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==概要==
==概要==
[[インド・イラン語派]]イラン語西部方言に分類され、[[古代ペルシア語]]の直系である。しかし、古代ペルシア語にあった名詞や動詞の活用などは著しく簡略化され、発音・文法に関しても近世ペルシア語にはるかに近い。
[[インド・イラン語派]]イラン語西部方言に分類され、{{仮リンク|古代ペルシア語|en|Old Persian}}の直系である。しかし、古代ペルシア語にあった名詞や動詞の活用などは著しく簡略化され、発音・文法に関しても近世ペルシア語にはるかに近い。


==文字==
==文字==
表記には[[アラム文字]]の変形である[[パフラヴィ文字]]を用いるが、アラム文字はもともとイラン語の表記を想定していない文字なので以下のようなさまざまな不具合があり、解読が困難を極める。
表記には[[アラム文字]]の変形である[[パフラヴィ文字]]を用いるが、アラム文字はもともとイラン語の表記を想定していない文字なので以下のようなさまざまな不具合があり、解読が困難を極める。
*母音を表記できない。[[セム語派]]の言語では、子音のみで単語のおおよその意味が決まるのでこれでも不都合は無いのだが、パフラヴィー語では同綴異語が沢山出来てしまう。
*母音を表記できない。[[セム語派]]の言語では、子音のみで単語のおおよその意味が決まるのでこれでも不都合は無いのだが、パフラヴィー語では同綴異語が沢山出来てしまう。
*違う文字でも形が似通っており、また一つの文字がいくつもの音を表す。これは当時紀元前後の[[ハトラ文字]]や[[パルティア文字]]といったイラン、メソポタミア地方で使用されていた他のアラム文字系の諸文字でも顕著な現象である。それぞれの文字の書体が時代や地域的な変化によって、本来異なる音価をもっていたはずの文字同士が、書き方がいくつかの系統に収斂してしまったと考えられる。(この問題については[[アラム文字]]も参照)。
*違う文字でも形が似通っており、また一つの文字がいくつもの音を表す。これは当時紀元前後の[[ハトラ文字]]や{{仮リンク|パルティア語|en|Parthian language}}といったイラン、メソポタミア地方で使用されていた他のアラム文字系の諸文字でも顕著な現象である。それぞれの文字の書体が時代や地域的な変化によって、本来異なる音価をもっていたはずの文字同士が、書き方がいくつかの系統に収斂してしまったと考えられる。(この問題については[[アラム文字]]も参照)。
*単語を[[パルティア語]]などでの古い綴りのままの表記、あるいは古い綴りであると想定・再現したと思われる擬古的な表記をしつつ、読む時にはパフラヴィー語の発音で読むといった事も行われた。
*単語を{{仮リンク|パルティア語|en|Parthian language}}などでの古い綴りのままの表記、あるいは古い綴りであると想定・再現したと思われる擬古的な表記をしつつ、読む時にはパフラヴィー語の発音で読むといった事も行われた。
*[[アラム語]]の単語を綴ってこれをパフラヴィー語で[[訓読]]や[[送りがな]]をつけるという事が行われる。
*[[アラム語]]の単語を綴ってこれをパフラヴィー語で[[訓読]]や[[送りがな]]をつけるという事が行われる。
このような不具合があって解読が難しいため、パフラヴィー語の実際の発音を知るために、より表音的に書かれたマニ教系中世ペルシア語文献との比較による[[再建]]が行われている。
このような不具合があって解読が難しいため、パフラヴィー語の実際の発音を知るために、より表音的に書かれたマニ教系中世ペルシア語文献との比較による[[再建]]が行われている。

2012年6月21日 (木) 00:52時点における版

パフラヴィー語とは、中世ペルシア語の一種。3世紀から7世紀にかけてサーサーン朝ペルシアの公用語として、碑文、ゾロアスター教マニ教の文献などに用いられた。

概要

インド・イラン語派イラン語西部方言に分類され、古代ペルシア語の直系である。しかし、古代ペルシア語にあった名詞や動詞の活用などは著しく簡略化され、発音・文法に関しても近世ペルシア語にはるかに近い。

文字

表記にはアラム文字の変形であるパフラヴィ文字を用いるが、アラム文字はもともとイラン語の表記を想定していない文字なので以下のようなさまざまな不具合があり、解読が困難を極める。

  • 母音を表記できない。セム語派の言語では、子音のみで単語のおおよその意味が決まるのでこれでも不都合は無いのだが、パフラヴィー語では同綴異語が沢山出来てしまう。
  • 違う文字でも形が似通っており、また一つの文字がいくつもの音を表す。これは当時紀元前後のハトラ文字パルティア語といったイラン、メソポタミア地方で使用されていた他のアラム文字系の諸文字でも顕著な現象である。それぞれの文字の書体が時代や地域的な変化によって、本来異なる音価をもっていたはずの文字同士が、書き方がいくつかの系統に収斂してしまったと考えられる。(この問題についてはアラム文字も参照)。
  • 単語をパルティア語などでの古い綴りのままの表記、あるいは古い綴りであると想定・再現したと思われる擬古的な表記をしつつ、読む時にはパフラヴィー語の発音で読むといった事も行われた。
  • アラム語の単語を綴ってこれをパフラヴィー語で訓読送りがなをつけるという事が行われる。

このような不具合があって解読が難しいため、パフラヴィー語の実際の発音を知るために、より表音的に書かれたマニ教系中世ペルシア語文献との比較による再建が行われている。

関連項目