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[[画像:Pistons by MAHLE.jpg|thumb|200px|right|レシプロエンジン用ピストン]]
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[[画像:Piston and connecting rod.jpg|thumb|200px|right|原動機のピストンとコネクティングロッド]]
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燃焼室(シリンダー)の断面は一般的に円形であるため、ピストンの断面も円形である。効率の良い燃焼(火炎伝播)を得てかつ、バルブとの干渉を避けるために、燃焼室の形状は複雑化している。そのため、燃焼室の底面を兼ねるピストン上面も凹凸を持つことが多い(バルブリセス)。高い[[圧縮比]]を得るために、上面に大きく凸形状を与えられるたり、逆に圧縮比を低く抑えるために凹形状になっているものもある。
燃焼室(シリンダー)の断面は一般的に円形であるため、ピストンの断面も円形である。ガソリンエンジンの場合、効率の良い燃焼(火炎伝播)を得てかつ、バルブとの干渉を避けるために、燃焼室の形状は複雑化している。そのため、燃焼室の底面を兼ねるピストン上面も凹凸を持つことが多い(バルブリセス)。高い[[圧縮比]]を得るために、上面に大きく凸形状を与えられるたり、逆に圧縮比を低く抑えるために凹形状になっているものもある。なお、ディーゼルエンジンの場合は、ピストン頭頂部を大きく窪ませて燃焼室を形成している。
ピストンの素材には[[鉄]]、[[アルミニウム]]合金、[[チタン]]合金などが用いられて来たが、生産性とコストを重視する量産品の場合、現在ではアルミ[[鋳造]]品が一般的である。燃焼時の衝撃に耐える強度を確保するため、レースエンジンやチューニングエンジンではアルミ[[鍛造]]により製作されることが多い。
ピストンの素材には[[鉄]]、[[アルミニウム]]合金、[[チタン]]合金などが用いられて来たが、生産性とコストを重視する量産品の場合、現在ではアルミ[[鋳造]]品<ref>日本では一般にAC8A(JIS規格)などの材料がよく使用されるが、燃費規制の強化などに伴い厳しくなる使用環境に応え、各ピストンメーカーで独自の高強度材が開発され、使用されている。</ref>が一般的である。燃焼時の衝撃に耐える強度を確保するため、レースエンジンやチューニングエンジンではアルミ[[鍛造]]により製作されることが多い<ref>一部の量産エンジンでも使用されている。</ref>


シリンダー内の気体、液体がピストン側面から漏れると効率が落ち、危険でもある。しかしながらシリンダーとピストンの断面の形状を全く同一にすると、摩擦による運動エネルギーの損失が生じる。そこで、ピストンの周囲に鉢巻のような構造である[[ピストンリング]]を付ける。自由状態ではシリンダ径よりも大きく出来ており、シリンダ内では外に広がろうとする張力を発生することでピストン側面の吹き抜けを抑えている。なお、ピストンリングは2 - 3本付けることが多い。
シリンダー内の気体、液体がピストン側面から漏れると効率が落ち、危険でもある。しかしながらシリンダーとピストンの断面の形状を全く同一にすると、摩擦による運動エネルギーの損失が生じる。そこで、ピストンの周囲に鉢巻のような構造である[[ピストンリング]]を付ける。自由状態ではシリンダ径よりも大きく出来ており、シリンダ内では外に広がろうとする張力を発生することでピストン側面の吹き抜けを抑えている。なお、ピストンリングは2 - 3本付けることが多い。

2009年10月9日 (金) 05:07時点における版

ピストン(Piston)とは、機械部品の一種。中空の円筒形の部品の内側にはまりこむ円筒形のものの一般的な名称。ガソリンエンジンディーゼルエンジンなどの内燃機関や、蒸気機関スターリングエンジンなどの外燃機関に使われるほか、注射器の内筒や管楽器の音程を決めるバルブ部分にも使われている。

以下、本稿ではレシプロエンジンのピストンについて述べる。

レシプロエンジンのピストン

レシプロエンジン用ピストン
原動機のピストンとコネクティングロッド

燃焼室(シリンダー)の断面は一般的に円形であるため、ピストンの断面も円形である。ガソリンエンジンの場合、効率の良い燃焼(火炎伝播)を得てかつ、バルブとの干渉を避けるために、燃焼室の形状は複雑化している。そのため、燃焼室の底面を兼ねるピストン上面も凹凸を持つことが多い(バルブリセス)。高い圧縮比を得るために、上面に大きく凸形状を与えられるたり、逆に圧縮比を低く抑えるために凹形状になっているものもある。なお、ディーゼルエンジンの場合は、ピストン頭頂部を大きく窪ませて燃焼室を形成している。 ピストンの素材にはアルミニウム合金、チタン合金などが用いられて来たが、生産性とコストを重視する量産品の場合、現在ではアルミ鋳造[1]が一般的である。燃焼時の衝撃に耐える強度を確保するため、レースエンジンやチューニングエンジンではアルミ鍛造により製作されることが多い[2]

シリンダー内の気体、液体がピストン側面から漏れると効率が落ち、危険でもある。しかしながらシリンダーとピストンの断面の形状を全く同一にすると、摩擦による運動エネルギーの損失が生じる。そこで、ピストンの周囲に鉢巻のような構造であるピストンリングを付ける。自由状態ではシリンダ径よりも大きく出来ており、シリンダ内では外に広がろうとする張力を発生することでピストン側面の吹き抜けを抑えている。なお、ピストンリングは2 - 3本付けることが多い。

ピストン下部にはその形状から、スカートと呼ばれる部位がある。スカートは、ピストンがシリンダー内部で傾倒するのを防止する目的でつけられる。以前はピストン全周にスカートがあったが、近年ではピストンが傾く方向、すなわちピストンピンに直行する方向にのみスカートが設けられるのが普通である。また、その長さも短くなってきている(スリッパーピストン)。 スカートの形状は一見するとただの円筒のように見えるが、温間時に真円になるよう水平断面形状は楕円形状をしており、またスムーズな摺動や首振りによる打音を抑えるため、横から見ると中央付近が膨らんだ樽型をしている。 一部レーシングエンジンでは、スカートをほぼ省略し、摩擦力を軽減しているものもある。 近年、スカート部にコーティングを施し、摩擦力を低減している物もある。コーティングの組成はエンジン性能を直接左右する為、多くのメーカーで秘密とされるが、主にモリブデンを含むテフロン樹脂であると言われている。

運動の変換

ピストンはシリンダ内の混合気の燃焼により、ガス膨張圧を受け止め、シリンダの体積を増やす方向に移動する。このような直線的な運動をそのまま動力源として用いることは少なく、通常はコネクティングロッド(コンロッド)と呼ばれる棒状の部品を介して回転運動可能なクランクシャフトに接続する。

このような構成を採ることで、往復運動をタイヤプロペラスクリューなどの回転運動に変換できる。発電機に接続し、機械的エネルギーを電気エネルギーに変換する場合もある。

この「ピストン=クランク機構」のピストン位置の時間変化曲線は、サインカーブを描かない(上死点側の動きがより急になる)。これがエンジンの振動を悪化させる場合もある。

なお、混合気の吸気と圧縮、燃焼ガスの排気サイクルでは、クランクシャフト側がピストンを動かしている。

ボアとストローク

ピストンの直径と往復の距離の比からショートストローク=高回転と思い込む風潮がかつて存在したが、最高回転における平均ピストンスピード9m/秒の機械的強度限界を機械工作精度と材質の向上により克服した現在においては、

  • ロングストローク=低フリクション
  • 大直径燃焼室=燃焼効率低下

などの実験結果もあり、乗用車用エンジンでは「高回転エンジンなのにロングストローク」が最近の流行になりつつある。

関連項目

外部リンク

  1. ^ 日本では一般にAC8A(JIS規格)などの材料がよく使用されるが、燃費規制の強化などに伴い厳しくなる使用環境に応え、各ピストンメーカーで独自の高強度材が開発され、使用されている。
  2. ^ 一部の量産エンジンでも使用されている。