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{{恒星 基本
{{恒星 基本
|名称 = はくちょう座61番星 A/B
|名称 = はくちょう座61番星 A / B
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{{恒星 終了}}
'''はくちょう座61番星''' (61 Cygni) は[[はくちょう座]]にある[[恒星]]。観測機器を持たない観測者にとってはさほど目をひく恒星ではないが、その[[固有運動]]の大きさのために[[天文学者]]らに注目されてきた。[[連星]]系である。

'''はくちょう座61番星'''(61 Cygni)は[[はくちょう座]]にある[[恒星]]。観測機器を持たない観測者にとってはさほど目をひく恒星ではないが、その[[固有運動]]の大きさのために[[天文学者]]らに注目されてきた。[[連星]]系である。


ちなみに、まぎらわしいが[[はくちょう座16番星]]という[[太陽]]と同じタイプの恒星もある。
ちなみに、まぎらわしいが[[はくちょう座16番星]]という[[太陽]]と同じタイプの恒星もある。
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はくちょう座61番星の[[固有運動]]は非常に大きく、地球から見るとほんの150年で[[満月]]の直径分の距離を移動するほどである。
はくちょう座61番星の[[固有運動]]は非常に大きく、地球から見るとほんの150年で[[満月]]の直径分の距離を移動するほどである。


[[年周視差]]を用いて恒星までの距離を測定する方法が考案されると、当時知られている恒星のうち最大の固有運動をもつはくちょう座61番星は格好のターゲットとされた。そのため、はくちょう座61番星は(太陽を除いて)史上はじめて地球との距離が確定された恒星となった。この業績は、[[1830年]][[フリードリヒ・ヴィルヘルム・ベッセル]]によって達成され、現在用いられている11.4[[光年]]という数値に非常に近い値を割り出したのである。
[[年周視差]]を用いて恒星までの距離を測定する方法が考案されると、当時知られている恒星のうち最大の固有運動をもつはくちょう座61番星は格好のターゲットとされた。そのため、はくちょう座61番星は(太陽を除いて)史上はじめて地球との距離が確定された恒星となった。この業績は、[[1830年]][[フリードリヒ・ヴィルヘルム・ベッセル]]によって達成され、現在用いられている11.4[[光年]]という数値に非常に近い値を割り出したのである(このことから、彼に因んだ'''ベッセル星'''という名でも呼ばれる)


その数年後、[[グルームブリッジ1830]]というさらに大きな固有運動をもつ恒星が発見された。しかしながら肉眼で見える恒星という条件であれば、はくちょう座61番星は最も大きい固有運動をもつといえる。
その数年後、[[グルームブリッジ1830]]というさらに大きな固有運動をもつ恒星が発見された。しかしながら肉眼で見える恒星という条件であれば、はくちょう座61番星は最も大きい固有運動をもつといえる。
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== 連星系 ==
== 連星系 ==
肉眼では識別できないが、はくちょう座61番星は両方[[スペクトル分類|K型]]の[[主系列星]]からなる[[連星]]系であり、それぞれはくちょう座61番星A、Bと符号を付けられている。明るい方の'''はくちょう座61番星A'''は5.2等星([[等級 (天文)|視等級]])、暗い方の'''はくちょう座61番星B'''は6.1等星である。最も主星はりゅう座BY型の回転[[変光星]]であり、伴星は[[閃光星]]である(し主星・伴星とも変光範囲はごくわずかである)。これらの星は共通の重心を653.2年かけて一周する。
肉眼では識別できないが、はくちょう座61番星は両方とも[[スペクトル分類|K型]]の[[主系列星]]からなる[[連星]]系であり、それぞれはくちょう座61番星A、Bと符号を付けられている。明るい方の'''はくちょう座61番星A'''は5.2等星([[等級 (天文)|視等級]])、暗い方の'''はくちょう座61番星B'''は6.1等星である。主星はりゅう座BY型の回転[[変光星]]であり、伴星は[[閃光星]]である(ただし主星・伴星とも変光範囲はごくわずかである)。これらの星は共通の重心を653.2年かけて一周する。


7&times;50の[[双眼鏡]]を使うと、[[デネブ]]の両眼視野2つ分南東に61番星が観測できる。より大きな双眼鏡か[[望遠鏡]]を用いると、連星を分解して観測することができる。
7&times;50の[[双眼鏡]]を使うと、[[デネブ]]の両眼視野2つ分南東に61番星が観測できる。より大きな双眼鏡か[[望遠鏡]]を用いると、連星を分解して観測することができる。


=== 惑星の可能性 ===
=== 惑星の可能性 ===
はくちょう座61番星Bには[[惑星]]もしくは伴星として[[褐色矮星]]が存在するという説があったが、これは精度が極めて不正確な時代のアストロメリ法によるものであり、最新の[[ドップラーシフト]]や[[トランジット法]]による観測では現在のところ確認されていない。
はくちょう座61番星Bには[[惑星]]もしくは伴星として[[褐色矮星]]が存在するという説があったが、これは精度が極めて不正確な時代の[[太陽系外惑星#位置天文学法|アストロメリ法]]による観測に基くものであり、[[太陽系外惑星#視線速度法|ドップラーシフト]]や[[太陽系外惑星#食検出法|トランジット法]]による観測では確認されていない。


== フィクション ==
== フィクション ==
*[[1970年]]、[[毎日新聞社]]より、[[瀬川昌男]]の[[サイエンス・フィクション|SF小説]]『白鳥座61番星』が出版された。
* [[1970年]]、[[毎日新聞社]]より、[[瀬川昌男]]の[[サイエンス・フィクション|SF小説]]『白鳥座61番星』が出版された。
*アメリカのSFテレビドラマ/映画『[[スタートレック]]』シリーズでは、はくちょう座61番星に[[テラライト人]]の母星[[テラー]]があるという設定がファンに支持されている。
* アメリカのSFテレビドラマ/映画『[[スタートレック]]』シリーズでは、はくちょう座61番星に[[テラライト人]]の母星[[テラー]]があるという設定がファンに支持されている。
*イギリスのSFテレビドラマ『[[ブレイクス7]]』"[[:en:Blake's 7|Blake's 7]]"では、地球近傍の恒星のうち、はくちょう座61番星は人類にとってウィルスで攻撃してくるほど敵対的な異星人の本拠地であるために探索されていないという設定である。
* イギリスのSFテレビドラマ『[[ブレイクス7]]』"[[:en:Blake's 7|Blake's 7]]" では、地球近傍の恒星のうち、はくちょう座61番星は人類にとってウィルスで攻撃してくるほど敵対的な異星人の本拠地であるために探索されていないという設定である。
*[[アイザック・アシモフ]]の『[[ファウンデーション (小説)|ファウンデーション]]』シリーズでは、はくちょう座61番星にドーウィン卿が仮定した人類の起源とされる惑星の一つがある。
* [[アイザック・アシモフ]]の『[[ファウンデーション (小説)|ファウンデーション]]』シリーズでは、はくちょう座61番星にドーウィン卿が仮定した人類の起源とされる惑星の一つがある。
*[[アレステア・レナルズ]](アラステア・レイノルズ)の作品『啓示空間』<!-- "Revelation Space" -->で、はくちょう座61番星は惑星スカイズ・エッジ([[:en:Sky's Edge|Sky's Edge]])にとっての太陽とされている。
* [[アレステア・レナルズ]]の作品『啓示空間』<!-- "Revelation Space" -->で、はくちょう座61番星は惑星スカイズ・エッジ ([[:en:Sky's Edge|Sky's Edge]]) にとっての太陽とされている。
*[[ハル・クレメント]]の短編小説には、はくちょう座61番星を公転するメスクリン([[:en:Mesklin|Mesklin]])という惑星が登場する。
* [[ハル・クレメント]]の小説『[[重力の使命]]』には、はくちょう座61番星を公転するメスクリン ([[:en:Mesklin|Mesklin]]) という惑星が登場する。
*[[クリフォード・D・シマック]]の小説『再生の時』では、はくちょう座61番星はその惑星にたどり着けない謎の恒星系として描かれている。
* [[クリフォード・D・シマック]]の小説『再生の時』では、はくちょう座61番星はその惑星にたどり着けない謎の恒星系として描かれている。
*日本のSF[[テレビドラマ]]『[[帰ってきたウルトラマン]]』第45話「郷秀樹を暗殺せよ!」に[[帰ってきたウルトラマンの登場怪獣#白鳥座61番星人 エリカ|白鳥座61番星人エリカ]]が登場。
* 日本のSF[[テレビドラマ]]『[[帰ってきたウルトラマン]]』第45話「郷秀樹を暗殺せよ!」に[[帰ってきたウルトラマンの登場怪獣#白鳥座61番星人 エリカ|白鳥座61番星人エリカ]]が登場した


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
*[[近い恒星の一覧]]
* [[近い恒星の一覧]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
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[[Category:連星]]
[[Category:連星]]
[[Category:変光星]]
[[Category:変光星]]
[[Category:はくちょう座|61はんせい]]
[[Category:恒星]]
[[Category:はくちょう座]]
[[Category:天文学に関する記事]]
[[Category:天文学に関する記事]]
[[Category:光世紀世界|0160]]


[[ca:61 Cygni]]
[[ca:61 Cygni]]

2008年12月21日 (日) 14:37時点における版

はくちょう座61番星 (61 Cygni) ははくちょう座にある恒星。観測機器を持たない観測者にとってはさほど目をひく恒星ではないが、その固有運動の大きさのために天文学者らに注目されてきた。連星系である。

ちなみに、まぎらわしいがはくちょう座16番星という太陽と同じタイプの恒星もある。

概要

はくちょう座61番星の固有運動は非常に大きく、地球から見るとほんの150年で満月の直径分の距離を移動するほどである。

年周視差を用いて恒星までの距離を測定する方法が考案されると、当時知られている恒星のうち最大の固有運動をもつはくちょう座61番星は格好のターゲットとされた。そのため、はくちょう座61番星は(太陽を除いて)史上はじめて地球との距離が確定された恒星となった。この業績は、1830年フリードリヒ・ヴィルヘルム・ベッセルによって達成され、現在用いられている11.4光年という数値に非常に近い値を割り出したのである(このことから、彼に因んだベッセル星という名でも呼ばれる)。

その数年後、グルームブリッジ1830というさらに大きな固有運動をもつ恒星が発見された。しかしながら肉眼で見える恒星という条件であれば、はくちょう座61番星は最も大きい固有運動をもつといえる。

以上のような特徴から、一般の天体観測者にとってこの星は特に面白みがあるとはいえない。

連星系

肉眼では識別できないが、はくちょう座61番星は両方ともK型主系列星からなる連星系であり、それぞれはくちょう座61番星A、Bと符号を付けられている。明るい方のはくちょう座61番星Aは5.2等星(視等級)、暗い方のはくちょう座61番星Bは6.1等星である。主星はりゅう座BY型の回転変光星であり、伴星は閃光星である(ただし主星・伴星とも変光範囲はごくわずかである)。これらの星は共通の重心を653.2年かけて一周する。

7×50の双眼鏡を使うと、デネブの両眼視野2つ分南東に61番星が観測できる。より大きな双眼鏡か望遠鏡を用いると、連星を分解して観測することができる。

惑星の可能性

はくちょう座61番星Bには惑星もしくは伴星として褐色矮星が存在するという説があったが、これは精度が極めて不正確な時代のアストロメリ法による観測に基くものであり、ドップラーシフト法トランジット法による観測では確認されていない。

フィクション

関連項目

外部リンク