「代表取締役」の版間の差分

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==表見代表取締役==
==表見代表取締役==
[[表見]](ひょうけん)代表取締役の制度とは、代表取締役でない取締役に、社長、副社長その他代表権を持つと誤解されるような肩書を与えた場合、その取締役の行為は、代表権がないことを知らなかった第三者(善意の第三者)に対しては代表権があったものとして扱われ、会社は責任を負うことになるというものである([[b:会社法第354条|会社法354条]]、旧商法262条)。これにより、相手に会社を代表する権限があると信じて取引をした者が保護され、取引の安全が図られる([[権利外観理論]])。
[[表見]](ひょうけん)代表取締役の制度とは、代表取締役でない取締役に、社長、副社長その他代表権を持つと誤解されるような肩書を与えた場合、その取締役の行為は、代表権がないことを知らなかった第三者(善意の第三者)に対しては代表権があったものとして扱われ、会社は責任を負うことになるというものである([[b:会社法第354条|354条]]、旧商法262条)。これにより、相手に会社を代表する権限があると信じて取引をした者が保護され、取引の安全が図られる([[権利外観理論]])。

なお、旧商法においては、社長及び副社長に加えて専務及び常務の肩書を付した場合についても規定されていたが、社会通念上、必ずしも専務及び常務取締役が代表であるとはいえないため、例示として不適切との考えから会社法ではこの二つは表見代表取締役の規定からは除外された。
なお、旧商法においては、社長及び副社長に加えて専務及び常務の肩書を付した場合についても規定されていたが、社会通念上、必ずしも専務及び常務取締役が代表であるとはいえないため、例示として不適切との考えから会社法ではこの二つは表見代表取締役の規定からは除外された。



2007年10月20日 (土) 00:48時点における版

代表取締役だいひょうとりしまりやく)は、株式会社を代表する権限(代表権)を有する取締役をいう(会社法第349条)。

  • 会社法は、以下で条数のみ記載する。

概説

会社法においては、旧商法とは異なり、原則として各取締役が会社の業務執行権と代表権を有する(348条1項、349条1項・2項)ため、代表取締役を設置しなければならないわけではない。しかし、取締役会設置会社においては、代表取締役を設置しなければならない(362条3項)。また、取締役会非設置会社においても、定款で代表取締役の設置を定めることができる。代表取締役の数には制限はなく、1人とは限らない。ただし、取締役全員を代表取締役に選任することはできない。

いわゆる社長会長副社長専務常務が代表取締役であることが多い。しかし、これらの役職名は商法上に規定があるわけではなく、特に常務については代表権がない(つまり代表取締役でない)場合も多い(ただし、下記の表見代表取締役に当たりうる)。なお、会長についても代表権がある場合と代表権がない(名誉職としての会長)場合とがある。旧有限会社では、複数の取締役がいる場合、各取締役が会社の代表権を持つため代表取締役を定めなくてもよいが、実際には代表取締役を定めている場合が多い(旧有限会社法第27条)。この場合も、取締役全員を代表取締役に選任することはできない。

また、平成14年改正商法で設けられた委員会設置会社においては、取締役会は業務の決定と監督に専念し、業務の執行権限を持たないことから、通常の株式会社における代表取締役に相当する役職は代表執行役となる。しかし、代表執行役は取締役会の決議によって任免される点が、従来の株式会社組織(監査役がおかれる株式会社)の代表取締役と異なっている。

選任

  • 取締役会設置会社においては、代表取締役は取締役会の決議により選定される(362条3項、旧商法第261条1項と同様)。
  • 取締役会非設置会社においては、定款に代表者が定められている場合はその者がなり、定款で選任方法が定められている場合は取締役の互選又は株主総会の決議のいずれかのうち定款で定めた方法により代表取締役を定めることができる(349条3項)。

権限

代表取締役は、意思決定機関である株主総会取締役会の決議に基づき、業務を執行する。また日常業務については取締役会からその決定権限が委譲されていると考えられており、自ら決定し、執行する。対外的には、会社の代表機関として単独で会社を代表して契約等を行うことができる。

代表取締役の業務執行権限は、業務に関する裁判外又は裁判上の一切の行為に及ぶ(349条4項)が、内部的に制限を設けること(一定の行為に取締役会の決議を必要とするなど)も可能である。ただし、この内部的な制限は制限があることを知らない第三者(善意の第三者)に対抗することはできず(349条5項)、制限があったことを理由に契約を反古にするというようなことはできない。

表見代表取締役

表見(ひょうけん)代表取締役の制度とは、代表取締役でない取締役に、社長、副社長その他代表権を持つと誤解されるような肩書を与えた場合、その取締役の行為は、代表権がないことを知らなかった第三者(善意の第三者)に対しては代表権があったものとして扱われ、会社は責任を負うことになるというものである(354条、旧商法262条)。これにより、相手に会社を代表する権限があると信じて取引をした者が保護され、取引の安全が図られる(権利外観理論)。

なお、旧商法においては、社長及び副社長に加えて専務及び常務の肩書を付した場合についても規定されていたが、社会通念上、必ずしも専務及び常務取締役が代表であるとはいえないため、例示として不適切との考えから会社法ではこの二つは表見代表取締役の規定からは除外された。

旧共同代表取締役制度

通常、代表権は単独で行使できるが、それを数人で共同しなければ行使できないとするのが共同代表取締役という制度であった(旧商法261条2項)。しかし共同代表では機動性に欠け、また一人で代表権を行使できないとはすなわち半人前であることを公言するようなものであるという事情もあり、共同代表取締役が実際におかれることは稀である。立法論としても削除されるべきとの考えが強く、裁判上も重視されていない。そこで、2006年5月施行の会社法において、共同代表取締役の制度は廃止された。しかし、よく間違われるのが代表取締役が複数いるケースで、これは共同代表とは言わない。代表取締役が複数いるだけの話で、この場合、その一人ひとりが完全な代表権を持っており、それぞれが自分の名前だけで契約を結ぶことができる。

関連項目