「タンパク質を構成するアミノ酸」の版間の差分

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2011年7月23日 (土) 19:53時点における版

タンパク質を構成するアミノ酸(proteinogenic amino acids)は、タンパク質中に見られるアミノ酸である。有機体はタンパク質を合成するために遺伝情報中にその細胞機構がコードされていることが必要である[1]。タンパク質を構成するアミノ酸は通常22種であるが、真核生物では21種しか見られない。22種のうち20種は直接コドンに暗号化されている。ヒトはその20種のうち、11種を他のアミノ酸または中間代謝物から合成することができる。それ以外の9種は食事によって摂取しなければならず、それらは必須アミノ酸と呼ばれている。必須アミノ酸はヒスチジンイソロイシンロイシンリシンメチオニンフェニルアラニントレオニントリプトファン、そしてバリンである。残りの2種はセレノシステインピロリシンで、これらは特殊な合成機構でタンパク質に組み込まれる。

タンパク質を構成しないアミノ酸(non-proteinogenic amino acids)は、タンパク質中に存在しないものか(カルニチンGABAL-ドーパなど)、直接合成されないものか(ヒドロキシプロリンセレノメチオニンなど)のどちらかである。後者はしばしばタンパク質の翻訳後修飾で生じる。

数種のタンパク質を構成しないアミノ酸を有機体が組み込むよう進化しなかったのには明確な理由がある。例えば、オルニチンホモセリンペプチド鎖に逆らって環化してしまい、タンパク質が寸断され半減期が比較的短くなる。また、タンパク質が誤ったアミノ酸(例えばアルギニンの類似化合物であるカナバニン)を組み込んでしまうと毒となる。

タンパク質を構成しないアミノ酸は、リボソームでの翻訳を経て合成されない非リボソームペプチドで見られる。

構造

下に、真核生物の遺伝情報によってタンパク質合成のために直接暗号化されている21種のアミノ酸の構造と略語を示している。下の構造は一般的な化学構造であり、水溶液中にて形成する双性イオンの状態は示していない。

Table of Amino Acids.
21種のアミノ酸の構造、略語、pKa

また、IUPAC/IUBMBは現在、以下の2種のアミノ酸について次のような略称を推奨している。

化学的性質

下の表はアミノ酸の一文字および三文字略語と側鎖の性質についてまとめたものである。それぞれの分子量同位体天然存在比に基づいてその平均値から求めている。アミノ酸がペプチド結合を形成すると水を脱離するため、タンパク質鎖内のアミノ酸単位の分子量は18.01524 Daだけ小さくなることに留意されたい。

アミノ酸 一文字略語 三文字略語 分子量 (Da) pI pK1
(α-COOH)
pK2
(α-+NH3)
アラニン A Ala 89.09404 6.01 2.35 9.87
システイン C Cys 121.15404 5.05 1.92 10.70
アスパラギン酸 D Asp 133.10384 2.85 1.99 9.90
グルタミン酸 E Glu 147.13074 3.15 2.10 9.47
フェニルアラニン F Phe 165.19184 5.49 2.20 9.31
グリシン G Gly 75.06714 6.06 2.35 9.78
ヒスチジン H His 155.15634 7.60 1.80 9.33
イソロイシン I Ile 131.17464 6.05 2.32 9.76
リシン K Lys 146.18934 9.60 2.16 9.06
ロイシン L Leu 131.17464 6.01 2.33 9.74
メチオニン M Met 149.20784 5.74 2.13 9.28
アスパラギン N Asn 132.11904 5.41 2.14 8.72
ピロリシン O Pyl
プロリン P Pro 115.13194 6.30 1.95 10.64
グルタミン Q Gln 146.14594 5.65 2.17 9.13
アルギニン R Arg 174.20274 10.76 1.82 8.99
セリン S Ser 105.09344 5.68 2.19 9.21
トレオニン T Thr 119.12034 5.60 2.09 9.10
セレノシステイン U Sec 168.053
バリン V Val 117.14784 6.00 2.39 9.74
トリプトファン W Trp 204.22844 5.89 2.46 9.41
チロシン Y Tyr 181.19124 5.64 2.20 9.21

側鎖の性質

アミノ酸 一文字略語 三文字略語 側鎖 疎水性 pKa 極性 pH 小さい 極小さい 芳香族性/脂肪族性 ファンデルワールス半径
アラニン A Ala -CH3 X - - - X X - 67
システイン C Cys -CH2SH X 8.18 - 酸性 X - - 86
アスパラギン酸 D Asp -CH2COOH - 3.90 X 酸性 X - - 91
グルタミン酸 E Glu -CH2CH2COOH - 4.07 X 酸性 - - - 109
フェニルアラニン F Phe -CH2C6H5 X - - - - - 芳香族性 135
グリシン G Gly -H X - - - X X - 48
ヒスチジン H His -CH2-C3H3N2 - 6.04 X 弱塩基 - - 芳香族性 118
イソロイシン I Ile -CH(CH3)CH2CH3 X - - - - - 脂肪族性 124
リシン K Lys -(CH2)4NH2 - 10.54 X 塩基性 - - - 135
ロイシン L Leu -CH2CH(CH3)2 X - - - - - 脂肪族性 124
メチオニン M Met -CH2CH2SCH3 X - - - - - - 124
アスパラギン N Asn -CH2CONH2 - - X - X - - 96
ピロリシン O Pyl
プロリン P Pro -CH2CH2CH2- X - - - X - - 90
グルタミン Q Gln -CH2CH2CONH2 - - X - - - - 114
アルギニン R Arg -(CH2)3NH-C(NH)NH2 - 12.48 X 強塩基 - - - 148
セリン S Ser -CH2OH - - X - X X - 73
トレオニン T Thr -CH(OH)CH3 - - X 弱酸 X - - 93
セレノシステイン U Sec -CH2SeH X 5.73 - - X - -
バリン V Val -CH(CH3)2 X - - - X - 脂肪族性 105
トリプトファン W Trp -CH2C8H6N X - - - - - 芳香族性 163
チロシン Y Tyr -CH2-C6H4OH - 10.46 X - - - 芳香族性 141

注:アミノ酸のpKaはタンパク質中にあるときとは若干異なる。

遺伝子発現と生化学

アミノ酸 一文字略語 略語 コドン ヒトタンパク質中の存在率(%) ヒトの必須アミノ酸
アラニン A Ala GCU, GCC, GCA, GCG 7.8 -
システイン C Cys UGU, UGC 1.9 準必須アミノ酸
アスパラギン酸 D Asp GAU, GAC 5.3 -
グルタミン酸 E Glu GAA, GAG 6.3 準必須アミノ酸
フェニルアラニン F Phe UUU, UUC 3.9 必須アミノ酸
グリシン G Gly GGU, GGC, GGA, GGG 7.2 準必須アミノ酸
ヒスチジン H His CAU, CAC 2.3 必須アミノ酸
イソロイシン I Ile AUU, AUC, AUA 5.3 必須アミノ酸
リシン K Lys AAA, AAG 5.9 必須アミノ酸
ロイシン L Leu UUA, UUG, CUU, CUC, CUA, CUG 9.1 必須アミノ酸
メチオニン M Met AUG 2.3 必須アミノ酸
アスパラギン N Asn AAU, AAC 4.3 -
ピロリシン O Pyl UAG* -
プロリン P Pro CCU, CCC, CCA, CCG 5.2 -
グルタミン Q Gln CAA, CAG 4.2 -
アルギニン R Arg CGU, CGC, CGA, CGG, AGA, AGG 5.1 準必須アミノ酸
セリン S Ser UCU, UCC, UCA, UCG, AGU, AGC 6.8 -
トレオニン T Thr ACU, ACC, ACA, ACG 5.9 必須アミノ酸
セレノシステイン U Sec UGA** -
バリン V Val GUU, GUC, GUA, GUG 6.6 必須アミノ酸
トリプトファン W Trp UGG 1.4 必須アミノ酸
チロシン Y Tyr UAU, UAC 3.2 準必須アミノ酸
終止コドン - Term UAA, UAG, UGA - -
  • * UAGは通常はアンバー終止コドンであるが、PYLISエレメントが存在した場合ピロリシンがエンコードされる。
  • ** UGAは通常はオパール(またはアンバー)終止コドンであるが、SECISエレメントが存在した場合セレノシステインがエンコードされる。
  • 終止コドンはアミノ酸ではないが便宜上挿入している。
  • 必須アミノ酸はヒトが体内で生合成できないアミノ酸であるため食事により摂取しなければならない。準必須アミノ酸は食事による摂取は必要ではないが、体内での生合成量が不足したときは十分な量を摂取しなければならない。

出典

  1. ^ Ambrogelly A, Palioura S, Söll D (Jan 2007). “Natural expansion of the genetic code”. Nat Chem Biol 3 (1): 29–35. doi:10.1038/nchembio847. PMID 17173027. http://www.nature.com/nchembio/journal/v3/n1/abs/nchembio847.html. 

関連項目