介され架空の物のである。
'''鼻行目''' (Rhinogradentia) に分類される[[哺乳類]]の一[[タクソン|分類群(タクソン)]]であり、[[1957年]]までは[[南太平洋]]の[[ハイアイアイ群島]]に生息していた。


== 概要 ==
{{注意|本項の記述の全ては[[奇]]とされる『鼻行類』([[偽書#フィクションにおける来歴の虚偽|cf.]])に基づいている。あたかも事実であるかのような文体に徹しているが、その形式自体が本書が持つ趣旨の忠実な再現となっている。される内容は生息地や著者なども含めて'''全く[[フクション]]'''でありすなわち本項解説されるのは、「'''フィクションとして知られてる'''鼻行類および『鼻行類』」である。}}
{{独自研究|section=1|date=2009年12月}}
『'''鼻行類'''』はハラルト・シュテュンプケ名義で書かれた、[[架空]]の生き物「鼻行類」を解説している書籍である。[[1961年]]発行。フィクションではあるが、[[生物学]]の学術書によくある、特定の[[タクソン|分類群]]に関する総説の形式を巧みに表現してあり、個々の動物の記述は[[主体と客体|客観]]的かつ冷静である。

特に、一つの群島における[[哺乳類]]の一分類群の[[適応放散]]をシミュレートする、という試みにおいても興味深いものである。鼻で歩くというのがいかにも奇妙であるが、考えてみれば[[ゾウ]]の鼻でもずいぶんと奇妙であるし、生物界にはびっくりするような[[適応]]の例はいくらでもある。しかしそれが鼻であることが一種のおかしみを醸し出している。さらにダンボハナアルキなどは、耳を羽ばたかせて飛ぶという[[ウォルト・ディズニー・カンパニー|ディズニー]][[アニメーション|アニメ]]の[[ダンボ]]を生物学的に具現化してみせたものである。それ以外にも、[[寄生]]性の哺乳類など、実在しないものを無理やり創り出したものもある。なお、顔を花に[[擬態]]させて虫を捕るというハナモドキなどは、ほぼ同様の案が『[[アフターマン]]』でも使われており、言わば、アイディアの[[収斂]]が見られる。イカモドキは[[繊毛粘液摂食]]を陸上のしかも哺乳類にさせる[[思考実験]]ともとれる。

その学術論文の[[パロディ|パロディー]]としての完成度はかなり高い。鼻行類についての記述のみならず、ハイアイアイ群島の現地人の文化や鼻行類研究の歴史なども、それらしく描かれている。また、巻末の参考文献一覧なども一見の価値がある。その[[系統樹]]を完全なものとしては描かず、多くの疑問や異説を含むかたちで提出するあたりにも、学術論文的なリアリティがある。また、地鼻類の項では単にこの架空の分類群のみならず、[[扁形動物|扁形動物門]][[ウズムシ目|三岐腸類]]の系統にまで話を広げるあたりは、いかにも意欲的な[[研究者]]の書きそうな話でもある。
線画による[[ミニアチュール|細密画]]も[[生物学]]論文的なもので、ときに違ったタッチのものが混じるのは、総論的な学術論文ではよくある、他の研究者の論文からの[[引用]]によって異なったタッチの図が入り交じるという事実を巧みに模したものである。

古い[[詩]](これは実在する)の[[引用]]から始まり、[[核実験]]による島の消滅という終焉を末尾に置くというドラマチックな構成は、単なるパロディー論文というよりは、[[論文]]という体裁をとった一つの[[おとぎ話]]としても成立している。[[サイエンスフィクション]]ならぬ、バイオロジーフィクション[[作品]]と呼べるであろう。

なお、本文中では始めに少し説明がある以外には言及がないが、この島はきわめて古い時代に孤立して以降、独自の進化の道をたどっており、そのために高等な[[昆虫]]が欠けている。したがって、図中に描かれている昆虫はいずれも[[ゴキブリ]]や[[カゲロウ]]など古い型のものかそれに由来するものであり、よく見るとそれらしく描かれている。

== 影響 ==
『鼻行類』は後に著された『[[平行植物]]』および『[[アフターマン]]』と併せて「[[生物学|生物]]系[[三大奇書]]」と呼ばれることがある。

このうち、『平行植物』が[[民俗学]]的[[書籍]]の、アフターマンが一般向け[[科学]]解説書(あるいは、[[子供]]向け科学[[図鑑]])の[[パロディー]]の体裁をとるのに対して、『鼻行類』は徹底して'''科学分野の専門書のパロディー'''である。

そのため、関わりを持つ人物には生物学の専門家が多い。上記のように本当の作者も動物学者であるし、日本語訳は一級の動物行動学者である[[日高敏隆]]が行っている。本書の評価本(『シュテンプケ氏の鼻行類 - 分析と試論』ゲーステ著・今泉訳)が出版されている。このほか、片倉・馬渡の『動物の多様性』([[2007年]]、[[培風館]])では[[標本 (分類学)|標本]]に関する議論の中でこの書を取り上げ、それが虚構であることには一切触れずに、「標本が存在しないため、これを確認することが不可能であること」を惜しみ、フランスの[[博物館]]にて一時展示されていたハナススリハナアルキの[[剥製]](当然作り物である)について「その時に[[解剖]]を依頼すればよかった」と悔やんでいる(もちろんこれも手の込んだ冗談である)。

== 架空の生物としての鼻行類 ==
{{注意|本項の記述の全ては上述の『鼻行類』([[偽書#フィクションにおける来歴の虚偽|cf.]])に基づいている。あたかも事実であるかのような文体に徹しているが、その形式自体が本書が持つ趣旨の忠実な再現となっている。説、漫画、映画などの創作作品を扱ったウキペディアの記事における作中の人物紹介と同様に架空のものある事を了承されい。}}
<!--「Wikipedia:フィクションを明確に区別」というルールが存在します。定義部の フィクションであることを示す記述を除去しないでください。-->
<!--「Wikipedia:フィクションを明確に区別」というルールが存在します。定義部の フィクションであることを示す記述を除去しないでください。-->
'''鼻行類'''(びこうるい、[[架空]]の[[学名]]:'''Rhinogradentia'''、別名:'''ハナアルキ'''['''鼻歩き'''])は、同名の書籍に掲載された、[[架空の生物|想像上の生物]]である小獣の一群。'''鼻行目''' (Rhinogradentia) に分類される[[哺乳類]]の一[[タクソン|分類群(タクソン)]]であり、[[1957年]]までは[[南太平洋]]の[[ハイアイアイ群島]]に生息していたという設定である


== 概要 ==
=== 概要 ===
{{生物分類表
{{生物分類表
|色 = pink
|色 = pink
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[[1957年]]の[[核実験]]によって引き起こされた[[地殻変動]]によりハイアイアイ群島は海没・消滅し、この時、鼻行類も[[絶滅]]したとされる。
[[1957年]]の[[核実験]]によって引き起こされた[[地殻変動]]によりハイアイアイ群島は海没・消滅し、この時、鼻行類も[[絶滅]]したとされる。


== おもな鼻行類 ==
=== おもな鼻行類 ===
=== 単鼻類 ===
==== 単鼻類 ====
; 原鼻類
; 原鼻類
:もっとも原始的な鼻行類と考えられるムカシハナアルキ類の[[化石]]は、[[中生代]][[白亜紀]]後期もしくは[[新生代]][[第三紀]]のものとされる地層から産出されている。その姿はほぼ[[モグラ目|食虫類]]と同じで、鼻が特に発達しているが、摂食時のみ鼻で体を固定し、移動には四肢を用いる。
:もっとも原始的な鼻行類と考えられるムカシハナアルキ類の[[化石]]は、[[中生代]][[白亜紀]]後期もしくは[[新生代]][[第三紀]]のものとされる地層から産出されている。その姿はほぼ[[モグラ目|食虫類]]と同じで、鼻が特に発達しているが、摂食時のみ鼻で体を固定し、移動には四肢を用いる。
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:* ダンボハナアルキ属 ''genus Otopteryx'' - トビハナアルキ科 (''familia'' Hopsorrhinidae) に属す。巨大な[[耳]]を使って[[飛翔]]する。
:* ダンボハナアルキ属 ''genus Otopteryx'' - トビハナアルキ科 (''familia'' Hopsorrhinidae) に属す。巨大な[[耳]]を使って[[飛翔]]する。


=== 多鼻類 ===
==== 多鼻類 ====
; 四鼻類
; 四鼻類
:鼻は4つ、それを足のように使って歩行する。
:鼻は4つ、それを足のように使って歩行する。
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:鼻は多数、頭部先端の突出部に左右に対をなす。
:鼻は多数、頭部先端の突出部に左右に対をなす。
:* ナキハナムカデ - 19対の鼻を持ち、そのうち18対の鼻で[[音楽]]を演奏する。
:* ナキハナムカデ - 19対の鼻を持ち、そのうち18対の鼻で[[音楽]]を演奏する。

== 書籍としての鼻行類 ==
{{独自研究|section=1|date=2009年12月}}
『'''鼻行類'''』はハラルト・シュテュンプケ名義で書かれた、[[架空]]の生き物「鼻行類」を解説している書籍である。[[1961年]]発行。フィクションではあるが、[[生物学]]の学術書によくある、特定の[[タクソン|分類群]]に関する総説の形式を巧みに表現してあり、個々の動物の記述は[[主体と客体|客観]]的かつ冷静である。

特に、一つの群島における[[哺乳類]]の一分類群の[[適応放散]]をシミュレートする、という試みにおいても興味深いものである。鼻で歩くというのがいかにも奇妙であるが、考えてみれば[[ゾウ]]の鼻でもずいぶんと奇妙であるし、生物界にはびっくりするような[[適応]]の例はいくらでもある。しかしそれが鼻であることが一種のおかしみを醸し出している。さらにダンボハナアルキなどは、耳を羽ばたかせて飛ぶという[[ウォルト・ディズニー・カンパニー|ディズニー]][[アニメーション|アニメ]]の[[ダンボ]]を生物学的に具現化してみせたものである。それ以外にも、[[寄生]]性の哺乳類など、実在しないものを無理やり創り出したものもある。なお、顔を花に[[擬態]]させて虫を捕るというハナモドキなどは、ほぼ同様の案が『[[アフターマン]]』でも使われており、言わば、アイディアの[[収斂]]が見られる。イカモドキは[[繊毛粘液摂食]]を陸上のしかも哺乳類にさせる[[思考実験]]ともとれる。

その学術論文の[[パロディ|パロディー]]としての完成度はかなり高い。鼻行類についての記述のみならず、ハイアイアイ群島の現地人の文化や鼻行類研究の歴史なども、それらしく描かれている。また、巻末の参考文献一覧なども一見の価値がある。その[[系統樹]]を完全なものとしては描かず、多くの疑問や異説を含むかたちで提出するあたりにも、学術論文的なリアリティがある。また、地鼻類の項では単にこの架空の分類群のみならず、[[扁形動物|扁形動物門]][[ウズムシ目|三岐腸類]]の系統にまで話を広げるあたりは、いかにも意欲的な[[研究者]]の書きそうな話でもある。
線画による[[ミニアチュール|細密画]]も[[生物学]]論文的なもので、ときに違ったタッチのものが混じるのは、総論的な学術論文ではよくある、他の研究者の論文からの[[引用]]によって異なったタッチの図が入り交じるという事実を巧みに模したものである。

古い[[詩]](これは実在する)の[[引用]]から始まり、[[核実験]]による島の消滅という終焉を末尾に置くというドラマチックな構成は、単なるパロディー論文というよりは、[[論文]]という体裁をとった一つの[[おとぎ話]]としても成立している。[[サイエンスフィクション]]ならぬ、バイオロジーフィクション[[作品]]と呼べるであろう。

なお、本文中では始めに少し説明がある以外には言及がないが、この島はきわめて古い時代に孤立して以降、独自の進化の道をたどっており、そのために高等な[[昆虫]]が欠けている。したがって、図中に描かれている昆虫はいずれも[[ゴキブリ]]や[[カゲロウ]]など古い型のものかそれに由来するものであり、よく見るとそれらしく描かれている。

== 影響 ==
『鼻行類』は後に著された『[[平行植物]]』および『[[アフターマン]]』と併せて「[[生物学|生物]]系[[三大奇書]]」と呼ばれることがある。

このうち、『平行植物』が[[民俗学]]的[[書籍]]の、アフターマンが一般向け[[科学]]解説書(あるいは、[[子供]]向け科学[[図鑑]])の[[パロディー]]の体裁をとるのに対して、『鼻行類』は徹底して'''科学分野の専門書のパロディー'''である。

そのため、関わりを持つ人物には生物学の専門家が多い。上記のように本当の作者も動物学者であるし、日本語訳は一級の動物行動学者である[[日高敏隆]]が行っている。本書の評価本(『シュテンプケ氏の鼻行類 - 分析と試論』ゲーステ著・今泉訳)が出版されている。このほか、片倉・馬渡の『動物の多様性』([[2007年]]、[[培風館]])では[[標本 (分類学)|標本]]に関する議論の中でこの書を取り上げ、それが虚構であることには一切触れずに、「標本が存在しないため、これを確認することが不可能であること」を惜しみ、フランスの[[博物館]]にて一時展示されていたハナススリハナアルキの[[剥製]](当然作り物である)について「その時に[[解剖]]を依頼すればよかった」と悔やんでいる(もちろんこれも手の込んだ冗談である)。


== 関連作品 ==
== 関連作品 ==

2014年4月5日 (土) 05:31時点における版

鼻行類(びこうるい)は、動物学論文パロディ作品である書籍の題名。およびその書籍で紹介される架空の動物の名である。

概要

鼻行類』はハラルト・シュテュンプケ名義で書かれた、架空の生き物「鼻行類」を解説している書籍である。1961年発行。フィクションではあるが、生物学の学術書によくある、特定の分類群に関する総説の形式を巧みに表現してあり、個々の動物の記述は客観的かつ冷静である。

特に、一つの群島における哺乳類の一分類群の適応放散をシミュレートする、という試みにおいても興味深いものである。鼻で歩くというのがいかにも奇妙であるが、考えてみればゾウの鼻でもずいぶんと奇妙であるし、生物界にはびっくりするような適応の例はいくらでもある。しかしそれが鼻であることが一種のおかしみを醸し出している。さらにダンボハナアルキなどは、耳を羽ばたかせて飛ぶというディズニーアニメダンボを生物学的に具現化してみせたものである。それ以外にも、寄生性の哺乳類など、実在しないものを無理やり創り出したものもある。なお、顔を花に擬態させて虫を捕るというハナモドキなどは、ほぼ同様の案が『アフターマン』でも使われており、言わば、アイディアの収斂が見られる。イカモドキは繊毛粘液摂食を陸上のしかも哺乳類にさせる思考実験ともとれる。

その学術論文のパロディーとしての完成度はかなり高い。鼻行類についての記述のみならず、ハイアイアイ群島の現地人の文化や鼻行類研究の歴史なども、それらしく描かれている。また、巻末の参考文献一覧なども一見の価値がある。その系統樹を完全なものとしては描かず、多くの疑問や異説を含むかたちで提出するあたりにも、学術論文的なリアリティがある。また、地鼻類の項では単にこの架空の分類群のみならず、扁形動物門三岐腸類の系統にまで話を広げるあたりは、いかにも意欲的な研究者の書きそうな話でもある。 線画による細密画生物学論文的なもので、ときに違ったタッチのものが混じるのは、総論的な学術論文ではよくある、他の研究者の論文からの引用によって異なったタッチの図が入り交じるという事実を巧みに模したものである。

古い(これは実在する)の引用から始まり、核実験による島の消滅という終焉を末尾に置くというドラマチックな構成は、単なるパロディー論文というよりは、論文という体裁をとった一つのおとぎ話としても成立している。サイエンスフィクションならぬ、バイオロジーフィクション作品と呼べるであろう。

なお、本文中では始めに少し説明がある以外には言及がないが、この島はきわめて古い時代に孤立して以降、独自の進化の道をたどっており、そのために高等な昆虫が欠けている。したがって、図中に描かれている昆虫はいずれもゴキブリカゲロウなど古い型のものかそれに由来するものであり、よく見るとそれらしく描かれている。

影響

『鼻行類』は後に著された『平行植物』および『アフターマン』と併せて「生物三大奇書」と呼ばれることがある。

このうち、『平行植物』が民俗学書籍の、アフターマンが一般向け科学解説書(あるいは、子供向け科学図鑑)のパロディーの体裁をとるのに対して、『鼻行類』は徹底して科学分野の専門書のパロディーである。

そのため、関わりを持つ人物には生物学の専門家が多い。上記のように本当の作者も動物学者であるし、日本語訳は一級の動物行動学者である日高敏隆が行っている。本書の評価本(『シュテンプケ氏の鼻行類 - 分析と試論』ゲーステ著・今泉訳)が出版されている。このほか、片倉・馬渡の『動物の多様性』(2007年培風館)では標本に関する議論の中でこの書を取り上げ、それが虚構であることには一切触れずに、「標本が存在しないため、これを確認することが不可能であること」を惜しみ、フランスの博物館にて一時展示されていたハナススリハナアルキの剥製(当然作り物である)について「その時に解剖を依頼すればよかった」と悔やんでいる(もちろんこれも手の込んだ冗談である)。

架空の生物としての鼻行類

鼻行類(びこうるい、架空学名Rhinogradentia、別名:ハナアルキ鼻歩き])は、同名の書籍に掲載された、想像上の生物である小獣の一群。鼻行目 (Rhinogradentia) に分類される哺乳類の一分類群(タクソン)であり、1957年までは南太平洋ハイアイアイ群島に生息していたという設定である。

概要

鼻行目(架空)
生息年代: late Cretaceous–0.0001
保全状況評価
絶滅 (EX)
地質時代
中生代白堊紀後期もしくは新生代第三紀 - 第四紀完新世1957年
分類
: (分類は発見当時のもの)
動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: (架空)鼻行目 Rhinogradentia
学名
(架空)
Rhinogradentia
Stümpke, 1961
和名
鼻行目
英名
Snouters、Rhinogrades、Nasobames
下位分類群(
  • ムカシハナアルキ科 Archirrhidae
  • ナメクジハナアルキ科 Nasolimacidae
  • ツツハナアルキ科 Rhinocolumnidae
  • クダハナアルキ科 Rhinosiphonidae
  • ラッパハナアルキ科 Rhinostentoridae
  • モグラハナアルキ科 Rhinotalpidae
  • タダハナアルキ科 Holorrhinidae
  • リョウトビハナアルキ科 Perihopsidae
  • トビハナアルキ科 Hopsorrhinidae
  • ランモドキ科 Orchidiopsidae
  • ナゾベーム科 Nasobemidae
  • オニハナアルキ科 Tyrannonasidae
  • オナジハナアルキ科 Isorrhinidae
  • ゾウハナアルキ科 Anisorrhinidae
  • ハナムカデ科 Rhinochilopidae

南太平洋に存在するハイアイアイ群島に生息していた動物を歩行や捕食等に使用する。滑りやすいハイアイアイ群島で、滑って転ぶのを防ぐために鼻で体を支えたのが、この特異な進化の発端ではないかとされる。また、ゴキブリなどの昆虫を捕食するために、地面に顔をこすりつけていたことにより、このような進化を遂げたという説もある。なお、鼻が歩行器として発達したのと対照的に、多くの群で四肢退化が見られ、一部では後肢あるいは四肢すべてを完全に失った例もある。

ナゾベームのように頭を下にして鼻で歩く姿が有名であるが、多様な進化を遂げた鼻行類の鼻は、歩行に用いるだけでなく捕食などにも使用されている。例えば、ハナススリハナアルキ (Emuncttor sorbes) は粘着力のある鼻汁をたらすことで魚を釣り上げることで知られている。

全14科189種からなるこの生物群は、1942年スウェーデン人探検家エイナール・ペテルスン=シェムトクヴィスト (Einar Pettersson-Skämtkvist) によって発見された。ドイツ人博物学者ハラルト・シュテュンプケHarald Stümpke、cf. ドイツ人動物学者ゲロルフ・シュタイナー[Gerolf Steiner])の著書『鼻行類』に詳しい。

なお、荒俣宏によるとフランスでは鼻行類という分類は認められていない。これは、大統領シャルル・ド・ゴール(在任期間:1958- 1969年)が、巨大な鼻を持つ自分への当てこすりであるとして、パリ植物園への鼻行類の標本搬入を拒否したためであると荒俣は『世界大博物図鑑』に記述しているが、真偽の程は定かではない。

1957年核実験によって引き起こされた地殻変動によりハイアイアイ群島は海没・消滅し、この時、鼻行類も絶滅したとされる。

おもな鼻行類

単鼻類

原鼻類
もっとも原始的な鼻行類と考えられるムカシハナアルキ類の化石は、中生代白亜紀後期もしくは新生代第三紀のものとされる地層から産出されている。その姿はほぼ食虫類と同じで、鼻が特に発達しているが、摂食時のみ鼻で体を固定し、移動には四肢を用いる。
  • ムカシハナアルキ genus Archirrhinos - 原始的な形態を留めるムカシハナアルキ科 (familia Archirrhidae) に属する。ヘッケルムカシハナアルキ (A. haeckelii ) は、原鼻類で唯一の現生種(1)として知られている(鼻行類発見当時)。
鼻歩類
鼻腔内粘膜で地表に張り付き、あるいはそれで移動する。ハナススリハナアルキは例外的に原始形態をとどめるが、近縁なものと考えられている。
  • ナメクジハナアルキ属 genus Rhinolimacius - 粘液を分泌する鼻でカタツムリのように移動する(画像参照:R. conchicauda [1])。
  • ハナススリハナアルキ属 genus Emunctator - ツツハナアルキ科 (Rhinocolumnidae) 。鼻汁を垂らして水生動物を捕獲する。参考画像:[2]
  • ミツオハナアルキ属 genus Dulcicauda - 鼻で固着生活を送り、尾から分泌される甘い蜜液で昆虫をおびき寄せて捕食する。キンカイショクミツオハナアルキ(D. griseaurella、画像参照:[3])など。
管鼻類
鼻が長く伸び、先端が開いている。水中生活で鼻を水面に伸ばして呼吸する。
  • ラッパハナアルキ属 genus Rhinostentor - 漏斗状の鼻で水面からぶら下がって生活する。ミジンコラッパ ハナアルキ (R. submersus) など。
地鼻類
鼻は棒状で、内部に空洞を持つ。
  • モグラハナアルキ属 - 強靭な鼻でトンネルを掘り、地中生活を送る。
  • ハラワタハナアルキ属 - が消失し、がまっすぐな管となるなど、著しい退化を見せる。鼻の付け根から分裂して増殖すると考えられている。
  • コビトハナアルキ - さらに退化し、脊索肛門血管系が完全に消失している。体長2mm。この動物の発見により、プラナリアなど三岐腸類は鼻行類を祖先とするという説が生まれた。
跳鼻類
鼻ははっきりした柄を持ち、足のようになる(鼻脚)。内部の軟骨が強く発達し、途中に関節がある。その先端は広がり、地表にこれをつける。
  • トビハナアルキ属 genus Hopsorrinus - 骨格と筋肉の発達した鼻脚で跳躍して移動する。トビハナアルキ (H. aureus ) など。
  • ダンボハナアルキ属 genus Otopteryx - トビハナアルキ科 (familia Hopsorrhinidae) に属す。巨大なを使って飛翔する。

多鼻類

四鼻類
鼻は4つ、それを足のように使って歩行する。
  • ナゾベーム属 genus Nasobema - ナゾベーム科(familia Nasobemidae) に属する代表的なハナアルキ。4本の鼻で移動する。比較的知られている種にモルゲンシュテルンオオナゾベーム (N. lyicum) がある。
  • オニハナアルキ属 - ナゾベーム属を捕食する。
六鼻類
鼻は6つ。多くはあまり移動せず、鼻を伸ばして昆虫などを捕食する。
  • イカモドキ属 - 穴の中から6本の鼻を伸ばして昆虫を捕食する。
  • ハナモドキ属 - 長大な尾で直立し、擬態した鼻で昆虫を捕食する。
  • マンモスハナアルキ Mamontops ursulus - 最大1.3mに達する大型種。4本の鼻で歩き、2本の鼻で植物を引き抜いて食べる。
長吻類
鼻は多数、頭部先端の突出部に左右に対をなす。
  • ナキハナムカデ - 19対の鼻を持ち、そのうち18対の鼻で音楽を演奏する。

関連作品

関連項目

参考文献

外部リンク