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== 治療 ==
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炎症性活動病変があればステロイド剤を投与する。副作用のためステロイドの使用が困難な場合などは、やむを得ず[[シクロスポリン]]、[[シクロフォスファミド]]、[[メソトレキセート]]などによる免疫抑制を行うこともある。<br>
炎症性活動病変があればステロイド剤を投与する。副作用のためステロイドの使用が困難な場合などは、やむを得ず[[シクロスポリン]]、[[シクロフォスファミド]]、[[メソトレキセート]]などの[[免疫抑制剤]]用いることもある。<br>
その他、血管狭窄に対して抗血小板薬や血管拡張薬、[[高血圧]]に対して[[降圧薬]]の投与などの[[対症療法]]を行う。<br>
その他、血管狭窄に対して[[抗血小板薬]]や血管拡張薬、[[高血圧]]に対して[[降圧薬]]の投与などの[[対症療法]]を行う。<br>
現在はサイズの大きな[[ステント]]の開発も進んでおり、狭窄の強い大血管への[[血管内治療]]も可能となりつつある。<br>
内科的治療に反応せず、虚血による症状がひどい時には、外科的に血行再建術を施行することもある。
内科的治療に反応せず、虚血による症状がひどい時には、外科的にバイパス術などの血行再建術を施行することもある。


== 予後 ==
== 予後 ==

2010年9月22日 (水) 10:00時点における版

大動脈炎症候群のデータ
ICD-10 M314
統計 出典:
世界の患者数
日本の患者数 約5,000
(2005年6月3日)
○○学会
日本 日本リウマチ学会
日本脈管学会
日本炎症学会
世界
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高安動脈炎
概要
診療科 免疫学, リウマチ学
分類および外部参照情報
ICD-10 M31.4
ICD-9-CM 446.7
OMIM 207600
DiseasesDB 12879
MedlinePlus 001250
eMedicine med/2232 ped/1956 neuro/361 radio/51
MeSH D013625

大動脈炎症候群(だいどうみゃくえんしょうこうぐん、aortitis syndrome)は大動脈炎症が起こる自己免疫疾患で、血管炎のひとつ。発見者を病名につける欧米では高安動脈炎(たかやすどうみゃくえん、Takayasu's arteritis;TA)という名称が通常であり、発見者の母国である日本においてその名前をあまり用いないことは皮肉である。脈なし病(みゃくなしびょう、pulseless disease)ともいう。特定疾患に定められている。

疫学

日本に最も多く患者がおり、またインド中国などのアジア諸国にも患者が多い。一方、他の地域では比較して患者数が少ない。女性に多い疾患で、男女比は1:10である。発症年齢は20代が最も多く、次いで30代や40代が多い。

症状

合併症

検査

  • 血液検査
    赤沈亢進、CRP陽性、白血球増加、凝固能亢進、高ガンマグロブリン血症などが見られる。
  • 血管造影
    カテーテルを動脈内に挿入し、造影剤を注入して検査を行う。大・中動脈の狭窄、閉塞、拡張、動脈瘤や石灰化が見られることもある。検査と同時に血管内治療を行うことができるメリットがある。
  • CTMRI
    動脈造影は本症の診断にきわめて重要ではあるものの、動脈造影にみられるような血管の狭窄がみられるようになってしまうともはや疾患は進行している事を示しており、そこから治療をおこなっても狭窄が治るわけではない。近年の画像診断技術の発達により、本症が血管の狭窄を来たす以前に炎症性の血管壁肥厚をきたすことが、CT、MRIで早期に検出できる様になってきた。
  • CTアンジオグラフィー、MRアンジオグラフィー
    近年の画像診断とコンピュータの融合は目覚しく、その最たるものがCT情報を三次元的に再構成した3DCTである。これを用いて大動脈を三次元的に再構築する事により、動脈造影のメリットとCTのメリットの双方が得られ、本症の診断に当たって大変有用である。また従来よりMRA(MR angiography)も施行されている。MRIでは血管肥厚のみならず、浮腫性変化から炎症所見を得ることができる。
  • PET-CT
    通常のPETはあまり役立たないのではないかと思われる。PET-CTでは炎症を起こしている大血管壁に活動性の炎症所見をみることができると考えられているが、まだ実際の経験数が少なくはっきりしたことは言えない。

診断

診断基準と重症度分類の詳細は[1](PDFファイル)を参照のこと。

診断基準

動脈造影で確定診断を行う。大動脈とその第一次分枝に閉塞性または拡張性病変が多発していれば当疾患を疑い、炎症反応があれば確定する。その他、自覚症状や検査所見が合致し、鑑別疾患が除外できるものも当疾患であるとする。

  • 鑑別疾患
動脈硬化症、炎症性腹部大動脈瘤、血管ベーチェット病梅毒性中膜炎、巨細胞性動脈炎、先天性血管異常、細菌性動脈瘤、全身性硬化症バージャー病

重症度分類

治療せず経過観察のみあるいはステロイドを除く治療を短期間加える程度の段階をI度とし、治療の難度や合併症によってV度までの5段階に分類する。

治療

炎症性活動病変があればステロイド剤を投与する。副作用のためステロイドの使用が困難な場合などは、やむを得ずシクロスポリンシクロフォスファミドメソトレキセートなどの免疫抑制剤を用いることもある。
その他、血管狭窄に対して抗血小板薬や血管拡張薬、高血圧に対して降圧薬の投与などの対症療法を行う。
現在はサイズの大きなステントの開発も進んでおり、狭窄の強い大血管への血管内治療も可能となりつつある。
内科的治療に反応せず、虚血による症状がひどい時には、外科的にバイパス術などの血行再建術を施行することもある。

予後

生命予後は良好で、5年生存率は約90%、10年生存率は約80%である。死因は弁膜症から誘発される心不全、高血圧、脳出血など。

診療科

アレルギー科、膠原病科、循環器内科など

歴史

1908年高安右人によって初めて報告される。

関連項目

外部リンク