蔡鍔

蔡 鍔（さい がく、簡体字：蔡锷、繁体字：蔡鍔、ピンイン：Cài è、1882年12月19日 - 1916年11月8日）は、中国の清代末期から中華民国時代にかけての軍人、政治家。原名は艮寅、字は松坡。湖南省宝慶県（現在の邵陽市）出身。中華民国の初代雲南都督。

事跡

清末の事跡

幼時から私塾で学び、光緒24年（1898年）に長沙の時務学堂に入学し、梁啓超・唐才常に師事し、変法思想の影響を受けた。光緒25年（1899年）、日本に留学。翌光緒26年（1900年）、唐に従って帰国し、自立軍運動に参加した。失敗後、名を鍔と改め、再び日本に赴いた。日本では成城学校と陸軍士官学校で軍事学を学ぶ。

光緒30年（1904年）、卒業して帰国し、翌光緒31年（1905年）、湖南教練処幇弁、武備・兵目両学堂の教官を務める。同年8月、広西省へ転勤し、新軍総参謀官兼総教練官等を務めた。光緒33年（1907年）、広西陸軍小学を創始して総弁となり、さらに広西兵備処総弁となった。光緒34年（1908年）4月、広西新練常備軍第1標標統に、宣統2年（1910年）には広西混成協協統に任命された。

以上のように、蔡鍔は広西省で軍事の要職に就き、軍近代化の改革にも積極的だったが、広西省の革命派からは蔡鍔は清朝擁護と目されたようである。この年の10月に革命派主導の蔡鍔追放運動が始まり、蔡鍔は雲南省へ異動することになった。しかし実際には、蔡鍔は黄興との間で交流を持ち、革命派団体の組織に密かに従事するなど、広西省赴任期間でも明確に革命派の姿勢を保っている。その一方で、広西省にある間に、蔡鍔は中国同盟会に入会したとされるが、否定する説もある。

辛亥革命から護国戦争へ

宣統3年（1911年）7月、蔡鍔は雲南省で新軍第19鎮第37協協統に任命される。同年10月10日、武昌起義（辛亥革命）が勃発すると、蔡鍔は雲南省の革命派である李根源、唐継尭とともに、これに呼応して挙兵する計画を立てる。10月30日、蔡鍔らは昆明で挙兵し、雲貴総督李経羲を捕虜として雲南省を掌握した（重九起義）。11月1日、「大中華国雲南軍都督府」が設立されると、蔡鍔は雲南都督に推戴された。蔡鍔は直ちに、雲南の軍事・政治の改革に取り組む。その清廉にして果断な政治姿勢により、省政の面目を一新したため、省を混乱させることなく、人心掌握に成功した。

民国2年（1913年）5月、蔡鍔は梁啓超らが率いる進歩党の名誉理事となったが、まもなく辞任している。ただし、これ以後も、蔡鍔と梁啓超との関係は極めて密接である。同年7月、二次革命（第二革命）が勃発すると、蔡鍔は袁世凱を支持した。しかし、袁は地方勢力の拡大を恐れ、子飼いでない地方都督を北京に呼び寄せ、籠絡と監視を行うようになった。同年10月、蔡鍔も入京し、唐継尭が後任の雲南都督となった。

民国4年（1915年）11月、袁世凱の帝政に反対した蔡鍔は、梁啓超の援助で北京を脱出して雲南に戻った。12月25日、唐継尭らとともに雲南省の独立を宣言し、護国軍を組織し、護国軍第1軍総司令となった（第2軍総司令李烈鈞、第3軍総司令唐継尭）。こうして護国戦争（第三革命）が始まった。民国5年（1916年）春、四川省の瀘州・納渓（現在の瀘州市納渓区）一帯で2万の軍勢で8万の北京政府軍を撃破し、さらに、広西省の陸栄廷も独立を宣言したことにより、袁世凱による帝政の取消しを成功させた。

袁世凱死去後の6月に四川督軍兼省長となった。しかし結核に冒され、日本に行き、福岡で治療を受けていたが、11月8日に死去した。享年35（満33歳）。民国6年（1917年）4月12日、湖南省の岳麓山で国葬が執り行われた。

経歴

党・団体

• 光緒32年（1906年）：中国同盟会加入?
• 民国1年（1912年）：1月27日、統一共和党総幹事
  • 8月、統一共和党を離党
• 民国2年（1913年）：5月29日、進歩党名誉理事兼湖南支部長。まもなく離党

政府

• 宣統3年（1911年）：大中華国雲南軍都督府都督
• 民国1年（1912年）：中華民国雲南省都督
• 民国2年（1913年）：10月、陸軍部編訳処副総裁
  • 11月5日、行政会議議員
• 民国3年（1914年）：5月1日、参政院参政
  • 6月、昭威将軍
  • 7月、陸海軍大元帥統率弁事処弁事員
  • 12月、全国経界局督弁
• 民国5年（1916年）：5月8日、護国軍軍務院撫軍
  • 6月24日、〔北京政府〕益武将軍
  • 7月6日、〔北京政府〕四川督軍兼省長（同年8月7日、辞任）

軍

• 光緒30年（1904年）：12月、江西続備左軍随営学堂監督→江西材官学堂監督
• 光緒31年（1905年）：2月、湖南教練処幇弁兼武備・弁目学堂教官
  • 8月、広西新軍総参謀官兼教練官兼随営学堂総理官　
  • 9月、兼巡撫部院総参謀官
  • 10月、兼広西測絵学堂堂長
• 光緒33年（1907年）：2月、兼広西陸軍小学総弁
  • 3月、兼広西兵備処総弁
• 光緒34年（1908年）：4月、広西新練常備軍第1標標統
• 宣統1年（1909年）：2月、広西竜州講武堂総弁→同監督
• 宣統2年（1910年）：7月、広西混成協協統
• 宣統3年（1911年）：7月、第19鎮第37協協統
• 民国4年（1915年）：12月25日、護国軍第1軍総司令

参考文献

• 謝本書『討袁名将-蔡鍔』蘭州大学出版社、1997年
• 劉壽林ほか編『民国職官年表』中華書局、1995年

先代 -

雲南都督 1912 - 1913

次代 唐継尭

先代 周駿

四川将軍 1916

次代 羅佩金