「日本医療機能評価機構」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
Fgn0102 (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
Fgn0102 (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
1行目: 1行目:
'''日本医療機能評価機構'''(にほんいりょうきのうひょうかきこう、{{Lang-en|Japan Council for Quality Health Care}})とは、専門的な知識を持つ審査員が中立立場で[[医療機関]]多角に審査し、評価する組織として[[1995年]]に設立された[[財団法人]]
'''日本医療機能評価機構'''(にほんいりょうきのうひょうかきこう、'''JCQHC''', Japan Council for Quality Health Care)は、日本の[[財団法人]]である。「医療機関の機能学術観点から中立的な立場で評価し、その結果明らかとなった問題点の改善を支援する第三者機関」<ref>[http://jcqhc.or.jp/html/introduction.htm#data 日本医療機能評価機構の紹介] 医療機能評価機構ウェブサイト、平成23年3月20日閲覧</ref>として、{{jdate|1995}}に設立された。


==概要==
==概要==
それまで日本においてはほとんど実績がなかった第三者機関による[[医療機関]]の評価を行い、それらの機関が質の高い医療サービスを提供していくための支援を行うことを目的としている<ref name="ihara"/>。財団は東京都[[千代田区]]三崎町に所在し、理事長を井原哲夫(慶應義塾大学[[経済学部]]名誉教授)、副理事長を横倉義武([[日本医師会]]副会長、[[福岡県医師会]]会長)、専務理事を[[河北博文]]([[河北総合病院]]理事長)がそれぞれ務める<ref>[http://jcqhc.or.jp/html/documents/pdf/directors_20100722.pdf 日本医療機能評価機構 役員名簿(平成22年7月現在)]</ref>。財団設立を主導したのは河北であり<ref name="gshm">[http://gshm.sfc.keio.ac.jp/organization/iryo.html 教員紹介(2010年4月1日現在) 河北博文] 慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科</ref>、その設立までには15年を要したとしている<ref>[http://www.hosoda.co.jp/event/tusin/vol23/index.html 杉並人(第23回)河北博文さん] 『リボン館通信』 2005年4月号</ref>。
{{jdate|2008|8|25}}現在2,530の病院が認定を受けているが、これは全国の病院の28%程に留まっている。原因として挙げられる事としては仮に認定を受けても非認定医療機関と比較して保険算定上の差別化が図られていなく、対審査費用効果が無い事が挙げられる。


しかしながら財団の事業開始から13年を経た{{jdate|2008}}の時点で審査・認定を受けているのは2,530病院であり<ref>{{jdate|2008|8|25}}現在</ref>、全国の病院の約28%に留まる。その後も日本医療機能評価機構の認定を受ける病院の数は伸び悩み、新たに審査を受ける病院が減少する一方で、認定の更新を見合わせる病院も増加している<ref name="nikkei">「曲がり角の病院機能評価 手間、費用の割にメリット少なく非更新の病院も」 『日経メディカル』(日経BP社) 2010年9月号
== 事業内容 ==
</ref>。この背景として、財団の審査・認定を受けることが直接病院の増収にはつながらないこと、また、受審のための作業負担が過大であることなどが指摘されている<ref name="nikkei"/>。これらについては財団自身、「検討を要する課題・問題がいまだ山積しており、本事業の定着には容易ならぬものがある」<ref name="ihara">[http://jcqhc.or.jp/html/introduction.htm#data 理事長挨拶] 医療機能評価機構ウェブサイト、平成23年3月20日閲覧</ref>と率直に認めているのが現状である。
事業内容としては、以下の事業を財団法人として運営しており、基本財産3億4,700万円である。運営を維持するため、[[厚生労働省]]、[[医師会]]や[[健康保険連合会]]をはじめとする保健・医療・福祉に関する団体・企業、被保険者を代表する団体、一般企業、個人等から広く出資を募っている。


== 事業内容 ==
事業内容としては、以下の事業を財団法人として運営しており、基本財産は3億4,700万円である。
# 病院機能評価事業
# 病院機能評価事業
# 病院機能改善支援事業
# 病院機能改善支援事業
16行目: 18行目:
# 医療事故情報収集等事業
# 医療事故情報収集等事業
# 医療機能評価に関する普及・啓発事業
# 医療機能評価に関する普及・啓発事業
運営維持ため、[[厚生労働省]]、[[医師会]]や[[健康保険組合連合会]]をはじめとする保健・医療・福祉に関する団体・企業、被保険者を代表する団体、一般企業、個人等から広く出資を募っている。


== 設立の経緯 ==
== 設立の経緯 ==
日本医療機能評価機構は、医療の質の向上を目すアメリカ合衆国の民間組織医療施設認定合同機構 ([[:en:Joint Commission|JCAHO]]<ref>[[:en:Joint Commission|JCAHO]] (The Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organization) は、1910年に設立された組織。</ref>) の日本版として誕生した。
アメリカ合衆国を中心に、イギリス(KFOA)、オーストラリア(ACHSA)などでは、医療の質の向上を目的とる病院の活動評価が古くから行われていた。日本医療機能評価機構は、アメリカの民間組織医療施設認定合同機構[[:en:Joint Commission|JCAHO]]<ref>[[:en:Joint Commission|JCAHO]] (The Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organization))は、1910年に設立された組織。</ref>の日本版として誕生した{{要出典}}


*{{jdate|1976}} - [[日本医師会]]内に病院委員会を設置し病院機能評価の手法について検討を開始
アメリカを中心にイギリス(KFOA)、オーストラリア(ACHSA)など、世界の先進国では病院の活動評価が長年にわたって行われ、日本でも評価に関する検討が始まった。
*{{jdate|1976}} - [[日本医師会]]内に病院委員会を設置し病院機能評価の手法について検討開始。
*{{jdate|1985}} - 日本医師会と厚生省(当時)が合同で病院機能評価研究会設置
*{{jdate|1985}} - 日本医師と厚生省(当時)合同で病院機能評価研究会設置。
*{{jdate|1987}} - 同研究会が病院機能評価マニュアル」作成公表
*{{jdate|1987}} - 同研究会が「病院機能評価マニュアル」を作成公表。
*{{jdate|1991}} - 日本病院会が「病院機能標準化マニュアル」を発刊
*{{jdate|1991}} - 日本病院が「病院機能化マニュアル」を発刊。
*{{jdate|1993}} - 日本医師会病院機能評価委員会が具体的な第三者評価基を盛り込んだ報告書を発
*{{jdate|1993}} - 日本医師会病院機能評価委員会具体的な第三者評価基準を盛り込んだ報告書を
*{{jdate|1995}} - 「財団法人日本医機能評価機構」が発2年間の運用調査開始
*{{jdate|1995}} - 「財団法人日医療機能評価機構」が発足。2年間の運用調査開始
*{{jdate|1997}} - 本査開始
*{{jdate|1997}} - 本審査開始。


==病院機能評価==
==病院機能評価==
48行目: 50行目:
その後'''長期療養'''が加わり、現在では病床数とその病床数に一般・療養・精神の占める割合で4つに分類している。
その後'''長期療養'''が加わり、現在では病床数とその病床数に一般・療養・精神の占める割合で4つに分類している。


評価の方法としては、「書面審査」と「訪問審査」の二つを実施する。
評価の方法としては、「書面審査」と「訪問審査」の二つを実施する。審査内容については、2の過程(プロセス)を含めた評価方法であるVer.6に変更となり来年度の更新・認定から実施となる。

審査内容については、2の過程(プロセス)を含めた評価方法であるVer.6に変更となり来年度の更新・認定から実施となる。


== 問題点 ==
== 問題点 ==
63行目: 63行目:
*得意な主要疾患に対するアウトカムが表示されていない。
*得意な主要疾患に対するアウトカムが表示されていない。
*一部の項目を除いて主に急性期病院中心の審査項目である。
*一部の項目を除いて主に急性期病院中心の審査項目である。

このような点が今後の改善事項であろう。
このような点が今後の改善事項であろう。


<!--ここから全然無関係なアメリカの組織の歴史の紹介になっており、コメントアウト--><!--ミッションとしては「連続的な安全性とケアの質を、国民の医療および関連サービスを通じて提供されるサービスの改善について、医療機関のサポート能力を改善する」とある。
<!--以下は全然無関係なアメリカの組織の歴史の紹介になっており、コメントアウト--><!--ミッションとしては「連続的な安全性とケアの質を、国民の医療および関連サービスを通じて提供されるサービスの改善について、医療機関のサポート能力を改善する」とある。


この組織では、医療の質の改善に積極的であった[[メリーランド州]]を中心に、病院の標準化のシステムを提案。このシステムでは、各病院での長期治療効果を決定するために十分な治療を行ったかどうかをすべての患者について追跡調査し、治療効果がなかった場合は、病院としてその理由と将来的にどのように改善するかを調査し改善策を指摘した。いわゆる[[航空事故]]によく行われている、[[インシデント]]・[[アクシデント]]、[[ヒヤリ・ハット#医療現場におけるヒヤリ・ハット|ヒヤリ・ハット]]、[[フェイルセーフ]]などの考えがある。
この組織では、医療の質の改善に積極的であった[[メリーランド州]]を中心に、病院の標準化のシステムを提案。このシステムでは、各病院での長期治療効果を決定するために十分な治療を行ったかどうかをすべての患者について追跡調査し、治療効果がなかった場合は、病院としてその理由と将来的にどのように改善するかを調査し改善策を指摘した。いわゆる[[航空事故]]によく行われている、[[インシデント]]・[[アクシデント]]、[[ヒヤリ・ハット#医療現場におけるヒヤリ・ハット|ヒヤリ・ハット]]、[[フェイルセーフ]]などの考えがある。
88行目: 87行目:
# 結果(アウトカム)
# 結果(アウトカム)
#:提供された医療がもたらした個人や集団の変化(望ましいもの、望ましくないものを含む)であり、具体的には健康状態の変化、患者または家族が将来の健康に影響を及ぼす可能性について知識の習得や行動の変化、医療とその結果に対する患者や家族の満足度。-->
#:提供された医療がもたらした個人や集団の変化(望ましいもの、望ましくないものを含む)であり、具体的には健康状態の変化、患者または家族が将来の健康に影響を及ぼす可能性について知識の習得や行動の変化、医療とその結果に対する患者や家族の満足度。-->

== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{reflist}}
{{reflist}}
95行目: 93行目:
*[http://jcqhc.or.jp/ 財団法人日本医療機能評価機構]
*[http://jcqhc.or.jp/ 財団法人日本医療機能評価機構]
** [http://www.report.jcqhc.or.jp/index.html 病院機能評価結果の情報提供]
** [http://www.report.jcqhc.or.jp/index.html 病院機能評価結果の情報提供]
*[http://mhcc.maryland.gov/ メリーランド州ヘルスケアコミッション]
*[http://minds.jcqhc.or.jp/ 医療情報サービス Minds(マインズ)]
*[http://www.psp.jcqhc.or.jp/psp/ 認定病院患者安全推進事業]
*[http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/ 産科医療補償制度]


{{DEFAULTSORT:にほんいりようきのうひようかきこう}}
{{DEFAULTSORT:にほんいりようきのうひようかきこう}}

2011年3月20日 (日) 22:29時点における版

日本医療機能評価機構(にほんいりょうきのうひょうかきこう、JCQHC, Japan Council for Quality Health Care)は、日本の財団法人である。「医療機関の機能を学術的観点から中立的な立場で評価し、その結果明らかとなった問題点の改善を支援する第三者機関」[1]として、1995年平成7年)に設立された。

概要

それまで日本においてはほとんど実績がなかった第三者機関による医療機関の評価を行い、それらの機関が質の高い医療サービスを提供していくための支援を行うことを目的としている[2]。財団は東京都千代田区三崎町に所在し、理事長を井原哲夫(慶應義塾大学経済学部名誉教授)、副理事長を横倉義武(日本医師会副会長、福岡県医師会会長)、専務理事を河北博文河北総合病院理事長)がそれぞれ務める[3]。財団設立を主導したのは河北であり[4]、その設立までには15年を要したとしている[5]

しかしながら財団の事業開始から13年を経た2008年平成20年)の時点で審査・認定を受けているのは2,530病院であり[6]、全国の病院の約28%に留まる。その後も日本医療機能評価機構の認定を受ける病院の数は伸び悩み、新たに審査を受ける病院が減少する一方で、認定の更新を見合わせる病院も増加している[7]。この背景として、財団の審査・認定を受けることが直接病院の増収にはつながらないこと、また、受審のための作業負担が過大であることなどが指摘されている[7]。これらについては財団自身、「検討を要する課題・問題がいまだ山積しており、本事業の定着には容易ならぬものがある」[2]と率直に認めているのが現状である。

事業内容

事業内容としては、以下の事業を財団法人として運営しており、基本財産は3億4,700万円である。

  1. 病院機能評価事業
  2. 病院機能改善支援事業
  3. 評価調査者(サーベイヤー)の養成事業
  4. 医療機能評価に関する調査・研究開発事業
  5. 認定病院患者安全推進事業
  6. 産科医療補償制度運営事業
  7. EBM医療情報事業
  8. 医療事故情報収集等事業
  9. 医療機能評価に関する普及・啓発事業

運営維持のため、厚生労働省医師会健康保険組合連合会をはじめとする保健・医療・福祉に関する団体・企業、被保険者を代表する団体、一般企業、個人等から広く出資を募っている。

設立の経緯

アメリカ合衆国を中心に、イギリス(KFOA)、オーストラリア(ACHSA)などでは、医療の質の向上を目的とする病院の活動評価が古くから行われていた。日本医療機能評価機構は、アメリカの民間組織医療施設認定合同機構(JCAHO[8])の日本版として誕生した[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。

  • 1976年昭和51年) - 日本医師会内に病院委員会を設置し病院機能評価の手法について検討を開始
  • 1985年昭和60年) - 日本医師会と厚生省(当時)が合同で病院機能評価研究会を設置
  • 1987年昭和62年) - 同研究会が「病院機能評価マニュアル」を作成公表
  • 1991年平成3年) - 日本病院会が「病院機能標準化マニュアル」を発刊
  • 1993年平成5年) - 日本医師会病院機能評価委員会が具体的な第三者評価基準を盛り込んだ報告書を発表
  • 1995年平成7年) - 「財団法人日本医療機能評価機構」が発足。2年間の運用調査開始
  • 1997年平成9年) - 本審査開始

病院機能評価

Ver.5までの病院機能評価は、主に1の構造(ストラクチャー)についての評価を行うことであった。そのため審査対象病院を以下のように区分けして審査していた。

病院種別

一般病院A
地域に密着し、住民に身近な医療機関として、おおむね二次機能までの医療に対応している比較的に規模の小さな病院
一般病院B
地域が必要とする各領域の医療において基幹的・中心的な役割を担い、高次の医療にも対応しうる一定の規模を有する病院
精神病院A
精神医療を担うことを主たる役割としている病院のうち、施設・組織の規模が中規模または小規模の病院
精神病院B
精神医療を担うことを主たる役割としている病院のうち、施設・組織が一定規模以上で、多様な機能を有する病院
病院複合A
一般病院Aおよび精神病院Aの機能を併せ持つ病院で、病院総体を評価の対象とする場合
病院複合B
一般病院Bおよび精神病院Bのいずれか、または双方の機能を併せ持つ病院で、病院総体を評価の対象とする場合

その後長期療養が加わり、現在では病床数とその病床数に一般・療養・精神の占める割合で4つに分類している。

評価の方法としては、「書面審査」と「訪問審査」の二つを実施する。審査内容については、2の過程(プロセス)を含めた評価方法であるVer.6に変更となり来年度の更新・認定から実施となる。

問題点

今までは、機能評価を取るためには病院の一部の人が取り組めば認定を受けることができたのが現状であった。今回の改定により認定機関の削減と中間年の審査、審査項目の簡略化が行われISO9001のシステムに追従したように見える。 実際、機能評価取得を支援するコンサルタント会社も多く存在し、金を払えば取得できるといった弊害を減らそうという考えと受け取れる。

但し一番問題となるのは、欧米で見られる医療のアウトカムについて踏み込めていないという現実がある。機能評価取得している病院だから本当に信頼できる医療を提供できているのかはよくわからないのが現実である。たとえば

  • 利用者が最も知りたい診療内容(コモンディシーズに対する対応など)の評価がない。
  • 認定された病院名だけが公表され、認定基準に満たなかった病院名は公表されない。
  • 認定病院が評価結果の公表に同意しなければ、評価内容が公表されない。
  • 得意な主要疾患に対するアウトカムが表示されていない。
  • 一部の項目を除いて主に急性期病院中心の審査項目である。

このような点が今後の改善事項であろう。

脚注

  1. ^ 日本医療機能評価機構の紹介 医療機能評価機構ウェブサイト、平成23年3月20日閲覧
  2. ^ a b 理事長挨拶 医療機能評価機構ウェブサイト、平成23年3月20日閲覧
  3. ^ 日本医療機能評価機構 役員名簿(平成22年7月現在)
  4. ^ 教員紹介(2010年4月1日現在) 河北博文 慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科
  5. ^ 杉並人(第23回)河北博文さん 『リボン館通信』 2005年4月号
  6. ^ 2008年平成20年)8月25日現在
  7. ^ a b 「曲がり角の病院機能評価 手間、費用の割にメリット少なく非更新の病院も」 『日経メディカル』(日経BP社) 2010年9月号
  8. ^ JCAHO (The Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organization))は、1910年に設立された組織。

外部リンク