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2008年10月26日 (日) 19:19時点における版

ミスラ (Miθra)とはイラン神話に登場し、英雄神として西アジアからギリシアローマに至る広い範囲で崇められた神。インド神話の神ミトラ (मित्र [mitra])と起源を同じくする、インド・イラン共通時代にまで遡る古い神格である。その名は本来「契約」を意味する。

本項では、イランでのミスラの他、インドのミトラやギリシア・ローマのミトラース(ミトラス)についても説明する。

インド神話のミトラ

インド神話では、契約によって結ばれた「盟友」をも意味し、友情・友愛の守護神とされるようになった。また、インドラ神など他の神格の役割も併せ持った。リグ・ヴェーダなどではヴァルナとは表裏一体を成すとされる。この場合ミトラが契約を祝福し、ヴァルナが契約の履行を監視し、契約に背いた者には罰を与えるという。

後世のインド神話ではあまり活躍しない。アディティの産んだ十二人の太陽神(アーディティヤ)の一人で、毎年6月の一カ月間、太陽戦車に乗って天空を駆けるという。

西アジア、ゾロアスター教のミスラ

ミスラ(右側)

ミスラは、司法神であり、光明神であり、闇を打ち払う戦士・軍神であり、牧畜の守護神としても崇められた。「ミスラ」という語形はアヴェスター語形で、パフラヴィー語ではミフル (Mihr)、ソグド語ではミール (Mīr)、バクトリア語ミイロ(Miiro)という。古くはアフラ・マズダーと表裏一体を成す天則の神だったが、ゾロアスター教に於いてアフラ・マズダーが絶対神の地位に高められると、ミスラは格下の中級神ヤザタの地位に落とされた。中世の神学では特に司法神としての性格が強調され、千の耳と万の目を以て世界を監視するとされる。また、死後の裁判を司るという。

このようにゾロアスター教の正統神学では軽視されがちだが、民間での信仰は盛んで、ミスラを主神とする教団すら有った。

また、マニ教においては光明神としての性格が強調され、太陽と同一視された結果、ソグド語で日曜日の事もミールと呼ぶようになった。

日本

この曜日名としての「ミール」は宿曜道とともに平安時代の日本にも伝えられ、当時の具註暦では、日曜日に「密」「みつ」「みち」(いずれもミールの漢字での音写)などと朱書きされていた。

他宗教への影響

ミスラ信仰はギリシャやローマにも取り入れられた。ギリシャ語形・ラテン語形でミトラース (Μίθρας [Mithras])と呼ばれ、太陽神、英雄神として崇められた。

その信仰はミトラス教と呼ばれる密儀宗教となって、1世紀後半から4世紀半ばまで隆盛を極めたが、キリスト教の普及とともに衰退した。

また弥勒菩薩(マイトレーヤ)は、名の語源を同じくする事から、ミスラを起源とする説も唱えられている。これによると、弥勒菩薩の救世主的性格はミスラから受け継いだものだという。