「ケベック・フランス語」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
Fête (会話 | 投稿記録)
9行目: 9行目:


== 発音 ==
== 発音 ==
*{{IPA|t}}と{{IPA|d}}は母音{{IPA|i}}と{{IPA|y}}の前で破擦音化され、それぞれ{{IPA|ts}}と{{IPA|dz}} となる。
*{{IPA|t}}と{{IPA|d}}は母音{{IPA|i}}と{{IPA|y}}の前で破擦音化され、それぞれ{{IPA|t͡s}}と{{IPA|d͡z}} となる。
*フランスでは失われつつある{{IPA|ɛ̃}} と {{IPA|œ̃}} の区別が存在する。
*フランスでは失われつつある{{IPA|ɛ̃}} と {{IPA|œ̃}} の区別が存在する。
*鼻母音{{IPA|ã}}は{{IPA|ẽ}}に近い音となり、{{IPA|ɑ̃}}は{{IPA|ɛ̃}}に近い音となる。
*鼻母音{{IPA|ã}}は{{IPA|ẽ}}に近い音となり、{{IPA|ɑ̃}}は{{IPA|ɛ̃}}に近い音となる。
*メトロポリテン・フランス語では失われつつある、いわゆる暗いア{{IPA|ɑ}} と明るいア{{IPA|a}}の区別が残っている。
*メトロポリテン・フランス語では失われつつある、いわゆる暗いア{{IPA|a}} と明るいア{{IPA|ɑ}}の区別が残っている。
*文や語の最後にくる{{IPA|ɑ}} は{{IPA|ɔ}}に近くなる。例:Je sais pas. {{IPA|ʒsɛpɑ}}~{{IPA|ʒsɛpɔ}}
*文や語の最後にくる{{IPA|ɑ}} は{{IPA|ɔ}}に近くなる。例:Je sais pas. {{IPA|ʒsepɑ}}~{{IPA|ʒsepɔ}}
*くだけた会話では{{IPA|}} が {{IPA|we}} に近く発音される。 例:moi {{IPA|mwe}}
*くだけた会話では{{IPA|wa}} が {{IPA|we}} に近く発音される。 例:moi {{IPA|mwe}}
*rの発音はしばしば歯茎はじき音{{IPA|ɾ}} (スペイン語、イタリア語のr、日本語のら行に近い)となる。
*rの発音はしばしば歯茎はじき音{{IPA|ɾ}} (スペイン語、イタリア語のr、日本語のら行に近い)となる。
*一部の単語は最後の子音も発音されることがある。例:lit {{IPA|lɪt}},  tout {{IPA|tʊt}},  pot {{IPA|pɔt}}
*一部の単語は最後の子音も発音されることがある。例:lit {{IPA|lɪt}},  tout {{IPA|tʊt}},  pot {{IPA|pɔt}}
*有音のhが発音されることがある。例:hache {{IPA|haʃ}}
*有音のhが発音されることがある。例:hache {{IPA|haʃ}}
*rの直前の{{IPA|ɛ}}は{{IPA|a}}と発音される。例:personne {{IPA|parsɔn}}, merde {{IPA|mard}}, clair {{IPA|klar}}
*rの直前の{{IPA|ɛ}}は{{IPA|a}}と発音される。例:personne {{IPA|paʀsɔn}}, merde {{IPA|maʀd}}, clair {{IPA|klaːʀ}}
*eやêの一部が二重母音化される。例:seize {{IPA|saɪz}}, fête {{IPA|faɪt}}
*eやêの一部が二重母音化される。例:seize {{IPA|saɛ̯z}}, fête {{IPA|faɛ̯t}}
*連続した子音の脱落傾向。例:peut-être {{IPA|pøtaɪt}}, piastre {{IPA|pjas}}, possible {{IPA|pɔsɪb}}
*連続した子音の脱落傾向。例:peut-être {{IPA|pœt‿aɛ̯t}}, piastre {{IPA|pjas}}, possible {{IPA|pɔsɪb}}


== 文法 ==
== 文法 ==

2012年9月5日 (水) 23:12時点における版

ケベック・フランス語(ケベック・フランスご、: Français québécois)は、主にカナダケベック州で使用されるフランス語のこと。 ケベコワ Québécois)と呼ばれることもある。

特徴

  • 標準フランス語とケベック・フランス語の差について、イギリス英語アメリカ英語の差や、スペイン語と中南米スペイン語の差より大きいが、標準ドイツ語とスイスドイツ語の差よりも小さいと言われている。
  • 標準フランス語に比べて英語からの借用語が多く、また文法・語形・発音も多少の差がある。
  • フランスからケベックへの初期の移民はノルマンディーなど地方出身者が多く、フランス革命の時のフランス語の語形や発音が残っているためフランス本国人は古い田舎のフランス語と感じる人もいる。もちろん標準フランス語も理解する。
  • ケベック・フランス語は、英語からの借用語が多いが、逆の場合もある。 標準フランス語では英語の借用語の単語だが、ケベック・フランス語ではフランス語化されているものもある。例:bowling(標準フランス語)→quilles(ケベック・フランス語) week-end(標準フランス語)→fin de semaine(ケベック・フランス語)

発音

  • [t][d]は母音[i][y]の前で破擦音化され、それぞれ[t͡s][d͡z] となる。
  • フランスでは失われつつある[ɛ̃][œ̃] の区別が存在する。
  • 鼻母音[ã][ẽ]に近い音となり、[ɑ̃][ɛ̃]に近い音となる。
  • メトロポリテン・フランス語では失われつつある、いわゆる暗いア[a] と明るいア[ɑ]の区別が残っている。
  • 文や語の最後にくる[ɑ][ɔ]に近くなる。例:Je sais pas. [ʒsepɑ][ʒsepɔ]
  • くだけた会話では[wa][we] に近く発音される。 例:moi [mwe]
  • rの発音はしばしば歯茎はじき音[ɾ] (スペイン語、イタリア語のr、日本語のら行に近い)となる。
  • 一部の単語は最後の子音も発音されることがある。例:lit [lɪt],  tout [tʊt],  pot [pɔt]
  • 有音のhが発音されることがある。例:hache [haʃ]
  • rの直前の[ɛ][a]と発音される。例:personne [paʀsɔn], merde [maʀd], clair [klaːʀ]
  • eやêの一部が二重母音化される。例:seize [saɛ̯z], fête [faɛ̯t]
  • 連続した子音の脱落傾向。例:peut-être [pœt‿aɛ̯t], piastre [pjas], possible [pɔsɪb]

文法

  • 接尾辞 -tu で疑問を表す 例:C'est-tu loin, ça ? (遠いかな?)
  • 関係代名詞で que の多用 例:Le document que j'ai besoin. (標準フランス語:Le document dont j'ai besoin.)
  • 反語の多用 例:C'est pas chaud ! (熱くない!)

単語

  • 車 char (標準フランス語:voiture)
  • (車や電車から)降りる débarquer (標準フランス語:descendre)
  • (車や電車に)乗る embarquer (標準フランス語:monter)
  • コンビニ dépanneur (標準フランス語:supérette)
  • 運がある、ツイている être chancheux (標準フランス語:avoir de la chance)
  • 雨が降る mouiller (標準フランス語:pleuvoir)
  • ゴキブリ coquerelle (標準フランス語:blatte、cafard)
  • 中古品 usagé (標準フランス語:occasion)
  • バケツ chaudière (標準フランス語:seau)
  • 靴下 bas (標準フランス語:chaussette)
  • スリッパ chaussette (標準フランス語:chausson、pantoufle)
  • どういたしまして Bienvenue (標準フランス語:Il n'y a pas de quoi、De rien)
  • 朝食 déjeuner (標準フランス語:petit déjeuner)
  • 昼食 dîner (標準フランス語:déjeuner)
  • 夕食 souper (標準フランス語:dîner)
  • フレンチトースト pain doré (標準フランス語:pain perdu)
  • 飲み物 breuvage (標準フランス語:boisson)
  • お勘定 facture (標準フランス語:addition)
  • 買い物をする magasiner (標準フランス語:faire des courses、faire des achats)
  • 物を落とす échapper (標準フランス語:laisser tomber)
  • 鍵をかける barrer (標準フランス語:fermer la clef)

参考文献

  • Sinclair Robinson Donald Smith (1990): Dictionnaire du français canadien, Stoddart, ISBN 0-7737-5363-X
  • Gérard Dagenais (1990): Dictionnaire des difficultés de la langue française au canada, Les éditions française, ISBN 2-7618-1037-6
  • Léandre Bergeron (1980): Dictionnaire de la langue québécoise, Vlb éditeur, ISBN 2-89005-134-X
  • Hélène Polin Mignault (1990): Le français au québec, Sodilis, ISBN 2-920286-18-8
  • Françoise Mougeon (1995): Quel français parler, Édition du gref centre universitaire glendon Université York, ISBN 0-921916-64-7