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これらは、コンピュータのソフトウェアが実際に動いているのを目で見ないと、その良し悪しが判断付き難い部分に絡んでの宣伝活動であるが、こと1990年代以降に[[CD-ROM]]など大容量のデータを安価に複製する[[電子媒体|記録メディア]]の発達や、2000年代以降に[[ブロードバンドインターネット接続]]のような高速[[インターネット]]接続回線の普及による大容量データの[[ダウンロード]]が可能な環境が整備されたことにもちなみ、大手から中小のソフトウェアメーカーまでもが体験版ソフトウェアを行っている。 |
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製作中の'''[[ベータ版]]'''(βばん)として、実際に販売される内容とは異なる状態で頒布されるケースも多く見られる。 |
製作中の'''[[ベータ版]]'''(βばん)として、実際に販売される内容とは異なる状態で頒布されるケースも多く見られる。この際、一定の動作を行うものが提供されるが、製品としては不完全ないし未完成であるため、これによってコンピュータが動作不良を起こすなどのトラブルに見舞われたり、或いはその不都合に対するサポートも不十分である場合を含む。 |
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体験版のほとんどは無料であるが、これに製品版と比べて安価な料金(媒体の料金や郵送費は含まない)を課す場合も見られる(有料体験版)。 |
体験版のほとんどは無料であるが、これに製品版と比べて安価な料金(媒体の料金や郵送費は含まない)を課す場合も見られる(有料体験版)。こうした手法は、開発のための資金を得つつ、作品の質を安定させる為に行われる。こちらはユーザーに金銭を求めつつ不完全な製品を提供しているため、これに対して批判するユーザーもいないではないが、その不都合が存在し得る辺りの了解が購入希望者に求められるなど、製品版と比較して非対称の[[ユーザビリティ]]が特徴的である。 |
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ちなみに、製品版として一度世に送り出されたものであっても製品の品質が悪く[[パッチ]]による修正が続くなどした場合、「ユーザに金を払わせて[[バグ]]探しをさせるソフト」という皮肉を込め、ユーザーが「有料体験版」と揶揄したりすることもある。 |
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1990年代までは体験版を記録した[[コンパクトディスク|CD]]等の記録媒体を[[雑誌]]の付録としてや店頭で配布する事が多かったが、[[2000年]]以降、ブロードバンド通信回線の普及に伴い、メーカーの[[ウェブサイト]]を介し、ダウンロードする形で配布されることが多くなった。また、[[Adobe Flash]]などを使って[[ゲームブック]]のように擬似的に内容を再現することで体験版としている作品もある(『[[逆転裁判]]』シリーズなど)。 |
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[[1988年]]より[[コンパイル (企業)|コンパイル]]が販売していた『[[ディスクステーション]]』(雑誌のようにプログラムメディアとなる[[フロッピーディスク]]入りのパッケージを刊行した)では、フロッピーディスクの空き容量に便乗する形で他社ソフトウェアメーカーの体験版ソフトウェアを受け入れていた。これらは実際には遊べない店頭用オートデモ(プレイヤーの操作が無くても自動操作で画面が進む)であったり、ゲームの肝となる技術を利用したミニゲームであったりもしたが、概ねこの[[8ビットパソコン]]([[8ビット御三家]]参照)の時代から、体験版という概念自体はあった。ただしこの頃は「プレイアブルデモ」(遊べるデモ用プログラム)など、あまり明確な呼称は存在しなかった。 |
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== 家庭用ゲーム機における体験版 == |
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[[1990年代]]以前は製造 |
[[1990年代]]以前は製造コストのかかる[[ロムカセット]]方式のハードウェアが主流であったため、カセット自体の単価が高く、これを体験版用のソフトウェアメディアとすることは現実的ではなかった。このためゲーム販売店の店頭やイベントでの先行製造版によるデモプレイやロケテストが主で、個人向けに体験版の配布が行われることはほとんどなかった。[[任天堂]]が[[スーパーファミコン]]向けの[[サテラビュー]]を用いて、メディアを伴わないデータのみの体験版を配布したことがあったものの、[[衛星放送]]に加入している必要があるなど、データ配信を受信するシステム自体が高価で導入のハードルが高く、普及は進まなかった。 |
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[[1990年代]]に入り、ソフトウェアの記録メディアにCD-ROMを採用するハードウェア([[PCエンジン]]・[[プレイステーション]]・[[セガサターン]]など)が普及してくると、その製造コストの低さを生かし積極的な体験版配布がなされる様になった。いち早くCD-ROMを導入したPCエンジンでは『[[スナッチャー]]』で「スナッチャーPilotDisk」と題したCDシングルサイズのCD-ROMが[[1992年]]8月7日に1,500円で一般のゲーム販売店を通して販売されている。 |
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これ以降では、店頭やゲームイベントでの自由配布のほか、雑誌の付録として体験版ディスクが封入されるというケースが一般的だったが、[[スクウェア (ゲーム会社)|旧スクウェア]](現・[[スクウェア・エニックス]])は開発中の大型タイトルの体験版を新作ゲームソフトに[[バンドル]]する手法を取り入れた。『[[ファイナルファンタジーVII]]』の体験版が付属した『[[トバルNo.1]]』、『[[ファイナルファンタジーVIII]]』の体験版が付属した『[[ブレイヴフェンサー 武蔵伝]]』などがヒット作として挙げられるが、これらはソフト本体が体験版の[[おまけ]]のような扱いをされてしまった。 |
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[[2000年代]]以降、携帯ゲーム機の内蔵メモリの容量増加により、店頭やイベント会場においてゲーム機への一時的な体験版のダウンロードを行えるようになった。[[ゲームボーイアドバンス]]向けの[[月刊任天堂店頭デモ]]がその先駆けであるが、2004年末以降は[[無線LAN]]を搭載した携帯ゲーム機([[ニンテンドーDS]]、[[プレイステーション・ポータブル]])向けに店頭端末を用いて体験版を配布するサービスが行われている。(→[[DSステーション]]、[[プレイステーションスポット]]) |
[[2000年代]]以降、携帯ゲーム機の内蔵メモリの容量増加により、店頭やイベント会場においてゲーム機への一時的な体験版のダウンロードを行えるようになった。[[ゲームボーイアドバンス]]向けの[[月刊任天堂店頭デモ]]がその先駆けであるが、2004年末以降は[[無線LAN]]を搭載した携帯ゲーム機([[ニンテンドーDS]]、[[プレイステーション・ポータブル]])向けに店頭端末を用いて体験版を配布するサービスが行われている。(→[[DSステーション]]、[[プレイステーションスポット]]) |
2007年12月6日 (木) 11:53時点における版
体験版(たいけんばん)とは、主にパーソナルコンピュータのソフトウェア(いわゆるパソコンゲームを含む)ないし家庭用ゲーム機のゲームソフトなどで、販売促進の為に機能を制限して頒布するもののこと。多くの場合においては、専用のバージョンが用意される。
日用品的な物品を配付する試供品とは異なり、必ずしも「製品」である必要はなく、開発途上のいわゆるアルファ版やベータ版を提供する場合もある。
概要
体験版のソフトウェアは、製品版とは異なりそれ自体は機能上で幾つかの制限が設けられていたり、あるいは開発途上で機能そのものがまだ実装されていない部分を含むこともあるソフトウェアである。これらはユーザーにソフトウェアを実際に操作してもらって、その使用感を確かめてもらうため無償配布されるなど宣伝的な活動ではあるが、中には体験版ソフトウェアを安価に販売することもある。
これらは、コンピュータのソフトウェアが実際に動いているのを目で見ないと、その良し悪しが判断付き難い部分に絡んでの宣伝活動であるが、こと1990年代以降にCD-ROMなど大容量のデータを安価に複製する記録メディアの発達や、2000年代以降にブロードバンドインターネット接続のような高速インターネット接続回線の普及による大容量データのダウンロードが可能な環境が整備されたことにもちなみ、大手から中小のソフトウェアメーカーまでもが体験版ソフトウェアを行っている。
こういったソフトウェアは広義のアドウェア(宣伝広告を目的としたソフトウェア)でもある。
機能制限の例
- 使用できる期間を設ける(30日等)
- 一定時間しか実行できない(10分等)
- 一定ステージまでしかプレイできない(1面のみ等)
- 特別編(本編のシナリオの代わりに、オリジナル展開が用意される)になっている
- ファイルやクリアを記録出来なくする
- 解像度が低い
- BGMや効果音がない
- 画面やデータの一部に体験版を示す表記が出る
- 動作に予期せぬ不具合が起こってもディスクの交換に応じない
これら様々な方法を組み合わせている場合もある。また、利用料金を支払うことで、そのまま製品版に移行できるタイプの体験版やシェアウェアも存在する。
不完全版・有料体験版
製作中のベータ版(βばん)として、実際に販売される内容とは異なる状態で頒布されるケースも多く見られる。この際、一定の動作を行うものが提供されるが、製品としては不完全ないし未完成であるため、これによってコンピュータが動作不良を起こすなどのトラブルに見舞われたり、或いはその不都合に対するサポートも不十分である場合を含む。
体験版のほとんどは無料であるが、これに製品版と比べて安価な料金(媒体の料金や郵送費は含まない)を課す場合も見られる(有料体験版)。こうした手法は、開発のための資金を得つつ、作品の質を安定させる為に行われる。こちらはユーザーに金銭を求めつつ不完全な製品を提供しているため、これに対して批判するユーザーもいないではないが、その不都合が存在し得る辺りの了解が購入希望者に求められるなど、製品版と比較して非対称のユーザビリティが特徴的である。
ちなみに、製品版として一度世に送り出されたものであっても製品の品質が悪くパッチによる修正が続くなどした場合、「ユーザに金を払わせてバグ探しをさせるソフト」という皮肉を込め、ユーザーが「有料体験版」と揶揄したりすることもある。
頒布形態
1990年代までは体験版を記録したCD等の記録媒体を雑誌の付録としてや店頭で配布する事が多かったが、2000年以降、ブロードバンド通信回線の普及に伴い、メーカーのウェブサイトを介し、ダウンロードする形で配布されることが多くなった。また、Adobe Flashなどを使ってゲームブックのように擬似的に内容を再現することで体験版としている作品もある(『逆転裁判』シリーズなど)。
1988年よりコンパイルが販売していた『ディスクステーション』(雑誌のようにプログラムメディアとなるフロッピーディスク入りのパッケージを刊行した)では、フロッピーディスクの空き容量に便乗する形で他社ソフトウェアメーカーの体験版ソフトウェアを受け入れていた。これらは実際には遊べない店頭用オートデモ(プレイヤーの操作が無くても自動操作で画面が進む)であったり、ゲームの肝となる技術を利用したミニゲームであったりもしたが、概ねこの8ビットパソコン(8ビット御三家参照)の時代から、体験版という概念自体はあった。ただしこの頃は「プレイアブルデモ」(遊べるデモ用プログラム)など、あまり明確な呼称は存在しなかった。
家庭用ゲーム機における体験版
1990年代以前は製造コストのかかるロムカセット方式のハードウェアが主流であったため、カセット自体の単価が高く、これを体験版用のソフトウェアメディアとすることは現実的ではなかった。このためゲーム販売店の店頭やイベントでの先行製造版によるデモプレイやロケテストが主で、個人向けに体験版の配布が行われることはほとんどなかった。任天堂がスーパーファミコン向けのサテラビューを用いて、メディアを伴わないデータのみの体験版を配布したことがあったものの、衛星放送に加入している必要があるなど、データ配信を受信するシステム自体が高価で導入のハードルが高く、普及は進まなかった。
1990年代に入り、ソフトウェアの記録メディアにCD-ROMを採用するハードウェア(PCエンジン・プレイステーション・セガサターンなど)が普及してくると、その製造コストの低さを生かし積極的な体験版配布がなされる様になった。いち早くCD-ROMを導入したPCエンジンでは『スナッチャー』で「スナッチャーPilotDisk」と題したCDシングルサイズのCD-ROMが1992年8月7日に1,500円で一般のゲーム販売店を通して販売されている。
これ以降では、店頭やゲームイベントでの自由配布のほか、雑誌の付録として体験版ディスクが封入されるというケースが一般的だったが、旧スクウェア(現・スクウェア・エニックス)は開発中の大型タイトルの体験版を新作ゲームソフトにバンドルする手法を取り入れた。『ファイナルファンタジーVII』の体験版が付属した『トバルNo.1』、『ファイナルファンタジーVIII』の体験版が付属した『ブレイヴフェンサー 武蔵伝』などがヒット作として挙げられるが、これらはソフト本体が体験版のおまけのような扱いをされてしまった。
2000年代以降、携帯ゲーム機の内蔵メモリの容量増加により、店頭やイベント会場においてゲーム機への一時的な体験版のダウンロードを行えるようになった。ゲームボーイアドバンス向けの月刊任天堂店頭デモがその先駆けであるが、2004年末以降は無線LANを搭載した携帯ゲーム機(ニンテンドーDS、プレイステーション・ポータブル)向けに店頭端末を用いて体験版を配布するサービスが行われている。(→DSステーション、プレイステーションスポット)
さらに、2005年以降はインターネット接続機能がある据置型ゲーム機(Xbox 360、プレイステーション3、Wii)によって、家庭から体験版をダウンロードできるサービスが行われている。(→Xbox Live、PLAYSTATION Store、WiiConnect24)