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物品役務相互提供協定

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

物品役務相互提供協定(ぶっぴんえきむそうごていきょうきょうてい、英語: Acquisition and Cross-Servicing AgreementACSA)は、異なる国の軍隊が食糧・燃料・輸送・弾薬・整備・衛生など一般的な支援を相互に行えるようにする協定である。主にアメリカ合衆国NATO加盟国またはパートナー諸国との間で、二国間ベースの協議により締結される。日本韓国は米国以外の国と同様の協定を締結している[1][2]

米国におけるACSA

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歴史

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米国におけるACSAは、1980年に制定された合衆国法典第10編第138章(通称:NATO相互支援法)に基づいて、当初はNATO加盟国を相手として締結された[3]。それによって、米国と他のNATO軍との間での食糧・輸送・燃料・弾薬・整備といったロジスティクス支援の手続きが簡素化された[3]

その後、1986年の改正によってACSAの締結対象は非NATOの同盟国等にも広げられた[4]。1989年と1990年にさらに改正された。

2014年12月18日時点で、米国は102か国とACSAを締結しており、さらに78か国がACSA締結の資格を有し[5]、ほとんどのNATO諸国のほか、NATO保守整備補給機関(NSPA)・変革連合軍欧州連合軍最高司令部(SHAPE)がこれに含まれる。

内容

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ACSAの締結相手として認められるのは、NATO加盟国やNATO補助機関、国際連合や国際機関のほか、国防長官が別途指定した国である[6]。国防長官は前年度のACSAに基づく全ての取引を記載した年次報告書を議会に提出することが義務付けられている[7]

ACSAに基づいて物資やサービスを取得・移転する際には、現金による実費弁償、同等品による代替、または同等の価値の物資やサービスによる交換のいずれかの方式をとることが義務づけられている[8]

ACSAでは戦闘指揮官と戦務構成部隊または準統合軍に展開している米軍のロジスティクスサポートの要求を満たすための権限が与えられ、訓練・演習・軍事作戦中の相互兵站支援を取得・提供することや、外国軍の兵站資産を迅速に入手することを可能にしている。

日本におけるACSA

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日米ACSA

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日米間の最初のACSAは1996年4月に締結された。当初の協定の対象は日米共同訓練とPKO及び人道的国際救援活動に限られ、提供可能な物品に弾薬は含まれなかった[9]

1999年9月、第1次改正日米ACSAが発効した。この改正は1999年5月の周辺事態法制定をうけたもので、協定の対象に周辺事態に対応する活動が追加された[10]

2004年7月、第2次改正日米ACSAが発効した。この改正は2003年の事態対処法制定をはじめとする一連の有事法制の整備をうけたもので、協定の対象に「武力攻撃事態等の際の活動」と「国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、大規模災害への対処その他の目的のための活動」が追加された。また、実施可能事項に弾薬が追加された[11]

2017年4月、第3次改正日米ACSAが発効した。これは2015年9月の平和安全法制の制定をうけたもので、協定の対象に重要影響事態存立危機事態が追加されるなどした[12]

米国以外の国とのACSA

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2010年オーストラリアとの間でACSAを締結したのを皮切りに、2026年3月時点で米国を含め計11カ国と締結している。

日本のACSA締結相手国一覧

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相手国署名発効協定
アメリカ合衆国1996年4月15日1996年10月22日[13][14]
オーストラリア2010年5月19日2013年1月31日[15][16]
イギリス2017年1月26日2017年8月18日[17]
フランス2018年7月13日2019年6月26日[18]
カナダ2018年4月21日2019年7月18日[19]
インド2020年9月9日2021年7月11日[20]
ドイツ2024年1月29日2024年7月12日[21]
イタリア2024年11月25日2025年9月5日[22]
オランダ2025年12月18日[23]
ニュージーランド2025年12月19日[24]
フィリピン2026年1月15日[25]

脚注

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  1. Eric Heginbotham and Richard J Samuels, MIT. Defence Challenges: An agenda for Japanese military reform”. East Asia Forum. 2018年10月30日閲覧。
  2. 日・豪物品役務相互提供協定の発効”. Ministry of Foreign Affairs of Japan. 外務省 (2017年9月6日). 2021年9月8日閲覧。
  3. 1 2 石原 2018, pp. 95–96.
  4. 石原 2018, p. 96.
  5. Joint Chiefs of Staff. Acquisition and Cross-Servicing Agreement (ACSA) Country List”. Defense Acquisition University. 2019年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月5日閲覧。
  6. 合衆国法典第10編第138章§2342(a)。
  7. 合衆国法典第10編第138章§2342(h)。
  8. 合衆国法典第10編第138章§2344。
  9. 石原 2018, p. 98.
  10. 石原 2018, p. 99.
  11. 石原 2018, p. 100.
  12. 石原 2018, pp. 101–102.
  13. 1998年4月と2004年2月に改正。その後、2016年9月に新しい協定を締結し、元の協定は失効。
  14. 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定”. 外務省. 2025年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年3月9日閲覧。
  15. 2017年1月に新たな協定を締結、元の協定は失効。
  16. 日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定”. 外務省. 2026年1月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年3月9日閲覧。
  17. 日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国政府との間の協定”. 外務省. 2026年2月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年3月9日閲覧。
  18. 日・仏物品役務相互提供協定(日仏ACSA)の効力発生のための通告”. 外務省. 2024年12月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年3月9日閲覧。
  19. 日・加物品役務相互提供協定(日加ACSA)の効力発生のための外交上の公文の交換”. 外務省. 2025年3月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年3月9日閲覧。
  20. 日・インド物品役務相互提供協定(日印ACSA)の効力発生のための外交上の公文の交換”. 外務省. 2025年12月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年3月9日閲覧。
  21. 日・独物品役務相互提供協定(日独ACSA)の効力発生”. 外務省. 2024年8月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年3月9日閲覧。
  22. 日・伊物品役務相互提供協定(日伊ACSA)の効力発生のための外交上の公文の交換”. 外務省. 2025年9月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年3月9日閲覧。
  23. 日・オランダ王国物品役務相互提供協定(日蘭ACSA)への署名”. 外務省. 2026年3月9日閲覧。
  24. 日・ニュージーランド物品役務相互提供協定(ACSA)及び日・ニュージーランド情報保護協定への署名”. 外務省. 2026年3月9日閲覧。
  25. 日・フィリピン物品役務相互提供協定(日比ACSA)への署名”. 外務省. 2026年3月9日閲覧。

参考文献

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  • 石原明徳「ACSAの変遷―日米2国間から各国間へ―」『海幹校戦略研究』7-2号、2018年。 

外部リンク

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