高橋萌木子

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髙橋萌木子 Portal:陸上競技
選手情報
フルネーム 髙橋萌木子
愛称 モモ
国籍 日本の旗 日本
種目 短距離走
所属 富士通 (2011年 - 2015年)
大学 平成国際大学 (2007年 - 2011年)
生年月日 (1988-11-16) 1988年11月16日(35歳)[1]
生誕地 埼玉県三郷市[1]
身長 169cm
体重 57kg
自己ベスト
100m 11秒32 (2009年)
200m 23秒15 (2009年)
獲得メダル
日本の旗 日本
陸上競技
アジア大会
2006 ドーハ 400mリレー
2010 広州 400mリレー
アジア選手権
2009 広州 200m
2009 広州 400mリレー
2011 神戸 400mリレー
2007 アンマン 400mリレー
ユニバーシアード
2009 ベオグラード 100m
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髙橋 萌木子(たかはし ももこ、1988年11月16日 - )は、日本の元陸上競技選手で、専門は短距離

経歴[編集]

埼玉県三郷市出身。三郷市立早稲田中学校在籍時はソフトボール部に所属しつつ陸上競技をやっていた[1]全日本中学校選手権は200mで優勝。当時はまだ陸上競技に本腰を入れておらず、「ソフトボール選手が全日本中学選手権だけ出てきて勝ってしまった」と噂になるほどの出来事だった[2]

ストライド型の走りが特徴で、男子選手並みのストライドで走る。また、後半で一気にスピードを増すというレース展開が多く、いわゆる「後半追い込み型」の選手である。一方でスタートに課題を残しており、色々とスタートの仕方を試すも改善できず、2008年の冬からはジャマイカ式のスタートを取り入れるなど試行錯誤した[3]

2004年に早稲田中を卒業し、埼玉栄高等学校へ入学[1]。高校からはソフトボール選手との兼任をやめて陸上に専念し、高校3年間でインターハイ100mでは史上初となる三連覇を成し遂げた[1]。また、2006年のインターハイでは他に200mでも優勝こそ同学年のライバル中村宝子に譲ったものの、記録は23秒71で、当時の高校記録およびジュニア日本記録を更新する走りを見せた。さらにリレーでも2種目に出場し、この大会だけで対校得点29点分に貢献した。2006年9月の南部記念では11秒54を記録し、100mでも高校記録を更新。こちらは正真正銘の高校記録保持者となった。同級生の永田俊樹も陸上部所属しており、同級生は他にも木村文和益田詩歩セルヒオ・アリエル・エスクデロ梶原慧常幸龍貴之上田拓馬などがいる。

2007年、埼玉栄高を卒業後、系列校の平成国際大学に進学[1]日本選手権100mで初優勝し、大学1年生ながら世界選手権の代表として100mと4×100mリレーに出場。2008年国体では成年女子200mで23秒48の自己ベストを出して優勝。その年日本人に負けなしだった同学年のライバル福島千里に唯一の黒星を付けることとなった。2009年のグランプリシリーズでは織田幹雄記念の100mで予選・決勝ともに11秒24をマーク。0秒01差で福島千里に次いで2位となる。さらに追い風参考記録(予選+3.1m/s・決勝+2.2m/s)ながら自己ベストだけでなく当時の日本記録(11秒36)をも大きく上回った。4日後に行われた静岡国際の200mでは福島とともに日本新記録をマークした(ただし福島が0秒01差で先着したため記録保持者とはならなかった)。6月の日本選手権200mは23秒00の日本新記録をマークした福島千里に次ぐ2位に終わったが、福島千里が決勝を欠場した100mは11秒34で制して2度目の優勝を果たした。7月のユニバーシアードでは100mで銀メダルを獲得し、ユニバーシアードの個人短距離種目(ハードル種目を除く)において日本女子初のメダリストとなった[注 1]。また、これは全てのカテゴリーの世界大会を通じ[注 2]、日本女子個人短距離種目(ハードル種目を除く)初のメダリストでもあった。大学の最終学年となった2010年、連覇がかかった日本選手権の100mは福島千里に敗れ2位に終わったが、200mでは福島千里に0秒01差で競り勝ち初優勝を飾った。日本選手権以降は走りが崩れるなど不調に陥ったが[4]日本学生選手権の100と200mの両種目を大会記録で制するなど復調の兆しを見せた。

2011年、平成国際大学を卒業後、富士通に入社[5]。社会人1年目は日本選手権の100mと200mで4位と5位、アジア選手権の100mは予選で敗退するなど不調に苦しみ、個人種目での世界選手権出場はならなかった。それでも全日本実業団の100mと200mで2冠を達成するなど存在感を見せつけたが、これが2017年現在で最後の全国タイトル獲得になっている。社会人2年目の2012年は日本選手権の100mと200mで3位に入り、ロンドンオリンピックの4×100mリレー代表に選出された。しかし、オリンピック前のフランクフルト合宿中に行われた100mのタイムトライアルで最下位になり(福島千里以外の4人で行われ、市川華菜土井杏南佐野夢加、高橋の順に終わった)、この結果オリンピックではリレーメンバーから外された[6]。2013年は3月の沖縄合宿中に体調を崩して10日間の入院をし[7]、6月の日本選手権は100mに出場したが予選で敗退した。その後は自然に歩くのが難しいけがに見舞われた時期もあったが、2014年の東日本実業団で復帰した[8]。2015年9月をもって富士通を退職[9]

その後は鳥取県のトレーニング研究施設「ワールドウィング」所属として現役を続け、2020年には7年ぶりとなる日本選手権女子100m出場権を得ていたが、それを前にして9月5日に行われた鳥取県内の記録会で12秒43を記録したのを最後に引退した[10]

2021年1月、地元三郷に帰郷し、現在はスポーツメンタルトレーナーの資格習得を目指している[10]

主な成績[編集]

100m[編集]

大会 場所 結果 記録 風速 備考
2003 全日中 札幌市 2位 12秒79
2004 インターハイ 出雲市 1位 12秒05 準決勝で11秒97
2005 織田記念陸上 広島市 5位 11秒86 +0.1
日本選手権 東京都 6位 12秒02 -2.6
インターハイ 千葉市 1位 12秒00 -1.9
国民体育大会 岡山市 1位 11秒69 +1.8 少年女子A
2006 織田記念陸上 広島市 2位 11秒79 +0.9
日本選手権 神戸市 3位 11秒91 -1.0
インターハイ 大阪市 1位 11秒63 -0.3 大会記録、3連覇
南部記念陸上 札幌市 1位 11秒54 +1.7 高校記録、ジュニア記録
スーパー陸上 川崎市 6位 11秒89 -0.8
国民体育大会 神戸市 1位 11秒66 +0.7 大会記録、少年女子A
浜松中日カーニバル 浜松市 1位 11秒78 +0.5 第1レース
浜松中日カーニバル 浜松市 1位 11秒56 +1.6 大会記録、第2レース
アジア大会 ドーハカタール 6位 11秒85 +0.2
2007 静岡国際陸上 静岡市 2位 11秒55 +0.3 日本人1位
IAAFグランプリ大阪大会 大阪市 5位 11秒65 +0.7
関東学生選手権 東京都 1位 11秒76 +1.4
日本学生選手権 東京都 1位 11秒94 -2.1
日本選手権 大阪市 1位 11秒61 0.0
南部記念陸上 函館市 2位 11秒64 +3.0
世界選手権 大阪市 6位 11秒98 -0.7 1次予選
国民体育大会 秋田市 1位 11秒60 0.0
浜松中日カーニバル 浜松市 1位 11秒90 +1.1
2008 織田記念陸上 広島市 4位 11秒56 +1.7
IAAFグランプリ大阪大会 大阪市 6位 11秒82 +1.2
関東学生選手権 東京都 1位 11秒56 +2.5 追い風参考記録
日本選手権 川崎市 4位 11秒78 +0.4
南部記念陸上 函館市 2位 11秒55 +1.5
日本学生選手権 東京都 1位 11秒62 +1.9 大会記録
スーパー陸上 川崎市 3位 11秒90 0.0
2009 埼玉県春季記録会 上尾市 1位 11秒56 +1.3
織田記念陸上 広島市 2位 11秒24 +2.2 追い風参考、1位の福島千里と0.01差
IAAFグランプリ大阪大会 大阪市 3位 11秒57 -0.9 2位の福島千里と0.01差
関東学生選手権 東京都 1位 11秒93 -2.9
布勢リレーカーニバル 鳥取市 2位 11秒32 +1.9 学生記録
日本学生陸上競技個人選手権 東京都 予選1位 11秒62 +1.1 大会記録、準決勝は棄権
日本選手権 広島市 1位 11秒34 +1.0
ユニバーシアード ベオグラードセルビア 2位 11秒52 -0.3 女子短距離個人種目初のメダル
日本学生選手権 東京都 1位 11秒64 0.0
世界選手権 ベルリンドイツ 4位 11秒75 -0.5 1次予選
スーパー陸上 川崎市 5位 11秒71 -0.8
水戸市陸上競技選手権 水戸市 1位 11秒80 +2.0
2010 埼玉県春季記録会兼国体予選会 上尾市 1位 11秒57 +1.6
織田記念陸上 広島市 2位 11秒35 +1.7
関東学生選手権 東京都 1位 11秒67 -1.2 大会記録、4連覇
日本選手権 丸亀市 2位 11秒39 +0.9
日本学生選手権 東京都 1位 11秒55 +0.6 大会記録、4連覇
国民体育大会 千葉市 2位 11秒61 +0.5
アジア大会 広州中国 4位 11秒50 +1.2
2011 ゴールデングランプリ川崎 川崎市 6位 11秒70 -0.4
日本選手権 熊谷市 4位 11秒82 -0.6
アジア選手権 神戸市 3位 11秒85 -0.1 予選2組
全日本実業団 鳴門市 1位 11秒42 +3.2
国民体育大会 山口市 2位 11秒53 +1.6
2012 東日本実業団 熊谷市 3位 11秒87 -1.9
日本選手権 大阪市 3位 11秒66 0.0
2013 日本選手権 調布市 6位 12秒02 +0.2 予選2組
2014 東日本実業団 福島市 6位 12秒44 -1.5
全日本実業団 山口市 4位 12秒71 -1.6 予選2組
2015 東日本実業団 福島市 5位 12秒46 +3.6 予選1組
日本選手権プレ大会(新潟実業団) 新潟市 6位 12秒52 +0.1
全日本実業団 岐阜市 4位 12秒51 -0.5 予選4組

200m[編集]

大会 場所 結果 記録 風速 備考
2003 全日中 札幌市 1位 25秒37
2004 インターハイ 出雲市 8位 25秒29
国民体育大会 熊谷市 1位 24秒07
2005 静岡国際陸上 袋井市 5位 24秒38 -1.1
インターハイ 千葉市 1位 24秒12 +0.8
2006 インターハイ 大阪市 2位 23秒71 +0.6
2007 関東学生選手権 東京都 1位 24秒09 +0.3
2008 静岡国際陸上 袋井市 予選3位 23秒97 0.0 予選1組1位、決勝は棄権
国民体育大会 大分市 1位 23秒48 +0.7
2009 静岡国際陸上 袋井市 2位 23秒15 +1.5 学生記録、1位の福島千里と0.01差
関東学生選手権 東京都 1位 23秒78 -0.1
日本学生陸上競技個人選手権 東京都 予選1位 24秒01 +1.0 準決勝は棄権
日本選手権 広島市 2位 23秒19 +1.7
世界選手権 ベルリン(ドイツ) 23秒61 0.0 1次予選組7位
アジア選手権 広州中国 1位 23秒53 +0.9
2010 静岡国際陸上 袋井市 2位 23秒17 -0.2
関東学生選手権 東京都 1位 23秒74 +1.1
日本選手権 丸亀市 1位 23秒56 -1.4
IAAFコンチネンタルカップ スプリトクロアチア 8位 24秒27 -0.6
日本学生選手権 東京都 1位 23秒62 +0.8 大会記録
アジア大会 広州(中国) 6位 23秒97 +1.1
2011 日本選手権 熊谷市 5位 24秒15 -0.7
全日本実業団 鳴門市 1位 23秒81 -0.1
2012 東日本実業団 熊谷市 1位 23秒87 -1.9
日本選手権 大阪市 3位 23秒87 -1.9
全日本実業団 福岡市 4位 24秒41 -0.2
2015 東日本実業団 福島市 25秒79 +1.5 予選2組4位

リレー[編集]

大会 場所 種目 結果 記録 チーム 備考
2004 インターハイ 出雲市 4x100mR 1位 埼玉栄高校 4走
2005 インターハイ 千葉市 4x100mR 1位 埼玉栄高校 4走
国民体育大会 岡山市 4x100mR 2位 45秒76 埼玉選抜 4走
2006 インターハイ 大阪市 4x100mR 1位 46秒30 埼玉栄高校 4走
インターハイ 大阪市 4x400mR 3位 3分45秒53 埼玉栄高校 2走
国民体育大会 神戸市 4x100mR 2位 45秒05 埼玉選抜 2走
アジア大会 ドーハ(カタール) 4x100mR 2位 44秒87 日本選抜 2走
2007 アジア選手権 アンマンヨルダン 4x100mR 2位 45秒06 日本選抜 2走
国民体育大会 秋田市 4x100mR 7位 46秒89 埼玉選抜 2走
2008 IAAFグランプリ大阪大会 大阪市 4x100mR 1位 44秒05 日本選抜 4走
オリンピックプレミート 北京(中国) 4x100mR 2位 43秒67 日本選抜 日本記録、予選、4走
オリンピックプレミート 北京(中国) 4x100mR 2位 44秒11 日本選抜 決勝、4走
日本学生選手権 東京都 4x100mR 1位 45秒48 平成国際大学 4走
国民体育大会 大分市 4x100mR 3位 45秒81 埼玉選抜 2走
日本選手権リレー大会 横浜市 4x100mR 2位 45秒46 平成国際大学 4走
2009 IAAFグランプリ大阪大会 大阪市 4x100mR 1位 43秒58 日本選抜 日本記録、4走
関東学生選手権 東京都 4x100mR 3位 45秒35 平成国際大学 4走
世界選手権 ベルリン(ドイツ) 4x100mR 44秒24 日本選抜 予選組4位、2走
日本学生選手権 東京都 4x100mR 1位 45秒37 平成国際大学 4走
国民体育大会 新潟市 4x100mR 1位 45秒48 埼玉選抜 4走
日本選手権リレー大会 横浜市 4x100mR 3位 45秒85 平成国際大学 4走
アジア選手権 広州(中国) 4x100mR 1位 43秒93 日本選抜 4走
2010 関東学生選手権 東京都 4x100mR 2位 45秒09 平成国際大学 4走
IAAFコンチネンタルカップ スプリトクロアチア 4x100mR 4位 44秒54 アジア・パシフィック[注 3] 4走
日本学生選手権 東京都 4x100mR 2位 45秒57 平成国際大学 4走
日本学生選手権 東京都 4x400mR 2位 3分40秒72 平成国際大学 4走
国民体育大会 千葉市 4x100mR 1位 45秒72 埼玉選抜 2走
アジア大会 広州中国 4x100mR 3位 44秒41 日本選抜 2走
2011 ゴールデングランプリ川崎 川崎市 4x100mR 1位 44秒39 日本選抜A 日本記録、2走
アジア選手権 神戸市 4x100mR 1位 44秒05 日本選抜 2走
世界選手権 大邱 4x100mR 43秒83 日本選抜 予選1組5位、2走
国民体育大会 山口市 4x100mR 52秒31 埼玉選抜 準決勝3組8位、2走
2012 ゴールデングランプリ川崎 川崎市 4x100mR 1位 44秒29 日本選抜A 2走

自己ベスト[編集]

  • 100m 11秒32 2009年6月7日(日本歴代2位)
  • 200m 23秒15 2009年5月3日(日本歴代2位)

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 過去のメダル獲得は、1967年大会の女子4×100mリレーで銀メダル、同大会の女子80mハードルで銅メダル(夏目綾子)。
  2. ^ オリンピック世界選手権世界ジュニア選手権世界ユース選手権、ユニバーシアード。
  3. ^ メンバーは全員日本人

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f "ライバルストーリー 年女二人 高みへ疾走" 2012年3月7日付朝日新聞朝刊(大阪本社13版)16面
  2. ^ トップアスリートに学ぶ! 成長期のセルフケア月刊陸上競技 2010年6月号
  3. ^ “壁”を越えつつある日本女子短距離 ベルリンに記した「小さな一歩」”. TBS・世界陸上ベルリン(寺田的 世陸別視点) (2009年8月20日). 2015年5月26日閲覧。
  4. ^ 不調の高橋「走り崩れてしまった」/陸上”. サンケイスポーツ (2010年9月6日). 2015年5月26日閲覧。
  5. ^ 2011シーズン 新人紹介”. 富士通陸上競技部. 2015年6月1日閲覧。
  6. ^ 「London 2012後半戦 Daily Highlight 続「ロンドンの熱狂」 超人たちと日本の奮闘を追う」『月刊陸上競技』第46巻第11号、講談社、2012年10月号、92頁。 
  7. ^ 「2013屋外シーズン展望 短距離」『月刊陸上競技』第47巻第6号、講談社、2013年5月号、62-63頁。 
  8. ^ 笑顔の理由~苦しんだ時期を力に変えて~高橋萌木子”. 富士通陸上競技部ブログ (2014年6月3日). 2015年5月26日閲覧。
  9. ^ 陸上競技部 選手引退のお知らせ”. 富士通 (2015年11月7日). 2015年11月8日閲覧。
  10. ^ a b “同学年福島千里との特別な絆 高橋萌木子さん昨季ひっそり引退し新たな道へ”. nikkansports.com. (2021年6月4日). https://www.nikkansports.com/sports/athletics/news/202106030000751.html 

外部リンク[編集]