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== 概要 ==
== 概要 ==
艦船の防空は数段階に分かれて行われる。艦船に向かってミサイルが飛んできた場合、直接破壊(ハードキル)対抗手段として、まず射程の長い艦隊防空用のミサイル([[スタンダードミサイル]]など)によって迎撃を行い、その次に個別の艦船の防空用のミサイル([[スパロー (ミサイル)|シースパロー]]・[[ESSM]]など)および76mm、127mm砲などの砲填兵器による弾幕、それでもだめだった場合に使われるのがCIWSである。CIWSは艦船の一番近距離での迎撃手段であり、これで撃ちもらした場合、[[チャフ]]や[[フレア (兵器)|フレア]]・[[電子戦機|ECM]]等の間接破壊(ソフトキル)対抗手段が無効であれば、もう艦船へのミサイルの命中はほぼ避けられない。
艦船の防空は数段階に分かれて行われる。艦船に向かってミサイルが飛んできた場合、直接破壊(ハードキル)対抗手段として、まず射程の長い艦隊防空用のミサイル([[スタンダードミサイル]]など)によって迎撃を行い、その次に個別の艦船の防空用のミサイル([[シースパロー (ミサイル)|シースパロー]]・[[ESSM]]など)および76mm、127mm砲などの砲填兵器による弾幕、それでもだめだった場合に使われるのがCIWSである。CIWSは艦船の一番近距離での迎撃手段であり、これで撃ちもらした場合、[[チャフ]]や[[フレア (兵器)|フレア]]・[[電子戦機|ECM]]等の間接破壊(ソフトキル)対抗手段が無効であれば、もう艦船へのミサイルの命中はほぼ避けられない。


CIWSの射程距離はせいぜい数km程度(およそ2kmが有効射程距離)であり迎撃可能時間が数秒から長くて数十秒のため、高い命中精度とミサイルを自動で追尾する力が求められる。そのため、通常は艦船の[[射撃管制装置|火器管制装置]]から独立し、全自動射撃を行う構造になっている。
CIWSの射程距離はせいぜい数km程度(およそ2kmが有効射程距離)であり迎撃可能時間が数秒から長くて数十秒のため、高い命中精度とミサイルを自動で追尾する力が求められる。そのため、通常は艦船の[[射撃管制装置|火器管制装置]]から独立し、全自動射撃を行う構造になっている。

2007年6月20日 (水) 14:13時点における版

CIWS(シウスもしくはシーウス・Close In Weapon System)は、艦船を目標とするミサイルなどを至近距離で迎撃する艦載兵器の総称。日本語では近接防御火器システムなどと訳されている。

概要

艦船の防空は数段階に分かれて行われる。艦船に向かってミサイルが飛んできた場合、直接破壊(ハードキル)対抗手段として、まず射程の長い艦隊防空用のミサイル(スタンダードミサイルなど)によって迎撃を行い、その次に個別の艦船の防空用のミサイル(シースパローESSMなど)および76mm、127mm砲などの砲填兵器による弾幕、それでもだめだった場合に使われるのがCIWSである。CIWSは艦船の一番近距離での迎撃手段であり、これで撃ちもらした場合、チャフフレアECM等の間接破壊(ソフトキル)対抗手段が無効であれば、もう艦船へのミサイルの命中はほぼ避けられない。

CIWSの射程距離はせいぜい数km程度(およそ2kmが有効射程距離)であり迎撃可能時間が数秒から長くて数十秒のため、高い命中精度とミサイルを自動で追尾する力が求められる。そのため、通常は艦船の火器管制装置から独立し、全自動射撃を行う構造になっている。

無闇に設置すると同一目標を複数のCIWSが射撃すると言う事態も発生しうるため、相互の射界をカバーできる最低限の数(通常 2基)を装備する。

現在使用されてるCIWSの多くはガトリング砲を使用しているが、近年より遠距離での迎撃を可能とするために赤外線誘導ミサイルを使用したCIWS(RIM-116 RAMRolling Airframe Missile)も使用されてきている。またイタリア海軍等ではOTOメララ76mmスーパーラピッド砲など中口径砲をCIWSとして採用している。なお、アメリカ海軍が開発中のズムウォルト級ミサイル駆逐艦に副砲として採用された57ミリ砲はCIGS(Close In Gun System)と称される。

主なシステム

ファランクスCIWS

有名なCIWSシステムは以下の通り。

  • レイセオン社製のファランクス
  • シグナール社製のゴールキーパー
  • 旧ソ連のAK-630
    1969年の登場以来、旧ソ連の艦艇に広範に採用されているCIWS。レーダーが別に設置される分離式で、システムは火器管制装置、レーダー(バスティルト)一機に対し砲塔二機で構成される。弾倉やモーターがマウント下に設置されるため、甲板上の砲塔が極めてコンパクトなのが特徴である。口径30mmの6砲身ガトリング砲を採用し、発射速度は毎分4,000~5,000発、射程2.5km。
  • 旧ソ連のCADS-N-1
    1988年に登場した旧ソ連の新型CIWS。連装の口径30mm機関砲2A38Mを二機、9M311 Treugolnik/Pantsir-S1(SA-N-11/SA-19)ミサイル八基を搭載するハイブリッドシステム。全体に陸軍の2S6Tungska(ツングースカ)自走対空車両の砲塔と類似した構成と成っている。武器、レーダー、光学センサーを一体型とした全体システムの重量は13.5トンにもなり、新しく建造された大型艦にのみ搭載されている。機銃の発射速度は毎分2,400発(一門当り)、ミサイルの射程は8km。システム名称はKortik(コールチク、短剣)、輸出用はKashtan(カシュタン、栗)とされる。
  • スイスのシーガード
    本システムはスイスのエリコン・コントラベス社が開発し、トルコ海軍に採用されている。射撃管制システムを構成するレーダーを別に設置する分離式。砲塔単独ではシーゼニスと呼ばれ、四機のエリコンKBB機関砲(口径25mm)より構成される。発射速度毎分3,400発、射程2km。
  • スペインのメロカ
    スペインのバサン社製CIWSだが、レーダーシステムはアメリカ製を採用している。口径20mmの機関砲を合計12門(上下6門)束ねており、順次発射することで発射速度毎分2,700~3,600発を得ている。射程は3km。スペイン海軍が採用している。
  • イタリアのダルド・システム
    ダルドはシステムのみのCIWSで特定の構成要素を持たず、使用する火器管制システム、レーダー、武器は自由に組み合わせることができる。主にイタリア海軍で採用され、OTOブレダ社の76mmスーパーラピッド砲(発射速度毎分120発、射程14km)や連装40mm機関砲(発射速度毎分600発、射程7km)などの採用実績がある。中国ではライセンス生産されている。

砲の威力

ファランクスの20mm M61A1とゴールキーパーの30mm GAU-8/A、どちらが有効かと言う点においては諸説あるが、一般的に、前者は射撃精度と速度で勝り、後者は射程の長さとHE弾の採用により危害半径に勝るとされている。

しかし、海上自衛隊では、30mmHE程度の弾片では対艦ミサイルを確実に破壊するには威力が不足しているとし、また米軍のファランクスBlock0では劣化ウラン弾を使用しているが、日本の法律上、劣化ウランは弾芯に使用できないため、オリジナルのそれより高精度で劣化ウランを使用しないAPDS弾を開発、採用することで飛躍的に命中精度を向上させている。

陸戦兵器のCIWS

旧ソ連が開発したArena(アレナ、劇場)やDrozd(ドローズド、つぐみ)といった戦車搭載の対ミサイル用アクティブ防御システムは、艦載CIWSと同様の任務を担っており、広義に捉えればCIWSの一部と考えることができる。

関連項目